sword art onlineー黒と灰ー   作:戒斗

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前話と同時進行で書いていたものです。


幕間
弾丸よりなお速く


……アイツ、今日は用事があるとか言ってたわね。

 

アルトの協力のあって《ヘカート》を手に入れてから暫く経ったある日。私はダイン率いるスコードロンに参加することになった。

参加すると言っても今回限りの契約だ。私は私一人の力で強くならなくちゃならない。ソレはソレとしてコンビを組んでいる彼の強さも知り、その上で彼に勝つことができれば私はーー

 

……集中しなきゃ。私は氷、冷たい氷でできた機械。

 

 

 

 

 

 

 

『シノン、目標は見えたか?』

 

「ええ、情報よりも2人多い」

 

マントを着たプレイヤーが2人。

武器も持たないで最後列を歩き、前を行くプレイヤーも後ろを気にしていない。

 

『マントを着た大男ともう1人か、武装らしい武装は見えない。恐らくSTR極振りの運び屋(キャリアー)だな。メンバーの弾薬とかドロップアイテムを運んでるんだろう。軽機関銃(ミニミ)を持ってる奴が1人いる。そいつを狙ってくれ』

 

それでも不確定要素が多すぎる。

運び屋(キャリアー)だとしても武装もさせずに最後列を歩かせてる。敵は前から来るとは限らないのに。

 

「……了解」

 

距離は1キロは優に越えてる。

でも私と《この子(ヘカート)》なら問題ない。

 

軽機関(ミニミ)を装備したプレイヤーに照準を定め引き金に指を掛ければ、着弾予測円(バレットサークル)が心臓の鼓動に合わせて拡大と収縮を繰り返す。

そして引き金を引き切った瞬間ーー

 

ッ!気付かれーー

 

銃口から放たれた対物弾は狙い通りにミニミを装備したプレイヤーを撃ち抜いた。仲間が消え、一時的な恐慌状態に陥った敵スコードロンをスコープに捉え続ける。

マントを着た大男じゃない方。フードで顔までは見えないけど引き金を引き切った瞬間、確かにこちらを見ていた。

 

この感じ何処かでーー

 

その時、大男が動いた。

マントを投げ捨て背負った鉄塊を腰だめに構える。

 

GE M134ミニガンーーっ!

 

『アイツはベヒモスだ!』

 

『北部大陸を根城にしてる奴が何でここにいるんだよ!』

 

『知るか!護衛でも受けたんだろ!』

 

過重ペナルティを受け、移動スピードは非常に遅い。

が、それに余りあるだけの攻撃範囲と火力があり、味方はその攻撃範囲に敵を駆り立て、ベヒモスがそのミニガンで蜂の巣にする。

個人ではなく集団戦で真価を発揮するタイプね。

 

そしてもう1人。

スコードロン全員が戦闘中なのに動かない人物。

 

ジッとこちらを見ている。

『撃ってこい』

そう言われているようでその瞬間、私の中の何かが一気に吹き出した。

 

「舐めるな!」

 

フードから僅かに覗いた口元に笑みが浮かんでいるのを認めると同時に引き金を引いた。

 

放たれた銃弾はマントを掠めるだけに終わり、それを合図に動いた。

 

 

 

 

 

 

「ベヒモス」

 

声を掛けたが元から寡黙な男は返事をすることなく視線だけを俺に向けた。

 

「悪いがスナイパー(アイツ)は俺の獲物だ。そしてーー」

 

後ろ腰に移動させていた得物を左腰に移し、右手でそれを引き抜きつつベヒモス目掛け振り払った。

 

「お前たちもな」

 

両断されたベヒモスは消失し、突然の奇行に敵も味方も動きを止め俺を見ていた。

 

「【ミヌアーノ】!お前!裏切るのか!」

 

「裏切る?1度も仲間だとは言ってねぇぞ」

 

裏切りは仲間に対して使う言葉だ。

護衛で雇われただけであって仲間じゃねぇ。

 

てか【ミヌアーノ】とか、アンデス山脈に吹く冷たい南風が二つ名になってるのか小一時間、問い詰めたいところだ。

 

それにアイツとのタイマンはあの日以来だし、なし崩しに共闘になったしな、誰にも邪魔はさせねぇよ。

 

 

 

 

 

 

「あの太刀……」

 

血を吸ったように紅く、鍔元から切っ先に向かって稲妻が走るソレは、銃メインのGGOでメインウェポンとして使っている物好きは1人しかいない。

 

敵味方区別なく切り裂き、銃弾を避け、弾き、戦場を駆けていく。

 

ベヒモスが倒れ、敵の武装は光学銃のみ。

 

それだけならばハッキリ言ってしまえば楽だ。

けど相手側ーーいや、第三の単体勢力だけは常に注視しなきゃ駄目だ。アイツは銃を無効化し、あっという間に詰め寄られ斬り捨てられる。

 

狙撃は駄目。気付かれ弾道予測線(バレットライン)が出てる今なら尚更。

かと言って弾幕を張れる銃は持ち合わせてない。

 

廃ビルが視界に入り、頭の中でピースが浮かび上がった。

 

「ダメだ!勝てるわけがない!」

 

ダインの悲痛な叫びが響く。

こっちのスコードロンは完全に戦意を喪失している。

 

気持ちは分かる。こっちの攻撃は無効化され、一刀の元に斬り伏せられる。

理不尽に心が折れるのは仕方がないと言える。でも戦いもせず敗北を認めるのは納得できるかと問われれば、答えはNOだ。

 

「男ならゲームの中でくらい、戦って死ね!」

 

 

 

 

 

 

「へぇ……」

 

戦意喪失で物陰に隠れたかと思えば、打って変わって別人のように果敢に撃ってくる。

何があったのか、何がアイツらを突き動かしたのかは知らねぇし興味もねぇけど、歯応えがねぇよりはマシだ。

 

四方からの銃撃を駆け回り、弾き、払い落としていく。

 

勿論、全ての銃弾に対応するのは無理だ。

だからこそ直撃コースの銃弾を認識し、選別し、必要最低限の防御のみで銃弾の雨を最短距離で突き進んでいく。

 

「くそったれぇ!」

 

テンガロンハットを被った男が物陰から飛び出し、その手に持ったグレネードが起動してることに気付く。

 

「相討ち覚悟の自爆か。感動的だな。だが無意味だ」

 

砂の上を滑るように進みつつ身を屈め、両足を斬り飛ばし、その背中を蹴り飛ばし跳躍。数瞬おいて起爆したグレネードの爆風を背に受けながら、一気に距離を稼ぐ。

 

寄って斬り、逃げる相手にも容赦なく刃を振るう。

 

 

 

まぁこんなもんか。

 

目ぼしい敵は全て斬り捨て、戦意を喪失した奴は既に戦場から消え失せた。

 

さてお膳立てはしたぞ。どこから狙ってくる?

 

目を閉じ、全神経を研ぎ澄ましていく。

アイツなら同じ場所からの狙撃なんてするわけがない。

 

スナイパーライフルの特性上、正面切っての突撃は不得手。

身を隠し俺を狙える場所に移動しているはず。

 

砂の丘陵の影、廃ビル、岩影etc……

身を隠すには十分過ぎる。

 

視線を感じると言う言語化しにくい感覚を頼りに体の力を抜いていく。

と言うのも力が入っている状態より、脱力している状態からの方が体の反応が早いからだ。

 

チリチリと熱にも痛みにも似た感覚に上体を仰け反らせると同時に眼前を横切るように火線が通り過ぎた。

 

廃ビルか……撃ち下ろしには絶好のポジションだよな。

 

 

 

 

 

 

「……ったく、つくづく化け物じみた直感よね」

 

完全な視覚外からの狙撃を見もせず、自身の感覚を頼りに回避する。

流石に衝撃波(ソニックブーム)で体勢を崩しているけど、それ以上の成果はない。

 

コッキングして薬莢を弾き出し、次弾を装填し直した時にはもう動き始めてる。

 

室内戦を想定してクレイモアとかを持ってきていれば良かったとも思うけど、アイツがそんな簡単な手に引っ掛かるとも思えない。

 

それに閉鎖空間じゃ遮蔽物が多すぎるし、点の射撃じゃ回避されるか斬り落とされるのが目に見えてる。面で撃てるショットガンでもあれば話は別なんだろうけど……。

 

引き金に掛けた指に力を込めーーすぐに離す。

 

どうせ撃っても避けられるのは分かりきってる。

なら、少しでも勝機のある室内戦に持ち込んで意表を突くしかない。

そう思い《ヘカート》を背負って《グロック18C》を握る。

 

さっきまでの銃撃音が嘘のように静まり返り、耳が痛いほどの静寂の中、なるべく足音を殺して来た道を戻る。

もうアイツはこのビルの中に入ってきてるはず。

 

曲がり角では息を潜め、耳を澄まして異常がないのを確かめてから進む。

 

結局、スナイピングポイントから下の階へと降りるだけでも10分近く掛かってしまった。

 

右足に軽い手応えを感じ、慌てて視線を下げれば小石が音を立てて転がっていく。

しまった、と思った時にはもう遅い。自身の呼吸ですら耳障りなほど静まり返っている中、明らかに異質な音が響いていく。

 

急いでその場を去ろうとして突然床が抜けた。

違う。アイツが天井を斬ったんだ。

 

瓦礫と化した床と共に落ちながらそう確信する。

 

となると次の一手はーー

 

「ッ!」

 

「っぶねッ!」

 

地面に叩き付けられながら《グロック18C》をチラリと見えた人影に向け引き金を引き絞る。

 

同時に紅い軌跡が煌めき、私の手から《グロック18C》を弾き飛ばした。

立ち上がりながら《ヘカート》を喉元へ突き付けるのと切っ先が眼前に突き付けられるのは全くの同時だった。

 

「アンタの《ムラサマ》と私の《ヘカート》、どっちが上か確かめてみる?」

 

「馬鹿言え、この距離じゃどっちが上にせよ俺の方が速ぇ」

 

(シノン)の相棒たる憎たらしいアイツ(アルト)は皮肉げに笑みを溢すのだった。




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詳しくはそちらをご覧ください。
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