第9話 ログイン
■ある悪魔の設計思想
さて【悪魔式 ゲーティア】というUBMのことについて少し語ろう。
今から語るのは、ゲーティアの持つ複数のスキルの解説である。
ゲーティアは多重技巧派にして広域制圧型。
ある悪魔の召喚スキルを元にして、ヴィクターが新しくいくつかのスキルを開発してそれを組み込むことで制作された悪魔召喚式《ゲーティア》を元として、■■■により創り上げられた悪魔。
そのステータスはHPを除き低いものの、それを複数あるスキルにより補っている。
しかし戦闘中にスキルを一つ一つ使用する度に説明を挟むのは、テンポが悪い。
だからここでゲーティアの保有する固有スキルすべてを紹介しておこう。
ゲーティアの保有する固有スキルは《
なお固有スキルが6つだけであり、他の細かいスキルはそれこそ数十あるが、それらすべてを語るのには時間も枠も無い。だから説明は固有スキルのみだ。
そしてすでに説明した《悪魔目録》と《ポイント変換》に関しては省いてしまおう。
この戦いで使用されることのない、説明の必要がない《魔骸転生》と《悪魔心》に関しては省いてしまおう。
《常在召喚》は召喚時間の限界を無くすというだけのスキルだから、特に詳しい説明は必要がない。
……おや?説明するべきスキルはのこりひとつだけとなってしまいましたね。
なのでいまから話すのは《六法悪書》と言う物に関してだ。
これは《悪魔目録》に次ぐ、ゲーティアの主力スキルであり、6つのスキルからなる複合スキルだ。それゆえに説明は長くなるとは思うが、書いておくとしよう。
その6つのスキルとは、《
まずひとつ《融合召喚》は遥か昔に存在していたという〈イレギュラー〉【始原悪魔 デモンルーツ】が保有していたスキル《ターンバック・フュージョン》を、数々の文献や口伝をもとにヴィクターがその一部を再現するスキルをくみ上げる事ができた奇跡の産物。
その効果は、悪魔召喚をキャンセルしてその悪魔のステータスを自分の物に加える、と言う物。本来の物と異なり、加えられる悪魔は一体のみであり加えられるステータスはSTR・END・AGI・DEXの4つのみである。
このスキルをゲーティアが今に至るまで使わないのは、前線に出て戦う気が無く、かつMPが増えないから。
……〈ミルキオーレファミリー〉の人間が望んだ、主の剣と楯になるという思想の元に組み込まれたスキルではあるが、そのゲーティアがそれを望まないというのは企画倒れな気もするが。
さて次は《反応召喚》だ。
このスキルはヴィクターが持つ特典武具【障壁輪 ファルクス】のスキルを元にしてつくられたスキル。
このスキルはあらかじめ一つの召喚スキルを選択しポイントを消費し待機させて置いて、相手の攻撃を受けた時に選択した悪魔スキルのポイントから1ポイントを消費するのにつき10ダメージまで一度に受けるダメージを削減する。そして残ったポイントを使用して選択した悪魔召喚スキルを実行するスキル。
ただしのこったポイントの割合に応じて召喚した悪魔の召喚時間が削減されるので、大ダメージを防いだばあい、召喚した悪魔の存在可能時間は数秒程度にしかならない場合がある。
次は《強化召喚》だ。
このスキルはもともと他の召喚系のとあるジョブで習得できるスキルを元としたスキル。
このスキルは召喚する悪魔の召喚ポイントとステータスを1.5倍にして召喚する強化スキル。
呼び出す悪魔の召喚ポイントも増えてしまうという欠点はあるが、限られた枠内で強い悪魔を複数よびだすのであれば有用なスキルと言える。
それにステータスバフのスキルや《魔物強化》スキルを合わせれば、個の力をさらに高める事ができる。
使い道は限られるかもしれないが強力なスキルである。
次は《速効召喚》だ。
このスキルはある従魔師系統で覚えられる《獣魔解放》を参考にしたスキル。
アルフレッドも使っていたこのスキルは、自分のパーティー枠にいる魔物1体のみを、待機させておくことができるスキルで、このスキルを使用することで、一瞬で呼び出すことができる便利なスキルだ。
便利であるのに大抵の【獣魔師】がこのスキルを使用しないのは、このスキルを覚えるジョブもレア下級職であり、その条件を満たすのは面倒だからであり、このジョブで覚えるほかの有用なスキルが一つも無いことがあげられる。
そしてヴィクターがつくり上げたのは、召喚時の猶予の短縮スキル。
すべての悪魔召喚スキルは召喚が終了し泡の中から出てくるまでに絶対時間で3~5秒ほどの時を要求する。
後衛で軍勢を整えるために悪魔を呼び出し続けるのなら全く必要のないスキルである。
だが、相手の行動に対応するための援軍の呼び出し、または敵に近付かれた時の為に新しい悪魔を呼び出す場合。
この時間の猶予は致命的な敗因となりうる。
たかが数秒ではあるが、AGIが万に至った連中からすれば、それこそ数十秒もの隙になり、その隙にこちらが攻撃されるのは必定だ。
それを回避するために絶対時間にして0.001秒というもはや一瞬と呼べ、AGIが馬鹿げた連中からしても十分に速効と呼べる速度で呼び出すことができるスキルをヴィクターはくみ上げた。
なおヴィクターが参考にしたのは、召喚悪魔を一瞬で呼び出せるという点のみであり、そのスキルの機構に関しては全く参考とはしていない。
次は《二重召喚》についてだ。
このスキルは単純な召喚数を倍加するスキル。
ヴィクターが1から考案し開発に成功したスキルである。
このスキルを用いた召喚では必要ポイント数が1.5倍になり、かつ召喚時間が半分になるという制約があるが、それでも強力な悪魔を少しだけ少ないポイントで複数召喚できるというのは、悪魔使いにとっては垂涎のスキルだ。それだけコストを増やさずに悪魔召喚数を二倍~十倍にまで出来る、とある〈マスター〉がおかしいのだ。
そして最後に《統合召喚》についてだ。
このスキルは今まであげてきた6つのスキルの中でも特異なスキルだ。
その理由は、このスキルのみヴィクターがかかわっていないからである。
これはあるグループが偶然に発見し創り上げたスキルで、その効果は複数の悪魔召喚術師が同時に発動した同じ悪魔召喚スキルを一つにまとめて、特殊なスキルを植えつけるという物。
簡単に説明すると、たとえば《バタリオン》に対して使用した場合、そのスキルによって呼び出される【ソルジャー・デビル】が1体のみ召喚される。
そのステータスは変わらず、スキルは《統合回帰》というスキルのみが加わった以外に変化はない。
そして《統合回帰》の効果は一つにまとめた数だけ、その悪魔が死んだときに同じ悪魔を召喚するという可逆召喚スキル。
わざわざ一つにまとめた上で、死んだあとにばらけさせるという使い道がほとんどないと言っていいスキル。一応1体のみを敵の本拠地に潜ませてからしなせてその中で開放するという拠点攻撃方法もあるにはあるが、基本的に不遇スキルとしか言いようがないのは仕方がないだろう。
そんなスキルがゲーティアに組み込まれたのは、弟子たちだけで創り上げる事に成功したから、その報酬代わりとしてでしかなかったりする。
これで《六法悪書》の説明は終わりだ。
もしゲーティアが伝説級に至っていれば、2つ以上を重ねる事ができ。
神話級ならば6つすべてを使用できたのだが、これも逸話級の出力では1つしか使用できないのは、ゲーティアと対峙する彼にとっては幸いだろうが。
さて彼がどうやってこのスキルを突破するのか。
戦いの場面に戻るとしよう。
◇◆◇
□■アジト内 【悪魔戦士】ローガン・ゴールドランス
「くっ」
「ふむ、次だな。“地獄の蓋を開き、這いでよ軍勢”《コール・デヴィル・レジメンツ》」
戦いの幕が明けてから、さほど時間はたっていない。
時間にしておよそ3分程度だろうか。
だが、状況は明らかに変わっている。
それはお互いの出している軍勢の総数。
ローガンは現時点で23体の悪魔を従えている。
そしてゲーティアの現時点での召喚総数は300近くにも及ぶ。
もちろんその数が二人が今までに召喚して来た数ではない。ローガンはすでに42体近く召喚しているし、ゲーティアもまた今の数より少し多い。
だが数の暴力により、またはローガンを逃がすための囮として数体の悪魔を消費して、今現在の数になっている。そこまでにゲーティアの呼び出した《レジメンツ》の悪魔も数体倒してはいるのだが、もとより《チーム》の悪魔は《レジメンツ》の悪魔の半分の性能しかないのだ、それでは押されるのも無理はないというもの。
(っく、こいついつまで召喚し続ける気だ。一体こいつのポイントはどうなっている?)
『主様、そのことに関してですが、1回につきおよそ1分。正確には52秒ですが、あの悪魔召喚を行う間隔は先ほどから一貫して同じものです。おそらく悪魔召喚を可能としているスキルのクールタイムか何かなのでしょうが、その間なら召喚は来ないかもしれません』
…なるほど、召喚を使う間隔をあけているかと思ったらそういうことか。だがクールタイムにしても時間が微妙な気もするな、いや召喚するスキルによってクールタイムが異なることはあるのか、だがその間にこないとしてもこれをくぐりぬけるのは骨だな。
さてどうするべきか…?
目の前に広がる悪魔の軍勢をみる。
少し前からAGI型ではなく、END型で耐久戦をさせているがそれでは敵の数が減らない。
そしてその軍勢をくぐりぬけて、ゲーティアの元にたどり着けたとしても、倒すのは困難だ。
それは俺がつい先ほど行った手によるもの。
AGI型を呼び出していた頃に、一体を迂回させてゲーティアに奇襲させてみたが、その奇襲が当たることはなかった。
それはゲーティアに当たる攻撃を阻む黒い波濤のような障壁によるもの。
それがこっちの攻撃を防いだうえで、さらに《バタリオン》と思わしき召喚スキルとして、16体の悪魔が召喚されてしまった。
その後、ゲーティアが『《反応召喚》セット』と言っていたのは、あのスキルの事前準備かなんかだろうか。
(さてどうするか?)
走りながら、《チーム》を呼び出し続けているが、数の差はやはり大きい。
呼び出した悪魔たちが、次々に倒されていく。
『主様、提案なのですが、《ボムトルーパー》を使用しないのでしょうか?』
(いや…できない。確かに《ボムトルーパー》ならあの軍勢を倒すこともできるだろう。だが、おそらくゲーティアは俺が《チーム》しか使わないから、あちらも《バタリオン》しか使っていないだけだと思う。数で圧倒して叩き潰す様子を見せるために。もしここで《ボムトルーパー》を使用したら、あちらも呼応して他の悪魔召喚スキルを使うだろう。そしてそうなったら、俺があの防御を突破できる保証がない以上、お互いに召喚呪文の掛け合いによる泥試合だ。あっちはどうだか知らないが、こっちにはポイントの上限が明確にある。そんなものに応じるわけにもいかない)
『なるほど…そういうことでしたか、すいません主様。変な提案をしてしまいまして』
まあ、それはいいんだがな?
さてルンペルシュティルツヒェンにはああ言ったもののこれからどうするか。
《チーム》ではあの防御を突破は出来ないだろう。
《ボムトルーパー》であれを突破出来れば問題ないんだが……ゲーティアのもとにたどり着けるかどうかも怪しいし、新しい悪魔を呼び出されたら困る。そしてなんとなくでしかないが、それだけで防御を抜ききって相手を倒しきるのは不可能だろう。
さて、どうするか。と思案していたが、その時間が無くなってしまった。
それは俺の前に迫る1体の悪魔。
新しい悪魔を呼び出すのは不可能で、呼び出した《チーム》に守らせることもできない。
だから仕方がないと、アイテムボックスから一本の剣を取り出して、その悪魔に剣を振りその隙に横を通り抜けて。
そして切り返した目の前に居たのは、さらにもう一体の悪魔。
(避けられないっ)
俺は失敗したと、俺は避けられないと悟ると、責めて気絶だけはしないようにと左の腕で頭を守り……
「ごあっ」
『主様っ!』
当然その攻撃をよけることなど出来ず、まともに攻撃を食らい、数メテル吹っ飛んでしまう。
その一撃によってHPのほぼすべてを失い、そして俺の意識も失いそうになる。
(ああ、もう終わりだな。勝ちたかったが仕方がない)
この状況で勝つことを諦める。
もう勝ち目などないと、悲観した俺は薄れゆく世界の中で――
――そこで1体の蟲を見た。
本来はなんてことないはずのその蟲。
モンスターでさえなく、俺を害する力なんて持ちようのない、カブトムシのような形をした見知らぬ蟲。
だけど……。
だけどなぜか……。
その蟲のことが気になった。
この非常時にその蟲を収集しようなんて考えたわけではもちろんない。
ただ俺はその蟲を見続けることに対して、胸の底からただ言いようのない気持ちがわき上がって来るのだ。
気絶こそ免れたものの、意識が薄れゆくこの状況でただそのことが気になった。
本当はそんなことなどどうでもよく、もっと他にやることがあるのだと分っていたのに、だがその蟲から目を離せず、目を離してやるものかという思いがわき出る。
なぜだろう?と、この状況下、薄れゆく景色のなかで考えて、心の奥底を感じて、そして……
俺がその蟲に対して怒りを憎しみを感じていることに気付いた。
それは俺があいつら相手に抱く感情にどこか似て、だがベクトルの異なる物。
そしてなぜそんな思いを抱いているのかと、思いを馳せて……
再び『主様』と俺の中で叫ぶルンペルシュティルツヒェンの声を聞きながら。
俺の意識は刹那の間、この世界から消失して――
――ひとつの光景を幻視した。
それは一体の蟲。
それが俺の方に向かってくる、過去の光景。
そして俺の周囲を取り囲んでいるやつらの嬉々とした顔。
そしてその後、俺は奴らに……
◇◆◇
※特殊秘匿回線による非通知アナウンス
【■■■■■■■■■より全■■■■■■に通達】
【第一観察保護対象に異変を感知】
【状況把握開始――原因特定完了】
【原因を対象が許容量以上の意思レベルを発揮したためだと特定】
【このままでは第一観察保護対象の意識および記憶が崩壊しかねない危険性が発生】
【第一観察保護対象の安全確保のため、対処方法を発案】
【原因となる一部記憶の消去を提案――2対3で否決……残念です】
【……■■■より提案発議がありました】
【提案発議内容は、【第一観察保護対象の記憶の一時解放】】
【決議を摂ります――4対1で可決……残念です…というかジジィあなた面白半分にいれてませんか?これでは私の負担が大きいのですが……いえ、仕方がありません】
【これより第一観察保護対象の記憶の一時解放を行います】
【記憶指定……《アンロック》】
【それにしても、面倒ですね。こうなったらもう二度とこんなことが起きないように、記憶を内緒でこそっといじってしまいましょうか】
【記憶改竄……《コードエラー》】
【…失敗してしまいました。理由把握開始……完了。どうやら【無限生誕】がかってに第一観察保護対象の記憶をいじれないように保護をかけていたようです……あのアマ、こちらに協力すると見せかけてこんなことをしますか】
【ん?■■■より秘匿緊急入電ですか?一体何なのでしょう。ふむふむ内容は『私どもに内緒で勝手に彼の記憶をいじろうとしたようですね。あなたらしいですが、それゆえにこの私が把握できないとでも?【無限生誕】にもしもの時のセーフティをいくつか仕込んでもらって正解でした。それと今回のことは次回にあった時に、きっちり話させてもらいます』………ですか。……よし見なかったことにしましょう!忘れましょう!よしこの入電を捨ててっと記憶改竄……《コードエラー》】
【おや?一体なんで私は先ほどからここに居たのでしょうか?】
◇◆◇
「主様っ!」
その声を聞き意識が覚醒する。
目を開けてみれば、数体の俺が呼び出した《チーム》の悪魔たちが壁となって攻撃を防いでいるのが見える。
そしてルンペルシュティルツヒェンは、内包形態ではなくアポストル形態になりながらポーションを持ってこちらの口に運んでいる最中だった。
(シュテル、状況を教えてくれ…いやその前に元に戻れ)
「は、はい」
ルンペルシュティルツヒェンの返事と共に、あいつの身体が光り、粒子となってこちらの体の中に入って来る。
モード移行が完了したのを見届けてから、このままでは話すのもままならないと、再び《チーム》を呼び出して壁を出す。
(それで、今までどうしてた。どれくらい時間がたっていた?)
『はい、時間にして11秒です。当たり所が良かったのか気絶している時間はそれほど長くはなかったようですが、気絶したままだと主様が殺されてしまうと思い、内包形態を解いてアポストル形態になり、主様が呼び出した悪魔に壁になれという指示を出しながら、いくつかポーションを利用して主様のHPを回復させていただきました。…これでよろしかったでしょうか?』
(…ああいい。よくやったな、さてそれでこれからどうするか…。そういえば気絶する前に何かあったような……?!!!)
そして思い出す。
怒涛の濁流のような、記憶のフラッシュバック。
今まで忘れていた……いやおそらく消されていた記憶の数々。
その記憶は……俺が俺である理由。
その記憶は……俺の〈エンブリオ〉がアポストルになった理由。
ああそうだ――俺はこの
そして俺は俺が定めた、自分の使命を思い出す。
他人にとっては馬鹿げた理由かもしれないおかしな理由。
だが、俺にとっては譲れないもの。
この変な状況に頭が正常に動いているとは到底思えないけども、それでもなお俺は俺の使命を吼える。
「そうだ…思い…だした。俺は、俺は!■■■■■■■■■■■■■■■■■、■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■。■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!」
俺は悪魔の向こうに悠然とたたずむ一体の悪魔を睨む。
俺は今ここで諦めるわけにはいかない。
俺がここで諦めたら、こいつの相手はミックたちがやることになるだろう。
俺がここで死んで、ミックたちに任せなければならないのは嫌だ。
俺がここで諦めたら、こいつから特典武具をとることができない。
俺が強くなるためには、こいつの特典武具は欲しい。
そして――俺は死が怖い。
「いくぞ、ゲーティア。俺の全力で貴様を叩き潰してやる!」
俺はまだ、敗北の瀬戸際で踏ん張れる。
『主様!』
「なんだ?悪いが俺はこれからあいつを叩き潰すんだ、嫌かもしれないが最後まで付き合ってもらうぞ」
『いえ、私が主様の進む道を嫌などと思うはずもありません。ですが主様、私が言いたいことはそうではありません』
では一体何だというのだ。
『これは一体何なのでしょう?つい先ほどからいきなり出てきたのですが』
それはひとつのウインドウ。
俺が初めて見る、だが原作知識によって知っている赤いウインドウ。
これは――
【同調者絶対使命感知】
【同調者復讐意思感知】
【〈エンブリオ〉TYPE:アポストル【改竄悪魔 ルンペルシュティルツヒェン】の蓄積経験値――グリーン】
【■■■実行可能】
【■■■起動準備中】
【停止する場合は後20秒以内に停止操作を行ってください】
【停止しますか? Y/N】
「……これ…は?!」
『私にも分りません。これは一体……?』
◇◆◇
【第一観察保護対象の意思発露を確認】
【現状打破のきっかけとなる■■■も同様に確認】
【状況が安定に入ったと推定】
【再び第一観察保護対象――現在のプレイヤー名“ローガン・ゴールドランス”の記憶封印処理を開始します】
【記憶封印――《ロック》】
――そして再びローガンの記憶の扉は閉じられる。
◇◆◇
「っつ」
なぜかいきなり記憶が断絶したような感覚を覚える。
だがそれは気のせいだと思考を振り切り、目の前に出ている赤いウインドウを見る。
それは特別であるかのように示す、特殊なウインドウによる警告を出している。
何をするのかが分らない、ノイズとも文字化けともいえない、言語化不可能なものを記したウインドウを見る。
ルンペルシュティルツヒェンは分らないだろうが、だが俺はこれを知っている。
■■■による強制進化。現時点では果たせない望みをかなえるための、未来への切符。
俺が知る事例は【復讐乙女 ネメシス】と【幽閉天使 サンダルフォン】の2つ。
そのどちらもが、現状を変えるために最も合った能力を手にしている。
だがそれが俺に起きた理由が分らない。
いや分らないというよりはそれがぼけているというべきか、ピントがずれたように先ほどの言葉も開いたと思った記憶の扉も全く思いだせない。
この状況下で■■■による強制進化が起きた理由は全く持って分らない。
だが、それでもこれによる恩恵は大きい。
20のカウントから減っていく数字を見ながら、それまで全力で生き延びてやると足を進める。
「クックック。一体いつまで逃げる積りなのかな?この状況を君達の遊びで言うのなら、鬼ごっこと言うやつかな?」
いっていろ、残りはあと10秒。
新しい悪魔は…呼び出さない。
今呼び出すより、進化して効率が良くなってからした方がいいだろう。
周囲の悪魔を見渡す。もう俺が呼び出した残りの悪魔の数は10を切っている。
だが、その代わりにゲーティアが呼び出した悪魔の総数は500に迫ろうとしている。
明らかに多勢に無勢。
俺が残り時間までに悪魔に捕まらないように、呼び出した《チーム》を敵の魔の軍勢の前に配置し時間を稼ぐ。
ゲーティアに動く様子はない。
ルンペルシュティルツヒェンのカウントが正しければ、あいつが動き出すのはカウントが終わった後だろう。
もし、ゲーティアがいま動き始めたら俺が生き残れる確率は格段に減ってしまう。
だが油断か慢心か、それともそうせざるを得ないのかゲーティアが動かないというのなら……俺の勝ちだ。
そしてカウントが0になり――
【カウント終了】
【■■■による緊急進化プロセス実行の意思を認めます】
【現状蓄積経験より採りうる一三パターンより現状最適解を算出】
【対象〈エンブリオ〉:【改竄悪魔 ルンペルシュティルツヒェン】に対して■■■による緊急進化を実行します】
【負荷軽減のため次回進化までの蓄積期間を延長します】
そのアナウンスが流れるのと同時に、俺の身体が光る。
いや、俺の中に入っていた、ルンペルシュティルツヒェンが光の粒子となり俺のからだの外にでて解け、
【■■■――完了しました】
【――SkillⅡ Complete】
そして再び俺の中に入り合一形態をとる。
To be continued
(=○π○=)<今日は投稿開始一カ月記念!
(=○π○=)<ということで今日は連続更新します。
(=○π○=)<次回投稿は21:00です。
(=○π○=)<メイデンとアポストルの華。戦闘中における■■■による緊急進化の発動です。
(=○π○=)<アポストルなら一度はさせてみたいよね。
(=○π○=)<感想とかで頑張って第2スキルのことスルーしまくったけど、新スキル習得です。
(=○π○=)<新スキルの詳細に関しては次回で出ます。
(=○π○=)<それと……後で出すのもあれなので、ここで少しいいわけ?させてもらいます。
(=○π○=)<原作においてカグヤが、■■■を次に使うと進化が一年先になる。という話しをしていますが。
(=○π○=)<さすがにそこまでは待てないので、あれは連続による緊急進化のせいで進化が遅れるという解釈をします。
(=○π○=)<じゃあ、緊急進化するなよ、と思う方もいるかもしれませぬが
(=○π○=)<この段階で緊急進化させたかったので……
(=○π○=)<もちろん、一年とは言いませんが進化に関してはちゃんと遅らせます。