(=○π○=)<1話目を読んでない方は、先にそちらをお読み下さい。
第10話 《我は契約より玉と黄金を望む》
□アジト内 【悪魔戦士】 ローガン・ゴールドランス
「――これは!」
赤いウインドウに書かれた文字を読み、その意味を考える。
すでにルンペルシュティルツヒェンは俺の中に入り、その効果を取り戻している。
もちろんこの間にも、ゲーティアは俺に起きた異変に首をかしげながらも、容赦など一切いれずになおも召喚をし続けている。
そしてそのゲーティアに呼ばれた《バタリオン》の悪魔たちもまた、ゲーティアの指揮の元、俺を仕留めようと動き続けている。
それらの動きに注意しながら、俺は確認をしなければならないことがある。
それはあの訳がわからないシステム。■■■という原作においてもいまだに語られぬ、物語の根幹だろう設定による〈エンブリオ〉の強制進化シークエンス。
それによっておきたひとつの事象。あの赤いウインドウに書かれていたことを信じるとするのなら、内容を解釈するのなら、それは俺の〈エンブリオ〉【改竄悪魔 ルンペルシュティルツヒェン】の進化による《
だからそれらの変化を確認するためにルンペルシュティルツヒェンに確認をする。
(シュテル、これはお前が進化したという事でいいんだな?この進化によってどう変化したんだ?)
『…はい、確認終了しました主様。確かに私はあれによって進化していたらしいです。これによって私は第3形態になりました。先ほどよりも強い力を持っているようです、これならこの状況を打破することも可能やも知れません』
やはりそうか。
先ほどまでは取っ掛かりがつかめないとも思っていたが、存外運が良かったな。
いや、そういえば昨日からルンペルシュティルツヒェンの食欲がすぐれなかったか?
緊急進化に至った起爆剤の意思がどんなものかはついぞ分らないが、それでも進化に至ったこと自体は必然の成り行きと言う物か。
『……それで、新しく習得したスキル以外の変化に関してですが。全く変わっていません。ステータス補正が悪くもよくもなっておらず、第一スキル《
(…元々ステータス補正が良くなること自体は期待していなかったが、悪くもならなかったのか。いやそれはいいが、だが俺たちのメインスキルである《我は偽証より黄金を紡ぐ》が強化されなかったのは痛いな。その分新スキルに持って行かれたというところか、で?)
それは分ったから本題の新スキルに移れという意味を込めて聞き返す。
俺たちが話していた時間は5秒ほどではあるが、だからと言って無駄にしていい訳でもない。
そしてルンペルシュティルツヒェンもそれを分っているのか、本題を話す。
『はい、私たちの新しいスキル、その名は――《
同時にルンペルシュティルツヒェンによって〈エンブリオ〉のスキルが書かれたウインドウが開き、《我は契約より玉と黄金を選ぶ》という名称と共にそのスキルの効果が示されていた。
《
メインジョブのリソースを使用して、この3日間使用していない2つの悪魔召喚スキルの内、片方の召喚悪魔のステータスまたはスキルどちらかを切り取り、もう片方の召喚悪魔の同じ項目に貼り付ける。
アクティブスキル
※切り取られたスキルはその後3日間使用することは出来ない。
※貼り付けられたスキルは、そのスキルを使用するかまたは3分たつことで元のスキルに戻る。
それは悪魔改造のスキル。使っていない悪魔2体を使用して自分好みの性能を保有する悪魔を生成することができる強化改造の力。
それは仕様変更のスキル。本来あった悪魔召喚スキルの欠点を探し出し、もっとよりよいものへと変える仕様改善の力。
それは契約破棄のスキル。今までの悪魔の力を切り捨てて、ただ自分が望むもののみを選別して新しい召喚悪魔を生み出す契約を成す契約改竄の力。
それは異なる世界の人物である彼が、ローガンとして転生したという彼のパーソナルを元に形作られた、カット&ペーストの力。
それは『ルンペルシュティルツヒェン』と言う悪魔ではなく、『ルンペルシュティルツヒェン』に登場する貧しい粉ひきの娘が、《偽証》という悪魔との契約により王女になった人物が、自分の子供と自分のものとなった黄金を両立したいと、そうしても問題ないという考えで、悪魔との契約を破棄する傲慢なる悪魔使いの逸話に沿った力。
《我は契約より玉と黄金を望む》は自分にとって、いや自分のみにとって有意な結果を約束する、二者両一のスキル改竄の力。
「…これは。……なるほど、この状況を一度に変えられるものではないが、だがこの力があればあのUBMを倒すことができる」
『はい』
そう、これは状況を変える力ではなく、あの悪魔を倒すための力。
スキルが悪魔召喚限定で、他のジョブに進む道が断たれたと云っていいが、今はそのことについては構わない。
むしろ問題なのはスキルの説明にある一文の意味。
「それで…このメインジョブで使用するリソースと言うのはどういう意味なんだ?」
『どうやらこのスキルは発動する際、元となる二つの悪魔召喚スキルに必要なポイント数に応じて、発動に必要なリソース量も増えるみたいです。このメインジョブのリソースはポイントがあるならそちらから使用して……足りなければジョブのレベルを減らして発動するようです』
おい、スキルの発動にジョブのレベルドレインを要求されるのかよ。まるであの【女教皇】の最終奥義のようだな。
さて、どういう風に組み合わせるべきか?大量のポイントを要求されるのなら、複数のスキルをいくつも組み合わせる事は出来ない。
だから候補は一つまでに絞っておくべきだ。他の候補はポイントに余裕が出てから考えればいい。
『主様。あのゲーティアですが、一定時間がたったというのに新しい召喚スキルを使用してきません。何やら企てているのやも知れないのでお気を付け下さい』
ん?そうか。
俺はゲーティアの方を見る。
あいつは戦いが始まってから変わらずに、俺たちを見下してにやにやしているが、それにしても確かに今のあいつに新しい悪魔を召喚する気配がない。
油断しているのか、それともルンペルシュティルツヒェンが言うように、何かを企てているのか分らない。
だが、今の状況でそのことを気にしすぎててもしょうがないし、思考を再開するとしよう。
現時点で俺が3日間の内に使っている悪魔召喚スキルは2つのみ。すなわち《チーム》と《ビギナーキャスター》の2つ。一応《ビギナースカウト》はミックとの闘技場内での戦闘に使っているから省いておくとするか。《ボムトルーパー》と《ビギナービショップ》も使用はしているがギリギリ3日間の内には入っていないはずだ。まあ闘技場内でならカウントはされないとは思うが。
使っていない悪魔召喚スキルは《レッサー・デビル》《ビギナーガード》《ビギナークラッシャー》《チョアプラトゥーン》。それにくわえて《ボムトルーパー》と《ビギナービショップ》もだな。
それでどうするべきかだが……そうだなやはりあの組み合わせが一番だろう。あとはルンペルシュティルツヒェンに確認だな。
(なるほどな。それで《■■■■■■■》と《■■■■■■■■■》を組み合わせた場合はどれくらいのポイントが必要になるんだ?)
『その組み合わせですと…12500ポイントになります』
「多いな…っち、“来い”《コール・デヴィル・チーム》」
進化からおよそ20秒しかたっていないというのに、召喚した悪魔の数は10を切りそうになっていた。
急いで《チーム》を追加するが、正直言って焼け石に水でしかないだろうな。
ジョブを示すウインドウを開き、現在のポイント数を確認するがもうのこり3400しかのこっていない。3倍化を含めて10200程度、後残り700近いポイントが足りない。
このクエストを受けた時点で4500ポイントはあったから、これまでの戦いで3000近いポイントを消費していることになる。必要な経費は多かったが、それでも少し無駄をしすぎたかと少し後悔はする。
あたらしくポイントを増やそうにも今日の朝の時点で、ポイントに変えられる物はほとんどポイントに変えてしまっている。だからあと700というポイントを得るためには、あの時ポイントに変える事を躊躇してしまった2つのものの内、どちらか片方をポイントに変えなければならない。
その二つのものとは【救命のブローチ】と【三重衝角亜竜】。
【救命のブローチ】は2週間ほど前に倒した純竜からのドロップの一つで、【三重衝角亜竜】は今回のクエスト報酬のひとつとして前払いしてもらったもの。
そのどちらをポイントにするかと考えて――
「いや、考えるまでも無いな。“我捧げるは”【三重衝角亜竜】」
俺は間髪いれずに、【三重衝角亜竜】が込められたジュエルから、モンスターを解き放ちすぐさまポイントに変換する。
そう、迷うまでも無い。ただの遠出用の足として手に入れた【三重衝角亜竜】と、これから一か八かに賭ける成功率を生存率としてかさ上げでできる【救命のブローチ】、どちらかが重要であるかは言うまでも無い。
故に亜竜をコストとして1250ポイントを手に入れることにする。
一度に手に入れたポイントの総数としては破格であるが、ポイント変換効率に勝るアイテムを交換するほうが少し安いと考えると、やはりもったいないと考えてしまうな。
いや、いまはそんなことよりも、あの悪魔だ。
「亜竜をコストとしてポイントをかさ上げしただと?…なるほど仕掛けるという事か、このままおとなしく悪魔の軍勢に翻弄されておとなしく死んでおけばいいものを。それならこちらも少し本気を出すとしよう。《
(《強化召喚》か、一体どんなスキルだ?真っ当に考えれば、呼び出した悪魔を強化する強化スキルか)
『どうやらその考えで間違いないと思われます。いままで召喚された悪魔よりも、今呼び出された悪魔の方が動きが格段にいいです』
やはりそうか。そしてこれでゲーティアが呼び出した悪魔の総数は600近くになる。
ある程度広いはずのこの空洞だが、これだけの悪魔がひしめいているとさすがに狭く感じるな。
そして今から、この軍勢を突っ切ってあのゲーティアの元までたどり着かなくてはならない。
第二のスキルである《契約》を使うために余計なポイントを消費をしたくないのだから、ここを突破するのにも必要最低限でかつ、あの2種の悪魔を呼んではいけない。
さて、どうするかと考えて、純粋に戦力で勝る相手にちまちまと戦略を組み立てても、その戦略を通す前に数の差で押し切られかねない。やはりごり押しで行くしかないだろうと思い切る。
「さて、今から行くのは死の行軍。だが――」
(――はい、これで私たちが死ぬわけがありません。かならず勝利に至るでしょう)
「ふ、こういうときはシュテルのそういう全面肯定も悪くはないな。さあいくぞ『キャスターNM』“魔術師よ”《コール・デヴィル・ビギナーキャスター》」
泡が起こるのと同時に、俺たちはゲーティアに向かって走り出す。
「血迷ったか?この軍勢相手に特攻を駆けてくるとはな。いや、俺の手をわずらわせたくないから、悪魔の手で自殺してくれるというのは大変喜ばしい」
(言ってろ)
ゲーティアの妄言を心の中でシャットダウンしつつ走り続ける。
俺には見えないが、今頃俺の後方で泡がはじけて呼び出した悪魔が現れてくる頃だろう。
その悪魔はミックとヴィクターを分断した時にも使った《ビギナーキャスター》。
MPを高めた3体の悪魔は、その身を賭して、そのすべてを俺の為に使わせて、《オーヴァーキャスト》による全力の魔法にて、俺の進む道を遮る600の悪魔の内、俺とゲーティアを阻む数十体をすべて一掃してやる。
「“来い”《コール・デヴィル・ビギナースカウト》」
「…く、そういう手で来るのか。だが――」
俺のAGIは当然低い。
そして俺とゲーティアの間にある距離もまた遠い。
悠長に走っていては、反撃の為の機会を増やしてしまう。
だから走らない。俺が呼び出した《ビギナースカウト》は戦闘に使うためのものじゃあない。
俺の後ろから呼び出した《ビギナーキャスター》のものらしき3つの魔法が発動され、俺を飛び越し俺とゲーティアの間にある悪魔たちに向かう。
ゲーティアは俺が何をするのかを察した様だが、それでも相手の能力を考えればこれで問題ないと、全力で跳ぶ。
「《ビギナースカウト!》。全力で俺をあいつの元まで運べぇぇ」
「貴様の思う通りにさせると思っているのか?いなくなってしまうのならこちらで消費するだけのこと。《コンバージョン・デモン・フレア》」
同時に起こったのは3つの事。
ゲーティアが呼び出したすべての《レジメンツ》の悪魔をコストとして、ダメージ値6万の《コンバージョン・デモン・フレア》を発動し。
俺が呼び出した《ビギナーキャスター》が、既に《レジメンツ》の悪魔共がいなくなった空間を全力の魔法で焼き。
俺が呼び出した《ビギナースカウト》が、ジャンプした俺をその背に乗せてゲーティアに向けて突っ込もうとする。
(なっ、そんな手を打って来るのか!)
『主様、今までの時間から考えると、ゲーティアが新しく悪魔を呼び出すまで後26秒ほどです』
俺たちの手をかわし、特大の炎を生み出したゲーティアはにやりと笑っているのが見える。
ルンペルシュティルツヒェンの、のんきな報告を頭に入れながらこの状況を考える。
避ける事は……できない。もう既に《ビギナースカウト》は前進して動き出している。車ではないが、動き出したこの状況を遅延なく方向転換できるほど《ビギナースカウト》の性能は良くはないだろう。だから避けられない。
防ぐことは……できない。この炎は《コンバージョン・デモン・フレア》。原作においてローガンが使用していたもので、その威力はそのスキルを発動するために消費した悪魔1体に付き100だったはず。だから現在の威力はおよそ6万近くになる。だから防げない。
生き延びる事は…できる。なにせそのために悪魔召喚の生贄に【三重衝角亜竜】を使用したのだから。俺は懐に入っている【救命のブローチ】の感触を手にしながら、生き延びることを確信している。
(生き延びる事は出来る。だが…!)
そう、だから問題なのは生き延びた先の事。
このまままっすぐ突っ込んでいってしまっても、生き延びられること自体は間違いない。
だが、そうしてしまえば爆発による影響であらぬ方向へ飛ばされて、ゲーティアとふたたび距離をとらされるのは間違いがない。
そしてそうなってしまえば、俺の勝率が無くなってしまうだろう。
ゲーティアが同じ手に引っ掛かってくれる相手だとは思わないし、こんどはもっと強力な悪魔を呼び出してくるだろう。そうなってしまえば今の俺にはどうしようもない。
だからあの極大の炎をうまくかわして、ゲーティアに近づく方法をとらなければならない。
新しい悪魔を召喚することは出来ない。
《ビギナースカウト》の進行方向を変える事も出来ない。
そしてAGIの低い俺が大きな動きをすることも出来ない。
だから俺にできるのは、やらなければならないのはこのまままっすぐ進みながら、必要最小限の動きで相手の攻撃をかわしきりつつ、相手に近づくこと。
(無理難題に過ぎるな。だが……)
意を決する。
もとより選択肢などない。
このまま逃げてしまえば、その先にあるのは敗北か、または……
だが少なくとも俺の勝利ではない。
今のこの身には、今までなかったはずの死への恐怖感、忌避感が根付いている。
あの強制進化による変化だとは思うが、だがその死への思い以上に、俺がここで引くことを俺自身が許せない。
だから進もう。
時間にして数秒。
ゲーティアが悪魔を炎に換えてから、さほど立っていない時間の流れの中で指針を決める。
目の前に炎が迫って来る。
少しずつ炎が大きくなり、視界を一刻ごとに大きく占めていくその形と、次第に感じていく熱気を肌に受けながら、俺は進む。
今までのっていた《ビギナースカウト》をスターティングブロック代わりにしながら、クラウチングスタートをする。
それは悪魔を加速装置とした近距離ダッシュ。
本来の俺の速度では不可能な移動を、《ビギナースカウト》を用いて出しながら、極大の炎の下をくぐりぬける。
「なにを!」
そんな方法をとるとは微塵も考えていなかったのだろう。
ゲーティアが少しあわてているみたいだ。
俺は姿勢を限界まで低く下げ、地面と顔がぶつかりあうほどに下げた頭の上を、いましがた通り過ぎた炎の熱気と余波を感じる。
背中が少し焼けていくのを感じながら、その数瞬後。
「ぐぁあっ!」
後ろで盛大に爆破が起き、その爆炎と爆風をもろに受けてしまう。
その爆炎によって俺の懐に入れておいた【救命のブローチ】が跡かたも無く砕け散るのを感じ。
その爆風によって前方に、10メテルほど数度のバウンドを含めて飛ばされる。
飛ばされ地面に転がされていた俺は、間髪など入れる余裕も無いと、3日間のみだが闘技場仕込みの受け身をとり、すぐさま起き上がる。
爆炎と爆風による影響は、それだけなら俺にとって不利なもの。
しかし、これによって広がった爆煙は俺とゲーティアまでも包み込み、この元々うす暗かった〈ミルキオーレファミリー〉のアジトを無明の空間に変えている。
この状況なら新スキルによる悪魔召喚も、防ぐのは不可能だろうと喜びながら、息を吸わないように口を押さえて、前に進もうとして――
―――『下ァ』
そんな、幻の5周目に突入しそうな、電波な声が聞こえた気がした。
■【悪魔式 ゲーティア】
【ゲーティア】は嘲笑っていた。
それは自分に向かって無謀にも突っ込んでくる、一人の10にも言っていない人間のこと。
彼我の実力を弁えずに、いまだに刃向かおうとするその滑稽な姿は、無聊を慰めるのに十分な物だった。
しかし、そろそろ飽いてきた。
犬畜生の反抗も、一度や二度程度なら可愛いだろう。だが幾度も重なればそれはうっとう強いという感情に様変わりする。
自分にとってその人間の行動はまさにそれだった。
そして相手の行動を少し変えてやろうかと、自分のスキルの一端である《強化召喚》まで使用してみたりもした。
その結果は自分にとっては想定外の連続だった。
ひとつは今まで逃げに徹していたあの人間が、新しい悪魔を召喚して来たこと。
ひとつは危険を顧みず、炎に向かっていったこと。
そして、いくら後方で爆発したからと言って、あの人間が600の悪魔を糧として産み出した《デモン・フレア》から生き残っているという事実。
それらすべてが想定外。
だが、これで終わりだと二つのスキルを起動させる。
それは《速効召喚》と《MP保管》スキル。
《MP保管》スキルは固有スキルではなく、元となった悪魔も保有する汎用スキルだが、その効果はMPを貯めておける物に一定のMPを貯めておいて、有事の際にそのMPを利用できるという、【マグナムコロッサス】の《チャージ・トリガー》の様なスキル。
そしてMPを保管できる箇所は両腕に3つずつ、そして胸の中央にある7つの7色の宝玉である。
だから、本来この戦いは自分が最初から全力になれば終わっていたものだと認識していたのだ。
◆
《デモン・フレア》が爆発したことにより,耳をつんざく大音量が響き渡る。
その音をカモフラージュとしてそろそろ仕留めるか、と行動する。
まず【ゲーティア】は《MP保管》スキルでMP量を回復させながら、新たな召喚スキルを発動させる。
「《
《速効召喚》により瞬時に召喚される悪魔。
この煙幕の中、地面から突然でてくるカンストした前衛上級職に匹敵する悪魔をよける事ができないだろうと勝利を確信する。
そして――
――再び予想外の出来事が起きる。
「なっ」
それは、あの人間が右に動いたこと。
爆風による移動を計算して、あの人間の目の前に召喚先を指定していたため、その召喚悪魔の攻撃は空を切る結果となってしまった。
だがそんなことはあり得るのか?と疑問に思う。
《メガロニカナイト》には劣るが《デスウォリアー》も十分に強力な悪魔、そしてそのスキルの一つに相手の《危機察知》系スキルをある程度ダウンさせる力もある。下級ならば例えスキルを保有していたとしても、スキルレベル0でスキルが無効になるだろう。
それにそもそも相手は、自分を作り出した連中と同じ悪魔召喚者。そんなスキルを覚えているわけがない。
――しかし、ゲーティアの疑問の間にも状況は動く。
気がつけば、人間がほんの少し目の前に立っていた。
しまった、と思うのと同時に、これで終わりだとも同時に思う。
なぜなら《デスウォリアー》はやられたわけではないのだから。
あの人間はただ《デスウォリアー》の横をすり抜けて、こちらに向かっているだけなのだから。
そしてあの人間の背後に近付いてきていた《デスウォリアー》は、その剣を振るい、
「グギャアァ」
突如として横から襲いかかってきた1体の《メガロニカナイト》によりその攻撃が阻まれる。
「なっ!」
「えっ?」
それは自分の驚愕の声と同時に、あの人間の疑問の声も聞こえた。
その声に、今のは奴の悪魔ではないのか?と疑問に思った。
そして煙幕が晴れて周囲を見渡せるようになったことで、今までいなかった一つの面影を見つける事ができた。見つけてしまった。
それはこの地下空洞の入口にいる一人の悪魔使い。
それは手を伸ばし、こちらにたいして、にやりと口をゆがめている。
――それが致命的なミス。
「《
遠方の悪魔使いに気をとられている間に近づいていた一人の少年は、自分の目の前に到達し、
「これでおしまいだ“弾けろ雑魚共”《コール・デヴィル・チョアプラトゥーン》」
百近い泡から小さい悪魔が出てきて。
少年がスライディングによって自分の足の下をくぐりぬけて。
「まだだっ。《
これを受けてはならないという自分の感を信じて、《ガード》のステータスでENDを補強し、これで大丈夫かと安堵して。
その小さい悪魔が触れるのと同時に、爆発が起こる。
その数、90。
それは、外見こそ小さいただの雑魚悪魔だが、中身は全くの別物。
【ゲーティア】がただの少年と侮った、その中身がただの少年ではないように。
小さい悪魔に込められた大爆発が連鎖しながら、あたりを白く染めていく。
それは少年の力が【ゲーティア】を上回ったからなのか。
もしくは少年の傲慢さが【ゲーティア】をはるかに凌いでいたからなのか。
強化したはずのENDなんてまるでむしして。
そして【ゲーティア】はその身体を完全消滅させた。
To be continued
(=○π○=)<まだまだいくよー
(=○π○=)<次回投稿は22:00です
(=○π○=)<ただしこのあとの話ではなく、話しの内容としては感想で喋っていた内容に+αを加えた内容になっております。
(=○π○=)<感想を呼んでくださっている方も新情報があるので、読んでいただきたい。