sword art onlineー黒と灰ー   作:戒斗

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いわゆるバッドエンド

SAOにてキリトがアルトと戦えなかったらというifのお話


リクエストを元に書きました。


貫き通す思い

「キリトくーー」

 

愛しい彼女の声が途切れ、ポリゴンが弾けて宙を舞う。

それは幻想的ではあったけれど、何処か現実味がなくてーー

 

「綺麗なもんだろ?命の終わりは」

 

その元凶はまるで血を振り落とすように大剣を一閃させて俺と向き合った。

 

「愛しの彼女を失ってもまだ戦う理由にはならねぇか?」

 

ゆっくりとした足取りで俺に近付いてきてる。それでも俺は反応を返せなかった。

 

アスナを失うと分かっていたのに動けなかった。

 

「ここにいる全員を殺しても動けねぇだろうな。意思の折れたお前に用は無い。せめてもの手向けだ。苦しまねぇよう一撃で逝かせてやる」

 

仰向けに蹴り倒され、首を短剣と大剣が挟み込むように構えられる。

 

「……どうしてこうなっちまったんだろうな……本当なら死ぬのは俺だけで、お前がこのゲームをクリアするはずだったのに……」

 

間近にいる俺でも聞き逃してしまいそうなほど小さな声。

 

「アルト……お前……」

 

「茅場を討ち取れるチャンスをフイにする訳にはいかない。いろいろと手を回してはいたんだが……ああ、きっと前提から間違ってたんだな俺」

 

「きっとそうだな……なぁアルト、みんなのこと頼む」

 

「……他に言い残すことは?」

 

「地獄に堕ちろ相棒」

 

「言われるまでもねぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

交差させた得物で切り開くようにキリトの首を切り裂いた。

 

何もかもを読み違えた俺のミスだ。

赦しは請わない。怨まれるのも覚悟の上だ。

 

「友を手に掛け尚、立ち上がるか」

 

「元々そういう手筈だろうが。それにあの征伐戦から膝を折らねぇと決めた。アイツらを手に掛けた今、立ち止まるわけにもいかねぇ」

 

地獄に堕ちろか。手厳しいな、ほんと。

 

「人殺し!」

 

「地獄に堕ちろ!裏切り者!」

 

「なんとでも言え。俺は俺の目的のために動いてただけだ。一度でも俺がお前らを仲間だと言ったことがあるか?仲間でもねぇ奴に裏切りだの的外れだと思わねぇか?」

 

恨め、憎め、俺はその十字架を背負って生きていく。

 

「さぁそろそろ始めようか?あの日の誓約を果たす時だ。茅場」

 

「ふむ、そうだな。実のところ私は君と戦うことを楽しみにしていた。君のその【特双剣】は全プレイヤーのなかで最も情報処理能力に秀でた者に与えられるもの。このSAO開始直後から、もしやとは思っていたがやはり君が手にしたな。反応速度に優れた者に与えられる【二刀流】、情報処理能力に優れた者に与えられる【特双剣】、その二つのスキルが君とキリトくんに与えられたのも何かしらの運命、というやつかな」

 

「今日はよく喋るな先輩。ゼミで会ったときなんざ、碌に喋ることもしなかった癖に」

 

「ふ、これでも私は君を買っているのだがね」

 

「ぬかせ」

 

俺がSAOを始めた理由のひとつ。

同じゼミの先輩である茅場が作り出したもうひとつの世界を体感してみたかった。

 

まさかデスゲームと化し巻き込まれるなんざ、考えもしなかったが。

 

「それでは始めようか。お互いHPはイエローから、もちろん私の不死属性は解除する」

 

攻略組に所属するプレイヤーたちの呪詛を浴びながら茅場と対峙する。

相討ちは許されない。負けは論外だ。

 

先手は茅場。

【神聖剣】の代名詞とも言える十字盾を構え、その影から剣を振るってきた。

 

その一撃を短剣で弾き、盾ごと茅場を叩き潰そうと大上段から大剣振り落とすが、僅かに体を沈み込ませただけで直ぐに体勢を立て直し大剣を流しつつ反撃とばかりに剣が振り下ろされた。

 

受け流され体勢が開いたものの短剣で同じように受け流し、蹴りを放つ。

盾で防がれたものの追撃される前に距離を離して体勢を整える

 

茅場相手にソードスキルは使えない。奴はこのゲームの開発者であり天才だ。ソードスキルのモーションとパターンは全て頭の中に入ってると考えていい。

 

通用するのは今まで培ってきた己の技量のみ。

 

「中々によく動く。その先読みも感嘆に値する。いやはや、未来が見えてると言われても納得できるほどの正確性だ」

 

「アンタの守りも真っ正面からやり合うのは遠慮したいほど完璧だ。まったく、天才ってのはこれだから」

 

「方向性は違えど君もその部類だと思うがね」

 

「冗談。俺は凡庸そのものだっつーの」

 

「君が凡庸なら世の中は戦闘狂だらけだな」

 

「誰がバーサーカーだこの野郎」

 

弾き、防がれ、受け流し、阻まれる。

 

お互い戦闘スタイルは防御型。相手の攻撃を防ぎ、その隙を突く。

それを身をもって理解できているからこそ、僅かでも隙があったなら、そこを突かざるを得ない。だがその一撃だけは確実に読まれてる。そこに待っているのは肉を切らせて骨を断つ確殺の刃。

そのため踏み込みを緩める他なく、有象無象の剣戟と成り果てる。

 

……泥沼だな。

 

短剣を口に咥えて大剣を両手で構える。

使うのは使用後のディレイが短い基本突撃型ソードスキル。

 

黄色い閃光が弾け茅場の十字盾に切っ先を突き立てるものの、その盾を貫くことなく後ろへと受け流される。

 

そして無防備な背中へと剣が突き立てられーー

 

「なっ……」

 

ることはなく振り向き様に奴の切っ先を左手で受け、そのまま鍔元まで押し込み鍔ごと奴の手を掴み、左手と切っ先が食い込んだ左肩で剣を封じる。

 

肉を切らせて骨を断つなら、肉も骨も切らせて命をもらう。

 

大剣を手放し茅場の左腕を抑え込んでそのまま押し倒し、首元へ咥えた短剣を押し当てる。

 

「ふっ……君の勝ちだアルトくん……いや、三神くん」

 

ああ、アンタの負けだよ先輩。

 

喉を掻き斬り茅場のアバターがポリゴンとなって砕け散る。

 

HPに意識を戻せば数ドットしか残っていなかった。あとコンマ数秒遅ければ茅場と相討ち、最悪俺の負けだった。

 

「アルト……オメェ……」

 

「クリアは果たされた。あとは俺が犯した罪を精算するだけだ」

 

「この大馬鹿野郎ぉ」

 

「ああそうだな。重々承知してるよ」

 

見通せず、読み違え、前提を間違えた。

裏切り者の末路は、誰も辺り知らぬ場所で誰にも知られることなくのたれ死ぬと相場が決まってる。

 

ゲームクリアを知らせるアナウンスが流れるなか、疲労感や虚脱感……まぁいろいろな感覚に襲われ腰を降ろした。

もう頭を働かせるのも億劫だ。

 

生き残ったプレイヤーたちの呪詛を聞きながら目を閉じる。

 

 

 

なぁキリト、もしそっちで逢えたら好きなだけ殴り倒して貰って構わねぇ。

だからさ一回だけでいい。俺のこと友達と呼んでくれるか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、リアルに復帰したアルトこと三神颯真は入院していた病院から姿を消した。

警察以外にも彼と繋がりのあったSAOサバイバーたちも捜索に参加したものの手掛かりはなく、完全に見失った。

 

けれどただひとつ、彼の相棒であったキリトこと桐ヶ谷和人及びアスナこと結城明日奈が入院していた病室に彼が残したと思われるローダンセの花束だけが置かれていた。

 

ローダンセの花言葉は『変わらぬ思い』『終わりのない友情』

 




今話は賛否両論あると思います。
もしかしたら否しかないかもですが……

リクエストは随時受け付けていますので活動報告の伝言板にお書きください。




アリシゼーション編放送開始ですね。
ゴブリンスレイヤー、面白かったです。

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