……想像しただけで心が折れそうだ。
アカギさん
誤字報告ありがとうございます!
「貴公、ここは
「その先に用がある。正確にはその先の冷たい谷にな」
「深淵に濡れた地下墓をなんの加護もなく、か。勇敢なのか無謀なのか。どちらにせよここを通すわけにはいかん。通りたくばその力、この私に示してみせよ!」
次の瞬間には眼前に現れ、その大剣を降り下ろしていた。
咄嗟に《ベルセルク》を盾に防ぐも、その勢いのまま数メートル後ろへと押し込まれた。
重い!大剣や腕力だけじゃねぇ!
「ほう……今のを防ぐか。だがーー」
《ベルセルク》を大剣で抑え込まれ、左手の大盾の突端が腹へと突き刺さり、吹き飛ばされる。
「まだ青い」
「兄ちゃん!ッ!」
駆け寄ろうとしたユウキの眼前に大狼が立ち塞がる。
俺が闘い初めてから、シフと闘ってた大狼。
アイツは俺やユウキじゃなくシフに用があったのか。
「手ぇ出すなよ?ユウキ。コイツは俺たちが束になっても勝機すら見えねぇ化け物だ。でもな、だからって諦めるなんざ死んでもゴメンだ」
「兄ちゃん……」
「力量の違いを知りながらも立ち上がるか。良い戦士だ。私の配下であったなら、その名を馳せることも夢ではないだろう」
「アンタ程の騎士にそう言って貰えるとはな。恐悦至極ってか?けどな、あの
騎士の誉れだの騎士道だの俺には
「そうか……それは残念だ」
「その言葉はそれなりの口調とそれなりの重さを持たせろ。透けて見えるぞ」
「手厳しいな。だが配下であったなら、と思ったのは事実であり本心だ」
……隙がねぇ。どう打ち込んでも盾で防がれ、あの大剣で切り捨てられる。そんな未来しか見えねぇ。
「特異な目を持っているようだが、些か頼りすぎだ」
後ろッ!
間一髪、弾き飛ばされながらも《ベルセルク》を盾に防ぐ。
クソッ!見えてんのに反応できねぇ!速過ぎんだろ!
「成る程。姿勢、重心、視線、他にもあるだろうが、それらから相手の動きを読んでいる訳か。だが如何に相手の動きが読めていようと、反応できねば意味はあるまい?」
そこまで……こいつ、本当にNPCか?
確かに動きが読めていても、相手の動きが俺の反応速度を超えてれば意味がねぇ。
それをたった2合で見切りやがった……!
攻撃も防御も片腕じゃ限界がある。
それでも対人戦やmob戦でハンデを抱えながらも問題なく闘えていたのは
せめて左腕が使えれば……。
「……如何な理由か、本気では闘えないようだな」
「馬鹿言え。本気で闘えない?だからなんだ。確かに武人からすれば最大級の侮辱だろうさ。だけどな、万全じゃないから闘えませんってのが、一番失礼だろうが」
剣を交える以上、万全で挑むのは当然。
武人でなくてもそれぐらいは理解してる。
だが相手の戦意に応えるのも武人だろ。
それにーー
「アンタ程の強敵と闘えんだ。ケツ巻くって逃げるなんざハナから考えてねぇよ」
戦意は十分。
むしろここまでの敵と闘えることに感動すら覚える。
「
マジかよ……まだ上があるのか。
「兄ちゃん……」
なんつー声出してんだよ、ユウキ。
敵が強ぇほど奮い立つのが俺だ。
勝つか負けるかなんざ、闘いの果てに勝手にぶら下がってるもんだ。そんなもんに興味はねぇ。
勝つに越したことはねぇけどな。
左腕が使えない?闘い方が見切られた?
それがどうした。
万に1つの勝機でも、挑むのが人間だ。
「アルト!」
聞き慣れた声に後ろを振り向けば、見慣れた二振りの剣を背負った影。
「キリト、お前……」
しかし、霊廟の中へと入ったキリトを前を大狼が行く手を阻む。
「手ぇ出すなキリト。これは俺の戦いだ。譲るつもりも共闘するつもりもねぇ」
「分かってるよ。俺は見届けに来ただけだ。ま、お前が死んだあとに挑むつもりだけどな」
「応援に来たのか、ハイエナしに来たのかどっちだよ」
大方、課題を投げ出してきたんだろうな。
アスナの暗い笑顔が目に浮かぶな、こりゃ。
「随分と嬉しそうだな」
「ハッ!馬鹿言え。情けねぇ姿を見せたくねぇ奴が増えただけだ。嫌でも奮い立つだろうがよ」
相手の剣先まで集中しろ。何一つ見落とすな。
「同じ手が私に通用すると?」
「あれこれと手を出す趣味はねぇからな、1つの技を磨き上げてこその技術だろ?それに付け焼き刃なんざ、アンタ相手に通用するとも思ってねぇ」
獣のような鋭い爪も牙も持たない人間だけの特権。
「その意気や良し。全力で来い!」
「言われるまでもねぇ!」
どれぐらい打ち合ったんだろう?
騎士の姿が霞めば、それに反応したアルトが剣を振り上げ火花が散り、そこでようやく騎士の攻撃を防いだのだと理解できる。
俺ならどう戦うだろう。
相手の動きを見てからじゃ遅すぎる。
かといって、アルトみたいに相手の動きを正確に読める訳じゃない。
俺ソロじゃ勝てない相手かも。
この闘いは、騎士相手に一人しか闘えないんだろう。視線こそ向いていないけどシフと戦っている大狼が絶えずこちらを視界に入れている。
加勢しようとすれば、間違いなく割って入ってくる筈だ。
それにあの騎士は、SAOの攻略組のトッププレイヤーが闘って一太刀入れれるかどうかの相手だ。ここに来て一気に攻略難易度が上がったな。
「ォォォォォォ!!」
「ァァァァァ!」
言葉と言うよりは咆哮に近い雄叫びを上げ、大剣が火花を散らす。
知覚を超えたスピードにアルトもよく喰らい付いてる。
でも1歩、それでも1手足りない。
原因は体を動かす度に慣性で振り回される左腕。
アイツの本来の闘い方は、大剣と短剣の二刀流。
相手の攻撃を短剣で防ぎ、その隙を大剣で突く。
異形とも言える型に、ALOでも無類の強さを発揮していた。でも本来の闘い方が出来ないのは、本人にとっても悔しく歯痒いはずだ。
「キリト……兄ちゃん、勝てるよね?」
「大丈夫さ。アイツの強さは力だけじゃない。システムを凌駕する意思、そして鋼の心なんだからさ」
アイツは負けない。アイツに勝って良いのは俺だけなんだ。
それだけは、誰にも譲るつもりはない。
横凪ぎに振るわれた《ベルセルク》を掻い潜られる。
「見誤ったな?」
「そっちも、な!!」
手首を返し、柄で凶刃を逸らす。
テコの原理で振るわれた刃は大盾に防がれる。
一進一退。
あれだけの盾だ。構えれば視界の殆どは塞がれてるはずなのに、正確かつ的確にこちらの攻撃を防いでくる。
……いや、あの盾で防ぎやすい場所に誘導されてると言った方が正確かもしれない。
相手の攻撃を誘導するのは、さして難しいことじゃない。
視線や体勢からわざと隙を作り、そこを攻撃させる。
言ってしまえばそれだけだが、アイツの恐ろしいところはここまで打ち合ってもそうだと悟らせないこと。
最善も次善もそこを攻撃させるように帰結している。
言ってしまえば、詰め将棋のようなものかもしれない。
圧倒的技量差。
ここまで差があるのだと見せ付けられてしまえば、笑いしか出てこない。
だが諦める理由にはならない。屈する理由にもならない。
それでも闘うのだと吼え続けることしかできない。
吼え立てる激情に身を任せ、剣を振るうこの時こそが俺に生きている実感をくれる。
……我ながら生まれてくる時代を間違えたかもな。
突き出された大剣を《ベルセルク》の腹で受けつつ後ろへと流し、柄頭を顔面目掛け突き出せば首を傾けるだけで躱され、そのまま斬り上げようとすれば勢いが乗る前に盾で防がれる。
「……このままでは、埒が明かんな」
「どうしたよ急に」
「なに。このまま続けても共倒れになるのが目に見えている。次の1合、全身全霊をかけた決着を望む」
考えてることは同じか。答えは決まってる。
《ベルセルク》を後ろへと流し、構える。
アルトリウスも盾を捨て、両手で大剣を構える。
放つのは俺が信を置く大技《ナインライヴス》。
相手がどう動くかは分からないが、突進技であるこっちの方が速い。
合図はない。それでも俺たちは全くの同時に動き出した。
OSS特有の光を纏った《ベルセルク》を振るいかけ、アルトリウスが飛び上がった瞬間に剣の軌道を変える。
真上から振り下ろされた大剣と《ベルセルク》がぶつかり合い、金属が砕け散る音が響き渡る。
「……見事」
背中合わせになったアルトリウスの声が沈黙を破った。
「まさか、我が王より賜ったこの剣を折る戦士が現れようとは。貴公、名を聞かせて貰っても良いか?」
「……アルト、だ」
「奇しくも私と同じ名を持ち、私と同じく狼を友とする者か」
側に歩み寄った大狼に跨がり、こちらを見下ろす。
「力ある者よ。この先は深淵に濡れた亡国。深淵に呑まれたくないのならば火の力を得よ。火は古くから闇を切り裂くものが故に」
そう言い残し、狼騎士は霊廟から去っていった。
……なんとかなった、か?
立ち続ける気力もなく、その場にへたり込んでしまう。
「アルト!」
「兄ちゃん!」
「……ようお前ら、無事か?」
仰向けに倒れそうになる体をシフが回り込み、その体で受け止めてくれる。
「戦ってたのはお前とシフだけだろ」
「そうだったか?アドレナリンが分泌されまくって目の前のことしか頭に無かったからなぁ」
アドレナリンは有限らしく枯渇するとうつ病になりやすいとか。
「まぁいいや、それよりそれどうするんだ?」
「これなぁ」
刀身の半ばから折れ、耐久値限界でポリゴンとなって散った《ベルセルク》。
……やっちまったなぁ。リズにしばかれるかも。
最後の1合でお互いの得物が折れる結果になった。
結局、ダメージも入んなかったし。物理ダメージ完全カットか?あの盾。
そういや『我が王』とか言ってたな。《薪の王》とは違うのか?
……駄目だ。頭回んね。
「取り敢えず、今日はここまでだな。篝火も出たし」
「そういや、課題の方はいいのか?」
「…………手伝ってくれるとありがたいです」
駄目だこいつ。
ユウキとキリトの肩を借りながらそう思う。
深淵に呑まれたくないなら火の力を得よ、か。
どういうことだ?
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興味がある方は、ぜひどうぞ。
アルトVSアルトリウスの影でシフVSシフの闘いがありました。描写しきれず申し訳ない。