(=○π○=)<前3話を呼んでいないのであれば、そちらからお読みください。
第十一話 あるひとつの終り
□アジト内 【悪魔戦士】ローガン・ゴールドランス
後方に爆風を感じる。
後方から断末魔が聞こえる。
それはおそらく、俺があいつを倒した証。
【ゲーティア】自身を壁としたおかげで、俺自身に爆発のダメージは届かなかったが、それでも爆風によって数メテル吹っ飛び地面を転がる。
「っつぅ」
転がりながらあの悪魔が光の塵になっていくのを見届けて。
【〈UBM〉【悪魔式 ゲーティア】が討伐されました】
【MVPを選出します】
【【ローガン・ゴールドランス】がMVPに選出されました】
【【ローガン・ゴールドランス】にMVP特典【魔式手甲 ゲーティア】を贈与します】
本当に【悪魔式 ゲーティア】に勝利したことを告げるアナウンスを聞く。
戦利品を確かめたいのは山々だが、2度の爆発によってただでさえ低い俺のHPが危機に瀕している。
痛む体を押さえながら起き上がり、アイテムボックスからいくつかのポーションを取り出して服用する。
「お見事です主様。やはり我々の勝利でしたね!」
もう戦闘が終了したからか、ルンペルシュティルツヒェンは俺の体から出て、アポストル形態に戻っていた。
これで勝ったんだな、と実感を持って息を吐く。
「そういえば、あの悪魔は一体」
「ああ、主様。あの悪魔は……」
「ローガン!無事ですか!」
その声に振り返ってみると、入口の方からアルフレッドが走って来ていた。
どうやらあのアベルとか名乗る悪魔使いをなんとかできたらしい。
「アルフレッドか、ああ無事だな。……もしかしてあの悪魔はアルフレッドのものなのか?」
「え?ええ。あなたがあのUBMに勝つ方法を持っていると思い、それで倒されようとしていたあなたを助けるために《メガロニカナイト》を呼ばせていただきました。結果あれを倒すことができてよかったですね」
そうか、助けてもらったのか。
「おかげで助かったぞ。あれが無ければ俺は死んでいたからな。でもよかったのか、アルフレッドが討伐するチャンスだったと思うんだが?」
「アハハハ、普通は逸話級とはいえUBMを討伐することなんて出来っこありませんよ。ギルドマスターが一緒でもあのUBMが相手なら不可能でしょうね。だからあなたがあのUBMに勝機をもって突っ込もうとしているのを見て、それに賭けてみようと思ったわけですから」
なるほどな。
前からUBMは通常のティアンにとっては決死の相手だとは知っていたが、俺より現時点で総合力においてはるかに勝るギルドマスターや、近接戦闘能力が高いアルフレッドの二人でも無理なのか。
だがそのおかげというべきか、俺に賭けてもらったおかげで俺はこうしてUBMを討伐してMVP特典装備を手に入れる事ができたんだからな。
そう思いながらアイテムボックスからいままでは当然存在などしていなかった、【魔式手甲 ゲーティア】を取り出して装備してみる。
【魔式手甲 ゲーティア】は手甲と言う名前が示す通り、手を覆う黒い籠手であり、腕を覆う黒い金属のようなものは三枚の段差によってなされており、その段差をつくっている黒い金属のようなものにそれぞれ異なる色の六つの宝玉がはめ込まれている。
性能が気になり、ウインドウで説明を確認してみたらこんなことが書かれていた。
【魔式手甲 ゲーティア】
〈逸話級武具〉
悪魔を召喚する悪魔の概念を具現化した逸品。
装備者が行う悪魔召喚の補助をする事に特化している。
※譲渡売却不可アイテム・装備レベル制限なし
・装備スキル
《六法悪書》
《????》 ※未開放スキル
「はっ?なんだこれは」
「ほう、それがうわさに聞くMVP特典装備と言う事ですか、確かに普通の装備ではないですね」
「ふむふむ、黒くて硬くて大きくてかっこいいですね。似合っていますよ主様」
シュテル、お前は自分の発言を見直した方がいいぞ。
いやまあそれはいいとして、この性能は何なんだ?
ステータス補正なし、そして未開放のスキルが一つって。
とはいってもこの状況を全く知らないわけではない。
ステータス補正なしは【黒纏套 モノクローム】という事例がある。
未開放スキルは【瘴焔手甲 ガルドランダ】や【断詠手套 ヴァルトブール】のふたつがそうだ。
だが、その二つが同時に俺の最初のMVP特典になるなんて思いもしなかったぞ。
それにしても〈エンブリオ〉にも特典武具にもステータス補正に嫌われるとはな、一体俺のステータスをどうしたいんだか。
まあいいとりあえずは、未解放のスキルの詳細などわからないので、わかるスキルを確認しておこう。
今現在使える唯一のスキル《六法悪書》を確認すると、どうやらこれ自体が複数のスキルの集合体だったようだ。
それならばらばらにスキルとして登録すればいいのに、ともおもうが容量の関係で無理なのか、それとも元となった【ゲーティア】自身がこのスキルを持っていたのか。
それで、そのスキルの内容はどうやら六種の召喚補助スキルのようだった。
ひとつひとつ内容を確認してみるが、最後の一つを除きすべて俺にとって有用なものであり、きっちり俺にアジャストしてくれたみたいだ。
「どうやらその顔を見る限り、いいものが落ちてくれたようですね」
「お、ああ。〈ミルキオーレファミリー〉が創り上げようとしていた悪魔召喚者をサポートする悪魔召喚術式ってふれこみに間違いはなかったようだな。とりあえずスキルに関しては言う事がないな」
「そうですか……。そうですね、ローガン少しいいでしょうか」
ん?いきなり改まってどうしたんだろうと思いながら、アルフレッドの方をちゃんと向き合う。
そうすると、アルフレッドがいきなり頭を下げてきた。
なぜに?
「すいません、ローガン。私はあなたを侮っていました。いくら〈マスター〉だからといって下級の【悪魔戦士】では戦力にならないと、力不足だとそう勝手に決め付けていました。私の眼が節穴でした、まさか逸話級のUBMを倒すことができる力があるとは思いませんでした」
そういってからアルフレッドは顔を上げて続ける。
「ローガン、私はあなたを只の下級などではなく、私と同等以上の実力を持った〈マスター〉だと認識を改めましょう」
そうか。
いやまあ、うん。【ゲーティア】を倒せたのは第二スキルを獲得したおかげだからだし、アルフレッドの助けもあったからなんだけどな。
いやそれも俺の実力か?
それはそれとして、こう他人に認められるというのは本当に気持ちがいいな!
「そうか!まあ、アルフレッドの《メガロニカナイト》の助けと、あの『下』という奇襲を知らせてくれたおかげもあるがな。それにしてもあの煙幕の中でよくあの悪魔召喚を察知できたな、俺は全然気がつかなかったというのに」
そこだけは少し俺の察知能力が劣っているようで認めがたいな。
「はい?《メガロニカナイト》による助けはともかくとして、下からの《デスウォリアー》による奇襲はあなたの実力ではないのですか?」
「はい、あの時彼は何も声をかけていませんでしたよ?もちろん私でもありませんし、主様が自らの能力でそれを成したのだとばかり思っておりましたが……?」
……は?どういうことだそれは。一体どういう……
このお互いの齟齬はどういう事かと考えて、
「おーい、三人とも大丈夫かー」
そのミックの声に中断させられた。
◇
あのあとミックとギルドマスターの二人が合流し、4人+αは無事に生存できたようだった。
その後ここでは辛気臭いからと、ギルドマスターが発見していたらしい〈ミルキオーレファミリー〉の住処に移動した。
そこは、巨大な曼荼羅じみた魔法陣が描かれていた空洞から出て、俺たちが最初に開戦した場所には行かず、そのまま山を登って行った先にある小屋らしい。
たしかにここは血の跡や何やらあるみたいで、心臓に悪い。戦闘中だからと気にしないでいたが、確かにここにずっといるなんて耐えられないな。
そんなわけで、アジト内から出て小屋に付き、机を囲んで4人でお互いの状況について話し合う事にしたのだった。
ミックはなんと、あのヴィクター・ミルキオーレを倒したらしい。
さすがに殺せなかったようで、とどめをさすのはギルドマスターにやってもらったらしいが、それでもレベル50にも言っていない下級がカンスト上級職を倒すことができたのは、偉業としか言いようがないというのが二人のティアンの感想だった。
その報告を聞きアルフレッドなんかは「かたやヴィクターを、かたや逸話級UBMを倒すとは、〈マスター〉というものは本当に規格外な人たちなのですね」という感想を口にしていた。
俺もミックもだが、相手が最初から全力を出さずに戦力を逐次投入してくれたおかげで勝てたとはいえ、だからといって何回も闘って何回も勝てるとは思っていない。あれはお互いに死力を賭して、一か八かが嵌まったから勝てたものだろうからな。
そしてギルドマスターは、20人近い【悪魔騎士】を相手に無傷で順当に倒すことができたらしい。
本当に順当だったらしく、逃亡も降伏も許さず淡々と処理していたらしく特に語ることはないと言われた。
それはそれで凄いが。
その後はミックの加勢、またはミックを倒した後のヴィクターと戦うべく、爆発によって封じた穴を開通させて、坑道内に降りたということだが、その時にはもう既にミックがヴィクターを倒した後だったらしい。
そうしてヴィクターを始末した後は、アジト内の戦力はもう弱い戦力しかないとにらみ制圧を俺とアルフレッドの二人に任せて、ミックと一緒に周囲に隠れている〈ミルキオーレファミリー〉の徒弟達を見つけ出していったとのこと。まさか逸話級のUBMが召喚される事態になっているとは、露として思わなかったらしい。まあ当然と言えば当然だが。
アルフレッドは俺と別れた後、数十分かけてアベルとかいう悪魔使いを倒した後、急ぐためにAGI型悪魔にのって移動していたらしい。
俺がゲーティアと戦っていたのは五分もかかっていないというのに、アベルを倒すのに十五分もかけたアルフレッドが俺とゲーティアの決着に間に合うとは。
いや確かに、俺があのアジト内にたどり着くまでに結構時間がかかってはいたけども、まさか十分近くも移動していたのか。
距離が長いのか、AGI型悪魔が早いのか、それとも俺が遅いのか……考えるのは止そう。
それにしても“悪魔剣”か面白そうだな。
近接戦闘能力は俺も欲しいと思っていたから、一応候補として考えておくか。
まあ、いまは次に付くべきジョブは上級職である【悪魔騎士】一択だが。
それから俺の戦いに関しても話した。
俺と悪魔召喚術式がUBM化した【悪魔式 ゲーティア】との戦い。
ミックなんかは「UBMと戦闘とかうらやましい。というか、俺にヴィクターとかいうあんまりおいしくない相手を押しつけておいて、UBMを倒すのとかひでぇぜ」とか言っていた。
まあ、俺が逆の立場でも似たようなことは言っているだろうから、そのことにかんしては別にかまわないがな。
ちなみにギルドマスターに関しては、それを聞いて驚いていた。やはりアルフレッド同様にほぼとはいえ単独でUBMを倒すというのはティアンからすればものすごいことなのだろう。
ちなみにギルドマスターとミックは《看破》を持っているみたいで、俺の装備しているMVP特典の内容を見たらしい。ミックはイマイチ強さが分らない、という顔をしているがギルドマスターはその有用性に感嘆していた。
◇
お互いに状況報告が終わった後、ギルドマスターはアルフレッドを伴って、いろいろ処理をするらしいので、今はミックとあとはルンペルシュティルツヒェンと一緒に〈ミルキオーレファミリー〉が使っていた小屋でのんびりと休ませてもらう事にした。
いまは死人である人物が使っていた小屋を使う事に対して、俺はそれなりに抵抗したのだが、アンデットがわき出るわけでもないという、ミックの言葉で一応納得することにした。
ただし、少し休むだけで、ここで寝るというのなら俺はログアウトさせてもらうからな!と宣言だけはしておいた。
「いやー、それにしても疲れたなー」
「そうですね、あなたも結構疲れてはいるのですね。まあ主様もUBMという大敵を相手にしたのだから当然疲れてはいますが」
「疲れはしたけども、その労力に見合った結果が手に入ったから今回はこれでよかったな」
「あー、本当にいいなー。MVP特典、オンリーワンの武具とか超ほしんだが……。まあ俺の方も収穫はあったからよしとするかー」
「収穫?何かあったのか」
それに対してミックはふっふっふとわざとらしく笑いながら、一つのアイテムボックスを取り出した。
「何だこれは?」
「ヴィクター・ミルキオーレが使っていたアイテムボックスさ。ギルドマスターにほしいって言ったら、くれたんだよ。中身は結構いろいろ入っていて、高そうなポーションとか入っていたからな。今回のクエストの報酬と併せれば、壊れた武器の分を引いても完全に黒字だなコレ」
…それはおいしいな。
俺は金銭を犠牲にして特典武具を手に入れて。
ミックは特典武具を犠牲にして金銭を手に入れたわけか。
どちらがいいかと聞かれたら、普通に特典武具と答えるだろうがそれでも今回はほとんど赤字に近いからな……頑張ってこれから稼がないとな。
「ああ、それと基本的にこっちがいる物だったけど、一つだけ俺にとっちゃ価値がないものがあったから、それはローガンにやるよ。ギルドマスターに渡すよりもそっちの方がいいだろうしな」
「ミックに価値がなくて、俺にくれる物?もしかしてゲーティアの設計図とか?」
「いや、残念。アイテムボックスにそのゲーティアとかいうやつの関連資料は一つも無かったよ。その代わりにこれが入っていた…」
そういいミックが取りだしたのは数枚の紙。
そこに書いてあるのは『廃案術式 【レメゲトン】』というもの。
廃案…ゲーティアを制作するうえで没になった部分だろうか?
一応一通り目を通して見るが、今の俺には分らない部分も多い。
わかる内容だけでいうのなら、ある悪魔を召喚する術式のようだが、正確な所は一切わからない。もしかしたら本当に失敗作なのかもしれないな。
あのフランクリンのやつなら、もしかしたらこれを活かすこともできるとはおもうが、あれに頼む気は毛頭ないので、自分だけで検証しなくてはならないな。
【悪魔戦士】ギルドの情報と、図書館なんかにいってみるべきかな?まあ無駄かもしれないが暇を見てやってみる事としよう。
「これは……、なるほどな。今の俺にはわからないが、もしかしたら使える物かもしれないし有り難く貰っておくとする」
「ほいよー。それでこのあとどうするんだローガンは」
「このあと?」
「ああ、このクエストが終わって皇都に戻ったらだな」
「特にどうともしないが……まあ今まで通り金と経験値を稼ぎながら、決闘の教導を受ける事になるんじゃないか?とりあえずは上級に上がるまでは教導は続けておきたいしな。それ以降はどうするかは分らないが」
「ふーん、特に決まってないのか。それじゃあ、提案なんだけど戻ったら俺のチームを紹介するから、一緒にクエストに行こうぜ」
「ミックの仲間だと?いや、俺は…というよりは【悪魔戦士】はソロが前提に近いジョブだぞ、他の人間と組むのは問題があるだろう」
「まあ、そこらへんはレオンのやつがうまく考えるだろ。経験値分配が悪くなるけどパーティー組まずに戦ってもいいしな」
「というか、そもそもどうして俺がミックとクエストを受けに行くんだ。別に俺じゃなくてもいいだろ」
「えー、つれないこと言うなよ友達だろ俺たち」
「なっ、誰が……いや、まあ友…達…という事にしてやっても…いい…ぞ」
「うわー、素直じゃないねぇローガンも」
よしこのことは後回しにしよう。
そう決めて後ろに向き、話しを終わらせる。
それからも少しずつ俺たちは、ギルドマスターとアルフレッドの二人が戻って来るまで駄弁っていたりしたのだが、そこは割愛するとしよう。
◇
二人が戻って来てから、もうここでする用事は一通り済んだとのことなので、皇都へ向けて帰宅することになった。
今回は行きと異なり〈ミルキオーレファミリー〉の監視がなく、目を気にする必要がないとのことなので、アルフレッドの持つ地竜に最初から乗って移動する。
管理AIによって技術がある程度向上しているといっても限界はあるのか、サスペンションの性能が悪く、山道を走っている間ずっとがたがたとしていたが、それも少しの我慢だとたえてようやく山を降りる頃には夜になっていた。
そこから数度の休憩をはさみながら俺たちはまた皇都に戻るのだった。
To be continued
(=○π○=)<ふっ、これでぜんぶだしきってやったぜ(ゴハッァ
(=○π○=)<ストックがもう0です
(=○π○=)<次回投稿に関しては出来れば大晦日に投稿したいとは思っています。
(=○π○=)<間に合わなければ、来年に行きますが。次回エピローグです