UA10,000突破しました!
本当にありがとうございます!
まずは……そうだなキリトと俺が初めて会った日からにするか。あれはSAOのデスゲームが始まって2日も経ってない位だったか。
切っ掛けは俺が《リトル・ペネント》っつー名前の食人植物の実を割っちまったことだった。偶々《森の秘薬》とか言うクエストを受けてたキリトが近くにいたことが幸いした。
第一層 ホルンカの森
「ハハハハッ!なんだあれ!気持ち悪ぃ!」
「笑ってないで足を動かせ!」
笑っちまうもんは仕方ねぇだろ。
考えても見ろ、食人植物が群れをなしてこっちに向かってんだぞ。ざっと数えても10は越えてる。
はっきり言って気色悪ぃ!
「つーか誰だお前!」
「今はそれどころじゃないだろ!」
ごもっとも。
「モンスターは村には入らない!このまま走れば《ホルンカ》まであと2分で着く!」
「MPKにならねぇよな!?」
MPK。
モンスタープレイヤーキルの略で、アクティブ状態のモンスターを他のプレイヤーに押し付けることでキルする事。
MMORPGじゃ一番嫌われる行為だ。
「大丈夫だ!殆んどのプレイヤーはまだ《はじまりの街》から出てきてない!」
なら大丈夫か。
巻き込まれちまったらご愁傷さまだ。
「よう、まだ生きてるか?」
「……なんとかな」
なんとか《ホルンカ》に入り九死に一生を得た。
村に入るときのヘッドスライディングは是非とも見てもらいたかったが、残念ながらNPCしかいねぇ。
「何はともあれ恩人、になるのか?アルトだ」
「逃げた先が一緒だっただけだよ。キリトだ」
「キリトは何であの森にいたんだ?クエストか何かか?」
「《森の秘薬》ってクエストのクリア報酬が一層じゃ最強クラスの片手剣、《アニール・ブレード》なんだ。アルトは……両手剣使ってるのか?」
正確にはアニール処理って言って、加工した金属が歪まないようにする熱処理のことだ。
「まぁな。チマチマ攻撃するのも性に合わねぇし、槌とか斧も肌に合わねぇからな」
それに剣の世界なんだ、剣の方がいいだろ。
「お前ボッチか?」
「初対面の人間に言うことか、それ!」
「悪いな。本音を隠せねぇ
それから1ヶ月経ち、ようやく第一層攻略会議が開かれることを耳にした俺たちは《トールバーナ》へと赴いた。
色々あった。
金の使い道や戦い方、夜を明かす宿屋の選び方でも意見がぶつかった。
《トールバーナ》の広場でプレイヤーが集まり、ステージの上には
多分、今回の攻略会議を開いた中心人物だろう。
気に食わない
逆に敵が強いほど燃えるタイプだ。
「はーい!それじゃ始めたいと思いまーす!俺の名前はディアベル。気持ち的にナイトやってます!」
ディアベルの声に意識を戻す。
結局アイツ戻って来なかったな。どこで何をしてるんだか。
「つい先日、俺たちのパーティーは迷宮区でボス部屋と思われる扉を発見した。情報屋の話ではボスの名前は《イルファング・ザ・コボルドロード》。武器は斧と盾。HPバーは4本あり、1本無くなる毎に《ルインコボルド・センチネル》をPOPさせる。最後のHPバーがレッドゾーンに入ると使っていた斧と盾を捨てて湾刀、《タルワール》に持ち換える。攻撃力は上がるみたいだけど、逆に防御力が下がる」
βテストと変わらない。油断さえなければ必ず倒せる。
「意味的には【牙獣の王】と【廃れた獣の衛士】ってところか?廃れた獣ってなんだよって話だけど……いや、【遺跡の獣衛士】か」
「アルト、今までどこに……って」
アルトの声に後ろを振り返れば、オブジェクト化した食べ物を両手に頬張っていた。
「お前いくら使った」
「
「武器強化に使う金だって言ってただろ!」
何してるんだこいつ!
ここに来る前に手にいれた《
「まぁいいじゃねぇか。お前だってやってみたいと思ったことねぇか?メニュー見てここからここまで下さいってやつ」
「それは…………まぁあるけど」
こいつ、人が否定し切れないことを……!
「ちょぉ待ってんか!ワイはキバオウっちゅーもんやここにいる全員に言いたいことがある!」
キバオウ曰く「今日までに死んだ二千人の多くは他のMMOではベテランだった者達だから、彼らが死んでいったのは無責任にも《はじまりの街》から出奔して、いの一番にリソース稼いだβテスターの所為だ。でなければ今日この場にもっと多くの人間がいたはずなのだから、βテスターは死んだ二千人と自分たちに謝罪、賠償しろ」だそうだ。
それにデカい黒人のプレイヤーが《ガイドブック》を話に挙げて「情報に関しては少なくともβテスターが提供したモノがあった筈だ」と反論、責任を追及すべきじゃないとした。言い返す言葉が見つからないのか悔しげに黙り込んでしまう。
……なんとか、凌げたか?
と思った俺の考えに反してアルトの声が溢れた。
「……アホくさ」
「あ、アホやと!? 誰や、今アホ言うたんは!」
思いの外零した言葉が大きかったのか、それとも話が終わりそうなタイミングだった所為か耳に届いたらしい。誰だ誰だと怒鳴るキバオウに、横に座ったアルトにどうするんだと意味を込め肘で突いく。
肩を竦めたアルトにあとは任せよう。
……飛び火しませんように!
「俺が言ったんだよ。サボテン」
「さ、サボテン!? サボテン言うたか!?」
「悪ぃな、名前覚える気なくてよ」
「ワイにはキバオウっちゅうイカした名前があんのや、覚えとき! って、名前なんてどうでもええねん!アホっちゅうのはどういう事や! 何がアホや言うねん!黙っとらんでさっさと――」
「単に本音が出ただけだ」
「だからそれが何なのか聞いとるんじゃボケ!」
また怒鳴りだすキバオウ。
頼むからそれ以上、ヒートアップさせないでくれ。
「テメェはなんでここにいんだよ」
「は?」
「何が言いたいのか判らねぇってか? テメェはさっき言ったよな。βテスターがさっさと《はじまりの街》から出ずに、ビギナー共にレクチャーしてたら二千人も死ななかったって。だったらなんでテメェが代わりに、ビギナー共が集まってる《はじまりの街》でレクチャーしねぇで、この攻略会議に参加してんだよ」
「そ、そんなん……そんなん……そんなん言うたら、おのれかてそうやないか! それにワイはテスターやあらへんのや! それを歯ァ喰いしばってここまで来たのに文句あるっちゅうんか!」
「確かにその通りだ。俺も他のヤツらを見捨ててココにいる。だがここにいる連中全員にも言えんだろ。テメェも含めて、ここにいる連中は全員、ビギナー共より自分のことを優先した自己中しかいねぇんだ。《はじまりの街》に残ってる奴らならともかく、今ここにいる連中にβテスターのことをとやかく言う資格なんぞ欠片もねぇ。死んでいった二千人の中にβテスターがいた可能性も全く考慮してねぇ。そんなことも判らねぇで自己満足の正義感振りかざしやがった上に謝罪だのなんだの言ってっからアホくせぇっつったんだ。謝罪しろってだけならまだしも、この場にいる奴に賠償しろとか結局はテメェがリソースを欲しがってるいい証拠だろうが」
一気に畳み掛けられると、顔色を赤くしたり青くしたり白くしたりと忙しなく変えていくキバオウ。だが意外にもまだ何か言うだけの気力が残っているらしい。
「お……おのれもβテスターなんやろ! せやから自分の責任逃れの為にそんな小難しい言葉並べ立てて正当化して、ワイらのことまで巻き込んだんや! そうに決まっとる!おのれらみたいなクズ共がいる所為でワイらテスターとちゃう人間がバカ見て――」
「テメェ馬鹿か? いや馬鹿だな」
「――は?」
「全員が全員本当に平等だとでも思ってんのか?MMORPGってのはリソースの奪い合い。今時の小学生だって速いもん勝ちってのは知ってるぞ。平等ってのは自らの長所を見つけれねぇバカ共の戯れ言なんだよ。理解できたか?あぁ!!」
何とも言えない空気が広場を満たしてどれくらい経っただろうか、突如手を鳴らす音が響いた。音源を辿れば、胸の前で手を重ね合せた姿のディアベル。手を叩いたのはアイツみたいだな。
「やめようぜ皆! ここでお互い疑心暗鬼になったらボス攻略もままならない。俺も何度も死にかけながらここまでたどり着いた身だ。キバオウさんの言いたいことも判る。けど、さっきエギルさんが言った通り、今は前を見るべきだ。ここでβテスターに責任を追及したせいで戦力を欠いちゃ元も子もない。そうだろ!?それじゃ6人パーティーでレイドを組んで!」
6人!?俺とアルト……あと4人足りない!
視線を巡らせても既にパーティーを組んでいたプレイヤーが殆んどで、
「いたな?」
「ああ」
フードを被ったプレイヤーが1人、ポツンと座ったまま動かない。誰も近寄らないし、パーティーを組んでる様子もない。そう言えばあの子この前のーー
「君、1人?良かったらーー」
「お前、俺たちと組め」
何を言ってるんだコイツは!
そんな上から目線で、パーティーを組もうなんて言う奴がいるか!
「アルト!」
「ボスはソロで挑むもんじゃねぇんだろ?それが分かってるからコイツはここにいるはずだ」
「そう言うことじゃないんだよ。……連れが悪かった。今回限りでいいから、パーティーを組んでほしい」
「…………」
なにも言ってくれないけど、パーティー勧誘のメッセージを送ればプレイヤーの名前がパーティーに追加された。
《Asuna》……アスナって読むのかな?
「皆、パーティーは組めたかな?それじゃ明日の昼迷宮区前に集合だ!」
明日の昼か……。
日も落ちたが、明日の攻略戦に向けてまだ多くのプレイヤーが噴水広場に集まってる。
アルトは『使った金を稼ぎ直してくる』と言い、また姿を消した。アイツの使う《バスタードソード》はそのままでも一層で手に入る両手剣カテゴリの中でトップクラスの火力を持つが、万全を期すのであればやっぱり強化をしておいた方がいい。
「隣いいかな?」
噴水広場から離れた裏路地に見慣れた姿を見つけ、断りを入れながら許可をもらう前に腰かける。
……許可をもらわなかったのは悪かったけど、無言で距離を開けないでください。
「そのパン美味しいよな」
「……本当に美味しいと思ってる?」
「勿論。1日に1回は必ず食べてるよ。ちょっと工夫はするけど」
小瓶をオブジェクト化してアスナとの間に置く。
「そのパンに塗ってみろよ」
躊躇いつつも小瓶をつつき、その指をパンの上で滑らせれば誰が見ても美味しいと分かるクリームが塗られる。
一口
「《逆襲の雌牛》ってクエストをクリアすると手に入るんだ。良かったら攻略方法教えるけど」
「別に要らない。美味しいものを食べるためにここにいる訳じゃないから」
「それじゃなんのために?」
「私が私でいるため。このゲームに負けたくない」
「難しく考えすぎだっつーの」
視線を前に戻せば、姿を消していたアルトがまた両手一杯の食べ物を持って立っていた。
「お前、またーー」
「お前らも腹減ってると思って、買ってきてやったんじゃねぇか」
反論しようとして口を開いた瞬間、アルトが持っていたホットドッグを捩じ込まれた。
アスナも同様に突っ込まれた。
「命が懸かっていようが、このSAOがゲームであることには代わりねぇだろ。私が私でいるため?ゲームに負けたくない?その考えは否定しねぇが、負けたくねぇってんなら楽しめ。その上で足掻いて見せろ。リアルもゲームも関係なく、それが生きるってことなんじゃねぇの?」
「…………」
「ヤンキー先生」
「おいキリトなんつった?」
ヤバイ本音が!
……結局眠れなかった。
《バスタードソード》を振り回すアルトに朝まで追い回された……。
「……ふふ、バカみたい」
「うっぜぇ」
アスナは昨日からあんな調子だ。
肩の力が抜けた分には良い傾向なんだろうけど、納得いかない。迷宮区に繋がってる森を歩きながら、釈然としない思いを抱く。
「スイッチとPOTローテの手順は覚えてるよな?」
「当たり前だ」
「スイッチ……ポット……?」
マジですか……。
MMO初心者だったのか。そうじゃないかな、とは思ってたけどまさか本当に初めてだったなんて。
「貧乏クジだったな」
「ちょっと強引に組んでおいて、その言い草はなに?」
「何でもねぇよ、お姫様」
頭痛が痛い……。
真作集めに贋作集め、それに三種類のドロップ品?
一週間じゃ終わらない。前回の礼装は売っ払っちゃたし。