sword art onlineー黒と灰ー   作:戒斗

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5000字目標でしたが、キリが良かったので


第最終翔:帰還

「逃げるなよ……あの男はどんな場面でも臆した事はなかったぞ。あの、茅場晶彦は!」

 

「か、かやっ、茅場ァッ!そうか……あのIDは茅場の……!なんで、なんで死んでまで僕の邪魔をするんだよォッ!!!」

 

「……だったら茅場の協力者として、後始末くらいはしておかないとな。大口叩いて真っ先に死んだし、俺」

 

「アルト……」

 

「気にすんなよ。お前のこと恨んでねぇし、あの時の選択に後悔もねぇ。強いて言えばちと恥ずいな。あんな退場したのにこうして生き残ってるなんざ……行くぞ、ホスト被れ。今までの礼をしてやる」

 

「ああアアァァッ!」

 

先陣を切るのはアルト。

地を這うような低い姿勢で須郷へと迫る。

 

素人丸出しの構えから振るわれた《エクスキャリバー》を短剣で弾き、舞の様な動きで須郷の脇をすり抜ける。

 

続けて俺が躍り出る。

V字を描くように大剣を振るい《エクスキャリバー》を跳ね上げた。

 

そこからは一方的だ。

 

須郷の前から後ろから嵐のような剣舞。

足を斬り飛ばされ、腕を斬り落とされ、腰から両断され、首を刈られる。

 

実は戦う前にシステムコマンドによって須郷のHPがレッドに落ちたら全回復するよう設定していた。

ついでに自発的なログアウトも。

 

つまり、俺たち二人の気が済むまでこうして切り刻まれなきゃならないわけだ。

 

「あびゃ!げひぉ!た、助け……」

 

「キリト、もう飽きた。何が楽しくて野郎の悲鳴を聞き続けなきゃなんねぇんだ?流石に耳が腐る」

 

「奇遇だな。俺もだ」

 

前後から腰を挟むよう、すれ違い様に横一閃。振り返り、アルトは下から俺は上からの縦一閃。

 

打ち合わせもしないでここまで息が合うなんて、思っても見なかったな。

 

「正直、テメェが誰かなんざ知らねぇし、興味もねぇ。俺に何をやったのかも知るつもりもねぇ。けど……お前はキリトやアスナを苦しめた。だから――――地獄に落ちろ、ゲス野郎」

 

両手の得物で切り開くように二閃。

同時に回復設定を解除。HPがゼロになり須郷のアバターはポリゴンとなって四散。

あれだけの悪事を働いたにしては、呆気ない最後だな。

 

「キリト君……終わったの?」

 

アスナを拘束する手枷を解除して、彼女を抱き締めた。

 

間違いなく彼女はここにいる。ここにいるんだ。

 

「現実世界は多分もう夜だ……でも、すぐに君の病室に行くから」

 

「うん、待ってる。最初に会うのはキリト君が良いもん」

 

勿論、必ず会いに行くよ。

 

「アルト君、また会おうね」

 

にっこりと笑って、全身を光り輝かせたアスナがそう口にしたのと同時に光の粒子となって消えてしまった。

 

「また、か。いいのか?お前たちと一緒にいても」

 

「当たり前だ。友達だろ?」

 

「ホントお人好しだよな、お前ら」

 

「まあな。アルトも帰す前にやることがあるな。――――そこにいるんだろ?ヒースクリフ」

 

何もない虚空へ声を掛けた。すると俺たちの上から何かが実体化し、ゆっくりと地面へ降りてくる。

 

「久しいな、キリト君。そしてこの姿で会うのは何時振りかな、アルト君」

 

「ヒース……いや、茅場晶彦」

 

「生きていたのか」

 

「そうであるとも言えるし、そうでないとも言える。私は、茅場晶彦という意識のエコー……残像だ」

 

「相変わらずわかりにくい事を言う人だな」

 

「脳の高出力スキャニング……成功率は1パーもねぇって聞いたが……成功したのか」

 

脳の高出力スキャニング?

言葉通りに受け取るなら、脳をスキャンしてデータに変換して……そうか!

目の前にいる茅場は、脳をスキャンしてデータ変換した茅場の意識体。

 

「SAO事件の黒幕がデータの海に逃亡……完全犯罪だな。リアルの警察は捕まえれねぇ」

 

「だがこの姿となったことで私は、私の夢を追い続けることができる。空に浮かぶ鉄の城。幼い頃より夢想し続けた夢をね」

 

「だが残念。もうラーメンは食えねぇな」

 

ラ、ラーメン?

 

「それだけが心残りだが。なに、どうとでもなるさ」

 

「あんたとはもう少しラーメン談義したかったが……そういやキリト、お前はどっち派だ?」

 

「醤油こそ至高」

 

「味噌こそ最強だ」

 

え?急に振られても困るんだけど。

アルトが味噌で、茅場が醤油。

 

「どっちかと言うと塩ーー」

 

「よろしい。ならば戦争だ」

 

「醤油、味噌、塩。三つ巴だが勝つのは味噌だ」

 

収拾がつかなくなった!?

 

 

 

 

ヒートアップしていく二人を宥め、なんとか本題へ。

 

「須郷に操られていたお前を助けるのに手を貸してくれたのが、ヒースクリフだったんだ。まあ、なんにしても礼を言っておくよ」

 

「礼は不要だ。君と私は無償の善意が通用する仲ではなかろう。もちろん代償は必要だよ、常に」

 

「……何をしろというんだ?」

 

問い返した直後、頭上に眩い光が差し込んだ。

黄金に輝くそれはゆっくりと落ちてきて、俺の両手に収まる。

見た目は黄金に輝く卵……といえば良いだろうか。

 

「これは……?」

 

「それは世界の種子、《ザ・シード》だ」

 

「《ザ・シード》……?」

 

「芽吹けばどういうものか分かる。その後の判断は君たちに託そう。消去し、忘れるも良し。しかし、もし君たちがあの世界に憎しみ以外の感情を残しているのなら……いや、やはり止めておこう」

 

そこから先をヒースクリフは敢えて口にしなかった。

けど、『それを世界に広めてほしい』……なんとなくだけど、そう言うんだと俺は感じ取る。

憎しみ以外の感情、か……。最初は悲観したけど、それでもあの世界で過ごした日々は楽しかったな、俺は。

 

「では…私は行くよ。だが、いつの日かまた会うことがあるだろう。それまで暫しの別れだ、キリト君、アルト君」

 

最後にそう言い残し、ヒースクリフは地面を蹴って闇の中に紛れる。

瞬間、目の前に縦に亀裂が走り、そこから黄金の光が差し込むと一気に視界に広がった。

思わず腕を目の前に掲げてやり過ごすと、夕日が差し込む鳥籠の中に戻っていた。

 

「ここは……?」

 

「アルヴヘイム・オンラインの中だ。ユイ!大丈夫か!?」

 

「パパッ!」

 

良かった無事だったんだな。

プライベートピクシーの姿のユイが目の前に現れ抱きついてくる。

 

「ユイ!無事だったか!」

 

「はい!パパのナーヴギアのローカルメモリに退避したんです!」

 

「ユイ、か?随分ちんまくなったな」

 

「このゲームのプライベートピクシーってナビに姿を変えてるんだ。だからいつでもあの姿に戻れる」

 

「お久しぶりです。アルトさん」

 

ユイは指でつつくアルトを払おうとしてるものの、抵抗しきれず結局、つつかれるままだ。

 

いい加減やめろ。俺だって我慢してるんだ。

 

「……真面目な話、どうなるんだろうな。この世界」

 

「良くて長期メンテの名目でデータの精査と一新。最悪、全フルダイブ型VRの廃止……だろうな」

 

そう…だな。プレイヤーが幽閉される、なんて事態が二度も続けば、廃止を呼び掛ける人たちも出てくるはずだ。

そうなっても俺たちには何も出来ない。

 

それでもSAOで繋がったものまでは消えない。

 

「じゃあ俺は、ログアウトしたらアスナの病室まで行ってくるから。アルトもログアウト出来るように設定し直した。目を覚ましてすぐは地獄だぞ」

 

「そうかい。けどなお前とは鍛え方が違う。すぐ歩き回れるようになる……キリト」

 

「…?どうした?」

 

「いや……杞憂だったら良いが、あのホスト被れは強制ログアウトされたんだろ?」

 

「ホスト……須郷の事か。HPが全損したから、そうだろうな」

 

「だったらお前に復讐する事だって考えられる。用心してスタンガンの1つくらいは持ってけ」

 

「そんな物騒なものはないけど……でもそうだな、用心する」

 

システムコマンドを立ち上げ、囚われたまま立ったプレイヤーたちを解放、後はログアウトするだけだ。

 

三神颯真(みかみそうま)だ」

 

「?」

 

「リアルでの名前。今まで背中預けてた相棒の名前を知らないのもあれだろ?」

 

「うん、そうだな。桐ヶ谷和人だ」

 

三神颯真……。

アスナの次になるけど、お前のところにも見舞いにいくよ。

 

「じゃあな和人。次はリアルで」

 

「会えれば、だけどな」

 

拳を打ち合わせ、視界が白く染まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから1週間。

ようやく流動食から味気ない病院食に変わった頃。俺はあの日の事を思い出していた。

キリトーー和人の活躍のお陰でリアルに戻ることが出来た。

最初に眼にしたのは、真っ白い天井と枯れ木のように細くなった自分の手。

体を起こすのもやっとで、枕元にあるナースコールを押すのもしんどかった。

 

両親はSAOにダイブする半年前に死んでるから、俺が目を覚ましたと言う連絡は、横浜にいる親戚のところに行ったらしい。

横浜からわざわざ埼玉まで来てくれるのだけでなく、俺の着替えまで用意してくると言うのだから、あの人たちには頭が上がらない。

 

家族ぐるみで親交があったおかげだな。

 

「兄ちゃーん!」

 

「おう、よく来たな」

 

病院だっつーのに大声出しやがって。

走った勢いのままベッドに上体を起こした俺に抱き付いてきたのは、親戚んとこの双子の妹。

入り口で姉の方が花束を持って立っていた。

 

「病院で走っちゃ駄目でしょう?」

 

「だって、だってぇ……」

 

あー入院着に抱き付いたまま泣くな。

 

「ご両親は?」

 

「兄さんを診ていたお医者様に詳しい話を聞いてます」

 

「親戚なんだから兄はやめろ」

 

「兄さんは兄さんです」

 

妹が妹なら姉も姉か。

ベッドサイドの花瓶に花を差しながらも目尻に涙が溜まってるとこ見れば、こいつも泣きたいのを我慢してんだな。

 

キリトに殺されるのも悪くないと思ってたが、こいつらにも心配かけてたんだよな……。

 

「兄ちゃん?」

 

「兄さん?」

 

二人の声に我に帰れば、不思議そうな顔で覗き込んでいた。

 

「心配かけたな二人とも。ただいま、今帰ったぞ」

 

お帰り、と泣きながら抱き付いてきた二人を抱き締めながら、俺はリアルに戻ってきた実感を噛み締めた。




最後に出てきた双子は誰なんでしょうね?(すっとぼけ)

なんにせよこれにてフェアリーダンス編は終了です。
次はアインクラッドの回想編をやりたいのですが、ファントムバレットもやりたい。

完全な別の話ですが地球をハードで守りきりました。
インフェルノで武器稼ぎ中ですがフェンサーで緑蟻に勝てない……






ーー須郷の野望を打ち破り、アルトこと三神颯真はリアルへと帰還する。

しかし新たな影が行く手を遮る。

「俺とこの銃の名はーー」

「私は氷。冷たい氷でできた機械」

プレイヤーの死。ゲームの中から命を奪う者。

「お前何か勘違いしてね?」

「あいつは俺なんかよりも覚悟がある」

その敵は過去の亡霊。

「俺たちは剣士だ。戦うだけだ。そうだろ?」

次章ガンゲイル・オンライン
《銃の世界》
罪は悪なのか
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