今話はなかなか筆の乗りが悪かったです。
銃の世界に剣士がぶつかり合う。
一般プレイヤーからすれば余所でやれって言うのが本音ではないでしょうか?
「本当に
「当たり前だろ。アルトとは勝率五分五分なんだ。ここで勝ち逃げさせてもらう」
「言ってろ。
キリトとの距離を離さず、シノンから離れる。
「「シノン、合図を頼む」」
「はぁ……分かったわよ。それじゃ《ヘカート》を撃つからそれが合図よ」
互いの視線は互いを離さない。
西部劇のガンマンの様に、眼前の相手に己の全てを注ぐ。
ーーそして、空気を震わせる《ヘカート》の銃声と共に動き出し、互いの得物をぶつけ合わせた。
「アルトォォォ!」
「ハハハハッ!」
本当に愉しそうだなこの戦闘狂。
光剣の一撃を体を後ろに倒して避けたが前髪を数本掠め、焼き切れたそれが舞う。
左のハイキックに光剣を握った右手首が捉えられ、手から零れた光剣が宙を舞い地面を転がって行く。
取りに行く暇はない。
何より目の前のコイツがそれを許さない。
左手の高周波ブレードを右手に持ち直し、アルトと剣を交える。
袈裟斬り、斬り上げ、刀を鞘に納めつつ身を捻って、鞘の引き金を引いて逆袈裟斬りからの斬り上げ。
怒濤の四連撃。最後の斬り上げを防ぎ切れず、砂の上を転がってしまう。
体勢を立て直せばアルトは既に刀を振り上げ飛び掛かっているところだった。
降り下ろされた一撃を体を捻って避け、ブレードを横凪ぎに振るえば背中に背負うように構えられた刀に阻まれ、互いに切り払いながら距離をとる。
戦闘スタイルがALOと真逆なのに、まるでSAOからこの戦い方だったのかと思わせるほど体に馴染んでる。
そして示し会わせたみたいに、全く同時に走り出し鍔競り合う。
「この程度が限界じゃないだろ!?その先を俺に見せてくれ!」
「うるさい!この戦闘狂!!」
ブレードを跳ね上げれ、柄頭のスパイクでこめかみを突かれ、体を一回転させ勢いを乗せた横凪ぎで構え直したブレードを左に弾かれ、咄嗟に後ろに飛び退いたけど下からの斬り上げで左目を切り裂かれ、視界の半分が黒く塗り潰された。
アルトが距離を詰め、左下からの斬り上げをバックステップで避け、振り上げながら右手が逆手に変わる。降り下ろしながら左手を離し、刀身が半円を描き手首を返した左手に持ち変え手首のスナップで一閃。
降り終えた刀を右手に持ち直し、振り上げながら両手で構え一閃。
隙生じぬ三連撃。
二撃目を敢えて受け、三撃目をありったけの力で弾き返し、アルトの手から弾き飛ばされた刀が5メートル離れた砂上に突き刺さる。
「もっと愉しませてくれ、キリト!」
槍の様に繰り出された蹴りが俺の腹部に突き刺さり、追撃をかけようとした俺を容易く弾き返した。
「武器を無くしただけじゃ、そう簡単にはいかないか」
「体こそ武器。得物が無くなったから戦えません、なんざ三流以下の素人だ」
相変わらず辛辣だよな。
けど俺も同感だ。俺も左目が見えないけどだから戦えません、なんて言うつもりはない。
何よりアルトと戦ってるんだ。その程度の理由で敗けを認めるなんて有り得ない。
投げ飛ばされ、地面に叩き付けられ、殴られ蹴り飛ばされる。
かと言ってやられっ放しじゃない。
アルトもダメージエフェクトが目立つようになってきた。
降り下ろしたブレードをアルトは信じられないことに、白羽取りで受け止めやがった。
「アルトォォォ!」
「キリトォォォ!」
けどSTRはこっちにコンバートしてきた俺の方が上だ。
力尽くで振り抜いたけど浅い!切っ先がアルトを掠めただけ。削り切るにはまだ足りない!
「ハハハハッ!いいぞ!」
突き刺さった刀を引き抜き、構え直しながらアルトは声高らかに笑う。
データの中だけどアルトが纏う雰囲気を肌で感じる。
まだ上がある。まだ上がる。
コイツは戦う度に剣を交える度に強くなる。
もっと速く、もっと高く、もっと先へ。
お前となら限界の向こう、いや極限のさらに先に行けるかもな。
「ほんと、男って単純ね」
言葉は軽いけど目の前の戦いは、これまでのGGOのセオリーをぶち壊すほど衝撃的だった。
アルトと変態の武器は超至近距離でこそ、その真価を発揮する刀剣だ。
別にGGOじゃなくてもいいんじゃないか、と言うのが率直な感想ではあるけれど、二人の戦いはそんな感想を吹き飛ばすに足るものだ。
斬り結び、弾き、払い、叩き落とす。
まだ3分も経っていないのに、既に20回以上剣を交えてる。
アクロバティックな変態の動きに対して堅実にそして確実に切り返すアルト。
死銃と戦っているときとは違う。
初めて出会ってから、背中を追い掛けるようになり、その背中を預けられるようになっても今のような顔を見せたことはなかった。
心の底から楽しんでる。剣を交えるだけでお互いの思いが通じ合ってる。
……男の子ってズルいなぁ。
ハッキリ言えば嫉妬してる。
私の知らないアルトをあの変態は知ってる。
…………それがどうしても気に入らない。
私の罪と向き合おうとすれば体が竦みそうになる。
でも彼の言葉が私の背中を支えてくれる。
今はそれでいい。いつか私自身の足で歩き出せるようになったとき、彼の背中を押して上げるんだ。
やっぱ、強ぇなキリトは。
苛烈に攻め立ててるっつーのにまともな致命打が未だに入らない。
攻め切れねぇし、防ぎ切れねぇ。
このままじゃお互い、集中力が切れて山も谷もなくグダグダになって終わる。
戦意は際限なく高まってるってのに、そんな終わりだけはゴメンだ。
視線がぶつかり、剣が交わり、火花が散る。
たかがゲーム?所詮遊び?
だからなんだ!
己の命、意思、
培ったもの、譲れないもんを剣に乗せ、自らの意思を押し通す為に剣を振るった。
俺はあの日間違えた。
互いに譲れないもんがあるなら、例え命が懸かってなくても今のように全てを置き去りにして戦える!
キリトの切っ先が俺の眼前を掠め、こちらの切っ先がキリトの首元を掠める。
《ムラサマ》を鞘に納め、右腕を垂らしの力を完全に抜く。キリトは一足飛びでこちらの間合いに入った。
勝負は一瞬。
キリトが高周波ブレードを振るうために力を込めた瞬間、俺も鞘の引き金を引き打ち出された《ムラサマ》を空中で掴み、キリトの左腕を斬り飛ばした。
キリトの顔は驚愕の色に染まり、斬られた反動で体勢が完全に崩れている。《ムラサマ》の刃を返し左肩から袈裟斬りで真っ二つに切り裂く。
「143戦72勝だ」
聞こえたかどうかは分からねぇがポリゴンとなって散ったキリトは祭りが終わった子供みてぇな顔をしてた。
……そうだな。同じ気持ちだよ。
《ムラサマ》を打ち出す時はいつも柄に手を掛けてたが、さっきみてぇな空中でキャッチしてそのまま振り抜くってのは初めてだったが上手くいったな。
あんまり意味はねぇんだけど。
「……凄いわね。あなたとあの変態」
「そうか?」
「そうよ」
あんまり自覚ねぇんだけどな。
俺たちは他のプレイヤーと比べて二年間丸々VR世界にダイブしてたから、こっちでの体の動かし方を熟知してるってだけ。条件が同じならここまでは出来ねぇよ。
「一応チェーンロックのトラップはあるが、ログアウトしてもいきなり動くなよ?薄目で目の前に誰もいないことを確認してから体を起こせ。それから各部屋の確認をーー」
「分かってるわ。過保護過ぎよアルト」
「そうか?だが、【ラフコフ】ってのは人殺しの集団だ。警戒して然るべき相手。やり過ぎても足りねぇくらいだ。俺はアパートじゃなくて、別の場所からGGOにダイブしてるが俺が行くまで誰も部屋に上げるな。誰が協力者か分かったもんじゃねぇからな」
シノン──朝田は間違いなく奴らのターゲットになってる。だがザザからの合図がなければ、危害を加えることも出来ねぇはずだ。
俺が行くまでの時間稼ぎもあるから間に合うだろ。
「さて約束通り、
「……女の子相手に“やる”とか言わない方がいいわよ。セクハラで訴えられたくなかったらね」
冤罪だ。濡れ衣だ。
男はいつでも女の嘘で泣かされるもんなのかね。
世知辛い世の中だ。
「どちらにせよ万全じゃない貴方と戦っても意味無いから、そろそろ終わらせよっか」
「戦うんじゃねぇならどうやって」
「ちょっと目線、合わせてくれる?……うんそのぐらい。第一回BoBは二人同時優勝だったの。どうしてか分かる?」
1人にならねぇと終わらねぇのに同時優勝?
考えられるとすれば共倒れーー
「これ持って」
「おう」
なんか手渡された物体、ごく最近見たような。しかもそれで死にかけたような。しかもこれ起動してねぇか?
「答えは優勝するはずだった人がお土産グレネードに引っ掛かったから」
「お土産グレネードって、ッ!!!」
何がどうなったかと言うと、シノンが言ったことを理解して手渡されたグレネードを投げ捨てようとした瞬間、抱き付かれた。グレネードを持った右手ごと。しかもキスのおまけ付き。
やっちゃった…………。
引いてないかな?大丈夫だよね?
一通り部屋の安全を確認できたあと私は一人ベッドの上で悶えていた。
確かに似てるとは思ったけど、本当にその人だなんて思うわけないじゃない。
安全を確認するために三神さんが来てくれるって言ってたけど、どんな顔で会えばいいんだろう?
笑顔……はおかしいわね。
鏡の前で一人百面相をしていてふと唇に触れる。
まだ感触が残ってる。
瞬間私の顔はトマトのように真っ赤に染まった。
~~ッ!バカァ!思い出しちゃダメ!
ドアのノック音に茹で上がった頭が一気に冷めた。
どっち?死銃の協力者?それともーー
「朝田さん!僕だよ!BoBの優勝を祝おうと思って居ても立ってもいられなくてさ」
新川くん!よかった……。
「ちょっと待って、今ーー」
『誰が協力者か分かったもんじゃねぇからな』
ドアノブに伸ばした手が止まる。
……大丈夫。新川くんなら信用できる。
チェーンロックに仕掛けた簡易スタンガンのスイッチを切り、新川くんを招き入れる。
その時、私は見逃していた。
三神さんが玄関に備え付けてくれた簡易スタンガン。それのランプが消えてることに。
ランプが消えてるということは既にスタンガンが起動して電池がなくなっているということ。
つまり部屋に誰かが入ろうとしたということ。
買ってきてくれたケーキをテーブルに置き、それぞれ腰を落ち着けた。
「左手どうしたの?なにか庇ってるみたいだけど?」
「あ……こ、ここに来る途中でどこかにぶつけちゃったみたいでね。朝田さんが優勝して僕も舞い上がってたみたい。改めて優勝おめでとう、朝田さん」
「そんなことない。イレギュラーが重なってくれたお陰よ。私だけなら上位に食い込めるかも怪しいわ」
私が求めた力は死銃によって打ち砕かれ、過去の罪は乗り越えることはできなくて、あの二人に助けられた。
罪は乗り越えるのではなく向き合い、受け止めること。あの二人に説かれてなければ、どうなっていたんだろう?
きっと立ち直れないほどに打ちのめされ、あのまま死銃に撃たれ死んでいたかもしれない。
「そんなことはないよ。朝田さんは本当の力を持ってる。死銃なんか目じゃない」
「新、川くん……?」
……どうして新川くんが死銃のことを知ってるの?
「
実の兄?ザザの正体は新川くんのお兄さん?ということは新川くんが死銃の協力者である可能性もーー
そう思い至った瞬間、私は新川くんに押し倒された。
左脇腹にナニか冷たくて固いものがーー
「死銃がなんで黒星を使ってるか分かる?あれはね僕が君のことを知ったときにあの銃にしようって決めたんだ。朝田さんがあの銀行強盗を射殺した銃だよ。日本中探しても朝田さんだけだよ、人を殺したことのある女の子は」
新川くんが何を言っているのか分からない。分かりたくない!
「やめてよ新川くん……」
「だから朝田さんにGGOを薦めて朝田さんと一緒にいられる時間を作ろうとしたんだ。それにゼクシードのやつ!AGI万能論なんて大嘘つきやがって!いいザマだ!殺されて当然だ!僕の世界は
……もう何も見たくない。何も聞きたくない。
『それでいいの?』
仕方ないよ。強くなろうとしてもなれなくて、追い掛けたものも幻想で。信用してた新川くんに裏切られた。
人殺しの私に味方はいない。
『アルトの──三神さんの言葉、忘れたの?』
三神さんの言葉……?
『
そうだ。どれだけ時間が掛かってもあの人を支えられるようになるんだ!諦めない!諦めたくない!!
『今まで
「……ああぁぁぁ!!」
右肘を新川くんの顎目掛け振るい、左手で左脇腹に押し当てられた注射器を払い落とす。
振るった右肘を鳩尾に当て、左の掌底を喉仏に叩き込んで体の上から落とす。
三神さんに教わった護身術。人間の急所を狙う技しか教えてもらってないけど。
今の内に外に!外に出れば三神さんも間に合うはず!
体のバランスを崩しながら何とか玄関に走り、ドアの鍵を開けようとして、新川くんに足を引っ張られてまた組み敷かれた。
「駄目だよ、シノンは僕を裏切っちゃダメなんだ!」
「いい加減にしてよ!アンタの妄想を私に押し付けないで!!」
「……おい」
頭上から掛けられた声と共に新川くんの胸倉が掴まれ顔に拳が突き刺さった。
仰向けの私を跨ぎ派手に吹き飛んだ新川くんの右腕を掴むとうつ伏せに組み敷き捻りあげた右腕を右膝で押さえた。
「三神さん?」
「おう。なんとか間に合ったな、ナイスガッツだ」
最初のプロットでは特撮よろしくフィールドを駆け巡って破壊の限りを尽くして元の場所に戻る形だったのですが、作者の技量不足で結局この形に落ち着きました。
正月は本当に忙しい。
作者
「おはようございます」
上司
「作者くん、夜勤で夜から出てきてもらって悪いんだけどAさんが風邪引いちゃって昼まで勤務入れる?」
作者
「はい大丈夫ですよ」
昼から勤務に入る年上の後輩
「今日休むから夜11時までお願い」
作者
「おい待てコラ(゚Д゚#)」
……正月関係ないですね。