sword art onlineー黒と灰ー   作:戒斗

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GGOファントムバレット編完結でございます。
SAOインテグラルファクター始めました。
早く5層以降のストーリー追加されませんかね。

ちなみにこの話はYUIのagainを聞きながら書きました。


第最終弾:Debriefing(帰還報告)

事の顛末を語ろうと思う。

 

ザザこと新川昌一の弟、新川恭二は朝田の殺人未遂及び他二件の殺人に関与した疑いで逮捕。もちろん新川昌一も逮捕された。

 

使用された薬物は筋弛緩剤《サクシニルコリン》。塩化スキサメトニウムの名前で医療に使われるものだった。

同時にそれを注射するための注射器も痕跡をなるべく隠蔽するために無針注射器を使用してたことで、計画犯罪であることが証明され、二件の殺人に一件の殺人未遂により十何年、或いは何十年とムショのなかで暮らすことになるだろう。

罪の代償は己の人生で払うことになった訳だ。

 

新川弟をサツに引き渡したあと取り調べを受けた。

余談だがドラマとかであるようなカツ丼とかの差し入れない。賄賂だとかになるらしく規則で禁止されてるんだと。食いたかったな~。

ついでに朝田の玄関に仕掛けたスタンガンについても取り調べを受けた。ただの護身用にしては威力がありすぎるとの事。

まぁ1回で電池が空になるからな。相当な威力だろう。

 

朝田に関してもあんなことのあった部屋で寝させる忍びねぇから俺と和人がGGOにダイブしてた病院の一室に放り込んだ。

 

サツの警護もあるから俺も帰ろうとしたんだが、あの洞窟以上に引っ付いてくる朝田を引き剥がせず、結局俺も同じ病室で一夜を明かした。

(やま)しいことは一切してねぇし何も無かった。

朝田が俺に好意を抱いてんのは分かってるが、年下相手に本気になれねぇよ。年齢的にな。

せめて成人するまで、ってなに言ってんだ俺。

 

……5年前の東北で起きた強盗事件、か。

 

 

 

 

 

 

 

……まだふらつくわね。

遠藤さんたちに呼び出され、私を脅す為にお兄さんから借りてきたというM1911を奪い『私は平気』だというアピールをして、その場を切り抜けたはいいけどトラウマをそう簡単に払拭できるはずもなく、人目のない校舎裏で発作を抑え込んだ。

小さいけれど確かな一歩。

 

あの日、三神さんは一晩ずっと私の手を握ってくれていた。私が眠りについて目が覚めるまで、だ。

皮が固くなってゴツゴツとした大きくて熱いくらいに暖かい手。

 

今日はこのあと三神さんとの待ち合わせがあるんだから、これ以上の心配はかけたくない。

そう言えば、待ち合わせはしてたけど何処に向かえばいいんだろ?場所を聞かなかった私も悪いけど、言わなかったあの人も悪いと思う。

 

「朝田さん!校門にいる男の人!知り合い!?」

 

え?

さして仲も良くない女生徒の声にまさかと思う。

いくらなんでも学校まで迎えに来るはずがないし、そこまであの人が非常識だとは思えない。

 

そんな私の思いとは裏腹に校門の前にはサイドカー付きのハーレーが停まっていて、それに腰掛けるように三神さんが立っていた。

 

「三神さん!?」

 

「お、悪いな朝田。待ち合わせ場所言うの忘れてたから迎えに来たぞ」

 

いやそう言うことじゃなくて、こんなところにいたら嫌でも目立つし、変な噂が流れちゃうじゃないですか!

 

文句を言う前にヘルメットを投げ渡され、サイドカーに乗るように促される。

 

 

 

連れてこられたのは銀座の喫茶店。

結構な値が張りそうな調度品で揃えられた店内に萎縮しながら、三神さんの後をついていく。案内された席に座っている先客に三神さんは手を上げながら声をかけた。

 

「よう和人。菊岡はまだ来てないのか?」

 

「ああ……後ろにいるのは?」

 

「こいつは桐ヶ谷和人でキリトだ。で和人、こっちはーー」

 

「朝田詩乃。シノンよ変態」

 

「変態はもうやめてください」

 

止めるわけないじゃない。人の下着姿を見といて、そう簡単に許されると思わないで。

 

「それで三神さんーー」

 

「敬語はやめろ颯真でいい。アルト()シノン(お前)にそんな他人行儀は必要ねぇだろ」

 

「そ、颯真……ここで何をするの?」

 

「朝田にも関係あることだ。死銃絡みでな」

 

私は名字呼びなんだ……。

 

「やあ、待たせちゃったかな?」

 

(おせ)ぇぞ。人呼んどいて待たせんな」

 

どうしたんだろう?眼鏡をかけたスーツ姿の男性が現れてから二人とも棘のある雰囲気に変わってる。

 

「そう言わないで欲しい。取り調べの調書を整理してたんだ」

 

「そうかい。それで今回もアンタの奢りってことでいいんだよな?」

 

「そう言いながら結構高いの頼んでたよな」

 

いつの間に……。

エスプレッソを口に運ぶ様子はかなり様になっていて、すごく大人っぽい。

彼の一挙手一投足に注目してる私がいる。彼に飼われてるペットになった気分。……断じてそんな趣味は持ち合わせてないから。絶対に。

 

「ザザこと新川昌一とその弟の恭二は全面的に罪を認めてる。すべての始まりは、前BoB優勝者ゼクシードのAGI万能論によって恭二くんが大きく弱体化してしまい、GGOの接続料も払えなくなってしまったことだね。両親はダイブ型VRに否定的で恭二くんは黙ってGGOに潜っていたようだ」

 

ゼクシードによるAGI万能論。

情報戦略でゼクシードにとって有利になるように多くのプレイヤーたちを誘導した。称賛されることではないけれど、自分のプレイスタイルをそう簡単に変えてしまった方も悪いと思う。

 

新川くんはお兄さんに相談し、今回の殺人計画を画策したのだと言う。

お兄さんはSAOで殺人ギルド【笑う棺桶(ラフィン・コフィン)】に所属していた。その事を話し、新川くんの目には英雄か何かに見えていたのだと言う。

 

「くだらねぇ。人を殺せるのが本当の力?笑わせんな。覚悟も信念もねぇ奴がテメェ(自分)の快楽のために殺してただけだろうが」

 

「そうだ。罪を背負うことも罰を受けることもしないで自分の欲求に従っていただけだ。それは強さなんて言わない」

 

「それでリアルでの実行犯は二人。恭二くんとジョニー・ブラックこと金本敦。金本敦は自宅に突入したときにはもぬけの殻。無針注射器とサクシニルコリンを所持したまま逃亡中だ。近い内に逮捕されるだろう。GGOでmeth(メス)と名乗ったクラディール、本名倉本孝之(くらもとたかゆき)は自宅で自殺しているのが見つかった。サクシニルコリンを自ら注射してね」

 

無針注射器とサクシニルコリン。この二つは新川兄弟の両親が病院を経営していて、そこから盗んだらしい。電子錠を解錠できた理由も救急隊員が緊急時に使用するマスターキーだった。

 

住所は光学迷彩を手に入れた昌一が、BoBの景品にモデルガンを選んだプレイヤーが総督府で住所を入力するのを盗み見して得ていた。

 

颯真曰く、『SAO時代からあった抜け穴だ。確かに真っ正面からなら認識阻害されるが鏡に写ったりすんのはその対象外だった』らしい。

望遠鏡とかで見ていたのかもしれない。

 

犠牲者を出したものの、この件は一応の決着がついた。そう菊岡さんは語った。

 

「新川昌一からの伝言だ。『まだ終わらない。終わらせない。あの人が必ずお前たちを殺す。It's show time』以上だ」

 

「ふん。誰かに共感すんのは悪いとは言わねぇが、そいつをアテにしてる時点でお前の負けだ。そう奴に伝えとけ」

 

「誰が来ようと俺たちは負けない。お前たちがどんな卑劣な手を使っても必ず勝つ。そう付け足してくれ」

 

凄いなぁ。SAOで何度も生死を共にして、何度もぶつかり合って繋がった絆は世界が敵になろうと二人で立ち向かうかもしれない。そう感じさせるほどにその繋がりは強固で揺るぎないものだ。

 

 

「了解した。……今回の会計も僕が持とう」

 

カード使えたかなぁ?なんて呟きながら菊岡さんは席を立った。

……さすがに頼みすぎたかな?

 

「朝田、このあとも予定は空いてるか?」

 

「はい……ええ、大丈夫」

 

「それじゃあ俺は先に向かってるよ」

 

「朝田は朝田で頼んだもん食っちまえ」

 

……はい。

 

 

御徒町の一角にあるDICEY CAFE(ダイシーカフェ)の前にバイクを駐車して颯真は躊躇わずに中に入っていった。

……closeって書いてあったけど大丈夫なのかな?

 

「もう!遅い颯真!アップルパイ二切れも食べちゃったじゃない!」

 

「知るか。自制できねぇお前が(わり)ぃだろうが」

 

親しそうな女性の声に言い返す颯真。

 

……ふーん。

まぁ別に?颯真が誰と親しかろうと私には関係ないけど。

 

「朝田、早く入ってこい」

 

促され中に入ってみれば私と同年代であろう少女が二人。このお店の人かな?カウンターに立っている男性。颯真は変態と窓際の席で楽しそうに談笑してる。

 

「貴女がシノンさん?」

 

「え?ええ、朝田詩乃よ」

 

「私は結城明日奈」

 

「私は篠崎里香。よろしくね」

 

「俺はこの店の店主、アンドリュー・ギルバート・ミルズだ。今じゃすっかり溜まり場になってるが昼は喫茶店、夜はバーになってる」

 

よろしく、と答え三人と握手を交わした。

颯真の仲間、なのかな?海外の人とも仲が良いなんてすごいグローバルというか。

 

「颯真、来たみたいだ」

 

「ん?だな。俺が出るからそのまま待ってろ」

 

誰が来たんだろう?

外に出た颯真に続いてお店の中に入ってーーうそ……

 

「朝田は憶えてる、のか?5年前の強盗事件でお前が守った郵便局の女性(ひと)だ」

 

颯真の声も頭に入ってこない。

憶えてる。忘れるわけがない。あの日のことは今でも夢に見るんだから。

 

「詩乃さん……で合ってるかしら?」

 

「え?あ、はい」

 

「遅くなってしまってごめんなさい。どうしてもお礼を言いたかったのだけど、私妊娠していてあの日のあと病院にいたの」

 

「5年前の強盗事件で、当時そこで働いてた人間を探すのは苦労したぞ。事情を話して遙々(はるばる)来てもらったって訳だ」

 

「しのおねえちゃん?」

 

左手を包む暖かさに視線を下げれば、小さな女の子が私を見上げていた。

 

「はいこれ」

 

手渡されたのは画用紙に描かれた家族の絵。

『しのおねえちゃんありがとう』

 

「おかあさんをまもってくれて、ありがとう」

 

「うぅぅぁぁああ……」

 

目が熱い。込み上げてくるのを我慢できない。

視界が滲み、口からは声にならない感情が漏れる。

 

血で汚れた私の手を握ってくれる人がいる。

暖かい。心だけじゃない。この世界はこんなにも明るくてこんなにも暖かい。

 

「しのおねえちゃん?どこかいたいの?」

 

「大丈夫、大丈夫だから……」

 

「胸を張れ。犯した罪はなくならねぇが、誰かを守った事実もずっと残る。お前は奪っただけじゃねぇ、産まれてくる命も守ったんだ」




次話は回想編になります。

時間が掛かるかもしれませんが、気長にお待ち頂ければ




もう一人のヒロインも登場予定です(ボソッ
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