原作の第2章をよむのがつらいという方は閲覧するのを注意した方がいいかもしれません
前話 悪魔の実験
前話 悪魔の実験
■ドライフ皇国〈リヴノー山岳地帯〉
ドライフ皇国には山が多い。
ひとつは南にあるアルター王国とこの国を隔てる国境地帯に存在し、天竜種が住みかとする〈境界山脈〉。
ひとつは北にある〈超級〉をもってしても越境が困難な、地竜種が住みかとする〈厳冬山脈〉。
他にも無数の山々が広がり存在している。
西の海岸線を除き、山に囲われた天嶮の地、それがドライフ皇国である。
そんな山々の中に〈リブノー山岳地帯〉は存在する。
位置としてはドライフ皇国の北西。
〈厳冬山脈〉にはかろうじて入らないが、それでも北からの冷たい風が人を凍えさせる程に環境が厳しい、生命にとっての禁断の地。
そんな地にある集団は居を構えていた。
だれもその地に近寄らないからこそ、その地でどんなことをしていても決して知られない、皇都に居る連中に伝わらない。
そう考えて彼らは、そこを拠点とした。
たまに迷い込んだ人間や資材の搬入を不審に思った人間が覗きに来ることがあるが、それでも問題ない。
彼らは全員【悪魔騎士】につく熟練のティアンなのだ、並みのやつには負けはしない。
そして彼らが主と、師と仰ぐ人物は上級の限界に到達した、まぎれもない天才である。
そんな彼らは当然ながら盗賊団などではありはしない。
彼らは自らをこう称している〈ミルキオーレファミリー〉と。
彼らの師であるヴィクター・ミルキオーレが徒弟たちとともに、自らが就くジョブである【悪魔騎士】やその下位職である【悪魔戦士】のさらなる発展を夢見て作り上げた魔術集団である。
◆
そこは地下に造られた野球場に匹敵する広大な空間だった。
ここは〈リブノー山岳地帯〉のある山の地下に、数人の【悪魔騎士】が数週間にわたり作り上げた彼らの拠点である。
そこには〈ミルキオーレファミリー〉の人間が集まり実験をしていた。
数人で班を作り、それぞれに師から与えられた課題を実験して試していく。
たとえどんな内容であろうとも、彼らは眉をひそめることもなく粛々と進めていく。
それは輝かしい未来を夢見て行われる偉業のカタチ。
ただし、今行われているのは発展と言う崇高な理念とは裏腹の、人を生贄とする残酷な悪魔の実験だった。
「ギャアアああアアア!!!!」
広大な空間の片隅で突如として奇声が発せられる。
それは1人の、10年も生きていないかという少年の最後の断末魔。
だがそれに対してだれも反応しない。
反応できないのではなく、反応する必要が無いという無関心によるため。
なぜならそんな断末魔など今までいくらでも聞いてきた。
今までに聞いた断末魔の数などもう千を超える。
そしてそれはそのまま、彼らが犠牲にしてきたものの数を表している。
とはいっても、最初から彼らが人を犠牲にしていたわけではない。
最初はただのアイテムを使用して来た実験だった。
だが実験が滞り息詰まるにつれて、それまでの方法ではだめだと結論付けられて新しい方法が試されることになった。
それが倫理を崩壊させる最初の一手、奴隷を生贄にした人体実験であった。
そしてこの方法によって状況は進捗した、進捗してしまった。
それからは奴隷を生贄にした実験が主流になっていた。
人を生贄にして、悪魔を召喚しようとする。
それはジョブとしての悪魔使いではなく、リアルにおける悪魔崇拝者のような吐き気を催す悪魔の儀式。
だが順調に進んでいったその実験はある問題によって停滞する。
それは金銭の枯渇による奴隷の購入ができなくなったため。
当然と言えば当然だ、今まで彼らが使って来た金額は億にものぼる。
それを維持できたのはヴィクター・ミルキオーレが稼いできた膨大な資産あってこそ。
一応、毎日数人にモンスターを倒させて金を稼がせていたが、ポイントを数倍出来るわけでもない通常のティアンにとって、大金を稼ぐなど不可能に近い。
精々がこの〈ミルキオーレファミリー〉を維持していく程度でしかない。
だから彼らは奴隷の購入をあきらめた。
それは人を生贄にするという行為を間違っていたと思って中止にしたわけではない。
そう奴隷を購入できない代わりに、半年前から次第に犯罪者でも何でもないただの人間を生贄にするようになってしまっていた。
それも最初は飢えに苦しむ村の人間につけこみ少量の金や食糧と引き換えに手に入れていたが、それをする余裕も無くなると人をさらって生贄にするようになった。
彼らは盗賊団などではない、だが実態はそれよりもたちが悪い。
それでも彼らが実験するのは彼らの師が構想した1つの究極を形にするためであった。
主の召喚を助け、時には主の剣や盾となり、主の道具として使いつぶすことができる悪魔を召喚できる意思を持つ悪魔召喚スキル。
彼らの願いによりつけられたその魔法の開発名は悪魔召喚術式《ゲーティア》である。
それを完成させるために彼らは非道を行う。
それは自らのジョブを最強へと至らせる究極の魔法。
◆
「ふむ、今日はこれですべてか」
綺麗に整えられた金髪とあごに少しだけ金色の髭をつけた、黒いローブをまとう40代とおもわしき一人の男性は今行われた実験の成果を確認しながらそうつぶやく。
彼こそが、ヴィクター・ミルキオーレ。
この場に集う、すべての人物の尊敬を一身に受ける稀代の天才であり、現時点において【悪魔戦士】系統最強の術者である。
「はい、残念ながらこれですべての資材は使い果たしてしまいました。また調達する必要がありますので、少しお待ちいただけますでしょうかお師匠様」
資材によって形作られた赤い魔法陣の周りで、今回の実験の記録や跡片付けをしている十数人のローブをかぶった男の内の一人が、自らが師と仰ぐヴィクターの呟きに反応してそう答える。
ヴィクターもまた弟子たちの中でも高弟といえる男に対して労いの言葉を掛ける。
「構わないとも、時間は有限だがまだ猶予はある。ああそうだ我が弟子よ、ひとつ雑用を頼むとしようか。そこにある布切れは次の実験の邪魔になる。片付けてもらえるかね?」
「はい、わかりましたお師匠様」
処理をするのは先ほど使いつぶした資材……ひとりの少年が生贄になりこの世から消えうせた跡に、彼が唯一残していった衣服をゴミとして扱う。
ヴィクターは生贄にした人間に対しての罪悪感など、ひとかけらも感じない。
自分が生贄にしてしまった少年が最期に残していったものを遺品として残しておくことなど考えもしないし、むしろそれをポイントにすることすらも余分で邪魔な物として捨てることをよしとする。
そしてもちろん新しく調達するその資材は人間であり、調達とはすなわち人をさらうという事。
それに対して師匠も弟子たちもなんとも思わない。
次第に人を生贄にささげることに対してマヒをしていったという理由もある。
自分が最強になるために他者を犠牲にするのをよしとするという理由もある。
だが最大の理由は他にある。
それは究極の魔法に至れるための素材になるというのなら、犠牲になったものは幸運だっただろう、という倫理観はおろか常識さえ外れた悪魔使い達の傲慢なる価値観によるもの。
だが彼(ヴィクター)は知らない。
彼を師と仰ぐ者の中には彼が提唱する崇高な理念といやつを十分に理解せず、時折資材の内の一つを味見したり、横流しをしていることを。
彼は天才であるがゆえに、そう言った機微に疎かった。
だが彼らは知らない。
最初の本当にまっとうな資材を搬入している時期にある物体がまぎれていたのを。
それは彼らが決して気づくことができないモノだった。
それは適合するモンスターを特殊な存在に変化させる力の結晶。
とある存在により管理されているモンスターにおけるエンブリオのような規格外。
それ……■■■■■と管理AI四号は待つ、これに適合する存在が現れることを。
Open Episode 【傲慢なる悪魔使い達】
(=○π○=)<とりあえず完成次第あげることにします。
(=○π○=)<もしかしたら修正したりするかもしれませんが、その時は最新話の前書き当たりに書いておくことにしますー
(=○π○=)<文字数少ないし、字の文がかなり多くて読みずらい感じがする。もっとうまくなりたいな―と思う。
(=○π○=)<それはそれとして第2章開幕です。
(=○π○=)<読んでいただけたら察しが付いてくれると思いますが、この章は原作の第2章【不死の獣たち】を意識しております。パクリではないとは思いたい。
(=○π○=)<また今回は明確なローガンの強化回です。その位今回の章で手に入れる物は大きい。