sword art onlineー黒と灰ー   作:戒斗

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改訂版というか編集版です。
過去に投稿されたものを読み直して、手直ししたい部分が沢山ありまして…


第5節:変生

ったく、いきなり呼び出したかと思えば和人の野郎、余計な体力使わせやがって。

 

バイクを走らせてライブ会場へと向かう道すがら、サイドカーに載せたシートに目をやる。

 

稼働テストは合格したが本格的に動かすとなれば、今まで見えなかった問題も出てくる筈。人目に付かせたくないが、場合によってはしょうがない。

 

 

 

 

 

 

「すごい人混みだな」

 

「初のARライブだからじゃない?」

 

別に仮想アイドルが世の中に浸透したのは昨日今日の話じゃねぇだろ。一昔前は二次元のキャラが世界各国でライブしてたらしいし、受け入れられる下地はあったのかも知れねぇけどな。

 

「俺来る必要なくね?」

 

「協調性の欠片もないのね」

 

「仲良し小良しは苦手なんだよ」

 

なぁなぁで済ませれるのも仲間内だけ。

こいつらは……まぁ、その、あれだ。付き合わされるのも悪くはない、そう思える。

 

「兄ちゃん、あっつい」

 

「中に入るまで我慢しろ」

 

不平を訴えるのは季節外れの厚着にマスクで完全防護した木綿季だ。

 

病み上がりなんだから連れてきただけありがたいと思え。お前の両親に許可をもらった以上、お前に何かあれば俺の責任になるんだからな。

 

「なんだかんだ言いながら連れてくる辺り、完全なシスコンね」

 

「シスコン言うんじゃねぇ」

 

こいつがどうしても行きたいってうるせぇから連れてきただけだ。置いて行こうとすれば泣き始めるもんだから渋々アレを載せたサイドカーに乗せて来た。とは言え横浜まで往復してたら時間がねぇから途中で拾う形になったが。

 

昨日の夜、アルゴにSAO第四十層での出来事を聞いてみたところ確かにトラップに引っ掛かったプレイヤーを救うために攻略組二軍と攻略組志望の中層プレイヤー数名が出向いたそうだ。この攻略組二軍ってのがレベルが足りず最前線で戦えなかった【風林火山】のメンバーだ。ノーチラスもこの中にいたんだろうな。

 

プレイヤーの全滅を避ける為にレアスキル《吟唱》でモンスターのヘイトを集めたのが《Yuna》、重村の娘。

《吟唱》にはプレイヤーにバフ効果があるがモンスターのヘイトを集めやすいデメリットもある。

それを逆手に自身にヘイトを向かせ、その結果プレイヤーの全滅は免れた訳だ。

 

そしてSAOのユナとOSのユナ。

重村は自分の娘を生き返らせると言った。つまりOSのユナは別の存在と考えるのが自然か。

 

SAOサバイバーから奪い取った記憶の中からユナの情報を抜き出し、繋ぎ会わせることでユナに限りなく近いナニカを産み出す。それこそが重村の計画。

 

信用していた。

偶々大学近くのカフェで義体の構想を練っていたときに再会し、設計図を見た教授……重村が協力を申し出たときも二つ返事で応じた。

今思えば俺がSAOサバイバーだったから偶然を装って近付いてきたんだろう。

 

『かけがえのない人を失った時どうするかね?』

 

あの研究室でそう問われた。

 

『思い出と共に生きていきます。取り戻せないからこそ、かけがえのないと言えるでしょうから』

 

『……君らしい答えだ』

 

俺に何を伝えたかったのか分からないが、俺の答えが重村の望んだ答えじゃなかったのは何となく理解した。

 

何かを切り捨て何かを得る。それが生きることだと理解しているが、犠牲を強いるのは違うはずだ。何を犠牲にしてでも娘を生き返らせようとする重村の覚悟は立派だと言えるかもしれない。

 

でも俺は認めない。

本当にかけがえのない人だというのなら、そいつを辱しめるようなことはしないし出来ない筈だ。

 

『君は他者との境界線が極めて狭い。寄せ付けず踏み込ませず、許可なく立ち入ろうとする者を徹底的に攻撃する。まるで野生の獣のようだ。そんな君だから理解し難いのかもしれないな』

 

俺が何を理解出来ていないと言うのか。

無くしたくないものだってあるし、失いたくないものもある。

 

『今は理解できなくても良い。いずれ理解できるようになる』

 

「和人の奴はどうした?」

 

「トイレらしいわよ?」

 

これはまたベタな嘘を。大方エイジと会ってんだろ。

立地から考えりゃ人気のない場所……地下駐車場だろうな。

 

オーグマーを着けるフリをしてコードレスイヤホンを着けようとした手を両サイドに陣取った朝田と木綿季に止められ、白い目で見られた。

 

 

 

 

 

地下三階の駐車場で奴と相対した。

 

「約束通り一人で来たぞ。腕ずくでも返してもらうぜ、明日奈の記憶を」

 

「急かさないでくださいよ【黒の剣士】さん」

 

「そういうお前はノーチラスだな。死の恐怖に打ち勝てず、戦うことを拒否したーー」

 

「今の僕はエイジだ!」

 

突然の咆哮。

 

「よくご存じですね。僕なんかのこと」

 

「詳しい奴がいてな。他にも色々知ってるぜ」

 

「そうやって【閃光】さんだけじゃ飽きたらず、ユナまでたぶらかすんですか」

 

「なんの話だ」

 

「……まぁいいです。しかしノコノコやって来てNo.2の僕に勝つつもりですか」

 

「やってみなきゃ分からないだろ。お前だってNo.1じゃないみたいだしな」

 

なにがなんでも勝つ。短時間での付け焼き刃だが、アイツの手を借りたからには敗北は許されない。

 

手首に巻いた重しを外した。

あの馬鹿に見つかって倍の重量を巻かれたせいで、連日筋肉痛だった。今じゃ自分の腕とは思えないほど軽く感じる。

 

「「オーディナル・スケール、起動」」

 

『最初の一合目で相手の力量を確かめろ。相手がどれだけ速かろうが、初動さえ見誤(みあやま)らなきゃお前の反応速度なら十分間に合う』

 

初動からの初撃は辛うじて反応できた。

想像してたよりも速い……!それでも!

 

『相手の視線、重心、呼吸……他にもあるが、この三つだけでも鋭敏に感じ取れ。GGOで予測線を予測できんなら、それだけでも相手の行動を予測できる筈だ』

 

リアルじゃVRの時みたいに動けないのを知っていながら何度も投げ飛ばされて地面に叩き付けられた。下はコンクリートだったのにあの馬鹿!

 

超人的な三次元機動に翻弄されながらもなんとか食い下がれるのは、アイツの肉体言語による攻略法のお陰だ。

 

「流石、SAOをクリアに導いただけのことはある!」

 

「こんなもんか二位ってのは!大したことないな!」

 

エイジは支柱を切り裂き、破壊判定による砂煙で視界を遮られた。

 

「最前線のプレイヤーしか皆の記憶に残らない!僕やユナみたいな弱虫は蚊帳の外だ!」

 

「ッ!SAOで悠那といたのか!?」

 

「ああそうさ!彼女が消える瞬間もな!」

 

後ろからの奇襲を声を頼りに辛うじて捌く。

辛うじて反応するのが精一杯で反撃できない……!

 

「自分の弱さを呪ったよ。大切な人が危なくなっても足がすくんで動けないんだからな!」

 

首の後ろにで光っている装置に目を奪われた瞬間、投げ飛ばされて背中を壁に叩き付けられた。

 

「SAOなんてクソゲーの記憶、貰ったって良いじゃないか!」

 

大振りの一撃を避けてエイジの後ろに回り込み、赤く光る装置に手を伸ばす。

 

「そう来ると思ってましたよ」

 

瞬間的な旋回でエイジの前後が入れ替わる。

 

引き伸ばされた刹那。

エイジの振り上げた剣が振り下ろされるが見える。

 

ーー馬鹿が。詰めが甘ぇんだよ。

 

振り下ろされたエイジの右手を左腕で受け止め、弾き返す。

 

何十回、何百回と見たアイツのパリィ。

 

逃げたくなるような現実も大切な人を失う気持ちも分かる。でもだからってーー

 

「過去を否定するのは彼女すら否定することだ!そんな奴に負けるわけにはいかない!」

 

「その動き【双刃】の………」

 

色んな人に支えられて今の俺がある。だけど過去を否定すれば支えてくれた人たちすら否定することになる。

 

自分の弱さも辛い過去も向き合っていかなきゃ駄目なんだ。

 

「これで終わりだぁ!」

 

「クソぉぉ!」

 

弾き返されたエイジの体勢は大きく崩れ、がら空きとなったエイジの胸へ剣を突き立てる。

 

雌雄は決した。

 

「さぁ明日奈の記憶を取り戻す方法を教えろ」

 

「……もう手遅れなんですよ。なにもかも」

 

手遅れ?

 

「ここにはSAOサバイバーが集められている。そいつらから奪ってやるのさ、SAOの記憶を。そうして悠那を生き返らせる」

 

 

 

 

 

 

目の痛い光のオンパレードが突然止まり、閉じていた目を開ければ暗闇がドームの中を支配していた。

 

「ん?終わったのか?」

 

「どうかしら?まだ一曲しか歌ってないわよ」

 

困惑のざわめきのなか、ドーム内すべて人間が装着していたオーグマーがOSを立ち上げた。

そしてステージの中央に巨大な蓮の蕾が出現する。

 

ファイナルイベント?

 

「堕ち行く先は殺生院。(あぎと)の如き天上楽土。一寸の虫にも五分の魂と申します。もはや何人(なんぴと)たりとも私からは逃れられません」




エイジとキリトの戦闘の手直しです。

キリトとエイジの戦いはNo place like a stageを聞きながら執筆しました。
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