sword art onlineー黒と灰ー   作:戒斗

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オーディナル・スケール編です。
まだ見てない人にはネタバレになっちゃいますね。

……大丈夫かな?


欲しいアイテムのために篝火からマラソン
地獄だ…。


アカギさん誤字報告ありがとうございます!


オーディナル・スケール編
Prologue


次世代ウェアラブル・マルチデバイス《オーグマー》

 

拡張現実(AR)を最大限に利用したマシンであり、インカムに似たそのデザイン性と覚醒状態で利用できる利便性と安全性から瞬く間に世間に浸透した。

 

《オーグマー》の台頭に一番影響を受けたのは携帯会社だろう。《オーグマー》を起動すればメッセージを送れるし、スマートフォンの強みだったアプリが《オーグマー》用に開発されている。

 

「シフ、足を動かしてみろ」

 

『ガウ』

 

さらに《オーグマー》の人気が爆発した理由はARMMORPG《オーディナル・スケール》の存在が大きい。

 

ランキングの順位を上げれば、《オーグマー》のスポンサー会社から様々な恩恵が受け取れる。

人気商品の優先購入券だったり、飲食店の割引や無料サービスetc.etc……

 

人間の欲を利用した上手いやり方だと言うのが俺の見解。

 

「反応がまだ遅いか……油圧式だと馬力はあるが即応性がないのがなぁ」

 

VRとAR

住み別けはできていると思うが、いかんせん現実で恩恵があるのがデカイ。VRにダイブする人間の数が減少傾向なのがその証拠だろう。

VRは駄目だがARならいい、そういう親御さんも増えてんのが影響してんだろうな。

 

「骨格は大体出来上がってんだが、やっぱり動かすとなると問題は動力と関節だよな。装甲はスライド式にすればある程度の自由性が確保出来んだが……」

 

VRだと脳から体への伝達信号を塞き止め、ゲーム内のアバターに反映する。つまりリアルで何があっても気付くことが出来ないのが最大の欠点。死銃事件が良い例だ。

 

反面ARならば覚醒状態で利用でき、ゲームだけでなく《オーグマー》が出回る前にスマホでやっていた動画やネットの視聴、さらには摂取カロリーの計算など利便性に富んでいる。スマホのように第三者に見られることもないしな。

 

「動力は出力を程度確保してぇから鉛を使うか?……いや、それだと重量がなぁ」

 

そして最近SAOサバイバーたちに取材が来た。

主に最前線で戦っていた攻略組にな。

 

《SAO事件全集》なんて陳腐な名前の本になるそうだ。

 

「駆動系は人工筋肉で解決できるとして……」

 

内容は攻略組に参加していたプレイヤーの名前と所属ギルドなぜ攻略組になったのか、など。

出版され次第、取材を受けたSAOサバイバーには無料で配布されるそうだ。正直言っていらねぇけどな。

 

『ガウ』

 

「メール?明日奈から?珍しいな」

 

『今日は参加するの?キリトくん寂しがってるよ?競う相手がいないって』

 

『筋肉つけてから出直せって伝えておいてくれ』

 

「さて……」

 

『負けるのが怖いのか?だって』

 

早ぇよ。つかキリト……。

 

『キリトに直接電話してやるから覚悟しとけって伝えろ』

 

今日の夜九時……間に合うかギリギリだな。

 

《オーディナル・スケール》にもレイドボスが存在する。

参加し戦闘に貢献できればランキングに関係するポイントが貰える。

 

とはいえリアルでの運動能力が問われるARは、あのモヤシには厳しいだろう。

 

『ガウ』

 

「楽しそうだって?そりゃそうだ。弄るネタが増えるんだからな。ともかく集中も切れた。今日はここまでにして帰るぞ」

 

キリトはARを渋々やってる印象がある。

VRじゃ無類の強さを発揮するアイツもARじゃ運動不足のモヤシだ。真面目に運動すれば結構いい線いくと思うんだけどな?

 

話を《オーグマー》に戻すが、SAOサバイバーがすし詰めにされている帰還者学校に在籍してる奴ら全員に《オーグマー》が与えられた。無料でだ。

 

裏がありそうな話だがSAO事件が原因でゲーム自体を敬遠してる奴もおり、そのトラウマを克服する為と言うのが学校側の主張。

 

ゲームのトラウマをゲームで克服する。

荒療治な気もしなくはない。

 

使えるモンは使わせてもらう。それにーー

 

『ゥ?』

 

「なんでもねぇよ」

 

触れはしないがリアルでシフと話せんだ。

使わねぇと損だろ。

 

 

 

 

 

 

「直接電話するってさ」

 

「アスナ……」

 

「最近アルトの奴付き合い悪ぃよなぁ」

 

最近のアイツは機械工学の本とか読み漁ってるってシノンが言ってたな。何をするためなのかは分からないけど。

 

「しっかしここ最近、VRする連中も減ったよなぁ」

 

「原因は《オーグマー》だろ?ゲームするだけで色んなサービスを受けれるんだから、やればやるだけお得だろ?」

 

「その割りにはあまり乗り気じゃないよね?」

 

「俺は良いんだよ」

 

どういうわけかVRより燃えないんだよな。

VRとの違和感が抜けないというか、差異に戸惑ってるというか。そんな感じ。

 

「そうそう!《オーグマー》と言えば俺たち【風林火山】も《オーグマー》を買い揃えてよ。本格的に《オーディナル・スケール》を始めることにしたぜ」

 

「その心は?」

 

「VRよりARの方が出会いがある!」

 

スクルドに刺されてしまえ。

……アルトの口の悪さが伝染したかな?

 

「ホント懲りないわね、アンタ」

 

「シノのん、いらっしゃい」

 

「ええ、お邪魔するわ」

 

「アルトの様子はどうなんだ?」

 

「問題ないみたいよ。ただ落ちた筋肉を戻すために筋トレの日々みたいだけど」

 

一ヶ月近く動かしてないとなるとそうだよな。

 

そう言えばアルヴヘイムに入ってくるプレイヤーが少なくて手応えのあるやつがいないって嘆いてたな。闘争が生きる糧みたいなアイツにとって死活問題かもしれない。

前のPvPの大会だって不完全燃焼で不機嫌になりながら優勝してたし。お陰で朝まで付き合わされた。

まぁアイツが治ったのはいいことなんだけど。

 

「ユウキは?」

 

「風邪を引いたらしいわよ?昨日アルトがお見舞いに行ってるから」

 

「甲斐甲斐しいねぇ」

 

「年寄り臭いぞクライン」

 

片道十時間位か。左腕が治ったばかりなのに随分アクティブだな。じっとしてるアイツも想像できないけど。

 

「アルゴは?」

 

「ロスリックの情報をまとめて、あちこち飛び回ってるみたいよ。まぁアルヴヘイムに入ってくるプレイヤーが少なくなってるから商売繁盛とはいかないらしいけど」

 

ロスリックをクリアできたのは俺たちが最速だった。その後もクリアしたパーティの数も増えたけど、途中で攻略を止めたプレイヤーも少なくない。

 

火を消す選択をした灰の協力者である俺たちは、あのあともロスリックに行ってみたが暗闇のまま。

『火継ぎは終わり、世界は暗闇に閉ざされた』

そんなメッセージが出てくるだけだ。

 

後味の悪い最後だったがアルト曰く

『世界創世記曰く世界の始まりは暗闇だったんだと。もしその通りなら、いずれ人の手で新しい世界が始まるさ』

らしい。

 

さすが歩く辞書、人間図書館、生き字引。

本人の前では口が裂けても言えないけどな。どこかの山に埋められるか海に沈められそうだ。

 

 

 

 

 

「ッキシ!……誰か噂でもしてんのか?」

 

四月に入ったが肌寒い夜が続く。体調管理はちゃんとしねぇとな。せっかくリアルでも戦えるようになったんだし、楽しめねぇと損だ。

我がら危ねぇ思考だけどな。

 

「《オーディナル・スケール》起動」

 

《オーディナル・スケール》の設定はやや複雑だ。

まず世界征服ならぬ次元征服を企む【ユナイタル】が送り込んでくる生物兵器、通称【DBA】。それに対抗する国際防衛組織【ジ・オーダー】、それに所属する【アダプト】。

プレイヤーはアダプトの一員となりDBAと戦うってのが、大まかなストーリー。

 

アダプトの持つ武器はDウェポンと呼ばれ、DBAに対抗できる唯一の武器。だがDウェポンはプレイヤーにも効果があり、ジ・オーダー内で勢力が分散する原因となった。

DBA殲滅を第一優先とするガーディアン。

人類同士の戦闘も辞さないアグレッサー。

秘密裏にユナイタルとの共存を目指すオービター。

 

殆どのプレイヤーはガーディアンに所属する。

もちろん俺はーー

 

「ランキング四桁が二人、いいカモだな」




オーディナル・スケールの大まかな設定でした。





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