シノンじゃないよ
「やべぇ……着る服がねぇ……」
死銃事件が一段落し、ようやく一息をつけるかと思いきや新たな問題が発生した。
ファッションとかそんな興味もねぇから服はあまり買わねぇんだが、去年……まではSAOに居たから3年前になるのか、ソレまで着ていた冬服を整理していたら虫食いやサイズが合わねぇやらで、着れる物がなくなった。
本格的に冷えてくるまでは大丈夫だろ、などと考えてたんだが
買いに行かねぇといけねぇんだが、服選びのセンスはお世辞にも良いとは言えない。しかもダセェ服を着てれば和人たちに何を言われるか分かったもんじゃねぇ。
さて、どうしたもんかな。
「そこで私に白羽の矢が立ったのね」
「人聞きの悪いこと言うんじゃねぇ」
白羽の矢が立つというのは
つまり犠牲者として選ばれる、というわけだ。
「冗談よ。貴方にはお世話になってるし、日頃のお礼ってことでお付き合いさせてもらうわ」
「よろしく頼む」
学校帰りの朝田をバイクに乗せ都内の服屋へ。
「ブティックを服屋って呼ぶ時点で貴方が如何に興味がないが分かった気がするわ」
「さっさと選んでくれ」
「はいはい。颯真は身長が高めだから、よほど変な服じゃない限りは合いそうかな。なら無難にジーンズとロングTシャツ、アウターかジャケットを合わせれば……好みの色は?」
「派手な色は趣味じゃねぇ」
「寒色系か……すみませーん」
手慣れてんなぁ。流石、現役女子高生。
……ん?ちょっと待て、俺と朝田は他の奴らからどう見られてんだ?
制服姿の女子高生に服を選ばせてる成人男性。
事案だな。いや兄弟とか親戚で押し通せばーー
「お待たせ……どうしたの?変な顔して」
「なんでもない」
「?まぁいいわ。とりあえずこれ試着してみて、私は他の服を見てくるから」
「あいよ」
手渡された数着の衣服を手に試着室へ、そこで着替えてみたはいいがーー
「あいつ、なんで俺のサイズ知ってんの?」
好んで着る大きめのロンT、ジーンズのウェストサイズまで全てがピッタリ。逆に怖ぇんだけど。
「取り敢えず着てみたぞ」
「んー……やっぱり青は合わないわね。上下単色で揃えるのもNGだし……うん、新しいのを持ってくるから着替え直しておいて」
「おー」
紺のジーンズにカーキ色のショートブーツ、灰色のシャツに黒のダウンジャケット、他数点を購入した。
それで買い物の礼にファミレスで晩飯を奢ってるわけだがーー
「颯真は食べないの?」
「甘いのは苦手だ。見てるだけでも胸焼けしそうだ」
アルゴほどじゃねぇがテーブルに置かれた器の数に水を飲んで、甘くなった口の中を洗い流す。
デザートを食ってねぇから錯覚な訳なんだが、あの山のように積まれた器の数を思い出しただけでも本当に胸焼けしそうだ。
「……ねぇ、これってデートよね」
「ぶふっ」
水を吹き出すなんて愚行は起こさなかったが、気管に入った水を取り除くのに噎せてしまった。
いきなり何言い出すんだこいつは!
「貴方の服を買って、今こうして食事をしてる。立派なデートだと思うんだけど?」
「仮にそうだとしても口に出すんじゃねぇ」
「あ、もしかして援kーー」
「それ以上はいけない。つか女子がそんなこと言うんじゃねぇ」
本当に捕まる。
「大丈夫よ。制服なのはあなたも一緒だし、違う学校の生徒同士が逢い引きしてるぐらいにしかーー」
「結局はデートじゃねぇか」
「いいじゃない。私だって年頃の女の子なんだから、そういうことに興味はあるのよ」
「GGOで灰色の青春を送ってる奴が言う台詞じゃねぇな」
「あら?その片棒を担がせたのはどこの誰だったかしら?」
「少なくとも数ヶ月前からだな」
つか、先にプレイしてんのはお前だかんな。
「……ALO、だったかしら?楽しいの?」
「まぁな。馬鹿やれる仲間もいるしな」
「ダイシーカフェにいた人たち?」
「SAOからの腐れ縁だ」
颯真はなんでもなさそうに口にするけど、SAO事件は今でも大きな爪痕を残している。
もし、彼がSAOで亡くなっていたら私はどうなっていたんだろう。きっと今でも突けば崩れるような強さを求めてGGOに潜っていたかもしれない。もしかしたら死銃に撃たれて新川くんに殺されていたかもしれない。
人生何事にも意味がある。
きっと颯真とあのいけ好かない黒ずくめの女顔と出会えたのも何か意味があるのかもしれない。
命を救われ、強さの意味を糺された。
うん。十分に意味があった。
そして私は貴方に惹かれてる。
素っ気ないのに気が付けば側にいて、口が悪いのに行動は真逆。お人好しなのに指摘すれば否定する。
本当に面倒臭いにもほどがある。
だけど、そんな貴方だから私は惹かれた。
他でもない貴方に。
雨にも負けず、風にも負けず、妹の視線にも負けず、ただ書きたいものを書く
そんな人に私はなりたい(ただの願望)
励ましの言葉、ありがとうございます