sword art onlineー黒と灰ー   作:戒斗

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加筆修正版です。
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第2刀:ビーター

キリトとの第一印象は最悪とまではいかねぇけど、あまり良くはなかったな。

アスナもどこか肩肘張ってて、ツンケンしてたし。そうそう今の朝田みてぇに……朝田、明日奈、俺が悪かったからそんな目で見ないでくれ。

 

なに?……いや俺はβテスターじゃねぇ、正真正銘VRMMOはSAOが初めてだ。

 

それより話の続きだな。第一層攻略戦の話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺たちは、まだ《はじまりの街》にいるプレイヤーたちに示さなきゃならない。このゲームがクリア可能だと言うことを!皆、俺から言うことは1つだ!勝とうぜ!」

 

おーおー、ヤル気満々だな。

初のボス戦が露払い程度なのが癪だがな。

 

俺達は、取り巻きの《センチネル》と戦闘中。

事前に打ち合わせていた通り、キリトが《センチネル》の攻撃をソードスキルでいなし、弾きあげたところでスイッチ。アスナが《リニアー》で的確に《センチネル》の首元を打つ。俺は削りきれなかった《センチネル》を叩き潰す。

 

それを繰り返すこと既に数十回、「なるほどな」と内心頷いた。

キリトが言うだけあってアスナの《リニアー》は凄まじい。明らかにシステムアシスト以上に自らの運動信号によってブーストされた速度に、ここまで一度も外すことのない正確さ。

これでMMO初心者とか、末恐ろしいな。

 

そんなことを考えながらも戦闘の手を弛めることは無い。

 

「スイッチ!」

 

キリトが下から上へ斬り上げる単発ソードスキル《ライジング》で《センチネル》の斧槍を弾いてそう声を上げると、一瞬で後ろから飛び出して《リニアー》を放つ。その一撃でほぼ尽きかけていた《センチネル》のHPを、更にもう一突きして消し飛ばした。

 

「「Gj」」

 

「二人もね」

 

明らかにオーバーキルな戦い方。この前キリトと二人で迷宮に潜ったとき、アスナにキリトはそう言ったと聞いた。初めてアスナに会ったとき、彼女は殆ど無くなっていた敵のHPを再び《リニアー》で吹き飛ばしていたらしい。ソードスキルはその一撃が強力な分、その後できる技後硬直による隙もまた相応に大きい。つまり、スキルの無駄打ちはそのまま危険へと繋がりかねない。

それが今では無駄のない洗練された動きになりつつある。

どこで、どうやって死んでも、遅いか早いかだけの違い。キリトにそう言ったらしいアスナも変わりつつあるみたいだ。

 

キリトがアスナを変えた、か

 

そんな風に思う。

どこか危なげなキリトも、アスナといれば或いはーー

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと違和感を覚えたのは《イルファング》のHPバーが4本目のレッドゾーンに突入し、武器を変えてからだ。

 

あの武器、本当に湾刀か?

 

遠くから見ているのではっきりとは判別出来ねぇが、湾刀にしては細身に見える。

二人の会話が終わるのと同時、アスナともども素早く駆け寄り、駆け出そうとするキリトを呼び止める。

 

「どうした?」

 

「《イルファング》の武器。アレ、湾刀にしては細くねぇか?」

 

「なんだって!?」

 

顔を歪めたキリトが《イルファング》視線をやると、その表情を驚愕に変えた。

 

「あ、あぁ…………」

 

何事かとそちらを見ると、そこには《イルファング》に一人駆け出していくディアベルの姿があった。

 

「だ、ダメだ、下がれ!全力で後ろに跳べ……ッ!」

 

キリトの叫びはしかし、《イルファング》が真紅のライトエフェクトと共に放った全方位への水平切りにかき消された。

 

何だ、あれは…………

 

攻略本に載っていなかったソードスキルの発動で俺の思考が停止している間に、その攻撃を喰らったディアベル達はそのまま硬直スタン。更に《イルファング》は連撃を仕掛け、弾き飛ばされたディアベルは駆け寄ったキリトの腕の中でーー青い欠片となって、散った。

 

ディアベルの死に騒然となるレイド。しかし、敵は落ち着くのを待ってくれるわけがない。

 

「キリト、お前今の技知ってたか?」

 

「……ああ。あれは刀のソードスキルだ。上層の敵が使ってたから覚えてる」

 

「お前なら、相手できるか?」

 

「……やれる」

 

「なら……行くか」

 

「私も行くわ……パーティだし」

 

ディアベルの死で他の連中は呆然としてる。

援護は期待できそうにねぇな。

 

「腰抜け共!死にたくねぇなら下がってろ!」

 

棒立ちになられてちゃ邪魔で仕方ねぇ。

 

キリトがソードスキルで《イルファング》の刀を弾き、アスナが《リニアー》で突き飛ばす。

アスナの頭上を飛び越え、降り下ろしの単発ソードスキル《ガリア》を叩き込む。

 

《イルファング》のソードスキルはキリトが捌き、通常攻撃であるなら俺が防ぐ。

その隙をアスナがレイピアで文字通り突く。

 

イケる!

そう思ったが、途中で軌道を変えたソードスキルでキリトが吹き飛ばされ、アスナを巻き込んで地面に転がった。

 

ヤツの攻撃を防ぎ鍔迫り合いになりつつも、横目でキリトのHPを確認すればギリギリイエローゾーンで止まっている。

突然、剣に掛かる重さが消え視線を前に戻せば、ヤツの姿が消え、横殴りの衝撃に吹き飛ばされ、支柱に叩き付けられる。

その隙に《イルファング》はキリトたちの元へと走り出す。

 

「ぐッ!……キリト!アスナ!」

 

俺の声に我に帰ったアスナがキリトを()(かか)え、咄嗟に横に転がる。

 

ヤツの一撃でアスナのフードがポリゴンとなって散ったが、二人ともなんとか無事のようだ。だがアスナのSTRじゃキリトを抱えたまま動き回れねぇ、一撃目はなんとか避けれたが二撃目は確実に2人を刈り取るだろう。

 

スタンさえ解ければ……!

 

「うおぉぉぉりゃぁぁああ!!」

 

《イルファング》の一撃を両手斧を持った黒人プレイヤーがソードスキルで弾き飛ばした。

 

……確かエギ、ル?とか言ってた……。

 

「おい、大丈夫か!?」

 

「……あんたら」

 

「エギルさんのレイドに入ってる。ヤツの攻撃は俺たちが防ぐから、君たちで決められるか?」

 

腰抜けだけじゃなかったか……。

 

タンク壁役がいるなら確実に仕留めれる!

 

「当たり前だ!」

 

やることはひとつ

アイツらの態勢が整うまで時間を稼げばいい。

深追いも追撃も必要ない。

 

スタンから開放された俺は《バスタードソード》を構え直し、《イルファング》へと肉薄する。

 

湾刀の横薙ぎを跳んで避け、《バスタードソード》の重量を利用して体を回転させながらヤツの顔面めがけ遠心力を乗せた蹴りを食らわせる。

 

たたらを踏み、仰向けに倒れ込んだ《イルファング》に死に近付いている実感と実戦の高揚感から声高に叫ぶ。

 

「どうしたよフロアボス!もっと遊ぼうぜ!」

 

喧嘩程度では決して感じることのできない興奮と熱が俺を狂わせる。

 

そして確信する。

 

間違いなく俺の居場所は死地(ここ)だ。

戦場こそが俺の魂の居場所だ。

 

「ハハハハハ!ここが!これが俺の求めていたモノだ!」

 

起き上がる《イルファング》に対し、右手に握った得物を肩に預けるように構える。

 

『お前は正気か?』

 

弾き合い火花が散る瞬間に誰かが問う。

それに対する答えは決まっている。

否、決して否だ。

正気ならば死地(ここ)にはいない。

狂気ならば戦地(ここ)にはいない。

 

正気も狂気も全ては些事だ。

そんなもん犬も食わねぇよ。

 

生きるか死ぬか

殺すか殺されるか

勝つか負けるか

 

それすらもどうでもいい。

今この場、この瞬間こそがとてつもなく心地良い。

 

得物を弾かれた勢いを殺さず、飛び上がり距離を取ればキリトたちの真横へと着地した。

 

「よう、まだ生きてるか?」

 

「当たり前だろ」

 

それは重畳(ちょうじょう)

 

「私も行けるわ」

 

「手順はさっきまでと同じだ。このラストアタックで仕留めるぞ」

 

「「了解!」」

 

キリトを先頭にアスナと共に駆ける。

 

キリトが捌き、アスナが間隙を抜い、俺が吹き飛ばして距離を広げる。エギル率いるタンク部隊がヤツを取り囲み、自由を奪うが如何せん数が足りねぇ。

《イルファング》はソードスキルでタンク部隊を弾き飛ばし跳躍。支柱間を跳び回り、エギル達に狙いを澄まし刀にソードスキルの光が灯る。

 

「キリト!」

 

名前を叫び、アイコンタクトで俺が何をしようとしているか理解したキリトが、《イルファング》へ背を向け腰を落とし、組んだ両手へキリトの足が掛かる。

 

「ブッ飛べキリトォ!」

 

「言い方考えろ!」

 

STRに物を言わせた投擲に合わせキリトが跳躍。凶刃を振るう直前の《イルファング》にソードスキルを振るい叩き落とした。

 

あと数ミリ!

 

2連撃ソードスキル《ノリブス》。

水平に切り払い、さらに体を回転させ遠心力を乗せた一撃で逆袈裟に斬り上げる。

 

仰け反りヤツが見上げた先には、光を纏う《アニールブレード》を振りかざしたキリトの姿。

 

「これで終わりだぁ!」

 

落雷を思わせる一撃。

1拍置いて攻略隊に大きな被害をもたらした牙獣の王はポリゴンとなって砕け散った。

 

盛大なファンファーレと共にCongratulationの文字が宙に踊る。

 

……ようやく終わった。長かったな。達成感もあるがヒリヒリとしたあの緊張感、癖になりそうだな。

フィールドにいる雑魚とは違い圧力と言うべきか、存在感が段違いだった。

 

「Congratulation!今回の勝利はお前たちのものだ」

 

「サンキュー、エギル。お前たちがいなかったら勝てなかった」

 

「なんとか勝てたわね」

 

「あぁもう最っ高」

 

「もうやだこの戦闘狂」

 

失礼な。

 

「なんでや!!なんでディアベルはんを見殺しにしたんや!」

 

「あ?」

 

「見殺し?」

 

「そうやろがい!ボスの使う技知っとったやないか!それ伝えとったらディアベルはんは死なずにすんだんや!」

 

自分で突っ込んで自滅しただけだろうが。イチャモンつけんのも大概にしろっつーの。

 

「きっとあいつβテスターだ!だからボスの使う技を知ってたんだ!」

 

「そ、そうだ!他にもいるんだろ!βテスター共、出てこいよ!」

 

「……魔女狩りかよ。付き合ってらんねぇな」

 

「な、なんやと!」

 

うっわ、恐っ。

 

「そうだろうが。居るかも分からねぇβテスターを探したって意味ねぇし、仮にコイツがβテスターだったら全責任を押し付ける気だろ?それで?責任を全部押し付けて、リンチか?絞死刑か?コイツを殺せばそれで気が晴れんのか?この中にもヤツが使うスキルを知ってて黙ってるやつがいる可能性を考えたか?それにこの先の攻略もβテスターがいねぇと(まま)ならねぇだろ。全員が命張ってんだ。死んだ命を惜しむならともかく、それを口実に憂さ晴らししてんじゃねぇ!!」

 

今のSAOは全プレイヤーが命を張っている。誰かが死んだ責任を誰かに押し付ける。それは死んだヤツの意思も誇りも全て、踏みにじることだ。

 

ディアベルがなぜ突っ走ったのかは知らねぇが、あいつの『このゲームがクリアできることを証明する』と言った言葉に嘘はなかった。

サボテンはその言葉すら踏みにじろうとしてる。

 

「βテスター?そんな奴等と一緒にしないでくれ」

 

キリト、お前ーー

 

「千人のテスターの殆どはレベリングのやり方も知らない初心者ばかりだった。俺がボスの刀スキルを知っていたのはもっと上の階層で、刀スキルを使う敵とイヤと言うほど戦ってきたからだ。もっと知ってるぜ?情報屋なんか必要ないほどにな」

 

……そう言うことかよ。

 

「なんやそれ…そんなんチートやチーターやないか」

 

「βのチーター、ビーターだ!」

 

テメェら寄って集って、それで満足なのかよ……!

 

「ビーターか、良い呼び名だな。そうだ。俺はビーターだ。これからは、たかがテスターごときと一緒にしないでくれ」

 

黒いコートを纏い、ボス部屋の奥へと向かっていくキリトを背を追い、上の階へと続く階段でようやく追い付いた。

 

「全部一人で背負い込もうとしてんじゃねぇよ」

 

「仕方ないだろ。ああでもしなきゃ、他のテスターたちに矛先が向くだろ?そうなれば攻略どころじゃなくなる」

 

「それぐらい途中で気付いてたっての」

 

確かにあれが最善だったかも知れねぇがーー

 

「やっと追い付いた……」

 

アスナか。態々追って来なくても良いだろ。

 

「貴方たち、私の名前、どこで」

 

息切らせてるみてぇだけど、VRなんだからそこまで疲れねぇだろ。

 

「パーティに参加するとHPバー辺りに表示されるんだ。読み方、合ってたかな」

 

きょとんとした顔をしたあと、何が面白いのか吹き出して笑ってる。

初心者丸出しで、よくここまで食い物にされなかったな。大抵は利用できるだけ利用されて捨てられるもんだが。……あのツンケンした雰囲気じゃ誰も声は掛けねぇか。

 

「……なにか失礼なこと考えてない?」

 

「何でもねぇよ、お姫様」

 

「信頼できる人ができたら、その人のパーティーかギルドに入ることをお薦めするよ。それだけでも生存率も上がるし、レベリングも捗るからさ」

 

「貴方たちは……」

 

「あんなこと仕出かしちゃ、パーティー組む奴もいねぇだろうしな。当分は基本ソロ、たまにコイツとパーティーを組むぐれぇだろ」

 

「……勝手に決めるなよ」

 

「効率を考えりゃ、たまに組むぐれぇがお互い丁度良いだろ。基本的なことはお前にレクチャーして貰ったしな」

 

ここぞと言うときは歳不相応な度胸を見せる癖に、ふとした瞬間に年相応な脆さを垣間見せるコイツには強引なぐらいが丁度良い。

 

「ここで一旦お別れだな。なんかあったときのためにフレンド登録しておくか」

 

「だな。何かあればメッセージ飛ばしてくれ」

 

今生(こんじょう)の別れじゃねぇんだ。お互い生きてりゃまた会えんだろ。

 

「死ぬなよ」

 

「誰に言ってんだ」

 

「必ず生き残って、また3人で会おう?」

 

当たり前だ。

キリト、俺、アスナの3人で拳を突き合わせる。

 

第一層攻略戦では大きな犠牲を払ったが、このデスゲームが攻略できることが証明出来たんだ。次の階層では同じ轍は踏まねぇ。

 

この先に何があるのか、考えただけでもワクワクが止まらねぇ。探索系RPGの醍醐味だよな。

 




アルトのバーサーカー感を追記する形で修正
うまく伝わればいいですが
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