取り敢えず短いですがプロローグです。
投稿スピードは落ちるでしょうがご容赦を
あの魔性菩薩とケリを着け、無事年明けを迎えた。
左腕の感覚はまだ戻らない。片腕が使えない不便さを感じながら、年明けを迎えたわけだがーー
「朝ごはん出来たわよ」
「通い妻かお前は」
満更でもない顔すんな。
あの1件以来、朝田の距離が今までよりも近い。
朝田だけじゃなくアルゴも木綿季も。
朝田は毎日飯を作りに来るし、木綿季は冬休みが終わるまで泊まると言い出すし、アルゴは何かと絡んでくる。
アルゴのヤツは学校が違う為、リアルじゃそうそう簡単に会えねぇからか、ALOじゃシノンやユウキよりも引っ付いてくる。
六千人ものSAOサバイバー中、学生の数は約三千人にも及ぶ。小中高の様々な学生に1つの学校では賄えず、各地区に建設された学校に地区別に振り分けられた。
俺や和人、明日奈たちは関東地区に割り振られ、アルゴは……どこだろうな?聞いても答えねぇし、リアルの名前も言わねぇし。
「ふぁ~おはよ~」
「飯食う前に顔洗ってこい」
「は~い……」
「木綿季、寝惚けてるわね」
「昨日は遅くまでALOにいたからな」
リアルに戻ったのは日付が変わり、年が明けてから。そこからもテンション冷めきらない木綿季は空が白み始めるまで起きていた。
日の出が遅いこの時期に、空が白み始める時間はお察しだ。
「左腕の調子はどう?」
「相も変わらず」
左腕を動かしてみるが反応が鈍い。何かを触ったと言う感覚も曖昧だ。
なのに何故、同じように引き千切られた筈の右腕と両足は今も動かせるのか?あの女の中で見つけ繋げられたからか?
その話でいけば
だが動きがぎこちない。いざというときの反応が鈍いから、動かさない方がマシだ。
そのせいかキリトも本気を出さねぇし、フラストレーションは溜まる一方だ。
「……ごめんなさい」
「お前らに非があるわけじゃねぇ。そう簡単に頭下げんな」
こいつらが悪いわけじゃねぇ。アイツの力を見誤り、引き千切られた俺が悪い。
確かに不便だが、かと言って死ぬ訳じゃねぇしな。
「ボク復活!シフおはよう」
『ガウ!』
簡単に手作りしたスマホスタンドに立て掛けたスマホに声を掛ける木綿季。画面にはデフォルメされたシフが映っている。
「そう言えばALOの大型アップデートの話知ってる?」
「10日にあるメンテ後のやつだろ?新エリアに新モンスターがどうのってヤツ」
「常設エリアらしいから、急ぐ事はないだろうけど……」
「そりゃな。メンテ後ってなりゃ人も集まる。今まで以上にリソースの奪い合いで殺伐としてるだろうな」
「先行公開の映像だと荒廃というか殺伐としてるみたいだから、雰囲気的には合ってるんじゃない?」
雲の上の神殿だったり、森に囲まれた教会だったり、戦火燻る城だったり。少くても新しいエリアは3つだな。
個人的に教会は忌避感を覚えるが。
「殺伐としてるのはやだな~。どうせやるなら楽しい方がいいよね」
「お前の楽しいは剣を振ることだろうが」
「颯真が言えた立場じゃないでしょう。まったく、貴方といい木綿季といい。親戚とは言え、同じ血を引いてるって嫌でも分かるわ」
痛いところを突くな。
「た、確かキャッチフレーズは『王たちに玉座なし』だったか」
「露骨に話を逸らしたわね。死にゲーで有名な会社とのコラボらしいわ。難易度は馬鹿みたいに高いでしょうね。超高難易度を謳ってるくらいだし」
あそこか……。死んで覚えるを地で行くゲームだったな。
「ジャンル間違えてるだろ。ダークファンタジー路線で別のゲームとして売り出した方が売れるんじゃねぇの?」
「大人の事情じゃない?」
バッサリだな。
「兄ちゃんは参加するの?」
「当たり前だ」
左腕を使えなくても戦いようはある。
いつも通り全力で戦いに挑むだけだ。
火花が散り、剣撃の音が周囲に鳴り響く。
「アルト!新しい剣なのに随分と慣れてるじゃないか!」
「これでも軽いぐれぇだ!欲を言や、もう少し刃渡りが欲しいな!」
リズに頼み新しく打って貰った剣。
それは剣というにはあまりにも大きすぎた
大きく、分厚く、重く、そして大雑把すぎた。
それはまさに鉄塊だった。
……ネタは置いといて、そこまで長大ではないが以前使っていたものより長く重いのは本当だ。俺の身長を超す刃渡り、《エクスキャリバー》よりも遥かに重いそれは、STR極振りしてる俺じゃないと振り回すどころか、まともに持つことすらできない化け物っぷりだ。
その名も《
英語では
戦いになれば鬼神の如く戦うが、敵味方の区別がつかなかったらしい。その由来から戦いに狂う戦士、すなわち狂戦士と呼ばれるようになった訳だ。
名前の意味と由来を教えれば『バーサーカーなアルトにはピッタリじゃないか』とかキリトを指差しながら笑うもんだから、殴っておいた。誰がバーサーカーだ。
なぜこれの製作依頼したかと言えば、左腕が使えないハンデをカバーすべく刃渡りを長くして貰ったのだが、長くなるほどに耐久値が下がり、耐久値を上げるほど厚みが増し重量が増えたというわけだ。
ありったけの金と素材を使いなんとか完成したもののリズにはもちろん持てず、研磨するときには俺が持ってないといけねぇからハッキリ言や面倒だが、まぁ製作してもらった以上は仕方ねぇよな。
試運転も兼ねた模擬戦と言うことでキリトに相手を頼んだが、やはり全力を出してこない。6割出してるかどうかと言ったところだろ。
砂塵を巻き上げながら《ベルセルク》を振り上げ、バックステップで距離を取ろうとしたキリトを空へ打ち上げる。返す刃で落ちてきたキリトの背中を捉え地面に叩き付けた。
良い武器だ。気に入った。
「これで157戦79勝目だ。」
「待て!これもカウントするのか?」
「当たり前だろうが」
「横暴だ!この暴君!」
……やるか?あ?
素手での戦いも辛勝ではあるが制し、一段落つけた。
俺相手に素手で挑もうなんざ10年早かったな。
メンテ開始まであと1時間を切り、次にログインできるのは明日の午後3時。メンテ開始ギリギリまでゆっくりしようと言う話になったんだが、少し離れた場所でキリトとアスナは縁側に座る老夫婦のような雰囲気を醸し立てる。
俺はユウキ、リーファ、シリカの冬休みの宿題を手伝ってる。宿題って言い方懐かしいな。
手伝うと言っても答え合わせ程度だが。
「文法が違う。組み立て直せ」
「「「英語嫌ーい(です)!」」」
単語の組み合わせで英文作るだけだろうが。頭から煙が出始めた三人を余所にアルゴの方へ意識を向ければ、なにやら作戦会議中みたいだな。
「高難易度のエリアで左腕が使えないハンデがどれだけ重いカ、アル坊だって理解してるはずサ」
「この俺も行くんだ。大船に乗ったつもりでいろよ」
「泥船の間違いじゃないの」
「シノンさぁん……」
シノンの毒にクラインは膝から崩れ落ちる。
こうか は ばつぐん のようだ
俺のことを気に掛けてくれんのは正直嬉しくはあるが、ほどほどにしてほしい。気を遣われ過ぎて逆にこっちも気まずいからな。
朝田は家事全般を頼んでもねぇのにやるし、アルゴと木綿季は何かと世話を焼いてくる。
……もしかして今の俺ってヒモ?
「どうしたの兄ちゃん?」
「……現実を見たら死にたくなった」
このままじゃダメだな。どうにかしてこの腕をーー
「……?」
「どうしたアル坊」
「……いや、何でもねぇ」
誰かに見られてたような気がしたんだが……気のせいか?
「そろそろメンテ開始の時間だな」
「それじゃみんな、次に会うのは明日だね」
メンテ開始告知のウィンドウがポップアップしたことで、それぞれがログアウトするなか、再び感じる視線。
……なんだ?
見られてる分には害はねぇが、気が散ってしょうがねぇ。
さっさとログアウトするか。
ログアウトのOKをタップした瞬間、感覚がない筈の左腕に僅かだが熱を感じた気がした。
だがそれも一瞬、意識は既にリアルへと帰還した。
灰は火を求め
火に惹かれ姿を顕す
その者はこう呼ぶのだ
《火の無い灰》と
それは剥奪者
火を宿す者の前に顕れる
ロスリック編
次回《灰の審判者》
キャリバーの最終話を投稿後、5人の方がお気に入り解除したようです。やっぱり無理矢理過ぎましたかね?