投稿する度にお気に入りの数が減っていくこと
読者の期待に応えられず申し訳ない
「ふぁ~あ」
「デカイあくびだな」
「最近寝不足でな」
《オーディナル・スケール》で戦うのも面白いが、やっぱり
原因は《オーディナル・スケール》起動時にDウェポンとなるコントローラーにある。
手の中に収まるそれが武器になる特性上、武器同士で打ち合えないことだ。武器の重さも再現できないのもそうだな。拡張現実の限界。
流石に本物を持って歩くわけにもいかねぇしな。
そうそう武器は二種類ある。
剣と銃。接近戦か射撃戦。
どちらも相応のリスクを払いそれに見合ったリターンを得る。どっちを選ぶかはプレイヤー次第だが、いつでも切り替えることはできる。
俺は剣を使ってる。銃は肌に合わない。
「颯真もやっぱり《オーディナル・スケール》やってるのか?」
「やっぱりとはなんだ。……まぁ、やってるにはやってるがボチボチだな。他にもやることがあるから、あんま時間がとれねぇんだよな」
「朝田から聞いたぞ、機械工学の本とか読み漁ってるって」
「ん、まぁな……お前ならいいか」
「なにがだ?」
「他言無用だぞ?」
そう言って連れてきたのはとある大学の研究室。
SAO事件前に俺が通っていた大学だ。
「教授は出払ってるみてぇだな。かえって好都合だ」
「こんなとこで何を?」
「ま、見てからのお楽しみだ」
間借りしてる一角にあるシートを掛けられた物体。
それに手を掛け一気に引き剥がす。
「っ!これって……」
「まだ試作の域をでねぇが、現実におけるシフの体……になる予定だ」
まだ内装だけだがフォルムは狼のそれ。
チタン製の骨組みに人工筋肉を使い軽量化と耐久性を向上、光ナノファイバーでCPUと各センサーの伝達を効率化した。
外装は体を丸めるなどの動作を滑らかにするために細分化、スライドさせて格納させるのに手こずってる。
「一体いくらするんだ……これ……」
「さぁな。教授もいい経験になるっつって費用はあっち持ちだ。今のとこ順調だが問題は動力。車とかの鉛を使ったバッテリーじゃ軽量化した意味ねぇ、蓄電池じゃ嵩張る上に稼働時間に不安がある」
俺の仕事はシフが満足できるように仕上げること。俺が納得出来るものじゃねぇと安心してシフに預けれねぇ。
「いやでも、前通ってても今は部外者だろ?研究室を好き勝手使っていいのか?」
「…………それはそれ、これはこれ」
「国家権力のお世話になるのは嫌だぞ!?」
「教授から許可はもらってる。大丈夫だ」
恐らく、多分、きっと、
「もう一度言っておくが他言無用だぞ。アイツらにはサプライズで驚かせたいからな」
「《オーディナル・スケール》にSAOの階層ボスが出てきてるのは知ってるか?」
「え?そんな告知はなかったろ?」
「その筈なんだが、俺が戦ったのは《イルファング》に《アステリオス》だけだが、ネットの掲示板じゃ結構騒がれてる。『SAOを追体験できる』ってな」
SAO事件全集が発売されて飛ぶように売れた。その事でSAO内で起きた戦いの記録を誰もが目を通すことになる。
となると次に連想するのはなにか。
乗り遅れたSAOを体験したみたい。
そこに帰結する。
良くも悪くもSAO事件は衆人観衆の目に触れた事件であり、他人事ではなかった。
もしかしたら自分もSAOに囚われていたかもしれない。
そう考えつつも心のどこかではSAOに憧れのようなものがあったのかもしれない。SAO事件のあとに発売されたALOの人気がその証拠だろう。それにあのデスゲームがクリアされたのも追体験してみたいと思わせる一因かもしれない。
『これはゲームであって遊びではない』
SAOが発表されインタビューを受けた茅場の言葉。
今ならあの言葉の意味が分かる。あの世界で確かに生きていた。笑い、怒り、嘆き、泣き、そして戦った。
遊びだなんて感覚は微塵もない。生きるために誰もが必死だった。生き延びるために剣を取った。それを聞き齧っただけの奴らがあの世界を体験したみたいだなんてーー
「すごい怖い顔してるぞ、大丈夫か?」
「なんでもねぇさ」
SAOに関してはいい思いでばかりじゃねぇ。だからってそれを土足で踏み荒そうなんざ虫が良すぎると思わねぇか?
もっとも?それは個人的な意見だし、それこそ身勝手な話かもしれねぇけどな。
「少し根を詰めすぎじゃない?」
「悪いが手は抜けねぇ質でな」
外装に使う金属、総重量から計算できる運動性能etc……。
その他にも手を加えないといけない箇所はゴマンとある。
俺もシフも満足できるものを仕上げないといけない。
「気分転換に外の空気でも吸ってきたら?」
「……そうだな」
朝田の提案に乗り、バイクに火を入れる。
そういや、アキバのUDX広場でSAOボスが出るんだったか。開始三十分前に告知とは運営も鬼だな。
ちらりと腕時計に目を落とせば十時少し前。
時間も時間だし戦いは終わったあとか。
結局、運営からSAOボスを出現させる意図の説明はなかった。何を考えてんだか。
都内のコンビニで休憩がてらコーヒーを飲んでると携帯の着信音がなった。キリトから?
「《カガチ・ザ・サムライロード》が出た?」
『ああ、颯真の言う通りSAOのモンスターがボスとして出てきてるみたいだ。しかも貰えるポイントも他のモンスターよりも多い』
「なんの意図があってSAOのボスを……」
《カガチ・ザ・サムライロード》は第十層の階層主だった。
主催者にSAO関係者がいるのか?
単なる運営のサプライズか、別の目的でもあるのか。
《オーグマー》に関してもそうだ。
VRは仮想と現実の区別している。リアルで叶わないことをVRで、と願う奴らもいる。
だが《オーグマー》ーーARは仮想と現実の垣根を越えるものだ。VRと同じように画面の向こう側にいたキャラに自分がなれる。だが下手を打てば傷害沙汰になりかねない。戦っているのは現実であり生身の自分だ。
プレイ中に足を滑らせ高所から落下、プレイヤー同士の喧嘩など注意する点は多くある。
全て自己責任と言われればそれまでだが。
「お久しぶりですね。【双刃】アルト」
「誰だテメェ」
SFチックな服の上にロング丈のパーカーを着た男。
こいつ、どこかで……。
「覚えていらっしゃいませんよね、僕のことなんて」
「そうだな。どうでもいい事を覚えておくほどお人好しじゃねぇし暇でもねぇ」
「あの時もそうでした。まるで路傍の石でも見るような目で僕を見ていた」
「何が言いたい」
「貴方にとって攻略組の人間、いや貴方を取り巻く人間以外はどうでもいい、ただそれを言いたかっただけですよ。それではまたいずれ」
気色悪い奴だ。自分に酔ってんのか?
つか、アイツもSAOサバイバーか。世間は狭いな。
カフェで寛いでるところに見慣れた二人組が席に座ってんのが見えた。
デートの邪魔すんのも面白いがユイもいるだろうし、ここは黙って見つからねぇようにーー
「颯真!」
気ぃ遣ってんだから声掛けんなアホ!
結局のところ俺を見つけたのはユイだった。
薦められるままに席を移動した。
「ランキング二位がSAOサバイバー?」
「うん。私の記憶が正しければ、だけど」
「んで、そいつが【血盟騎士団】所属だった、と」
百人を越える団員の中で顔まで覚えてるなんざ、よっぽどの実力者だったんだろうな。
「……颯真さん、顔に出てます。当時の彼は一度も攻略戦に参加してないです」
「つまり逆か?臆病者だったから覚えてるって?」
「臆病……とは違う気がしますけど」
とはいえ【血盟騎士団】に所属できたってことは、攻略する意思があったってことだろ?でないと茅場ーーヒースクリフが許可しねぇはずだ。
戦えねぇ事情があったのか?
「ノーチラスってプレイヤーネームだったんだけどーー」
「脳散らす?頭でも砕いたか」
「颯真……」
「失礼」
「んん!それで《サムライロード》と戦ってたときは全くの別人だった。体操選手顔負けだったよ」
へぇ臆病者が一転して戦士になったってか?
それだけの実力があんならSAOでも戦えたと思うんだが、SAOとOSは違うってことなのか、もっと別な理由があるのか。
「ひとまず了解だ。俺の方でも考えてみる。デートの邪魔して悪かったな」
「ううん。呼び止めたのは私だし」
さいで。
「じゃあなユイ、あんま二人を困らせるなよ?」
「颯真さんほどじゃありません」
「言われたなぁ颯真」
「うるせぇ」
しっかし自己陶酔サバイバーといい二位の奴といい、変な奴が多いな。
ノーチラスとランキング二位が同一人物ってのは明日奈の証言でほぼ確定でいい。
話題にもしたが戦いに尻込みしてた奴が打って変わって何十万ものプレイヤーの中で第二位ってのが腑に落ちない。
実力があるとして攻略戦に参加しなかった理由は?
フルダイブ不適合者?
まぁあり得なくもない。一瞬のミスが文字通り命取りになるデスゲームの中じゃ格上が相手になる攻略組において致命的だ。
単に怠けていた?
いや、明日奈の話じゃ真面目な野郎だったみたいだし、これは除外していい。
自分の実力に自信が無かった?
だとしても一度も攻略戦に参加してねぇことはないはずだ。これも除外していいな。
もし奴の実力がOSで芽吹き始めたのだしたら、なぜOSを始めたか。戦うことを恐れてんなら一番敬遠しそうなんだが。
戦う意志がねぇならSAOで攻略戦に参加しなかった理由にはなるが、OSを始める理由にはならねぇ。
いやまぁ、SAOと違って命が懸かってる訳じゃねぇから始められたってのもあるかもしれねぇが腑に落ちねぇ。
死ぬのが恐ぇなら第一層にでも引き込もってりゃいい、にも拘らず奴は【血盟騎士団】に所属した。
安定した武器と防具が手に入れれたにも拘らず、攻略することなく所属していただけ。
よく追い出されなかったな。
チグハグな野郎だな。めんどくさいにも程がある。
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