sword art onlineー黒と灰ー   作:戒斗

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ALOとGGOの間のお話


ユイの夏休み

『ALOで鯨を見れる場所を知らないか?』

 

「頭ん中リセットしてから出直しやがれ」

 

引っ越しのために荷物を纏めてるところで問われた声にイラつきを隠すことなく返して電話を切る。

俺はさほどALOに詳しい訳じゃねぇし、ダイブはしてたが意識もねぇし記憶もねぇからノーカンだ。

 

ったく、人が引っ越しで忙しいってのに意味の分からねぇこと聞いてきやがって……。

 

「今度はなんだ……!」

 

『悪かったって。実はーー』

 

要約すればSAOで主釣りを果たした自慢話をアスナと一緒にユイに話したところ、鯨を見たいと言い出したそうだ。

そういやまだ海も見たことがないんだったか?

 

「………………」

 

明日は帰還者学校からの呼び出しもあるし、その時に直接話をするか。

 

呼び出しもというのもSAOでプレイヤーをキルしたことによるカウセリングだ。

リアルでも同じことをするんじゃねぇかと危惧した政府がわざわざ専門家を用意したそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

呼び出しは口実だった。

 

菊岡の野郎がSAOとALOでの出来事を把握したいが為に臨時カウセリングの(てい)を装って俺とキリトを誘き寄せたって訳だな。

 

お陰で丸一日潰れ、思い出したくもねぇことを思い出した。どういうわけか、女性陣はプールを貸し切ってキリト妹の泳ぎの特訓をしてたが。

 

「時間調整のためとはいえ、リアルじゃ夕方なのにこっち(ALO)じゃ真っ昼間とか体感時間が狂うな」

 

「いいじゃねぇか、青い空、青い海、白い砂浜それに……ぐへへ……」

 

おい、エロオヤジ。

クラインの視線の先には浅瀬で戯れる女性陣。

 

いつもと違うところと言えば服装だろう。

布面積が少なく肌面積の広いソレ。

 

「ハァ……」

 

「なに目ぇ逸らしてんだよ!ムッツリグフゥ!!」

 

「一遍死ね」

 

「おぉキレイなアッパーカットだな」

 

我ながら腰の入った良いアッパーが打てた。

確かに良い目の保養にはなるんだろうが、不躾に舐め回すように眺めるのは違うだろ。

 

「よう、待たせたな……クラインの奴が埋まってるが何かあったのか?」

 

「砂風呂だ。気にすんな」

 

「いや、頭から砂に突っ込む砂風呂があるか」

 

「なんなら全身をーー」

 

「やめて差し上げろ。ナチュラルに人を埋めようとするな」

 

……なんか機嫌悪くないか?

 

リアルでちょっと、な

 

ゴチャゴチャうるせぇな。

 

 

 

 

鯨が出るかもしれないと言われてる南端の海底にある神殿のクエストに挑むことになった。

《深海の略奪者》という名のクエストなんだがNeRaKKとか言う爺、あの名前どっかで見た記憶があんだよな……読んだんだったか?

 

「アルト!そっちにーー」

 

「分かってらぁ!」

 

馬鹿正直に真っ正面から突っ込んできた魚を大剣で受け止め、左の短剣で切り裂く。

 

海底だからか出てくる敵は魚介類ばかり。

……寿司が食いてぇ。

 

神殿の最奥には両手で抱えれるほど巨大な真珠。

あれを持ち帰ればクエスト達成か……おかしいな。

 

あれを盗んだ賊もいねぇし、盗んだものをわざわざ目立つような場所に置いておくのもおかしな話だ。

 

神殿の入り口に戻り、キリトが抱えた真珠を差し出しかけた所で頭の中に浮かんだピースが噛み合い、キリトを後ろへ投げ飛ばしながら短剣で奴の喉を掻き切り蹴り飛ばした。

 

「ア、アルト!いきなり危ないだろ!」

 

「うるせぇ!ゴチャゴチャ文句言う暇あんならさっさとソレを元あった場所にに戻してこい!コイツはーー」

 

「羽虫が小賢しい真似をぉ!」

 

「クソッ!この……!」

 

無数の吸盤を持つ触手が煙の中から飛び出し、無様にも絡め取られた。

 

奴の頭の上に表示されていたNeRaKKの文字がKRaKeNーークラーケンへと変わる。アナグラムか。

伝承や文献によっては海蛇や竜の姿で語られているが、多くはタコやイカなどの頭足類の姿で描かれる。北欧伝承に出てくる海の怪物だ。

 

「ッ!これ真珠じゃない!何かの卵よ!」

 

「つまり《深海の略奪者》って俺たちのことか!」

 

「この神殿に張られた結界は私では通れない。故に貴様らのような愚かしい夭逝を待っていたのよ」

 

「ああそうかい!説明ありがと、よ!」

 

両手の得物で体に巻き付く足を切り裂いて拘束から脱出するが、状況は変わらず最悪だ。

ダメージを負わせても瞬く間に回復し、水中という不利な環境にあってこちらの動きは遅くあちらは速い。

 

と、頭上から降ってきた三又の槍がクラーケンの眼前に突き刺さり奴の動きを止めた。

 

三又の槍……トライデント、海、クラーケンと来れば有名なのは一人、いや一柱しかいない。

 

Leviathan the sea lord

海王リヴァイアサン

 

何やら問答をしているようだが、クラーケンが撤退し卵を返せば、地上まで送り返してくれるという。

 

 

 

 

 

その送り返す手段が鯨だった。

夕日に照らされながら、鯨の背に乗りユイのテンションはうなぎ登りだ。

 

「そういや、何でアルトは今日来てくれたんだ?」

 

「なんだ藪から棒に」

 

「いやさ、引っ越しで忙しそうにしてたし無理かなって思ってたからさ」

 

「別に大した理由はねぇよ」

 

「ユイちゃんのためでしょ?」

 

「ユイの?」

 

「メールで聞かれてね。『ユイは海を見たことがないのか』って」

 

「んなことはねぇよ。荷造りに疲れたからただの息抜きだ」

 

「「またまた~」」

 

「知ってるか?鯨ってのは肉食らしいぞ」

 

「止めろ馬鹿!」

 

お前らまとめて食われちまえ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~おまけ~

 

「そう言えばお兄ちゃんとアルトさん……颯真さんってどんな関係なんですか?いつも喧嘩してる割りには仲が良さそうにも見えますし……」

 

「あーあれ?気にしなくても良いわよ。キリトと戦闘馬鹿(アルト)が戦ってるのなんて日常茶飯事だし」

 

「もーリズさん?キリトさんとアルトさんの関係を言葉にするなら……戦友?が近いですかね。戦ってるのもコミニュケーションみたいなものですし」

 

「へぇ、そうなんですね。私はあまり話したことがないので……話しかけられても『キリト妹』ですし……」

 

「ふふふ、愛称みたいなものだよ。SAOの頃なんて口が悪すぎて周りは敵ばっかりだったし」

 

「確かに。でも言ってることは正論だからね~。口が悪くて頭も回るとか(たち)が悪すぎるわよ」

 

「でも根はいい人ですよ?なんだかんだ言って」

 

「そうそう!なんだかんだ言ってねぇ」

 

「ふふふ……なんだかんだ、なんだかんだ」

 

 

 

 

 

 

「ぶぇっくし!」

 

「汚ぇ!こっち向きながらくしゃみするな!」

 

「なんか好き勝手言われてる気がする」

 

「その前に俺に謝れ!」




Exエディションでのお話でした
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