シノンと出会ってから数ヶ月とちょっとが経ち、《ヘカート》を操れるだけのステータスを得るために振り回され、服装が変わったシノンをからかえば『ハラスメントコードで訴える!』と烈火の如く怒られた。
だって半ケツじゃん、アレ。
まあ俺も《ムラサマ》を手に入れるのに協力して貰った手前、シノンの申し出は断れねぇんだけどな。
オークションに出ていたコイツに一目惚れし、落札するための資金をシノンと稼いだ。
1ヶ月近く付き合って貰ったんだから、それ相応の対価としてシノンの用事にはなるべく付き合うようにしてる。勿論、口にはしてない。
GGOでの装備も一新できたし、シノンの協力がなければこんな短期間で稼ぐこともできなかった。
……寄生じゃないよな?
ALOではキリトと顔を突き合わせれば戦い。
その都度、リズに打って貰った武器をぶっ壊し、そのあと殴り合いに発展していたところをキリトの妹、リーファが遅れてきたリズに告げ口、俺とキリトがメイスでしばかれてから今日は何をするかを話し合うのがここ最近のルーチンになってる。
インプで始め、SAOと同じくSTR優先のステ振りにしてる。GGOではAGI優先でプレイスタイルが変わるが今のとこ問題ねぇから良しとする。
STR優先ならサラマンダーが良かったんだが、クラインと被るのが嫌でインプにした。
12月5日
「颯真は最近、ALOに来る回数減ったよな?何かあったのか?」
「もうひとつやってるゲームの方で世話になった奴がいてな。その礼をしてるってだけだ」
「お礼参り?」
「和人、サッカーしようぜ。お前の頭がボールな」
「体は!?」
お礼参りとか一昔前の不良じゃねぇんだから。
俺と和人が菊岡に呼び出され、銀座のとある喫茶店の前にバイクを駐車した。
キリトはスポーツタイプ、俺のはサイドカーを付けるために馬力のあるやつにしたんだが、店員任せにしたから詳しくは知らん。
ハーレー何とかって言ってた気がする。
「やぁ二人ともこっちだよ」
眼鏡を掛けた優男、菊岡が手招きしていた席に座る。相も変わらず、ヘラヘラしてる癖にそこが見えねぇな。
「今日は何の用だ」
「まあまあ、本題に入る前にケーキでもどうだい?ここのケーキは結構お気に入りでね」
賄賂のつもりかよ。
「エスプレッソ、ブラックで。和人は?」
「それじゃ俺はーー」
注文してたものがテーブルに出され、取り敢えず一息ついたしそろそろ切り出すか。
「それで?」
「せっかちだねぇ、君も」
「進んだ針は戻らねぇ。時間は有限なんだよ」
はいはい、と言いながら取り出したのは二つのタブレット。
手渡され画面を点けてみれば、リストのように名前と住所が書かれてる。
和人が手渡された方を見れば、画面の中央に再生表示があるから何かの動画か?
「本題と言うのはね。とあるゲームのプレイヤー二人が死亡したことについて。颯真君に渡したタブレットには死亡したプレイヤーの名前と住所、そして死因。和人君に渡した方には、そのプレイヤーをキルしている動画がネットにアップされていてね。あまりに演劇染みてたから、君たちに見てもらおうと言うことさ」
どっちも都内在住の一人暮らし。重度のネットゲーマーで死因は恐らく心不全。発見が遅れたため遺体の腐敗が進んでおり詳しい死因は不明。
確かにこのご時世、ダイブしたまま飲まず食わずで栄養失調を起こし死ぬプレイヤーが多い。
ゲーム内で飲み食いすれば空腹感が紛れ、リアルに戻っても物を食う気にならねぇってのが大きな要因だな。
和人の方は何やら声が歪んでいるが、デスガンとか言ってんな。
「その動画通りに解釈するなら、
「俺と和人に撃たれて来いって?」
「ゲームの壁を越えて人を殺せる。その力を確かめる必要がある。真実か虚構かをね。もちろんタダで、とは言わないよ」
そう言いながら人差し指を立てる。
十万か……。ゲームをするだけで十万貰えるなら破格と言える。命を天秤に乗せていなければ、だが。
「一人頭、だよな?もちろん」
「颯真と俺の命が懸かってるんだ。それぐらい貰わなくちゃな」
ゲームでキルされればリアルでも死ぬ、か。
SAOの時は電磁パルスで脳を焼き切る方法だった。しかし今回は心不全、つまり心臓麻痺ってことになる。
ナーブギアよりもセキュリティが強化されたアミュスフィアで、そんなことが出来るのか?
「そのゲームっていうのは?」
「GGO。ガンゲイル・オンラインさ」
『アルト?どうかした?』
「……いや、何でもねぇさ」
場所が変わってGGO内。
殺しか事故かあんま判別はできねぇけど、死んだプレイヤーの一人が前
特に興味もなかったから憶えてねぇんだけどな。
帰る途中で朝田とか言う隣に住んでる奴が、また例の奴らに絡まれてた。
俺の顔を見た瞬間逃げ出したけどな。
よっぽどの何かをされたのか、顔が真っ青になってたからバイクのサイドカーに乗せて帰宅。風呂でも入ってさっさと寝ろ、と促しておいた。
第三回BoBに
少し狩りにでもいかない?と誘われエントリーのことも考えたんだが、当日でいいかとシノンの誘いを承諾。
初めて俺たちが出会ったビル群でmob狩りを終えたスコードロンを待ち伏せしている。
『……ねぇ』
「なんだ?」
『私、強くなれてるのかな?』
「ステータス的なもんなら、そうなんじゃねぇの?珍しいな弱音なんざ。《ヘカート》を手に入れたあのダンジョン以来か?」
『リアルでちょっと、ね』
強くなれているのかってのは、リアルのことか。
「シノン、お前何か勘違いしてね?いくらゲームで強くなろうが、それが現実に反映されるわけじゃねぇ。変わるとしてもそれは物の見方、他者の価値観に対する理解ぐらいなもんだ。自分はこう考えるけど相手はこう考えてる、みたいにな」
『つまるところ、ゲームで強くなろうが現実で強くなる訳じゃないってのが、俺の考えな』
インカムから聞こえる声は茶化している様だけど、真摯に私の問いに答えてくれた。
私は強くなるため、
けど彼はそうじゃないと否定する。
あの過去を乗り越えるため、弱い
でも現実は、隣の部屋に引っ越してきた三神さんに何度もお世話になっている。
遠藤さんたちの溜まり場になっていた時も、簡単な護身術も教えてくれた。今日だって遊ぶお金欲しさで私を脅した時もあの人に助けられた。
私は強くなれないの?
『シノンが言う強さってのが
「貴方は……貴方はどうなの?」
それが一番知りたい。それを知ればきっと私もーー
『俺か?俺はお前よりずっと弱ぇ。自分の罪を理解しておきながらそれを含めて俺だって胸張ってる。要は開き直ってんのさ、救いようがねぇほどにな』
アルトのGGOでの二つ名はミヌアーノにしよう(適当)
アカギさん、誤字報告ありがとうございます!