えりのるさん 赤い羊さん
誤字報告ありがとうございます!
結局あの騎士装備のやつは何がしたかったんだ?
パリィを狙おうとした?
大方そうだろうが、パリィ主体のプレイヤーなら万が一外したときの保険で防御力は高めにしておく筈。
「今のアルトは放っておいた方がいいわ。話しかけても反応無いし」
「考え込むと周りのことは一切頭に入らないからナ」
俺を狙った理由はなんだ?
アイテム狙い?怨恨?それとも単なる気紛れ?
どれでもあるようでどれでもない気がする。
それに左腕に感じた熱。
あいつが消えたと同時に熱も引いた。
どういうこった。
情報が断片的過ぎる。
「はい、兄ちゃんそこまで」
「……ん?……あぁ、おう」
そうだった。今日は昨日の続きだったな。
「ねぇユウキ、今のどうやったの?」
「オレっちも気になル」
「秘密だよー」
なにコソコソ話してんだ。
「それじゃ今日のメンバーは俺にアスナ、アルトにユウキ、リーファとシノン。この6人で行こうと思う」
……あぁそうだったな。クラインはリアルの仕事で来れねぇんだったか。
「1つ提案だ。恐らくだがこの先も審判者みてぇなグロ……とまではいかねぇがレーティングギリギリの奴が出てくる可能性もある。そういうのが駄目な奴は前もって言って欲しい」
近づくのが嫌だから戦えませんってのもバカな話だからな。
「大丈夫だって。みんなそういうのには慣れてるさ。そういうアルトは大丈夫なのか?」
「大丈夫だ。問題しかない」
「駄目だろ!」
なにかの
どいつもこいつも『灰の方をお連れください』としか言わねぇし。誰だよ灰の方って。
仕方ねぇからユイの指示に従い、捻れた刀身を持つ長剣を祭祀場の中央にある受け皿のようなものに突き刺せば、炎が吹き上がり篝火の完成だ。
「ここから次のエリアに行けるようです」
「次のエリアってどこになるの?」
「ロスリックの高壁、だな」
と言うわけで高壁に来たはいいものの、なにすりゃいいんだ?前情報が一切無い。
詰み……ではねぇと思うが。
「お兄ちゃーーじゃなくてキリトくん。前はどうしてたの?」
「道なりに進んだだけだったしなぁ。広いように見えて実はってやつかもな」
「ある程度は自由に歩き回れるが、基本は一本道かもってことか」
ストーリーがある以上迷わないようにはなってる筈。
そう考えた30分前の自分を殴りたい。
「ものの見事に迷ったな」
「だな」
2人であっちだこっちだと進んでみたものの、どっちも違うというなんとも言えない結果に相成った。
「2人揃ってこの有り様?」
「「面目ない……」」
頼むシノン、ダウン寸前の俺たちに追い討ちを掛けないでくれ。方向音痴じゃないだ。入り組んだこのマップが悪い。
「シノのん、ある程度は憶えた?」
「7割程度だけど。どこかのバカ2人があっちこっち連れ回してくれたお陰でね」
「「ぐふぅ……」」
本当に止めてくれ。俺たちのHPはもうゼロだ。
「ふふ。仕方ないわね。私が先導するわ」
シノンの先導のもとロスリックの中を進んで行けば、地上に近づくにつれ道中に鎧が散乱し始め、また左腕に熱を感じる。
「何かあったのかな?」
「鎧の造りも紋章も同じだ。内輪揉めかもな」
これは竜……か?
鎧の胸や盾に刻まれた竜の紋章はどれも同じ。となるとここに倒れてる奴らは全員同じ人間、もしくは国に仕えてることになる。
考えられるのは派閥同士の争いだ。
人間界に起きたっつー異変と何か関係あるのかもな。
「ストップ」
「敵か?」
「嬉しそうに聞かないで。その通りなんだけど」
ここまで敵らしい敵もいなかったしな。不完全燃焼もいいとこだ。どこかで見た覚えのある犬やらゾンビみたいな奴は別だ。竜もいたが降りてこねぇし、シノンが弓で削ればどっか飛んでったしな。
「ほら、あそこ」
シノンの指差した先には、赤いマントをたなびかせる騎士。
剣と盾のスタンダードなタイプと槍と大盾を持ったタイプにあれはーー
「あの時の人……だよね?」
ユウキの言う通り、騎士装備の奴が騎士2人を相手取っての大立ち回り。
以前よりも動きが洗練され、パリィをミスってる様子もない。ここの騎士からドロップしたのか
「ソロですかね?」
「どうだろうな。腕に相当自信があんなら、パリィをミスるってのも考えにくいんだが」
ここは超高難易度と銘打たれた新マップだ。仲間も連れずにソロで攻略に挑むくらいの実力があるなら、いくらSTR極振りとはいえ俺の攻撃で一撃死ってのも考えにくい。
「もっぺん試してみるか。お前らは手ぇ出すなよ?」
奴が騎士2人を倒し終えたところで声を掛ければ、逃げる様子もなく振り返る。
「準備万端か?ならやろうか?」
「…………」
「無口な野郎だ。それともドロップ狙いのマラソンを邪魔されて腹でも立ったか?」
「……!」
突然火の点いた壺を投げ付けてくる。
《ベルセルク》を盾に防いで距離を詰めれば、自爆覚悟でまた壺を投げてくる。
俺が足を止めた隙に剣を突き出してくるがーー
「甘ぇ!」
剣の腹で受け体勢をずらす。
勢いのままつんのめる奴目掛け横凪ぎを放つが、奴はその勢いのまま前転、やり過ごしやがった。
「へぇ……」
盾を構えたまま、こちらの攻撃を誘うように右に左にと忙しなく動く継ぎ接ぎ野郎。
随分と軽快だな。パリィミスって即死した奴とは思えねぇ。
右腕を左肩に乗せるように構え距離を詰める。そのまま振り下ろすと見せ掛けて回転、騙されバックステップした奴目掛け遠心力を乗せた一撃を振り下ろした。
これは盾で防がれたものの左腕は大きく弾かれ、がら空きになった体を刃を返さずそのまま振り上げて切り裂いく。
今度もまた地面に倒れると同時に
「んー?」
やはりドロップもなにもない。それに奴が消えたと同時に熱も引いた。
「終わったか?」
「ん?ああ、終わったには終わったが……」
「気になることでもあった?」
アスナに何て答えたものか……。
「それよりどっちに進むの?目の前の城?それとも階段下の門?早く決めないとさっきの騎士がポップするかもしれないわよ」
ポップしてもいいんだがなぁ。
「まずは城に行こう。なにか情報があるかもしれない」
俺的にはここに来る前にあった登り階段の横道が気になるんだが駄目か?……駄目か。
人が1人通れるくらいに開いた扉を潜り中に入ってみれば、等間隔に数人掛けの椅子が置かれ教会のような厳かな雰囲気がある。
……ミサでもやってそうな雰囲気だな。
「……おぉこれはこれは。まさか妖精をこの目で見る日が来るとは」
しゃがれた老婆の声。
広間の奥にはローブに身を包んだ人物。声の主はあいつだろう。
「ダメだ。ここから先に進む道がない」
「あの梯子じゃないかな?」
ユウキが指差した先には伸縮式の梯子が見える。
あれを登るには何かしらのギミックもしくは条件があるってことか。
「私めの名はエンマ。妖精方がこの様なところに何用ですかな?」
「俺たちは人間界に起きた異変を突き止めるために来ました。ご老体、何かご存じではないですか?」
「猫被んなキリト」
「こう言うのは形から入らないと」
「三日坊主の口癖だな」
「うぐっ」
「はいはい二人ともそこまで。仲が良いのは分かってるから」
「「仲良く
「ここに来る途中で《膿》と会いませんでしたかな?」
「膿?あの黒い蛇みてぇなヤツか」
「ええ。私めどもは暗く蠢くものと呼んでおります」
審判者そしてここに来る途中にいたゾンビみてぇな奴。
後者の奴は周りにいたお仲間を薙ぎ倒して襲ってきたな。
まあ、それは置いておこう。
エンマの話を要約すれば、火が陰り始めたことで世界の終わりの前触れである膿が増え始めたのだと言う。
そして陰り始めた火とは、この世界を照らす原初の火であり、代々この城の人間は火を継ぐに足る人間を人為的に産み出してきたのだとか。
その人間のことを《薪の王》と呼ぶ。
だが今代の《薪の王》は火継ぎを拒否。それによって歴代の《薪の王》が呼び起こされ、再び薪として使われようとしたが歴代もまた拒否。各々の故郷に帰っていったんだと。
「火は燃え盛りいずれ陰るもの。その都度犠牲を払うのであれば、私めは王子
「なんか思いの外、重い話だったな」
「世界の延命か終焉か。延命すればいずれまた誰かが犠牲になる。かと言って火を消せば世界全てが犠牲になる。小を切り捨て大を救うか、大小関係なく終わらせるか、か」
どちらにせよハッピーエンドはないってことだよな。
「あのお婆さん、《薪の王》に会ってみろって言ってたよね?」
「ああ。だがその《薪の王》が誰か、までは言わなかったけどな」
その《薪の王》ってのがボスキャラなんじゃねぇのかってのが俺の考え。
だがその王が何人いて何処にいるのかまでは言わなかった。
人工的な《薪の王》も今代以外の成功例は無かったらしい。
だから火が陰り始めたときに選出された《薪の王》の故郷を訪れる必要がある、と。
「そう言えば、あの祭祀場に王様が座るような椅子が5席ありましたよね?1つはもう座ってましたけど、もしかしたらーー」
「その4席が《薪の王》の玉座って訳か」
慧眼だリーファ。
つまり4人の王と会わなきゃならねぇ訳だ。
「いよいよRPGっぽくなってきたね」
「会うだけ……じゃ終わらないですよね?多分」
「大丈夫よリーファ。戦闘になったらアルトに押し付ければいいんだから」
おいこらシノン。
「その《薪の王》だっけ?どれぐらい強いのかな?ワクワクしてきたよ!」
「だな。俺も楽しみだ」
「戦闘民族」
「埋めんぞキリト」
民族だと日本人全員含まれるからな?
それから階段下の門を通り中へと入ったのだがーー
「なぁキリト、この広さから言えば」
「ああ。間違いなくボスだろうな」
奥行きに幅、どれも人が走り回れるほど広い。
だがボスの姿は見えず、SAOのスカルリーパーのように天井に張り付いてるのかとも思ったがそれも違う。
肩透かしをくらい、蔦に覆われた門にキリト触れようとした時、俺たちが入ってきた入り口から湿った音が聞こえた。
振り返ってみれば、空間が歪み灰暗い穴からくすんだ銀の鎧に身を包んだ獣が姿を現した。
いや、獣と言うには人に近い。四足歩行ではあるが、右手に巨大なメイスを持っている。つまり武器を扱えるほどの知性があるということだ。
HPバーは2本。《Vordt of the Boreal Valley》
冷たい谷のボルドって読めばいいのか?
ッ!体格のわりに速ぇ!
「散開!」
ずんぐりむっくりとした体格とは裏腹にメイスを振り上げながら20mはあった距離を一気に詰めてくる。アスナの号令と共に散開し、数瞬前まで俺たちが固まっていた場所にメイスが振り下ろされ地面を砕いた。
確かに速ぇが目で追ねぇほどじゃねぇ。それに速ぇのは突進するときだけ、それ以外は見かけ通りトロい。
「冷気ブレス攻撃来ます!5秒後!」
放射状に広がる冷気が地面を凍らせ、空気中の水分をも凍らせて擬似的なダイアモンドダストが発生する。
「リーファ!ユウキ!」
「やっと出番だね!」
「頑張るよー!」
「シノン、矢は鎧に阻まれる。関節を狙えるか?」
俺の問いかけに不敵にシノンは笑って返す。
「誰に言ってるのよ。奴の目だって射抜いて見せるわ」
「頼もしいな」
シノンの肩を叩き、メイスを受け止めるキリトに向け走り出す。
「キリト!」
それだけで俺を意図を察し立ち位置を交代。
キリトは俺の肩を踏み台に飛び上がり、ボルドーの背中に乗って《
背に乗ったキリトを振り落とすべく体勢を上げようとすれば、ボルドの後頭部目掛け大剣を振り落として体勢を崩し、ユウキとリーファが両足の関節を切り裂き、シノンが奴の右目を射抜く。
絶えず奴の視界に入り続けることでヘイトを俺に集中させ、他の奴らが攻撃できる隙を作る。
左腕が使えない以上、鉄壁とまではいかねぇが攻撃を捌くぐらい訳ねぇ。奴のHPは既に最後の1本、そのレッドゾーンへと入ってる。
押し切れる!
そう思ったが、両腕の力だけで飛び出し俺の腹に頭突きを食らわせ、そのまま壁に叩き付けられた。
マズっ!回避は……間に合わねぇ!
「兄ちゃんッ!」
振り下ろされたメイスがスローで迫るなか、俺の目はボルドへと迫るもうひとつの影を捉えた。
そしてボルドーに剣が突き立てられポリゴンとなって散る。
「悪ぃ、助かったユウキ」
「へへーん!」
胸当てに押さえ付けられたことで、より板に近くなった胸を張りVサイン。
今回はユウキに助けられたな。
張り付いた蔦を引き千切りながら門が開いていく。
「わっ!わっ!見てあれ!」
「随分高所にある城だな。それに街とも随分と離れてる。しかも街と繋ぐ橋は壊れてるときた」
アルトくんの言葉に私も素直に頷く。
眼下に見える城下街とは軽く500mは離れてるし、街に繋がる橋も門から出てすぐの場所が崩れてしまってる。これじゃ先に進めない。
「区切りもいいし、今日はここまでにするか。どう先に進むかはまた明日考えよう」
「そうだね。流石に私もくたびれたよ」
「あ!ならアスナさん、戻ったら温泉行きませんか?丁度、前に手に入ったパスの有効期限が今日までですし」
「いいわね。賛成!」
「ご一緒してもいいかしら?私もゆっくりしたい気分」
「ボクもボクも」
「それじゃみんな一緒に行きましょ。キリトくんもアルトくんもそれでいい?」
「アルト、あそこは一回退いて他のメンバーにヘイトを向けさせるべきだったろ」
「バッカ。俺にヘイトを向けさせたままの方が、他のやつらが攻撃しやすいだろうが」
「脳筋」
「やるか?」
納めた剣を引き抜き一触即発の雰囲気。
……まったく。
「はいはい。2人とも仲良し仲良し」
「「仲良く
2人とも本当に素直じゃないんだから。
次のマップ解放とリーファの提案もあり一同揃って温泉に入り、一息淹れたところで情報交換と相成った。
「ンー。それはおかしいナ」
「おかしいって何がだよ」
「他のパーティの情報だト、協力NPCと一緒に攻略していくららしいゾ?祭祀場って場所もそのNPCがいて使えるようになるらしいかラ、なにか敵対フラグでも建てたんじゃないのカ?」
そう言や、祭祀場のNPCは『灰を連れて来い』とか言ってたな。もしかして灰ってあの継ぎ接ぎ野郎のことか?
「敵対フラグねぇ」
止めろキリト。そんな目で見るんじゃねぇ
「まぁアルトの戦闘狂は今に始まったことじゃないし、協力NPCがいなくても
「そうね。直して欲しいとまでは言わないけど、抑える努力はして欲しいわ」
「もう、キリトくんもシノのんも少し言い過ぎよ。確かにアルトくんはあっちこっち飛び回っては闘ってばかりいるけどーー」
「あー!分かった!好きなもん奢ってやるからもう勘弁してくれ!」
あぁ……出費が
イェーイ!と喜ぶキリトたちを尻目に俺のテンションはだだ下がりだ。
『薪にも王にもなれなんだ名も無き灰。故に灰は火に惹かれ、火を求めるのさね』
祭祀場にいた老婆に言われた言葉。
つまり、アイツが敵対した理由は他にあるんじゃねぇか?
火には心当たりがないことはない。だがあれはコラボエリア実装前の話だし、仕様外の現象と言っていい。
俺たちが知らねぇところで何か起きてるんじゃねぇかと考えながら、手痛い出費の計算を始めた。
「ふふふ……さぁ愉しい遊戯はこれからですよ?皆々様方」
~おまけ~
「どうしたんだリーファ」
「アルトさん……実はーー」
「倒せない敵がいる?」
「はい。祭祀場の裏にいる。刀を持ったエネミーなんですけど」
「そいつを倒せばその刀をドロップするかもってことか。……分かった。やってみるか」
「あいつか?」
「そうです。何回か挑んだんですけど足場が悪くて、それに気を取られちゃうんですよ」
「確かに。右側は壁だし、左は崖だしなぁ……崖?」
「ねぇシノン、なにも見えないよ?」
「ダメよユウキ。今のアルトは人に見せられない顔してるから」
どんな顔だコラ。
「まともに闘えねぇなら、周りの環境を利用してやりゃいいんだ」
まずは降り下ろしてきた刀を防いでーー
「はいどーん」
そんな気の抜けた掛け声と共に脇腹に蹴り。
崖下に落ちていく敵を見下ろし、ポップしたウィンドウを操作すれば《打刀》がドロップしたことを伝えてくる。
「えぇ~……」
「ほらリーファ」
「これでいいのかなぁ」
「いいんじゃねぇの?」
ドロップしたってことはシステム的にありってことだろ?
細かいことは気にすんな。
たつじん「解せぬ」
灰「ステンバーイ」
不死者あるある
強そうな敵には取り敢えず壺を投げる。弓でも可。
攻撃パターンの見るために距離を取って左右に動く。
薪の王は《たきぎのおう》でも《まきのおう》でも合っているようなので、お好きなようにお読みください。作者は《たきぎ》と読んでます。
最後なんかいる?サテ,ナンノコトヤラ
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