sword art onlineー黒と灰ー   作:戒斗

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番外編も書こうと思っているので、お楽しみに!
今更ですが10評価も頂いたようでありがとうございます‼


第7弾:凶弾

「じゃあ取り敢えず当面の目標を確認するぞ」

 

本選開始まで残り数分。

選手控え室に転送された俺とキリト。

 

本選は予選で勝ち残った各ブロックの上位2名を1つのエリアに転送し、最後の一人になるまで戦い合うバトルロイヤル。まさにfree for all(なんでもあり)って訳だ。

 

「ザザの野郎を探し出して殺しの手口を自供させる。もしくは協力者の名前および人数を吐かせること」

 

「やることが多いな」

 

「文句垂れる前にどう動くか考えろ。SAOみてぇに片っ端から斬り捨てりゃいいって訳じゃねぇんだからな」

 

「それをやってたのはアルトだろ」

 

否定はしない。つーか、片っ端からPKしたみてぇに言うのはやめろ。

 

それはそれとして

 

シノンの奴、遅いな。何かあったのか?

下手打ちゃこのまま失格だぞ。

 

俺としてはザザに目をつけられることもなくなるだろうから、万々歳だが。

……肩入れしすぎか?

 

「ーーよかった。間に合った……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三神さんの言葉を改めて自分で考え直してたら、いつの間にかBoB開始まで残り数分だった。

 

自分の弱さと向き合い受け入れる、か。

 

あの人はこれまでもそうしてきたんだろうか。

……うん。きっとそうなんだ。折れず曲がらず己の弱さと向き合ってきたから、あんなにも強くあれる。

 

アルトはどうなんだろう?

弱さを受け入れているから開き直れるのか。

罪を認めているからこそ向き合えたのか。

 

「よう、随分ゆっくりだったな。その若さで重役出勤は感心しねぇぞ」

 

「私にもいろいろあるのよ。それよりも相棒だからって手を抜いたら承知しないから」

 

「その点は大丈夫だよ。戦いになれば、仲間だからって手を抜いたりしないヤツだから」

 

……ふーん。()()()()()()相棒だからって、私の知らない顔を知ってるのはモヤモヤするわね。

 

「戦うのが好きなんだよ。それも自分より強いヤツ」

 

「当たり前だ。自分より弱ぇヤツと戦ったって面白くねぇし、己の全てをぶつけれる相手ってのはそれだけでも貴重なんだぞ」

 

「それに振り回される俺の身にもなってくれ」

 

「なんだかんだ言いつつ、お前だって(たの)しんでるだろうが」

 

……むぅ。

 

「ちょっと、話しかけといて除け者にするのはやめてくれる?」

 

「悪い悪い」

 

悪びれる様子もなく私の頭を撫でてくる。

やっぱり似てる。三神さんに。

 

払い除けたいけど、もっと撫でてほしいと思ってる私がいる。

完全に手懐けられてるわね。

 

自分が自分で分からない。

三神さんに甘え、アルトに甘え、変態に張り合ってる。

 

リアルでもこの二人のような友達がいたら……。

ううん。きっとこの二人も私の過去を知ったら距離を開ける。

今までのような気軽さで話すことも出来なくなる。

 

どうして……?いつまであの過去に苦しめられなくちゃいけないの?

 

「シノン、リアルで何があったか知らねぇけど切り替えろ。せっかくの大舞台だ。悩み迷うのはあとでも出来るだろ?」

 

……そうだ。私はここ(BoB)で強くなる。そうすればあの過去を乗り越えて、怯えることもなくなるはず。

 

『朝田が求める強さってのはなんだ?』

 

私が求める強さ……。

答えを出す前に私の視界は白い光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝田といいシノンといい様子がおかしいな。

ん?朝田とシノン、朝田シノン、朝田詩乃……。

まさかな、安直すぎる。

 

BoB本選の会場に転送され、開始からまださほど時間が経ってねぇってのにもう銃声が聞こえるな。

 

キリトとは最初のサテライトスキャンで、お互いの位置がマップに表示されたら線で結び、その中心で落ち合うことになってる。

他のプレイヤーには悪いが、徒党を組むのも戦術だ。出来ればシノンも引き入れたいが、下手すりゃ話し掛ける前に頭を撃ち抜かれそうだ。

 

……銃士のヤツもいるよなぁ。

あのドM、出来ることなら鉢合わせたくねぇ。

 

憂鬱な気持ちを振り払い、マップ南部の田園にスポーンしてから15分。藪に身を潜めつつ、通りかかったプレイヤーを二人ばかり、急襲暗殺したところで端末を起動した。

作戦通り、全体マップに表示された全ての輝点をクリックしてキリトと俺自身の現在地を把握する。

 

キリトが東部の市街地エリア、俺が南部の田園。

もう少し近けりゃ楽だったろうにと内心悪態を吐きつつ、互いの点を線で結び大まかな集合地点が決定って訳だ。

 

で、その肝心の位置は――

 

「……鉄橋の東岸、てところか?」

 

――マップ南部の中心寄りに架かる鉄橋の東端から少し先、直線距離にして4キロ前後。

 

無論、障害物や他のプレイヤーもいるから直線で行くのは不可能だし、そもそも南部にいる俺が橋を渡って東側へ行けばいい的だ。仮に迂回するんだとしたら、距離はもっと伸びる。

 

どうするかなと考えながらも、端末を仕舞って東へ駆ける。

全員の位置情報が漏れちまうから、いつまでもボケっと留まって考えている暇はない。

 

位置情報から見て取れた周囲数キロ圏内のプレイヤーは三人程。その内の一人は俺の進行方向にいる。

もしコッチに来てんだったらそろそろ……

 

「っ!」

 

なんて考えていると、視界に真横から俺を狙う数本の予測線が映る。

 

「チッ!」

 

舌を打ちながら咄嗟にスライディングをする様に身を屈めて近くの木の影に滑り込んだ瞬間、乾いた発砲音と共に弾丸が通り過ぎて行った。

 

やっぱ見つかったか、面倒臭ぇ……。

 

意識を撃ってきた相手に向ける。

銃声の聞こえた距離からして然程遠くはない。

 

さて、辻斬り御免といくか。

 

身を隠した木から離れ身を晒す。鞘に納められた《ムラサマ》を引き抜き、後ろに流しながら疾走。再度銃口を向けて乱射してくるが遅い。

 

いきなり相手が姿を晒したことに驚いていたんだろうが、戦闘中に呆けるのは命取りだ。

 

予測線を避けながら相手との距離を詰めていく。

銃弾が掠めることなく敵が迫ってくるってのはどんな心境なのか。

 

だが流石と本選出場者と言うべきか、左手にサブマシンガン《スコーピオン》を腰だめに構え、右手にそのままアサルトライフル《Mk.17》を保持して引き金を引いた。

 

弾幕張って少しでも足止めしようってことなんだろうが、両手でフルオートの銃を連射しようもんなら、銃口の跳ね上がりを抑え込むためのSTRはかなり必要のはずだ。

 

その証拠に表示される予測線はさっきよりもかなり散ってる。そうなっちまえばこっちのもんだ。

 

AGI全開で足を動かし敵へと肉薄。

 

振り上げた《ムラサマ》で《Mk.17》をマガジンとトリガーの間から真っ二つに切り捨て、返す刃で左腕ごと胴体を切り払う。

 

散っていく青い欠片が消えて行くのを最後まで見届けず、すぐさま東へ。あれだけ銃声を響かせれば、嫌でも目立つ。

 

 

そうして身を潜めつつ可能な限り速く移動すること十分弱、二回目のサテライトスキャン直前数分前の時間に鉄橋の西側へ辿り着いた。

 

因みに鉄橋は渡ってない。鉄橋を前にしていい案が思いつかなかったから、ストレージに装備を全部ツッコんで渡河しただけだ。装備品さえ身に付けてなけりゃ水の中でもある程度動けるっつーのは、SAOから続く《ザ・シード》規格のVRMMO共通の隠れた仕様になってたりする。

 

水中専用装備(夏イベ装備)の水着でも着てなきゃ水ん中入るプレイヤーも少ねぇから認知度は低いが。

勿論、ステータス的には最弱状態(裸装備)だから待ち伏せでもされてたら一巻の終わりだったんだが、そんなことなく無事渡河に成功したわけだ。

 

鉄橋から数十メートル離れた岩場の影に身を潜めてスキャンを待っていた俺の耳に、微かな異音が届いた。

 

神経を研ぎ澄ませてその音に意識を集中させる。SAOの様な《索敵》スキルの存在しないGGOでは、こうやって自分の五感に頼るしかない分、姿や足音を完全に消し去る様な《隠蔽》スキルも無い。

そうしていると、その異音が徐々にこちらに近づいてきているのが判る。

 

これは……足音? 尾行(つけ)られたか?

 

だとすれば、水中で襲われなかったことから考えるに、見つかったのは岸から上がりこの岩場に隠れるまでの間。

ソイツの視界に入ったのが極短い時間だったから即強襲されることもなく、こうして追ってきたんだろう。

 

足元が土ではなく岩である此処では、動けば位置を知られる恐れがあるが、どうしたもんか。《ムラサマ》の鯉口を切りながら思案する。

 

追われている側である以上、互いに居場所が知れていない今がチャンスではある。正確な位置は不明だが、ある程度の距離と方向は足音から推測できる。

 

打って出るか?

 

そう思い、リスク覚悟で飛び出そうとした矢先。

 

……ん?

 

迫る足音とは全く別の方向から、何かを感じた。

不自然に捕えた気配……というより、殺気ともいうべき何かに気を取られた俺は、聞えていたはずの足音が不意に途切れたのに気付くのが数瞬遅れた。

 

……止まった? いや、違う……上!?

 

足音が止んだことに気付いた直後、直感に従って《ムラサマ》を引き抜きつつ視線をむける。

 

「チッ!」

 

予測線が出る間もなく、マズルフラッシュと共に至近距離で放たれる銃弾の雨を、斬り裂く。何発かは防ぎきれずに喰らったが、致命傷は貰っちゃいないし御の字だ。

辛うじて凌ぎきり、相手が着地をする一瞬の隙を狙って反撃を仕掛けるために駆け出そうとした瞬間――

 

「ンなっ!?」

 

目に入ったのは回転しながら飛んでくる《グロック18C》。

ってことは!

 

出鼻を挫かれ不意を突かれたことで、踏み出した足を止めてしまった。

反射的に銃身を弾いて、顔面にクリーンヒットだとか、弾倉を斬り裂いて暴発からの自爆だとか、そんな間抜けな展開は回避できたが、相手に体勢を整える時間を与えちまったのは痛手だ。

 

俺が切っ先を向け直すのと同時、相手は新たな得物の銃口をこちらに向けていた。二人の間の距離は5メートルも無い超至近距離。

 

「気付いてないだろうから、仕留め損なうとは思わなかっけど……やっぱり、クロスレンジじゃ分が悪いわね」

 

「そんなこたねぇよ、俺もギリギリだった。自分の獲物をぶん投げてくるとは思わなくてよ」

 

「サイドアームを犠牲にするだけでアンタを殺せるなら儲けモノだったし、おかしなことして不意を突くのはアンタや変態の真似よ。感想はどう?」

 

「効果的だってのは身を以て判った。今後の参考にしてやるよ」

 

「そう、良かった。辞世の句はそれでいいわね?」

 

「馬鹿言ってんじゃねぇ。俺達の得物じゃあ、この距離でまともにやり合ったらどっちもアウトだ」

 

「はぁ……、アルトとは邪魔者がいない一騎討ちで戦いたかったんだけど……」

 

「悪いな、シノン」

 

シノンの視線の先には《ファイブセブン》を構えたキリトの姿。

 

「出来過ぎなタイミングだな、オイ」

 

「まぁな。それより時間が無いから、早くシノンを説得してくれ」

 

時間的にもう二回目のサテライトスキャンは終わってるはずだ。

 

「……私が説得に応じるとでも?」

 

「シノン、撃とうと思えばいつでも君を撃てた。それをしなかったのは、ここで戦闘音を出したくなかったからだ」

 

「……どういうこと?」

 

「色々あんだよ。シノン、悪ぃがここは折れてくれ。退いてくれんならお前を撃たねぇし、その後お前が俺らを殺しに来ても文句は言わねぇ」

 

シノンが強い覚悟を以てGGOこの世界いるのは判っちゃいるし、その覚悟を踏みにじる真似もしたくねぇ。だが、状況がそれを許さない。

そうして睨み合うこと暫し。

 

「………………はぁ」

 

溜息を吐いて、シノンはライフルの銃口を俺から外して担ぎ直した。

 

「悪ぃな」

 

「別に、どうせこの状況じゃ犬死だし」

 

銃を下ろしながら短く発した謝罪に返ってきたのは、拗ねたような声音のそんな言葉だった。

 

「よし、サクッと移動だ」

 

駆け出したキリトに俺も続く。間に合わなかったら面倒だ。

 

「って、なんでお前も来んだよ」

 

そんな中、何故か当然の様に俺達に付いて走るシノンに思わずツッコんだ。

物凄くナチュラルについてきたから一瞬気付かなかったわ。

 

「銃声を出したくなかったって理由が気になったから。しょうもないわけだったらアンタ達を背後から撃てるようにね」

 

銃に見立てた人差し指を器用に俺の背中へ突き立てながら浮かべる皮肉気な笑み。

何言っても無駄だなと、早々に思考を放り投げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合開始前から合流することを計画していたのか、偶然アルトを見つけて追いかけた私。

 

二人を追って勝手に付いてって辿り着いたのは、橋から200メートル程離れた、丁度鉄橋の様子が覗ける茂みだ。周りは岩に囲まれているのでアンブッシュしていれば接近されない限り早々見つかることは無いだろう。

 

でも、此処でいったい何をしようっていうの?

 

「……何でシノンまでいるんだ?」

 

「戦うのを避けた理由に納得できなかったらいつでも後ろから撃てるように、だとよ」

 

「それはまた……」

 

アルトの言葉に引き攣った笑みを浮かべながら、鉄橋を見張ることが目的なんだろうと何となく当たりをつけていた私に視線を向けてくるキリト。

ありったけの眼力を籠めて睨み返してやる。

 

「なに? 文句でもあるわけ?」

 

「い、いやいや滅相もない!」

 

「ふんっ」

 

鼻を鳴らしてキリトから視線を外す。睨まれて謝るくらいなら最初から言わなければいいのに。

 

昨日の決勝の様にふてぶてしい態度で決闘を持ち掛けてきたかと思えば、今のような低姿勢。

本当によく判らないヤツね。

 

「いいじゃねぇの?逆に言えば、納得できるだけの理由があるなら多少の協力はしてくれんだろ」

 

「なに?なにかあったの?」

 

アルトと変態は顔を見合わせたあと、互いに肩を竦めた。

 

死銃(デス・ガン)……聞いたことあるだろ?」

 

死銃(デス・ガン)

確か、撃たれたプレイヤーはリアルでも死ぬとか。

 

「その様子だと知ってるみたいだな。俺たちはとある人間に頼まれて死銃(デス・ガン)の調査をしてんだ。本当にここ(ゲームの中)から人間を殺せるのか、否かをな」

 

でもあれは都市伝説で、本当に人を殺すことなんて……!

 

「信じられねぇって顔だな」

 

「でも本当なんだ。ゼクシードと薄塩たらこのプレイヤーはここ(GGO)で奴に撃たれてリアルでも死んでるのが見つかってる」

 

嘘……。

 

「その死銃って名乗ってるプレイヤーと俺たちは接触してる。あとはここでのアバター名が分かれば、調査を依頼した人間に報告して拘束もしくは逮捕できるって訳だ。到底信じられねぇだろうけどな」

 

変態はともかくアルトがそんなことをしてるなんて信じられなかった。

 

「だけど俺は、被害者を出したくない。奴に撃たれて死んでしまうなら、逆に言えば奴に撃たせなければいい。だから死銃をここで倒す」

 

「それに個人的にも奴を止めなきゃならねぇ」

 

個人的にも?

死銃とここ以外のどこかで会ったことがあるの?

 

「奴の手口は分かっちゃいるが危険がないわけじゃねぇ。出来ることならシノンには棄権してもらいたかったがーー」

 

「冗談じゃないわ」

 

自分でも驚くほど低い声が出た。

命の危険がある?

だからなに?私は強くなるためにGGOに潜ってる。強くなるための対価が私の命なら喜んで差し出そう。

 

「分かった」

 

「アルト!?」

 

「しょうがねぇだろ。こうなっちまえば梃子でも動かねぇ。但し、奴を見かけても一人で挑むな。俺たちじゃねぇと他のプレイヤーじゃ戦う以前の問題だ」

 

彼らの言葉が真実であるという事が、何を意味するのか……その恐ろしさから目を背けながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……来たっ!」

 

キリトの声が耳に届くのと、双眼鏡によって拡大された視界にダインと思わしき森の方を警戒するアサルトライフルを構えたプレイヤーを捉えたのはほぼ同時だった。

それから遅れること十数秒、今度は青白い全身スーツに身を包んだプレイヤーが現れる。奴がペイルライダーだろう。

ペイルライダーはダインからの迎撃に対して、鉄橋のワイヤーを用いる曲芸染みたアクロバット機動を以て回避すると言う中々常人離れした方法で接近している。

 

「凄いなアレ」

 

「多分相当な《軽業》スキル持ちだろうな。普通じゃ無理だ」

 

「それにSTR型に加えて装備重量を最大限削って三次元機動にブーストかけてるわね。まぁ、真っ正面から銃弾を避けたり斬り落として接敵してくるような奴には言われたくないだろうけど」

 

ははっ、耳が痛ぇな。

 

口々に感想を言っている間にも、ペイルライダーはダインを翻弄し続ける。

そうしている内に碌な抵抗も出来ないまま懐に入り込まれたダインは、ペイルライダーのショットガンから吐き出される散弾を数回喰らい、HPバーを消滅させた。

 

ペイルライダーはザザじゃねぇ。

【ラフコフ】の連中は言っちまえば、対人特化のプレイヤー集団。あんな三次元機動も出来るヤツはいるだろうが、死銃の動画を見る限り、止めはハンドガンで決めていた。

 

意識をペイルライダーの方に戻せば、弾かれた様に崩れ落ちるペイルライダーの姿が目に映った。倒れ方から見るに森の方から狙撃されたんだろう。

 

「今、銃声聞こえたか?」

 

「いや、だが狙撃音をこの距離で聞き逃すってのは考え辛ぇ」

 

「小型のレーザーライフルかサプレッサーでも使ったんでしょうね」

 

「……サプレッサー?」

 

何のことか判らなかったのか、一人疑問符を浮かべるキリト。まぁ、FPSやらサバゲーでもやってない限り聞き慣れない単語だろうが。

 

「消音器とか減音器とかって装置を銃口に付けたり、中には銃身自体に内蔵してるヤツもある。一般的にはサイレンサーって言った方が判りやすいか?」

 

「まぁ、消耗品の癖に割高だし、性能に掛かるマイナス補正も結構大きいけどね。減音率は確かに高いけど銃によってまちまちで完全に音を消せるわけじゃないし」

 

「なるほど……シノンは使わないの?」

 

「趣味じゃない」

 

キリトの意見を一言でバッサリ切り捨てるシノン。

そもそも闘い方なんて人それぞれだから、他人にとやかく言われたくないってのもあるんだろう。

 

「まぁ、シノンが使ってる《へカート》は対物ライフルだから、サプレッサーをつけるようなもんじゃねぇし」

 

勿論GGOの仕様として付けられるし、リアルでもあるっちゃあるがーー

 

「そ、そっか。そんなことより、ペイルライダーにチラついてるエフェクトはなんだ?」

 

「「――っ!」」

 

いつまでも立ち上がらないのを不審に思って気付いたそれ。

多分何かしらの状態異常表示なんだろうその状態にを見て、シノンと俺は揃って驚きを顔に浮かべた。

 

「まさか……電磁スタン弾!?」

 

「何だよそれ?」

 

「命中した対象を一定時間スタンさせるシロモンだが、PvPに使うようなもんじゃねぇ」

 

「ええ。効果自体はアルトが言った通り。けど、口径固定の特殊弾頭で、大口径ライフルでしか使用不可能な上にサプレッサー以上にコスパが悪い。だから、相対的に無駄弾が多くなる対人戦じゃなくて、パーティーで大型mobを狩るときに使うのが一般的、しかもスタン効果の代わりにダメージは殆どない。時間的にそろそろスタンも解けるはず……アレっきり追撃もしないなんて何の意味が――っ!」

 

不意にシノンの声が止まる。

いや、俺たち全員の息が一瞬止まった。

倒れているペイルライダーの直ぐ近くから、小汚い外套を纏ったプレイヤーが急に現れたからだ。その肩には、シノンの持つ《へカート》と同等の大型ライフルが掛けられている。

 

まさか! 誰も気付かなかったってのか!?

 

3人もの人間が見ている中、誰にも気取られることなく忽然と現れたという信じがたい事実に思考が止まったのも束の間、声を上げる。

 

「アイツだ、間違いない!!アイツが死銃だっ!」

 

「シノン、奴を撃て!」

 

「は? えっ!?」

 

キリトが声を発した瞬間、俺はシノンにそう言って飛び出した。返ってきたのは困惑の声だけだったが、説明してる時間はない。

 

藪から飛び出し駆け寄る間にもは、死銃は動きを止めずにハンドガンを取り出してペイルライダーに向けた。そのまま空いた左手で十字を切る。まるで、神に祈りを捧げる信徒のように。

 

ほぼ無傷のペイルライダーを斃すには、マグナムでも何でもないハンドガンじゃ無理。それは判っていたが、理性とは別のナニカが撃たせるなと警告を発していた。

 

だが、どれだけ急いでも走る速さには限界がある。位置が位置だったせいで、回り込むようにしか橋へ向かえないことに歯噛みしながら山道を駆ける。

 

聞き慣れた銃声と共に死銃は急に上体を反らした。

 

シノンの狙撃を避けやがった!?

 

ありえねぇ、そう叫びそうになるのを飲み込んでただ走る。

先の一射で当てるのは不可能だと判断したのか、シノンからの援護は無い。

 

間に合え!

 

だが、そんな俺の心の声が届くことも無く、奴の握るハンドガンから一発の銃声が響いた。




ご意見ご感想募集中です!

予定よりもGGO編が長くなってる……
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