エピローグ 皇都に帰って
□ドライフ皇国皇都 【悪魔戦士】ローガン・ゴールドランス
「おう、もどったぞ」
竜車に乗ること数十時間。
あの〈ミルキオーレファミリー〉のアジトから、俺たち5人は特に何か起きるでもなく、無事にこのドライフ皇国の首都である皇都に戻ることができたのだった。
そして皇都に戻ってから、ギルドマスターのすすめによって、薄暗い裏路地をとおり地下にある【悪魔戦士】ギルドに入っていくことになったのだ。
そしてギルドの扉を開けたギルドマスターの一声が最初のソレだ。
「ギルドマスター、大丈夫だったのですか?」
ギルドマスターの声を聞き、ギルドに居る人間が数人近寄って来る。
彼らまたは彼女らは、ギルドマスターの事を心配しいたわっているので、ギルドマスターは尊敬されているようだった。
一度カウンターに戻ってから、数分後今度は二つのアイテムボックスを持ってこちらに戻って来た。
「ローガン、ミック。俺たちはこいつらに今回の経緯を話さなくちゃならねぇ、だから今日はこれでお別れだな。このアイテムボックスは今回の依頼分の報酬だ。ローガンは報酬の前払いのせいで少し金少ないけどな」
そして二つのアイテムボックスをそれぞれ俺とミックに手渡してくる。
それを受け取るのと同時に、俺たちがそれぞれ受けたクエストの完了報告が届く。これで終わりらしい。
ギルドマスターは手渡した後、最後に有難うといい踵を返して奥の方に向かっていった。
しばらくはいそがしそうだな。
「とりあえず、今日は帰るとするか。今日明日は教導も休みにしてるし、のんびりさせてもらおっと。お前はどうするんだ?」
「俺か?そうだな確かに今日はもう日が暮れてきている。のんびりと休ませてもらおうか。明日はモンスターを倒しに行くさ、しばらく狩れていなかったしな」
俺のレベルはゲーティアを倒した時点でも変動していなく、ここに帰る途中のモンスター討伐でようやくレベルがひとつ上げる事ができた。
ミックはもっとレベルが高いようだし、今日は休むとしても明日休むことは出来ないな。
「はー、ローガンもよくやるねぇ。まあいいや、俺は久しぶりの休みとするよ。あいつらが帰って来るのは明後日だしな」
「あいつら?ああ、お前のフレンド達か」
レオン以外のミックの友人かどんなやつなんだろうな。
一応、ここへ帰る道中聞いてみたがはぐらかされてしまったし。
「そうだな、まあお互いに時間が合うのは結構先になるかもだが、いつかローガンとあわせるよ」
「……別にあう必要などないと思うがな」
「まったくお前と言うやつは。……まあいい、それじゃそろそろ帰ろうぜ、俺にとっちゃ部外者でしかないからな」
そう言いミックは周りを見渡す。
確かにここは【悪魔戦士】ギルド。【闘士】であるミックにとっては居心地が悪いだろう。
《看破》を保有するティアンも数人いるのか、ミックがなぜいるのか?と怪訝な表情を浮かべている。
「そうだな、帰えるとするか」
そして俺もここに居たい理由はない。
ミックに同意して、出口となる扉を開ける。
そうして二人して、この場を後とするのだった。
◇
「にしても……結構くれたものだな」
今ミックは歩きながら、アイテムボックスの中身を確認している。
歩いている場所は来た時にも通った、貧民街じみた裏路地なのでとられはしないかと、はっきりいって心臓に悪いが、ミックは気にしていないようだ。
詳しく教えてもらっていないが、どうやら1000万リルくらいは入れてあるという事だった。
「俺はまだ確認していないが、前払い分を含めてもそこそこにあるのだろうな」
亜竜の値段を500万リル程度と見積もってもあと500万はある。
本来のただの依頼としては破格の報酬と言えるそれは、口止め料という意味合いも含まれるのだろう。
「ようは内緒にしておけってことだろ?組織の裏ってやつなのかね。まあいまさら警吏にこのことを喋る気なんてないけどな」
「そういうことだろう」
「それにしても……、これってゲームだよな?いくらなんでもNPCの感情とか精巧に作りすぎだろ、命乞いしたり保身したりなんか本当にリアルな気分がして来たぜ」
「………」
ソレに関して俺が知っている事は多い。
だが、ソレに関して俺がいえる事は少ない。
俺のことがばれるというのも理由の一つではあるし、それにソレはミックが考えるべきことのように思えたからだ。
おそらく今までの俺なら、気にしなかっただろう事を気にするのは成長なのか、どうなのか。
いまはまだわからない。
だからミックに対して、俺はここで何も言えなかった。言う事が出来なかったのだ。
◇
あの後ミックとも別れた俺は、宿へ向かう…事はせずに皇都の外に来ていた。
それは決して今から外でレベル上げしようということではなく。
今回の戦いによって得られた力の検証だ。
ただし、検証に大きなポイントが必要な第二のスキル《我は契約より玉と黄金を望む》は使用できない。
だから今回検証するのは、新しく会得した特典武具【魔式手甲 ゲーティア】の性能である。
「さて行くぞシュテル」
『はい、いつでも問題はありません』
ルンペルシュティルツヒェンもすでに内包形態をとっており、いつでもスキルの使用が可能な状態になっている。
「いくぞ、《融合召喚》“来い”《コール・デヴィル・チーム》」
一瞬俺の体が黒く輝いたかと思うと、それが収まり何事も無い状態になっている。
ただしそれは何も起こらなかったというわけではない。
ステータスを開くと、検証通りにステータスがアップしている。
他の低いステータスが並ぶ中で唯一高いAGIの数値。
それは目論見通りの結果を出していた。
《融合召喚》はSTR・END・AGI・DEXのうちいずれか一つのステータスを、コストにした悪魔のそのステータス分アップする、と言う物らしい。
そしてその数値に、ルンペルシュティルツヒェンの3倍化も入るようで、現在の俺のステータスは本来のAGIの数値より150も高い数値のAGIになっている。
「よし次だな。《強化召喚》“来い”《コール・デヴィル・チーム》」
呼び出されたのは本来の《チーム》の悪魔。
だが試しに動かさせてみると、今までに見なれた悪魔の動きより格段にいい。
「よし《速効召喚》“来い”《コール・デヴィル・チーム》。…おお」
そしてこれも想像通りの成果を出した。
チームの最後の言葉を言うのと同時に、瞬時に呼び出されたその悪魔は、俺の命令をまってその場で待っている。
だがそれを無視して退去させて、俺は次の召喚を行う。
「よし《二重召喚》“来い”《コール・デヴィル・チーム》」
呼び出されたのは本来の物とはまるで異なる召喚数。
それは18体の悪魔。
一度に呼べる数としては上級職の《バタリオン》より上回るという事だろう。
《反応召喚》はわざわざ攻撃を食らいにいこうとまではせず、《統合召喚》は使い道がないので放置する。
総評としては、ひとつを除き全部おれの現状に合った優秀なスキルだろう。
特に《融合召喚》は今までの俺に足りなかったステータスを補充することができる数少ないスキルであり貴重だ。
それから他にもどのスキルと、どの召喚スキルを組み合わせたらいいだろうかと宿に帰り、夜深くになるまで考えるのだった。
◇
それはその日の夜中。ふと思ったこと。
それはあの時疑問に思いながらも、誰にもわからなかったこと。
それは一つの謎。
いまだに分らぬ奇跡。
それは――
「あの時、俺に語りかけたあの電波は何だったんだろう?」
その答えはいまだにわからない。
◇◇◇
□■???
【穿凱土竜 ペネトレイン】
最終到達レベル:18
討伐MVP:【魔術師】ファトゥム Lv47(合計レベル48)
〈エンブリオ〉:【無渇聖餐杯 グラール】
MVP特典:逸話級【穿凱護符 ペネトレイン】
【爆砲獣 アヴィルカダン】
最終到達レベル:35
討伐MVP:【獣戦士】ベヘモット Lv49(合計レベル49)
〈エンブリオ〉:【怪獣王女 レヴィアタン】
MVP特典:逸話級【爆砲筒 アヴィルカタン】
【悪魔式 ゲーティア】
最終到達レベル:21
討伐MVP:【悪魔戦士】ローガン・ゴールドランス Lv40(合計レベル40)
〈エンブリオ〉:【改竄悪魔 ルンペルシュティルツヒェン】
MVP特典:逸話級【魔式手甲 ゲーティア】
【切羽啼鳥 フォルティオン】
最終到達レベル:19
討伐MVP:【道士】迅羽 Lv42(合計レベル42)
〈エンブリオ〉:【千里到達 テナガアシナガ】
MVP特典:逸話級【切羽刃 フォルティオン】
【孤狼群影 フェイウル】
最終到達レベル:12
討伐MVP:【壊屋】シュウ・スターリング Lv48(合計レベル48)
〈エンブリオ〉:【戦神砲 バルドル】
MVP特典:逸話級【すーぱーきぐるみしりーず ふぇいうる】
【絶界虎 クローザ―】
最終到達レベル:53
討伐MVP:【闘士】フィガロ Lv41(合計レベル41)
〈エンブリオ〉:【獅星赤心 コル・レオニス】
MVP特典:伝説級【絶界布 クローザ―】
【風艇魚 フォークロフト】
最終到達レベル:28
討伐MVP:【船乗り】醤油抗菌 Lv45(合計レベル45)
〈エンブリオ〉:【大炎醸 アブラスマシ】
MVP特典:逸話級【風艇魚雷 フォークロフト】
・
・
・
「ホゥ?!」
闇の中、ソレは定められた作業場で、定められた作業と記録を行っていた。
ソレが見ているのは、己が作り出した〈UBM〉の討伐状況報告。
想定外……いや、もちろんその可能性も一つのものとして想定していたのだが、ソレが見ているのはそれ以上の成果をたたき出している、喜ばしい報告だった。
普段は無口で無言で淡々と仕事をしている、ソレでもその成果をみて声を上げて喜ばずにはいられなかったのだ。
「さすがだな。最も多い我らの予測ではここまで至るのは、おそらく一人か二人だろうという物だったのだが……よもやこの世界でひと月とたたずに、これだけの〈マスター〉が〈UBM〉を討伐せしめるとはな」
ソレ――〈UBM〉を創り、管理する〈UBM〉担当管理AIジャバウォックはそう口にする。
当然ジャバウォックが驚いているのは、〈Infinite Dendrogram〉という彼らが用意したゲームが出されてからひと月という、強くなるのには短すぎる期間において、〈UBM〉という彼が用意した強敵を打ち倒したことだ。
〈UBM〉というものは、他の十把一絡げのモンスターたちとはまるで異なる。
1体1体が常識と言う物を投げ捨てた、格別にして隔絶したモンスター。
各々が唯一の能力を保有し、強大なステータスをもって敵対する特殊なボスモンスター。
後にも先にも同一個体は存在せず、たとえ同レベルであったとしてもただのボスモンスターの倍以上の強さを誇る、まさに絶対強者。
その彼が創り、認定した〈UBM〉がひと月の間に数十体も倒されている。
ふと、〈UBM〉たちがどのように倒されたのか気になり、ジャバウォックは、空いた時間を利用してひとつひとつずつ戦闘のログを確認していく。
本来ならジャバウォックの担当は、管理AIの中でも忙しい部類に入る。もっともジャバウォックにとって自分の担当は彼の趣味でもあるので、それを大変などとは思わないだろうが。
しかしこの〈Infinite Dendrogram〉のサービスを開始する前に、必要な事はある程度やっておいたおかげで、多少の時間の猶予はあるとふみ、こうして確認をしているわけだ。いまだに〈UBM〉を討伐できるほどの〈マスター〉の数は、それほど多くないというのも理由の一つにあげられるだろう。
◇◆◇
そしてジャバウォックは十数もあった〈マスター〉と〈UBM〉の戦闘ログを読み終わる。
「やはり想定外。……いやこれは想像以上というべきだろうな」
そう感嘆の息を漏らす。
ジャバウォックが閲覧した数十件の〈UBM〉討伐ログを見た感想がそれだ。
なぜなら、このほぼすべてにおいて――
「まさか、この〈UBM〉討伐をしたほぼすべてが、単独またはそれに近い状況によるものだとはな」
そう、それらの内大半を占める討伐ログは、ソロまたは多少の他人の助けがあるものだった。
もちろんパーティー単位で倒された〈UBM〉もいる。中には数百人の信者によって倒された〈UBM〉さえもいる。
だがそれでも大半を占めるのは、それぞれひとりの〈マスター〉なのだ。
ジャバウォックにとってはそれが何より喜ばしい。
「やはりこういうのは素晴らしいな。苦戦とドラマの末に倒し、宝物を得る。それこそが英雄叙事詩というものだ。願わくば彼らが、このまま彼らが苦戦と苦悩と苦難と苦行と苦心を糧に、苦境を打破し続ける事を願おう。いつか彼らがその先に〈超級〉へと至り、そして〈無限〉に届いて欲しいものだ」
そしてジャバウォックは願いを口にする。
彼ら管理AI…いや〈無限エンブリオ〉が何よりも望む、新しい〈エンブリオ〉の〈無限〉到達という願い。
そのために感傷を終わらせて、〈超級〉に至るための試練と化すべく新たなる〈UBM〉のデザインを試行する。
「ふむ、そうだな。どういったものであればよいのか――」
そうしてしばらく考えて……
「――そうだな複数の人間にとりついて、とりついた人間の能力を扱えるというのはどうだろうか」
いくつか試行錯誤しながら、その能力を考えていくが……
「いや、だめか。問題が多すぎるな、出来れば元となるモンスターがいればいいのだが……?」
「やめてー」
ジャバウォックが思案しながら内容を口に出していた時、その言葉に対して後方からひとつの声が上がった。
先ほどまでは間違いなく誰もいなかったはずの空間。
ジャバウォックが振りかえった先に居たのは、一体のマスコットじみた猫。
もちろん唯の猫ではありはしない。それもまた管理AIの1体にして、雑用および文化流布担当管理AIでチェシャという名で呼ばれているジャバウォックの同僚の一体。
それは用事で同僚の仕事場を除いたら、なにやらかなり物騒な事を口に出していたので急いで止めに入ったという理由の為。
「それ暴走して手当たり次第にとりつくイメージしかないよー。災厄となるのは〈SUBM〉だけで十分なんだからねー。それ以外の災厄になる要素はいらないよー。君が創った〈UBM〉で苦労したり処理したりするのは僕たちやティアン、それにプレイヤーの皆さんなんだからね?」
「ふむ、たしかにこのままでは暴走しかねないな。それもひとつの〈超級〉への試練だとは思うが対策は講じるべきか……それで本題は何だ13号」
「いや暴走しなければいいってわけじゃ……まあ、これ以上は言えないか。ああ、それで本題の件だねー。プレイヤー保護機能管理AI……アリスから頼まれた用事だよー」
「内容は?」
「『この一カ月にプレイヤーの皆さんが倒した〈UBM〉の戦闘ログを全部ほしい』、だって」
「めずらしいな。どういうつもりだ?」
「僕も詳しくは聞いていないんだけど、なんか〈UBM〉討伐あたりでなんかおかしい反応が出たんだってー。それを確認したいからとりあえず戦闘ログ全部をみておこうってことなんじゃないかなー」
「おかしい事?一体どのプレイヤーなんだ。全部必要とすることはないと思うが」
「いや、なんでもどのプレイヤーの方なのか皆目見当もつかないってことだよ。そのおかしい反応についても『あれ?』ってくらいで詳しいこと何もわかっていないみたいー」
「…そうか。わかったコピーで構わないな。すぐに用意する」
「大丈夫だと思うよー」
「そういえば、なぜ13号が動いているんだ?たしかにこういった雑用は13号の仕事だが、10号もいるだろう」
「……まだ調査段階だからねー。それにあいつに任せるとロクなことにならなそうだし、アリスもプレイヤーの皆さんのことだから慎重になっているんだと思うよー」
13号……チェシャがあいつと呼び捨てる存在。
基本的に有効なチェシャが唯一苦手と嫌いだと、そして友達がいない(断言)と吐き捨てる相手。
たしかに13号も1号もこの状況なら、まだ10号に頼るという事はしないだろうと納得した。
「…………」
しかしそれでもわからないのは1号が言う、おかしい反応の事。
ジャバウォックは考える。
プレイヤーがこの〈Infinite Dendrogram〉の世界に何かを持ち込めるわけがない。
そうであるならばその反応はプレイヤーとは無関係なことなのか……と考えて。
そして考える事を止めた。
その理由は単純にそれがジャバウォックの担当外だからである。
彼が担当と任されたのは〈UBM〉のことで、そして彼の興味もそれにしかない。
彼が疑問に思ったことはそのうち1号や13号、もしかしたら10号もはいるかもしれないが、彼らが解決するだろうと諦める。
「それでは後は任せたぞ13号。私は仕事に戻る」
「わかったよー。とりあえずはアリスの調査結果待ちだけどねー。それじゃ僕もお仕事行くー」
ジャバウォックはそれで終わりと会話を終えて、ウインドウに向き直り仕事に戻る。
そしてチェシャも、ジャバウォックから受け取ったデータをもって、アリスに頼まれた仕事を完遂するべく動き始めるのだった。
To be continued
(=○π○=)<とりあえずぎりぎり間に合った。
(=○π○=)<急いで間に合わせたので少し適当な気もする?
(=○π○=)<次回投稿ですが……年始でみたいのが沢山あって少し遅れるかもしれません。
(=○π○=)<なるべく急ぎたくはあるのですが……グレンラガンとかめっちゃ楽しみですし
(=○π○=)<遅くても10日までにはあげます。
(=○π○=)<ちなみに、戦歴のリザルトは2章で一番やりたかった事です。
(=○π○=)<下級という事を考えて、2人の〈エンブリオ〉の名前を変えています。
(=○π○=)<無限到達さんとかね!