UA5000突破……!
ありがとうございます!
3/6の投稿は前話第5弾の改訂版です。
ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。
順調に勝ち進み俺、アルト、シノンの三人は無事本選出場が決定した。
相手の行動を先読みによって潰すアルト
斬撃によって銃弾を無効化する俺
超遠距離より狙撃によって敵を射抜くシノン
三者三様の一芸に秀でた俺たち。
俺とシノンは同じブロックで勝者は俺だったが、上位2名が本選へと進めるのでシノンも本選へと出場できる。
本選は日を跨いだ明日の夜。
予選で敗退したプレイヤーにも見てもらいたい運営側の配慮なんだろう。
『キリーーじゃない和人。まだ推測の域はでねぇが、死銃の手口が分かったかもしれねぇ』
颯真からの電話で寝起きだった頭が一気に冴えた。
推理、推測ならSAO時代でも颯真の右に出る奴はいなかった。核心でなくてもなにか手掛かりになるはずだ。
颯真の助言で昨日、夜遅くまで明日奈とユイに話をしていて、寝不足気味だったが颯真の自宅に向かうことになった。
「颯真、それで死銃の手口って?」
颯真が淹れてくれたコーヒーに口をつけ本題を切り出す。
「まず、アミュスフィア越しの殺人じゃねぇことが前提になる。《人形殺人》……憶えてるか?」
もちろん、と答える。
SAOで犠牲者を出した事件の1つだ。忘れるわけがない。
事件の全容はこうだ。
犯人が特定の名前が彫られた人形を破壊すると、その彫られた名前の人間が死ぬ。
ただそれだけのものだったけど、俺だけじゃ解決できなかった事件だ。
相談を持ちかけた颯真曰く、
『目の前のものだけが真実とは限らねぇ。圏内じゃ人は殺せねぇってことは、そいつはその時間に圏外にいたってことだろ。大袈裟なパフォーマンスで視線を集め、その隙にトリックを仕込む。マジシャンとアシスタントの関係だ』
つまり人形というパフォーマンスで視線を集め、
確かあの事件の首謀者もーー
「【ラフコフ】の構成員だった。だとしたら、幹部のザザが知っていてもおかしくねぇ」
そうだ、何で気付けなかったんだ。
「俺は殺しの手口がこれしかねぇって考えてる。だが、まだ疑問が残る。なぜGGOなのか。どうやって住所を知ったのか」
推測の域を出ない理由はこれだ、と付け加え思案顔に戻った。
確かにその手口ならGGOでなくてもよかったはず。GGOでなければならなかった理由……。
まず第一前提にザザが標的のアバターを撃ったとき、協力者は現実のプレイヤーの側にいること。
第二前提、プレイヤーの住居を知っている。
第三前提、プレイヤーは独り暮らしであること。
「第三前提は、菊岡に見せてもらった被害者の共通点から判断できる。仮に三つ全ての前提が揃ったとしても状況証拠だけだ。肝心の凶器がわからねぇことには逮捕までは踏み切れねぇ」
現状ではこれが限界だ、と呟く。
でもこれが解っただけでも大きな前進だ。
「いや、この情報だけでも奴に大きな制限が掛かる。今までのようにはいかないはずだ」
だけど、颯真は難しい顔をしたままだ。
どうしたのか、と言いかけたが、先に颯真が口を開いた。
「説明してて新しい疑問が出てきた。目的はなんなのか、だ。殺しだけが目的なら、あんな仰々しいパフォーマンスは必要ねぇはずだ。だとしたら、奴の目的はなんだ?まるで誰かに自分の存在をアピールでもしてるか見てぇな感じだ」
人を殺すことだけが目的なら、あんな目立つことはしない。目をつけられれば、監視されることもわかっているはずだ。
「後手に回ってるな、完全に」
「それほど用意周到に準備してたってこったろ。奴が何を企むにせよ、俺たちの仕事は奴の犯行を暴くこと。あとは菊岡の管轄だ」
そうだ。奴の手口次第じゃこっちの前提は崩れるかもしれないけど、アバター名が分かればその協力者も探し出すことも出来るはずだ。
「それはそうと和人。お前、シノンに金出してもらったんだろ?」
「う……まぁ。プロテクターとか《ファイブセブン》……だったけか。そのぐらい」
「ってことは、光剣と高周波ブレードは自分で買ったのか。あれ結構な値段しただろ?」
「《Untouchable》とか言う弾避けゲームで
「は?ゲームで稼げんのか?」
「え?」
「え?」
和人と飯を食ったあとに別れ、俺はもう一度情報を整理した。
大まかな手順は和人に説明した通りだ。
まさにSAOで起こった《人形殺人》そのままだ。
だが、まだ謎が残ったまま。大別して2つ。
第一に協力者がどうやって被害者の自宅に侵入したのか。被害者宅の鍵は壊されていないことは判明してる。
初期型の電子錠だったことから、ハッキング?
いや、ねぇな。家の前でそんなことをしてれば嫌でも目立つ。目撃者がいねぇんだからスムーズに侵入できたはずだ。
最初から家の中に居た?
これもない。被害者は重度のゲーマーだ。外出することも少なく、鍵も閉めたままだろう。いつ忍び込んだのかが問題になる。
となると、協力者は合鍵を持ち被害者がダイブしている間に忍び込んだ可能性が高い。
だがどうやって?
被害者の知り合い?
ないことはねぇだろうが、知り合い程度の仲で合鍵を渡すか?仮にそうだとしても、別の被害者とも知り合いで合鍵を持っているなんてことがありえんのか?
「あ、あの……」
そして第二に凶器だ。
詳しい解剖はされなかったとは言え、目立った外傷がなかったらしい。鈍器で殴る、刃物で切りつける等の殺害ではない。
あり得るとするば薬物だろうが、人為的に心不全を起こせる薬物なんざ一般人には手に入れるのはほぼ不可能に近い。
全ての問題をクリア出来る人間……。
「あー!くそ!」
「ひゃっ!」
「ん?」
あともう少しで何かが掴めそうで掴めない。
そんなもどかしい思いを吐き出すように声を荒らげれば、小さな悲鳴。
視線を向ければ眼鏡をかけた幸の薄そうな少女。
最近よく見かけんな。
周りを見渡せば、住んでるアパート近くにある公園だった。
「あー悪い。考え事しててな」
「い、いえ。考え事の邪魔をしてしまったみたいで私の方こそ……」
「それで?何か用か?」
「前にご飯を買ってもらったお金を返そうと思って……」
あのコンビニに送ったときのか。
財布から抜き取ろうとした手を抑える。
「別に金には困ってねぇからいらねぇよ。学生の独り暮らしは金が掛かるもんだ。余計なこと気にしてねぇで、節約しとけ」
学生の頃は何かと金が掛かる。
まぁ、卒業しても金は掛かるけどな。
それに今見られたら、俺がカツアゲしてるみてぇだろ。
「でも……」
「でも、じゃねぇ。バイトしてんのか、仕送りなのかは知らねぇが、学生が持てる金額なんざたかが知れてる。黙って厚意に甘えとけ」
「え、と。ご馳走さまです?」
疑問符をつけんな。
和人の奴は『ゴチ』の二文字で済ますんだぞ。
不思議な人だなぁ。
やっぱりツンデレなんじゃないかな?
前を歩く三神さんの背中を見つめながらそう思う。
素っ気ないのに気配りが出来てる。
……うん。やっぱりツンデレだ。
「どうかしたか?」
「い、いえ」
どうしたら、三神さんみたいに強くなれるんだろう?
遠藤さんの友達に殴られそうになったときも、特に慌てることもなかったし、私に護身術を教えれるほど武術を嗜んでる。
「どうしたら、三神さんみたいに強くなれますか?」
普段の私なら絶対に口にしない。
もしかしたら、アルトに似てるからかもしれない。
纏う雰囲気も、話し方も。
でも、彼と三神さんは違う。
だからかな。アルトとは違う答えを教えてもらえるような。
そんな気がしたんだと思う。
「朝田が言う強さってのが
自分の弱さ……。
「まあ、
弱さを受け入れる……。
私の弱さ……。
脳裏に浮かび上がるのはかつての罪。
「うっ……!」
「……?おい、どうした?」
込み上げる吐き気と共に膝をついてしまい、三神さんが駆け寄ってくれるけど、今の私に周りを気にするほどの余裕はなかった。
「クソ!まだ吐くなよ!」
三神さんに背負われ、アパートに帰宅。
彼の部屋のおトイレを借り、背中をさすられながら、胃の中のものを全て戻してしまった。
「少しは落ち着いたか?」
「何から何まですいません」
この人の前では、弱さを隠しきれていない気がする。
強くならなくちゃいけないのに……。
「お前、何かあったのか?何かを溜め込んでんなら、話すだけでも楽になるぞ。言いたくねぇなら言わなくてもいいけどよ」
そんなこと言わないでほしい。つい甘えたくなってしまう。
けど、この人も私の過去を知ったらーー
「……気持ちに整理がついたら聞いてもらえますか?」
「相談に乗るだけならな」
私の意思に反して、口から溢れるのは甘えの言葉。
私は私自身の力で強くならなくちゃいけないのに。
私の過去を知ったらこの人も離れていってしまう。
そうなったらきっと私はーー
「三神さんもゲーム、するんですね」
「ん?まぁな」
ベッドサイドに置かれたアミュスフィアを見つける。
言い方は悪いけど、ゲームに興味がなさそうに見えてたから少し以外だ。
「意外です。そう言うのに興味がなさそうに見えますから」
「朝田がどういう目で俺を見てたか何となくわかった」
拗ねた風に口にする三神さんについ吹き出してしまう。
同年代より
「コーヒー、飲むか?」
「はい、頂きます」
今は厚意に甘えよう。いつか私も三神さんのような強さを手に入れることが出来たら、今までの恩返しをするんだ。
まったく、年下相手になにしてんだか。
大分、顔色が良くなった朝田を帰し、BoB本選開始1時間前にとある病院を訪れた。
菊岡に殺しの手口を説明し、安全を確保するために用意されたのが病院の一室。
本当であれば自宅からダイブし、俺の部屋に侵入する不審者がいれば、張り込んでいる人間に確保してもらおうと思ってたが、来るかも分からない人間を張り込むより、和人共々監視しやすい一室に押し込めた方が経費も掛からないらしい。
大人の事情ってやつだ。
「数時間振りだな、和人」
「菊岡から聞いたぞ。囮役で犯人の協力者を誘いだそうとしてたらしいじゃないか」
「そっちの方が楽だしな。鼠取りを利用した罠とかいろいろ準備したんだが」
「物騒だなぁ」
「犯人に人権はねぇ」
「おいバカやめろ」
いつもの軽口を叩きつつ、持参したアミュスフィアを被りベッドに横になった。
シノンには棄権してもらいてぇが、並々ならぬ覚悟でGGOにダイブしてるみてぇだから、そんなこと言えば平手打ちの1発や2発は覚悟しないといけねぇかも。
死銃については、結局どうやって住所を知り、侵入できたのかは分からずじまい。GGOに何かしらの手がかりはあるはずなんだが。
殺しの快楽ってやつに目覚めたレッドプレイヤーの集団が【
SAOの闇。その
ザザこと新川昌一の標的は、都内に住む独り暮らしのプレイヤー。
もちろん例外はあるかもしれないが、果たして本選出場者に該当するプレイヤーが何人いるのか。
もしかしたら、出場者全員かもしれない。
顔も知らねぇ奴が何人死のうが知ったことじゃねぇが、その火の粉が俺の周りに降り掛かるなら容赦はしねぇ。
どれほど罪を背負うことになろうが、何度でもこの手を血で汚そう。
それが俺の覚悟だ。
年末年始はみんな仕事を休むんで、自分に回って来ちゃうんですよね。
賛否両論あるでしょうがご容赦を