評価をつけてくださった方が30人になりました。
期待に応えられるよう頑張ります!
和人の奴は鬼のようなレベリングをしてるらしい。
明日奈が関わった時の行動力は呆れ返る。
デュエルで戦って勝つことができたら明日奈の記憶を返すらしいが、見通しが甘ぇ気がするな。
恐らくエイジは下っ端で都合よく使われてるだけ。そんな奴にシステムを操作できる権限は持たせない筈だ。
にも拘らずキリトに対してアスナの記憶を返すなどと言ったのか。
アイツには記憶を奪う以外にSAOサバイバーに対して復讐心や憎悪に近い感情を感じる。
それも攻略組に対してより強く。
【血盟騎士団】に所属してた頃の話を聞いてみたいが、生憎とアスナ以外の知り合いがいない。
『彼女を目の前で失った僕を見て』
あの言葉はSAO第四十層でのことか?
その時、攻略組は階層ボス攻略中で終わった頃に届いた【風林火山】からのメッセージでクラインに請われ同行。辿り着いた時にはすべてが終わっていた。
【風林火山】に所属してたねじり鉢巻の話だと一人のプレイヤーが自身にヘイトを集中させて、その隙にトラップに引っ掛かったパーティと救援部隊を逃がしたそうだ。
その時に見掛けたのが【血盟騎士団】装備のプレイヤー、ノーチラス……だったはず。
『どうしてもっと早く来てくれなかった』。
膝を折り顔を絶望で濡らしたまま吐き出された言葉に俺もいつものように返した。
『死ぬのが怖ぇなら圏内に引き篭ってろ。戦う意思もねぇどうでもいい奴のために動き回れるほど、攻略組は暇じゃねんだ』
そんな感じで返した覚えがある。
当時のやり取りは大して重要じゃねぇな。
ヘイトを集中させたプレイヤーってのがエイジの言っていた彼女なんだろう。
どういう関係かまでは知らねぇが、剣も取らず誰かを守ろうなんざ烏滸がましいだろ。
……いや今戦えてることを考えれば、当時から戦う意思はあると考えれる。なら何故戦わなかったのか。
「フルダイブ不適合者……」
ナーブギアとの不適合で何かしらの不具合を負ったプレイヤーを指す。
例えば目が見えない、音が聞こえない、手足の感覚に違和感があるなど症状は人それぞれ。
該当するプレイヤーを見聞きしたことはないが、俺が知らないだけで不適合者は確実に存在していた。
となると理性よりも生存本能が優先して伝達される症状だろうか。戦うという理性よりも生きたいという生存本能が勝り、戦うことができない。
そう考えれば戦えなかった理由も説明できる。
「ま、だからって同情もしねぇけどな」
言い方は悪いが運がなかったとしか言えない。
トラップに引っ掛かったパーティも戦えなかったアイツも救助に間に合わなかった俺たちも。
話を聞く限りでは、自らの意思でヘイトを集中させて他の奴を逃がすために自ら囮になり死んだ。そうしなければパーティも救助部隊も全滅を免れなかったから、そのために最善を尽くした。
もしかしたらアスナを失ったキリトとも言えるかもしれない。守りたいものを守れず、救いもなく、励ましてくれる相手もおらず、道を踏み外した。
あのクリスマスの延長線上の姿。
「はぁ……疲れた」
「すげぇ……ほとんど一人で倒しちまった……」
「何者だアイツ……」
「あの戦い方……SAO攻略組【双刃】のアルト!?」
……俺の戦い方は特殊な自覚はあるがこうも簡単にバレるもんかね?
SAO事件全集の発売と同時にでどこの書店にも長蛇の列ができ、SAO発売当初の熱気のように飛ぶように売れて開店から数分で売り切れたそうだ。
それによって名前を真似る不届き者もいるらしいが、大半は綴りを変えたり
SAOサバイバーの殆どは当時の名前らしい。俺もそのまま《
「まぁ、だからなんだって話だけどな」
つまり切っても切れない存在。無くすことも失うことも出来ない俺の一部だ。
俺から何かを奪おうとするなら、それ相応の覚悟はしてもらおう。
「ようユイ、キリトの様子はどうだ?」
「都内をバイクで走り回ってSAOボスを倒し、ランキングが十位に入りました」
この短期間でよくやる。
「アスナの様子は?」
「いつも通りですよ。表面上は、ですが……」
「だろうな。そういう奴だ、あいつは」
辛くても必死に隠して気丈に振る舞う。
周りの心配はするがされたくない。
なんともまぁ年頃のお嬢様だな。必死に取り繕ったところで必ず
そこら辺は
「にしてもユイが一人で会いに来るとか珍しいな」
「アルトさんは何か隠してることがありますよね」
断言、か。両親に似て勘が鋭いな。
「なんのことだかな」
「誤魔化さないでください。パパも言ってました。今のアルトさんは《エクスキャリバー》のダンジョンに潜る前と一緒だって」
あんま心配かけたくはねぇんだけど、いずれはバレるし観念して正直に話す……のもなぁ。
「まさかとは思いますが、あの女性絡みではないですよね?」
「…………」
「沈黙は肯定と受け取ります」
「なに言っても無駄なんだろ。あぁそうさ、須郷の時と同じで今回の裏にアイツの影を感じる。これはもう確信に近い直感だ」
裏で糸引いてるのか自分の手のひらの上で踊ってるのを見てほくそ笑んでるのかは知らねぇが、ほぼ間違いなくアイツがいる。
「ただし、誰にも伝えるな。アイツが現れるとしたら最後の最後、奴の計画が大詰めになったとき必ず現れる」
「でも……」
「でもじゃねぇ。それぞれが優先すべきことはなんなのか、成し遂げなきゃならねぇことはなんなのか考えろ」
ライブ当日
「よく電話を掛けれたな?重村」
『やれやれ、私を教師と呼んでいた君が行きなり呼び捨てとは……大方、私がSAOサバイバーたちの記憶を奪っている黒幕などと考えているのかね?』
「オーグマーの脳内スキャン機能、それにエイジとか言うあんたの協力者が着ていた人工筋肉内蔵型パワードスーツ、それだけありゃ黒幕じゃないとしても今回の件に一枚噛んでることぐらい考え付く」
『君はよく頭が回る。もしそうだとしても私がやったという証拠はあるのかね』
「そんなもん必要ねぇさ。今回ユナのライブにはSAOサバイバーが大勢集められてる。そいつらの記憶を奪ってなにするつもりだ。SAOの再現でもしようってのか?」
SAOボスの出現、SAOサバイバーへの襲撃、脳内スキャンによる記憶障害。
全てが無関係だと考えるほど馬鹿じゃねぇ。
『……私は取り戻すだけだ。娘を』
「娘?」
『娘に良い顔をしたい。そんな愚かな考えで私は娘を失った』
まさか、重村の娘は……
『勘の良い君のことだ。おおよその検討はついているのだろう?その通りだ。娘に私のコネを使って与えたナーブギアによって脳に修復不可能なダメージを負った』
「死んだアンタの娘と会ったであろう不特定多数のSAOサバイバーから奪い取った記憶を繋ぎ合わせ、電脳として生き返らせるってか?馬鹿言ってんじゃねぇぞ!死んだ人間は元には戻らねぇ!例え成功したとしても、それは限りなく真に迫った偽物だ!」
『君には分からないだろう。子を亡くした親の悲しみが怒りが絶望が!例え悪魔との取り引きだとしても私は娘を取り戻す!』
悪魔との取り引き……やっぱりあの女か。
『何を犠牲にしてでも私は成し遂げて見せる。君と言葉を交わすのもこれで最後になるだろう。君は良い生徒だった』
切られたか……まぁいいさ。
今日のライヴが
重村の目論みが功を奏するか、あの女がすべてを台無しにするか、俺たちが防げるか。
「和人か、どうかしたか?」
『お前に頼みたいことがある』
「俺に?」
『エイジと戦う上で必要なことだ』
ライブ開催まであと十時間を切った。
そろそろオーディナル・スケール編も佳境に入ります。