sword art onlineー黒と灰ー   作:戒斗

84 / 115
かなり飛ばした感がある。
文章力もだいぶ落ちたような……


第8火:亡国の王

あぁ~頭痛ぇ……

 

風邪ではない。物心ついた頃から風邪をひいたことがない。

では何故かと言えば、昨日のアルトリウスとの闘いが原因だ。

 

情報過多で脳がSOSでも出してんだろ。

リアルに復帰してから続く頭痛に寝ることもできなかった。

 

「よう颯真、随分と体調悪そうだな」

 

「うるせぇ和人、ただでさえ苛立ってんだ。あんまイラつかせんな」

 

「ははっ、その状態でも不良首席様はテストの成績は上位みたいだな」

 

「うっぜぇ……」

 

誰が不良首席だ。

 

「言葉遣いは汚いし、制服も着崩してる癖に勉強は出来るからな。教師陣もどう注意していいか分からないって言ってたぞ?」

 

「言わせとけ。結果さえ出してりゃ口うるさく言われることはねぇんだよ」

 

「それはそれで問題があると思うけどなぁ」

 

「あと二ヶ月もすりゃ卒業だ。それまでの我慢だろ?」

 

卒業後はSAO事件前のように大学に進むのか、それとも就職か。どっちもパッとしないんだよな。

 

「卒業、か。なんだかなぁ」

 

「進学して学歴に箔つけるか、さっさと働いて安定して収入を得るか。それとも親の脛を齧るーー」

 

「それはない」

 

「違いない」

 

どちらにせよ自分で食い扶持(ぶち)を得ないことには話にならねぇけどな。

 

「にしても火の力を得よ、か。心当たりはあるか?」

 

「火の力……松明、じゃねぇよなぁ。エンチャントでもねぇだろうし、宝箱を開けるための鍵みてぇなもんか?違うな。どっちかって言うと通行手形に近いか?」

 

そのまま進もうとすれば何かしらのバステがあるだろうし、下手したらそのまま進めねぇってこともある。

 

まさか詰みか?

……いや待てよ?あの狼騎士は何て言ってた?

 

『力ある者よ。この先は深淵に濡れた亡国。深淵に呑まれたくないのならば火の力を得よ。火は古くから闇を切り裂くものが故に』

 

人間は古く火、つまり光を得ることで闇を照らしその活動範囲を広げた。

 

それに(なら)うとしたら、やっぱり松明か?

それもただの火じゃ駄目だ。

 

深淵を祓うとしたらやっぱり聖火だよな。

 

「祭祀場の黒ローブの女」

 

火守女(ひもりめ)?だったけ?彼女がどうかしたのか?火守って言うくらいだから火の力について何か知ってるかもしれないけどーー」

 

「その通りだ。ま、それで何もねぇなら正真正銘、詰みだけどな」

 

やっぱり鍵は灰か?あの聖堂以来姿が見えねぇんだよな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最初のエリア、火の祭祀場へと戻ってきた訳なんだが……。

 

火守女の前で跪く灰。その灰に手を翳した火守女。

身に纏った防具は以前と同じ、黒い鎧に擦りきれた黒ローブ。

だが、あちこちが燃えているように赤い光を放ってる。

 

あれには見覚えがある。

火の力ってのはまさか……。

 

いや、あり得ねぇ。あれは仕様外の力であって、プレイヤーがホイホイ使えるもんじゃねぇ。それにーー

 

「攻略のために命を削る?SAOじゃねぇんだぞ」

 

そう、あの力の代償は己の命。

マップ攻略のために自身を生け贄に捧げなきゃならねぇなんざSAOでもなかった。

 

灰は立ち上がり、こちらに一瞥もくれず篝火の前に座り込んで靄のように消えた。

どっかに転移したのか?

 

……まぁいい。

 

「おい火守女」

 

「またお越しになられたのですね。ですが灰の方がーー」

 

「それはどうでもいいんだよ。深淵を歩くための火の力。なにか心当たりはねぇか?」

 

ここでもし何もねぇなら敵対してる灰に対する贖罪クエストでも見つけねぇ限り詰みだ。

 

救済措置ぐらいは用意してあるはずだ。

 

「深淵を祓うの火の力……私は火守女。火を保ち、見届ける者。そのような力は持ち合わせていません」

 

だよなぁ。

 

「ですが、かつて深淵から生きて帰った火守女がいたと聞きます。彼女のソウルがあればあるいはーー」

 

 

 

 

というわけで、祭祀場の裏にある塔を登ってるわけだがーー

 

「長い……」

 

ただひたすらに螺旋階段を登るのは苦行だ。

癒しと言えば、右手側の壁が壊れて崩れたのか時たま覗く絶景ぐらいか。

 

キリトは祭祀場で待機。

前に進める算段がつき次第、今日来れる奴らにメッセージを飛ばす手筈になってる。

 

黙々と足を進めていけばようやく頂上へと辿り着いた。

 

狼騎士に折られた大剣はSAOで振るっていた《ファラン》を模した大剣《ドゥンケルゼーレ》に持ち変えた。

意味はドイツ語で《暗い魂》とでも言えばいいか。

 

これと短剣を組み合わせて使ってたが左腕がこんなんだから、ストレージに突っ込んだままだったんだが、《亡者狩りの大剣》は強化出来ねぇし火力を優先した結果、こいつを引っ張り出したわけだ。

 

そんなこんなで鉄格子の扉を開き、三方を壁に囲まれた床の出っ張りを踏めばどういう原理か上へと動き始めた。

 

摩訶不思議なエレベーターが止まり、また階段を登れば巨大な釣り鐘が鎮座し、その脇に火守女と同じローブを纏った死体が転がってる。

 

近くに寄ればウィンドウがポップアップし、調べるのコマンドをタップ。

 

《穢れた火守女の魂》

 

これで終わりか。呆気ねぇな。

 

長い階段を登ったにも関わらず用事が一瞬で済む。

割りに合わねぇな。

 

エレベーターを降りて戻ろうとしたんだがーー

 

「閉まってる?」

 

外側から鍵をかけられたのか、ビクともしねぇ。

 

「へへっ。すまねえなぁ、あんた。だけど気を付けな。好奇心は猫をも殺す。あるもんだぜ近づくべきでないってのは、もっとも少し遅い忠告だったかな?ウヒャヒャヒャヒャ!

もう諦めて、そこで干からびていけよ。周りは女ばかりだ。むしろ男の本望だろう?ああ、後のことは心配するなよ。あんたの死体から、しっかり全部剥いでやるからパッチの老舗をご贔屓に願うぜ?ウヒャヒャヒャヒャッ!」

 

鉄格子の隙間から《ドゥンケルゼーレ》を突き入れるが、顔面スレスレのところで鍔と鉄格子がぶつかる。

 

「よく回る口だ……穴ぁ開ければもっと回るんじゃねぇか?」

 

「ウヒャ……ウヒャヒャヒャヒャ!強がりもそこまでにしとけよ。そこから出れない以上、あんたの剣は届かねぇ。じゃあな、くたばった頃にまた来るぜ」

 

遠ざかっていく背中に苛立ち紛れに鉄格子に蹴りをかますが、《Immortal object》の文字。

……久々に見たな。

 

クソッ、気ぃ抜いてたな。

道の両脇は下に通じてるが落ちれば即死だろうし、死ねば折角手に入れたアイテムをドロップする羽目になる。

いやまぁ、1回死んでまた戻ってくるってのも1つの手なんだけどな。

 

……ん?ありゃ何だ?

 

下を覗き込めば、壁から半ば飛び出た石造りの棺。他にも何ヵ所か飛び出てんな。

あれを伝って降りろってことか?

 

それでもそれなりの高さがあるから、飛び移れたとしてもダメージは確実だろう。それに踏み外せば一気に下まで真っ逆さまだ。

 

「ま、なるようになるよな」

 

念の為《ドゥンケルゼーレ》を装備から外し、装備重量を減らす。

 

落下ダメージの計算は落下距離と滞空時間から算出される。

装備重量を減らしたからといって、ダメージが減るわけじゃねぇが、軽くなればなった分だけ手段も増える。

 

アクロバティックなのはあんま趣味じゃねぇんだけどな。

 

 

 

なんとか下まで降り、外へと出れた。

 

中は黒ローブを来たミイラ化した死体の山。

火守女の成れの果てなのか火守女になれなかった奴の末路なのかは分からねぇが、回復量を増やす指輪が手に入ったから良しとする。

 

「よう、アンタが言ってたのはこれか?」

 

「……はい。深淵に呑まれながらも命からがら逃げ延びた火守女のソウル。これがあれば深淵から身を守る火を造り出せるかもしれません」

 

そう言って火守女は螺旋剣の突き刺さった篝火に近付き、その炎を掬い上げた。そしてその炎をキリトの胸に押し当てれば、吸い込まれるように消えていく。

 

「これで深淵からは身を守ることが出来ますが、あまり離れすぎないよう注意してください」

 

効果範囲が決まってんのか。

離れすぎると効果範囲から外れて深淵に呑まれる、と。

 

この感じからすれば、呑まれれば即死か?

 

「それで今日来れるのは?」

 

「…………」

 

「おい目ぇ逸らすな……まさか」

 

「そのまさか」

 

「おいマジかよ……今日は止めとくか?」

 

回復役(アスナ)援護役(シノン)もいねぇ。

シフはSAOの教会の時みてぇな二の舞にはしたくねぇし。

 

「「………………」」

 

「「逃げるは恥、退くは負け、常に前向け」」

 

攻略組として二人で動いていたときの標語。

と言うより、隣にいる奴に尻込みしてると思われたくなかっただけなんだけどな。

 

「やるぞキリト」

 

「俺たちなら負けないさ」

 

拳を突き合わせ、狼騎士と闘った霊廟へと転送される。

 

 

 

 

 

 

 

「気を付けろ!再生するぞ!」

 

HPがゼロになっても少し経てば、飛び散った骨が集結して戦闘態勢に入る骸骨剣士。

 

通常の剣を振り回してくる奴もいれば、片腕でファルシオンを振り回す文字通り骨のある奴もいる。

 

ファルシオンってのは切っ先に向かうほど刀身が幅広になってる剣のことだ。重心が切っ先にあるから一撃の重さに重点が置かれ、民衆が大量生産され安価で農具のように簡単に手に入れることのできた剣だ。

 

「アスナが来なくて正解だったかもな!」

 

橋の上で弓で狙われながら、ローブを巻いた骸骨剣士を橋の下に蹴り落としながら叫ぶ。

 

カーサスだったか?そこの兵士だったのかもな。

恐らく階級ごとに支給された装備が違うみてぇだな。明らかに手強い奴に限って、ローブを巻いてるし武器の質も違う。

 

ホレイスとはぐれたアンリがいて、どこぞのトレジャーハンター映画のような大玉に階段を降りてるときに襲われ、篝火を灯したあと水路のような場所に出た。

 

「ヒデェ臭いだ。肉でも腐ったか?」

 

「腐る肉もない敵ばっかりだけどな」

 

キリトと背中合わせになりながら前に進む。

 

横ステップの滞空時間が以上に長いショーテル持ちの骸骨剣士を叩き潰し、見た目が完全にオンボロな橋に差し掛かったとろで、再びアンリを見かけた。

 

「ああ、貴方たちでしたか。結局あれから、ホレイスとは出会えませんでした。でも、私にも使命があります。ただあの子たちのために、一人でも向かうべき使命が……貴方たちも、きっとそうなのでしょう?ああ、強い人だ。私も、そうあろうと思います。貴方の旅に、火の導きのあらんことを」

 

ああ、それと、と付け加え

 

「覇王ウォルニールは深淵に呑まれる前、とある聖職者たちから深淵から身を守るための腕輪と聖剣を奪ったと聞きました。何かのお役にたてば幸いです」

 

つまりそのウォル……ニール?とか言う奴は深淵を恐れてたっつーことか?

 

橋を半ばまで来たところで、後ろからこのエリアで聞き慣れた金属音が聞こえる。

 

恐る恐る後ろを見れば、夥しい数の骸骨剣士の姿が見える。

 

恐らくこの前の部屋で散乱してた骨が橋の半ばに差し掛かったことがフラグになり、骸骨となって殺到してきたってところだろう。

 

「橋の上で相手にできるかぁ!」

 

そう叫んだところで前に視線を戻せば、橋のロープ目掛け剣を降り下ろそうとする灰の姿。

 

俺たちごと下に落とす気か!

 

無情にも降り下ろされた剣は橋のロープを切り裂き、支えを失った橋は真っ二つに折れ、上にいた骸骨たちは崖下へと落ちていった。

 

俺は崖の縁にギリギリ手が届き、キリトは俺の左手を掴んだまま宙吊りになってるけどな。

 

「灰の野郎……どういうつもりだ」

 

「お前がいたから殺しに来たんじゃないのか?」

 

「いいからさっさと上に登れ」

 

……俺の頭を踏み台にしろだなんて一言も言ってねぇけどな!

あとで崖下に落としてやる。

 

登りきったキリトの手を借り、俺も崖の上へと登ることができた。

 

「なぁ黙って橋にしがみついてても落ちずに済んだんじゃないか?」

 

見れば、残った橋の板とロープが梯子のように垂れ下がってる。

 

「それよりも灰の野郎どこ行った」

 

「この先だろ」

 

物々しい扉を潜れば、金の調度品が無造作に転がされた広い部屋。

 

その中心には頭蓋骨を模した盃が鎮座してる。

そしてその前には盃へと手を伸ばす灰。

 

止める間もなく灰の手が盃に触れ、闇が盃から吹き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キリト無事か?」

 

「……ああ。けどどこなんだ?ここ」

 

坂道の上にいるのは間違いねぇけど、先が暗すぎて見通せねぇな。

 

「……ッ!アルト、下」

 

王冠を戴いた巨大な骸骨。

右腕には1つ、左腕には2つの黄金の腕輪が填められている。

 

《High Lord Wolnir》

HPバーは3本。

 

こいつがアンリの言ってた覇王ウォルニールか。つまりここは深淵の中か。

 

先の見通せない闇の中。

闇は無そのものであると言う見方もある。ウォルニールは闇じゃなく無を恐れてたということだろうな。

 

坂を這いずって登ろうとするウォルニールに灰が剣を振るうが、硬すぎるのか弾かれてる。

ダメージも碌に通ってない。

 

降り下ろされた右手を躱し、俺とキリトも剣を振るうが同じように弾かれる。

 

クソ硬ぇ!カルシウム摂り過ぎだろ!

 

「……!アルト!腕輪だ!両腕にある腕輪を狙え!」

 

「腕輪?……あぁ!成る程な!」

 

深淵から逃げるために聖職者たちから奪った聖剣と腕輪。

ウォルニールが深淵に呑まれて尚、逃げようと足掻いてるってことは、その聖剣と腕輪のお陰か。

 

「おい!腕輪を狙え!」

 

灰にそう伝えれば了承したように頷いたあと、降り下ろされた左手を避け、腕輪を攻撃し始める。

 

灰との初の共闘か。

 

なにかしら心変りかあったのか、こっちを狙う素振りもない。

 

それはそれで好都合なんだけどな。

キリトと同時に振るった一撃で腕輪が破壊され、ウォルニールは大きく後ろへと下がる。なにかに引っ張られたと言ってもいいかもしれない。

 

それに腕輪を壊しただけでバーが1本消し飛んでる。

 

成る程。バー1本辺り腕輪1つか。分かりやすい。

 

確かに攻撃範囲は広いが大振り。動きを見てからでも十分に間に合う。

それに腕輪自体の耐久値もさして高くねぇ。

 

攻略法さえ判れば温いボスだな。

 

灰が左腕の腕輪を破壊し、最後の1つを俺とキリトで壊せば、ウォルニールが闇の奥へと引きずり込まれるように消えていく。

 

呆気ねぇな。

 

視界が白に染まったかと思えば、元の盃のあった部屋に戻り、噴出した黒い煙が盃の中へ吸い込まれていく。

 

「あれ?灰は?」

 

辺りを見渡しても姿が見えない。

 

部屋の奥を見れば閉じられてた扉が開いてるし、先に進んだのかもしれない。

 

「篝火もあるし、ここまでにしよう」

 

「区切りもいいしな」

 

地下墓はあんまり探索できなかったな。

広すぎるってのもあるが人手が足りねぇのが原因だ。回復役が一人でもいればまた違ったんだろうが。

 

「にしてもゲームばっかやってるな、俺たち」

 

「ゲームして金を稼げんなら、言うことなしなんだけどな」

 

「ゲーム廃人」

 

「そう言うキリトもだろうが」

 

転送しますか?のウィンドウにOKをタップし、キリトと拳を突き合わせたと同時に視界が白く染まった。




大分はしょった上に大半が祭祀場での出来事。
早く王たちの化身まで行きたいなぁ。




覇王「腕輪と聖剣があれば深淵から逃げられる!」
灰「前に進めないから、さっさと堕ちろ」
王様死すべし、慈悲はない。





豆知識として、3つの腕輪を壊して覇王を倒すとなにかに引き摺られるように奥へと消えていきますが、壊さずに倒すと他のボスのように消えます。
腕輪を1つ残して頑張って削って検証しました。
死んだ回数は10回から数えてません。

HPが50%を切ると骸骨戦士と車輪骸骨が涌くので、最初に右腕の1つだけある腕輪を壊してから、左腕の腕輪を2つ壊せば、すぐに終わります。
注意としては腕輪を同時に壊してしまうと、1つ分のダメージしか入らないことですかね。
あと口から出す黒い煙にも注意。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。