sword art onlineー黒と灰ー   作:戒斗

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10/31日刊ランキング84位
11/1日刊ランキング72位
評価してくださった方々、本当にありがとうございます


幕間
日常と世界の種子


人が睡魔を感じるのはどんなときだと思う?

 

集会で校長の長話を聞いてるとき?

単調な作業をこなしてるとき?

完徹でイベント周回してるとき?

心地いい陽気で公園のベンチにでも座ってるとき?

 

まぁ色々あると思うが、俺はーー

 

「Gというのは重力加速度を示していて、9.8メートル毎秒であらゆる物体に作用しています。これはーー」

 

退屈な授業を受けているときだろう。

 

てか重力加速度なんて工業高校出身者なら習ってることだろうし、わざわざ元大学生を集めてやることでもないだろ。

 

「では三神さん、等速自由落下における式をーー」

 

「速度を求めるならv=gt、落下した高さを求めるならy=1/2gt、時間が必要ないならv=2gy」

 

んな簡単なことで指名してくんな。

 

担当教師が対応に困ってるのを尻目に落ちてきた瞼に逆らわず身を任せた。

 

 

 

 

 

頭に軽い衝撃で意識が戻り、その感触から教科書辺りだろうと目を開けば栗毛の少女が見下ろしていた。

 

「んだよ明日奈」

 

「また寝てたね。これで何回目?」

 

「いちいち数えてねぇよ」

 

「先生も困ってたよ?成績は良いのに生活態度が悪すぎるって」

 

「言わせときゃいい。この学校にはPKした連中を監視しやすいようにすし詰めにされてんだ。本来なら大学に戻ってるはずの俺がここにいるのがその証拠だろ」

 

「口ではなんだかんだ言っても、ちゃんと出席してる辺り根は真面目だよね」

 

「俺のことよりも旦那のことを気に掛けてやれ。今日だって船漕いでたぞアイツ」

 

うつらうつらと頭が何度か落ちかけてた。

大方、レア物を探して徹夜でもしてたんだろ。

 

「颯真さんは、なんというか放っておけないんだよね」

 

「ダメンズウォーカー?」

 

今じゃすっかり聞かない言葉だけどな。

 

「ちょっとお話しがあるんだけど時間大丈夫かな?大丈夫だよね」

 

「安心しろ。今の発言は俺にダメージがあった」

 

自分でダメ男って言ってるようなもんだし。

 

 

 

 

 

 

 

 

場所を変えてダイシーカフェ

 

「眠い」

 

「頼む颯真!あとここだけ手伝ってくれ!」

 

「知るか」

 

今日は異様に眠い。

つーか、電子工学はお前の十八番だろうが。

 

「三神さん、ここの式の組み立て方なんですけど…」

 

「ん?……因数分解か。懐かしいな、俺も解き方が解らないで引っ掛かった覚えがある。まずはだなーー」

 

「待て。なんでスグの方に乗り気なんだよ」

 

「お前はあとだ。自業自得だろ?」

 

「うぐっ……」

 

授業中に寝てた罰だよ。

 

 

 

 

 

 

 

一通り課題も終わらせ和人妹(直葉)はカウンター席で里香たちと楽しく談笑中。

 

「そういえば」

 

「ん?」

 

「颯真は茅場と同じゼミに通ってたんだよな?」

 

「まぁな。とは言っても俺がゼミに入った時にはナーヴギア開発で忙しいのか、あんま顔も出さなかったからな」

 

茅場がゼミに顔を出しても碌に言葉も交わさなかったし、俺も茅場も自分の興味のある事しか興味がなかったってことだな。

 

「けど、あいつは間違いなく天才だ」

 

自身の夢を追い、そして実現させた。

 

空に浮かぶ鉄の城。

 

まぁそれが本当に茅場の思い描いていた物だったのかは本人しか分からないことであり、俺たちが推測を重ねても憶測の域を出ないが。

 

「この間、神代(こうじろ)凛子さんと会って来たんだ」

 

「…………あぁ、あの人か」

 

「お前忘れてただろ?」

 

「忘れてねぇよ。思い出すのに時間が掛かっただけだ」

 

「それを世間一般では忘れてたって言うんだけどな。まあいいや、茅場から託された《ザ・シード》についてな」

 

「茅場と同じこと言ってただろ。『あの世界に憎しみ以外の感情があったなら』って」

 

「あの人の場合、茅場に憎しみ以外の感情があったならって言ってたよ」

 

確かに憎む人間もいるだろう。

だが同時に感謝の念もあるはずだ。

 

フルダイブ型MMOは誰もが手を伸ばせる形で茅場が作り出したもうひとつの世界だ。

だがSAO事件、ALOでの人体実験騒ぎでフルダイブ型MMOは衰退の一途を辿っている。

 

しかし和人の手の中には、その世界を救う手立てがある。

 

「ま、俺がとやかく言うことじゃねぇな。《ザ・シード(ソレ)》は茅場からお前に託されたモンだ。ソイツを生かすも殺すもお前の自由。どう扱おうと茅場も恨みはしねぇだろうよ」

 

「……そっか。お前がそう言うんだから、そうなんだろうな」

 

憎しみ以外の感情は確かにある。

あの世界があったからコイツらと出会えた。あの世界がなかったら、俺は今でも喪う痛みに怯え大事なものを作らず日々を暮らしていただろう。

 

あの世界が俺たちに与えたのは絶望だけじゃない。

それだけでも上等だと思わないか?

 

 

 

 

 

 

 

そして《ザ・シード》が世界に蒔かれた。

何が芽吹くかはあとのお楽しみだ。




帰還者学校での一幕と世界の種子を託された和人との会話でした。


この投稿で100話到達しました。
本当はオーディナルスケールで完結する予定だったんですが、アリシゼーションを希望する声もあったので続く形になりました。
アリシゼーション編完結までお付き合いくださればと思います。


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