閣下改竄   作:アルカンシェル07

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(=○π○=)<更新遅れてすいません。

(=○π○=)<種火周回しながら、一挙を見まくったせいで、7日まで小説の方にまったく取り組むことができませんでした

(=○π○=)<それはさておき第3章開幕です。
(=○π○=)<第3章第一テーマは『決闘の階級をあがる、その頂きは栄光』です。

(=○π○=)<要は決闘回。まあ結構ダイジェストやカットを含みますが。
(=○π○=)<全部かき切ると、中だるみするし早くいろいろと書きたいですしね。


第3章 階をあがる、その頂き――
第1話 予選


第一話 予選 

 

0day

 

□第二小闘技場 【悪魔騎士】ローガン・ゴールドランス

 

 「もうそろそろか」

 「はい、あと8分ほどになります」

 

 瞼を開ける。

 ルンペルシュティルツヒェンの言葉を確認するため、瞑想とは言えないだろうまどろみから醒める。

 俺は壁にかけてある時計を見る。

 時計の針は短針と長針が共に12の数字を指し示めし、太陽は中天にあがろうとしている。

 あともう少しで戦が始まると武者ぶるいに似た気持ちで身体を震わせる。

 もっともこれが初めてではない。

 この気持ちに身体を震わせる事は、今までに9度あった。

 

 なぜならこの戦い――決闘ランキング予選は9回経験しているからだ。

 この決闘ランキング予選のルールは単純解明。

 10連続の勝利による勝ち抜けルールであり、勝ちぬけた者が決闘ランキング30位への挑戦権を得る。

 負けてしまえば、勝利して来たカウントが0になり、再び一から勝ち続けなくてはならない。

 そして幸運か実力か、俺はその戦いに生き残り9度の勝利を修め、こうして挑戦権をかけた最後の戦いに挑もうとしている。

 

 

 「よっ、激励に来てやったぜローガン」

 

 今まではいなかった人間の声を聞き、その声がした方に顔を向ける。

 そこにいたのは、その声の主はミックだった。

 

 「ミック」

 「ミック・ユース。来たのですね」

 

 ミックは入口に背を預けてこちらにニヒルな顔を向けている。

 ミックは時計をちらりと一瞥して、時間がまだあるという事を確認したのかこちらに向き直る。

 

 「この戦いで最後か、お前の戦う相手は俺たちの同類だ。お前は勝てるのか?」

 「勝つさ、勝てるかではなくな。たとえ相手が俺たちと同じ――〈マスター〉だとしてもな」

 「相変わらず、よく言うなぁ。まあ、頑張れとは言っておくよ、今回の同期による勝ち抜けはローガンか対戦相手のどっちかになりそうだからな。俺ともう一人は負けちまったからな、一からやり直しさ」

 

 俺たちの同期、この最初期に決闘に挑もうとした〈マスター〉は俺たちを含めて4人。

 そして順調に勝ち進んでいるのは、俺と今回の対戦相手だ。

 そう、ミックは一度負けている。

 その時の対戦相手は、今回俺が戦う相手と同じでありミックを一度破った相手だ。

 この時のミックと対戦相手の戦いは、いままでの決闘の常識を覆して高レベルどうしの決闘以上の盛り上がりを見せたそうだ。俺も付き合いで決闘の観戦をしていたため、その二人の戦いは確かにすごいといえるものだった。とはいえ、おそらく〈マスター〉同士の戦いなら常識的な範囲にとどまって入るとは思うのだが……やはりそういうことなのだろう。

 おかげでこちらが対戦する時の為の情報を手に入れる事ができ、今回利用することができるので大いに助かる。

 

 「お前を倒す相手だからな油断はしない。いくらお前が次のジョブとして上級職……【剛闘士】を選ばなかったとはいえな」

 

 ミックは強い。

 例え上級職についていなくても、汎用性に富んだ〈エンブリオ〉のおかげで、上級職に就いた俺たち他の3人に匹敵する強さを持っている。

 ミックの〈エンブリオ〉のスキルを知っている理由は、あの【悪魔戦士】ギルドの依頼を完遂し皇都に戻ってきた後、暇を見て二人で模擬決闘をした時、ミックの提案によりお互いの持つスキルの情報交換をしようというものを受け入れた。

 それによるとミックの持つ〈エンブリオ〉は【才金貨リャナンシー】という名前で特性はスキルを与える事らしい。

 そしてリャナンシーの持つ唯一のスキル、《ブラッド・アビリティ》により多種多様なスキルを手に入れられる汎用性の高いものだ。

 実際その力を使って、もうひとりの決闘参加者の〈マスター〉を打ち破っている。

 だからミックを打ち破れたのは、力がかみ合わなかったかそれとも純粋に力で勝ったか。

 俺が見るに後者に近い。それだけ次の対戦相手が強いという事だろう。

 ……ちなみに余談だが、俺がミックに教えたのは《偽証》のみで《契約》は教えていない。ミックには悪いが手札を隠すのは重要らしいんでな!

 

 「そろそろ時間だな」

 「はい、それではミック・ユース。勝った後に再び会いましょう」

 「あー、はいはい。ま、俺も負けたままではいられないんでね、すぐに追いついてやるから待ってろよ」

 

 もう時間だ。

 長針と短針が合わさり、開幕の時を告げる。

 立ち上がり、決闘場に続く通路へと足を踏み入れる。

 

 さあ、行こうか。

 

 

 

 入った瞬間にわあっという熱気と歓声が届く。

 決闘ランキング予選という、本来のメイン決闘の前座でしかないはずなのに客席が結構うまっている。

 もともと第2小闘技場に入る観客の数が少なく、席がすべて埋まってはいないとはいえ、2/3程度は埋まっている。観客の総数は万に届くかというところだろうか。

 他の決闘ランキング予選の試合であるならばこうはなっていない。

 この結果は今までに3度行われた〈マスター〉同士の決闘の激しさゆえに、観客を惹きつけそして4度目となる俺と対戦相手の戦いを見に来たのだろう。

 俺は入ってきた入口とは真逆の方を見る。

 そこから一人の20になろうかという青年と人が乗れるほど大きな犬が入ってきていた。

 彼が俺たちの対戦相手。そしてそのガードナーの〈エンブリオ〉。

 青年はこげ茶色の髪を後ろに流し、身長程の長さの槍を手に持っている。

 防具の装備は……やはりしてないな。

 ミックと戦った時もそうだったが、あの男は足首までの長さのパンツのみをはき、それ以外の一切の装備をつけていない。

上半身は裸でさえある……この寒い皇国でその格好って。いろんな意味でレジェンダリアに移ったらどうだ?

 

『えー、東門と西門から共に二人にして二組の挑戦者たちが姿を現しました。それではお二人とも試合設定に同意をお願いします』

 

 説明が簡単だな。これまで9度同じ説明で手抜きでしかないな。

 派手な演出もないし、アナウンサーの科白も単調としていて事務的にすぎる。

 たしか興行として盛大になるのは〈マスター〉増加後だったはずだから、今しばらくはこれにつきあうしかないんだろうな。

 ルンペルシュティルツヒェンを伴い、舞台の中央まで歩いて行く。

 

 「やれやれ子供か」

 「むっ」

 「容姿変更可能なVRMMOで大人だ子供だというのも変だと思うがな」

 「まっ、確かにそうだな違ぇねえ」

 

 舞台の中央で相手と向き合いながらお互いに軽口を言いあう。

 ルンペルシュティルツヒェンは不服そうであるが、批評は勝利という結果で覆せばいい。

 俺たちは互いにウインドウを展開する。

 このウインドウは決闘の試合で使われている結界の設定ウインドウだ。

 ここで設定するのは、回復アイテムの使用不能や一部アクセサリーの装備不能の確認。

 あとは他のこまごまとしたものをいくつか承認し、ウインドウを閉じる。

 

 『両者によるルール確認が終了しました。それではこれより結界を起動します』

 

 そして闘技場と観客席の間に透明な膜が張られる。

 

 (シュテル)

 「はい、合一形態起動」

 

 戦闘開始の合図を前にして、ルンペルシュティルツヒェンを光の塵として俺の中に入れる。

 

 『これより、本日の第1セミイベント。【剛槍士】ブルーノVS【悪魔騎士】ローガン・ゴールドランスの決闘予選を開始!』

 

 そしてこの開始の宣言をもって試合が始まる――

 

 「シィイッ!」

 「BAUUUWA!!」

 『《我は偽証より黄金を紡ぐ(フェイク・イズ・ゴールド)》セット。ポイント数・召喚時間・AGI3倍化設定…いけます!』

 「《融合召喚(フュージョンサモン)》“来い”《コール・デヴィル・スカウト》」

 

 動いたのは全員、四者四様に行動を開始する。

 対戦相手の男……ブルーノは槍を片手にこちらにまっすぐ突っ込んでくる。

 犬の〈エンブリオ〉は高く跳び、俺の後ろへ移動しようとしている。

 ルンペルシュティルツヒェンは最近の定番になっている〈偽証〉セットを指定する。

 そして俺は【魔式手甲 ゲーティア】のスキル《六法悪書》から《融合召喚》を指定して、AGIを三倍化した《スカウト》をコストとして自分のAGIを劇的に上げる。

 《スカウト》はこの試合に挑む前にようやく手に入れた、【悪魔騎士】のスキル。

 《ビギナースカウト》の上位互換であり、消費ポイントが増えた代わりにステータスが上昇しており、特にそのAGIは《ボムトルーパー》さえ超えて1000という数値を持っている。それだけのAGIを増加させれば例え元が貧弱で遅いといっても、並みの上級職相当のスピードを手に入れる事ができる。

 そして……本来は俺より数倍早いであろうブルーノの一撃を回避することもできる。

 

 「シィィッ!」

 「ハァッ!」

 

 鈍色の閃光が煌めく。

 それは槍の一撃。ブルーノが持つ鉄で出来た槍が放つ、心臓を穿つ一撃。

 その一撃をアイテムボックスから取り出しておいた剣を振りはじく。

 そしてこれまた四者四様。

 ブルーノは突きだした槍を引きもどし。

 犬のガードナーは宙より地に足をつけて。

 ルンペルシュティルツヒェンは俺の意思を読み俺が望んだ指定を行い。

 そして俺はガードナーに対抗するべく、そして足止めを行うべく、さらなる悪魔を呼び出す。

 時間に余裕は…多少なりともある。ならここはコストを気にせずに、

 

 「《強化召喚(アドバンスドサモン)》“来い”《コール・デヴィル・バタリオン》」

 「GUWAAAA!!」

 

 黒い泡が湧きあがる、その数48。

 コストが倍増したものの、短期間で強力な戦力を複数出すことができるのが《強化召喚》の魅力だ。

 だが召喚をしたからといて油断など出来るはずもない。

 現にブルーノから2度目の突きが放たれている。当然呼び出した悪魔が間に合う程の余裕なんてない。

 剣を戻し、再度弾こうとするが……。

 

 (っち、間に合わない!)

 

 AGIは間違いなくこちらが上。

 だが剣と長槍という武器の差。

 悪魔召喚によって多少なりとも生じたこちらの隙。

 そした対戦相手であるブルーノの技巧が組み合わさり、その槍の一撃は俺の剣よりもなお早くこの身に到達する。

 

 (この腕……こいつ、リアルで何かやっているな!)

 

 俺もミックもちゃんとした戦い方を学び始めたのは2週間前。

 合い間に時間が空いていたという事もあるが、それでも俺もミックもこんな動きは出来ていない。

 【超闘士】のように天性の才能と言う事は……多分ない。素人目から見たらこの動きは理解不能の領域にあるが、おそらくは努力の賜物なのだろうと思える。

 もしかしたらクラウディアが【衝神】についていなかったら、その座についていたかもしれない。とはいえ【神】系統は努力でどうこうなるものではないかもしれないが。

 

 だが疑問なのは3000オーバーの俺のAGIにどうやって追いついているのだろうか?という点。

 それは技術だけでは説明がつかない。そのAGIの差を埋める事ができるだけの技量があるとも断定できない。

 ミックが対戦時にブルーノのステータスを《看破》した限りでは、ブルーノのレベルは上級6レベルの合計56程度。その程度ならAGIは1000を突破するとは思えない。

 〈エンブリオ〉のステータス補正を含めても、だ。

 だからこれはブルーノの〈エンブリオ〉の固有スキルの所為。

 しかしそのスキルの理屈が分らない。あいつの〈エンブリオ〉は間違いなくガードナー。

 ガードナー自体が強力なステータスを持っているのならば、よくある話だ。

 しかし〈マスター〉自体が持っている理由は……っと。

 

 「ハッ、戦場で考え事たぁ悠長なこったな!」

 

 顔のすぐ横を槍がとおりすぎ、切っ先が頬を擦過する。

 

 (考え事をしている暇はないってことか!)

 

 再び遅い来る鈍色の切っ先を剣ではじきながら、後ろをちらりと見る。

 みればまだ悪魔たちとガードナーが今もなお戦い続けている。

 ステータスの差はやはり大きいのか、さすがに何体かはやられているがそれでも時間稼ぎができるくらいの性能は出すことができたようだ。 

 なら後はこちらだ。

 あらためてブルーノを見る。

 俺単体の力ではこいつに勝てない。だがそれならば勝てる物を呼べばいい。

 

 (ボムトルーパーセット)

 「《二重召喚(デュアルサモン)》“騎士よ”《コール・デヴィル・ナイト》」

 「新手か」

 

 呼び出したのは2体の騎士型悪魔。

 亜竜級悪魔であり、【悪魔戦士】が覚える最後のスキルであり、単一のコストでしか呼び出すことができない重い召喚悪魔。

 召喚時間も召喚数も書かれておらず、詳細ステータスも存在しないため、《偽証》の能力を必要ポイントの軽減にしか使えない。

 だがすでに《バタリオン》を召喚し続けている都合上、他のスキルを発動させるとキャンセルされてしまう。

 一応同じスキルの《バタリオン》ならば、同様に発動させることができるが、足止めではなく相手を倒すために使用するのなら個の戦力が高い方が都合がいい。

 だから最低限で共通しているポイントのみを倍加させた《ナイト》を呼び出したわけだ。

 

 「ぐっ」

 

 2体の騎士悪魔がその手に持った剣を振るう。

 大きな体躯の騎士がふるったその剣は、ブルーノに当たることはなかったが、だが回避による隙を作り出すことは出来たようだ。

 ブルーノが片膝に土をつけたのと同時に、俺は駈け出して剣をふるう。

 

 「ハァァ!」

 「このっ!」

 

 しかしその剣は、甲高い音を響かせながら槍の柄で受け止められる。

 

 (これでもだめか!)

 

 再びふるわれる《ナイト》たちの攻撃に合わせてこちらも動く。

 《ナイト》を陽動に死角から切りかかる。が、簡単に防がれてしまう。

 逆に俺を陽動に《ナイト》たちを後ろから切りかからせる。が、避けられてしまう。

 同時に周囲から一斉に攻撃をしてみる。が、そのまえに離脱されてしまう。

 他にもいくつからの攻撃を行ってみた……しかし、すべていなされてしまう。

 効かない・通用しない・倒すことができない。

 

 (どうする……このままではだめだ。《ナイト》達を召喚してからもうすでに5分近くが経過している。時間的な余裕はまだ25分ほどあるが、だからと言ってこのまま手をこまねいているわけにはいかない。……《契約》を使うか?)

 『現在のポイント保有数は2985なので、3倍化を含めて8955ポイントですね。このポイント数ではポイントのみでの『ボムプラトゥーン』は使う事ができません』

 

 《ナイト》の召喚に余分なポイントを使いすぎたということか。

 今回の決闘の為に用意したポイントは5208ポイントのみ。というよりはこれだけしか用意できなかったというべきか。

 保険としてある程度のお金は残しておきたかったとはいえ、もうすこしポイントに換えておくべきだったか。

 前払いのせいでクエスト報酬が余り貰えなかったというのもあるのだが。

 それでもやはり相手は〈マスター〉ということか。今までに予選で戦った9人のティアン達とはまるで異なる力を持っている。

 ミックは強いが、選んだ第2ジョブの所為でいまだその力は完成していない。

 ゲーティアは強かったが、油断し能力を制限していたため付け入るすきは存外多かった。

 しかし、こいつはその二例とも異なり違う。

 高い性能のガードナーと、高いステータスの〈マスター〉による連携。

 技巧に優れた〈マスター〉の脅威。

いまさらながらに実感する。こいつは……ブルーノは俺が今までに戦って来た相手の中でも最も手ごわいと!

 

 (シュテル、《契約》を使う。こいつは手を隠したままで勝てる相手じゃなさそうだ)

 『……かしこまりました主様。ですが対象はどういたしましょうか。《ボムトルーパー》と《チョアプラトゥーン》の『ボムプラトゥーン』コンボを使うにはポイントがたりませんが……』

 

 確かにどうするか。

 あれから《我は契約より玉と黄金を望む(ウィッシュ・フォア・ゴールド)》に必要なポイントを、結界内とはいえ手当たり次第に試してみた。

 

 下級職のスキル同士なら必要なポイントは1万+二つのジョブスキルに必要なポイント合計の二倍になる。

 上級職と下級職のスキルの組み合わせは1万5千+二つのジョブスキルに必要なポイント合計の3~5倍ほど。スキルの組み合わせによって多少は異なるが。

 上級職と上級職の組み合わせは、まだ組み合わせられるスキルが一組しか存在しないため分からない。

 そして詳細ステータスを出せない悪魔をスキルの対象にすることは出来ないため、亜竜級である《ナイト》をいじることは出来ない。

 それとそれ以外のメインジョブのリソース消費に関しては、一レベルごとのレベルダウンにつきおよそ1000ポイント相当。

 MPとSPも実は使えるようで、それぞれ100消費ごとに1ポイント分として利用できるようだ。もっともMPがこのまえようやく100を超えたため、こっちをポイントの代替にすることは多分ないだろうが。

 

 剣を振るい、ブルーノの一突きを弾きながら再び考える。

 これから追加で呼び出すのであれば、今までに呼び出した《ナイト》と《バタリオン》を消さなければならない。

 レベルとポイントを全て捧げるのであれば、もしこの賭けが失敗するのであれば負けるのは当然になる。

 だが……このままで変わるとも思えないか。

 組合せとしてはやはり『ボムプラトゥーン』が最大の候補ではある。

 だが、あれはAGI1という低速すぎてブルーノに当てられるかは分らない。

 むしろ避けられそうだ。

 

(ならば他の組み合わせは…………いや、待てよ?)

 

 それは唐突に思い浮かんだひとつの方法。

 実験など欠片もしていない、失敗する可能性も高い方法。

 だが……決闘に勝ちたいという思いと同時に、それを試してみたいとも思う。

 他の無難な組み合わせではなく、一か八かに賭けるというのは……

 

 …いやその方がいい。

 あのレイ・スターリングも含めて、一か八かの賭けというのは燃え上がる物だ。

 まあ決死の状況と、負けても問題はない決闘という違いはあるが、それでもやってみるとしよう。

 障害となるのは3つ。それらすべての賭けに勝たなければいけない。

 

 (シュテル……問題ないか?)

 『申しわけありません、やってみないと分らないです。本当にやってみるのですか?』

 (ああ)

 

 これで組み合わせは決まった、後は〈マスター〉であるブルーノに当てるだけだ。

 このまま発動しても当てられるかもしれないが、出来れば隙を作り出して……

 

 『主様っ!』

 

 その声に驚く。

 ルンペルシュティルツヒェンから発せられた、いきなりの大声。

 それはどうしたのかと思い、そして思い知らされる。

 それはブルーノが起こした物ではない。

 それはあいつの持つ〈エンブリオ〉。

ルンペルシュティルツヒェンが声を荒げたのは、犬型のガードナーがこちらに迫って来る事を告げるため。

 だがいきなりのその声に、逆に反応など出来ず動くことなど出来なかった。

 そしてガードナーの激突がぶつかる―――

 

 

――前に黒い障壁に阻まれてその突撃が防がれる。

 

 それはMVP特典のスキルのひとつ《反応召喚》によるもの。

 ガードナーの激突により召喚時間を激減させながらも、《反応召喚》による防壁は有効に機能して、その召喚スキルを実行しようとする。

 今回《反応召喚》にセットされてあるのは、一番消費ポイントの多い《ナイト》……ではなく、《コール・デヴィル・バタリオン》である。

 試合前、つまり通常の空間で設定をしなければならない都合上、《ナイト》のような消費ポイントが多すぎるスキルを設定するのは消耗が大きすぎる。

 次点で多いのは1000ポイントが必要な《ボムトルーパー》と《バタリオン》の2択。

 だが《ボムトルーパー》はもっとも《契約》を使う対象に選ばれやすいため除外され、《バタリオン》になってしまったわけだ。

 そして1000ポイントによって築かれるこの黒い盾は、5000ダメージを防ぐことができる。

 スキルを使ったわけでもない、ただの突進であるならばこれで十二分に防ぐことは可能だ。

 ……これだけならだが。

 

 『よし、これで防げました――』

 (いや、まだだ!)

 

 そう、これで終わりではない。

 俺自身の硬直。そして《反応召喚》による足どめ。

 それによってできた俺の隙を、ブルーノは容赦なく突いてくる。

 気がついた時には俺のすぐそこまで迫っている鈍色の穂先。

 俺をこれで殺そうと放たれた、心臓を穿つ必中の槍。

 

 避ける―――否、避けることなど不可能。この硬直でこの体勢で避けられるものを、必殺として放つほど、ブルーノは甘くはない。

 

 防ぐ―――否、防ぐための盾など持ってなどいない。かろうじて手にはめているこの【魔式手甲】なら装甲を削られながらも防げるかもしれない。だが、致命的に間に合わない。

 

 それなら、避けられないのなら。

 次に繋げるためにくらってやる。

 

 「!!」

 

 そして俺は踏み出す。

 ブルーノの驚いた顔を見ながら、傷つく道を選ぶ。

 本来なら攻撃など受けたくない。

 ただ座して敵を殲滅できるのであれば、後方に居た方がずっといい。

 だがそれでは―――変われない。

 

 『ッ主様!《我は契約より玉と黄金を望む(ウィッシュ・フォア・ゴールド)》――セット《コール・デヴィル・チョアプラトゥーン》《コール・デヴィル・ボムトルーパー》』

 「っぐぅ!」

 

 まずは第一段階。

 俺の望みを読んだルンペルシュティルツヒェンが、そのとおりに《契約》をセットする。

 コストにするのは持っているポイントのほとんどと、上級職の4つのレベル。

 それと同時にブルーノの放った一撃は、俺の肉を抉る。

 だが心臓が穿たれたわけではない。

 穿たれたのは俺の右胸。

 それはあの刹那で踏み込むことで、攻撃の着弾点を左から右に無理やり変えたため。

 避けられないのなら、攻撃を受けても構わない場所で攻撃を受け止めるという、ダメージコントロール。

 もちろん無事ではない。

 俺のHPは基本的に低い。場合によっては、これでHPのすべてが失われたかもしれなかった。

 それでも、こうするのがいいと―――あの一瞬で決めたのだ。

 

 「っつ召……喚…開放!」

 『《我は偽証より黄金を紡ぐ(フェイク・イズ・ゴールド)》――《コール・デヴィル・ビギナースカウト》のAGIにセット。《我は契約より玉と黄金を望む(ウィッシュ・フォア・ゴールド)》――セット《コール・デヴィル・チョアプラトゥーン》《コール・デヴィル・ビギナースカウト》』

 

 そして第二段階。

 今までに召喚した《ナイト》《バタリオン》のすべてを解除して泡に戻す。

 槍により肺を貫かれ、息ができない苦しみに襲われる。ステータスを確認する余裕など出来ないが、そういった状態異常が発動している頃だろう。

 そしてもう一度の《契約》発動。

 コストにしたのはぎりぎり《チョアプラトゥーン》を発動可能なレベル40までの、全レベル。

 これからするのは、初めての試み。

 もともと切り取る方と違い、貼り付けた方はすぐに使えなくなるわけではない。

 そのことについては最初の実験の時からわかっていた。

 だが、その事についてわかっていながらも、これからするのは発想することができなかったもの。

 それは《契約》による二重改竄。

 1度目の《契約》によって、メインスキルで呼び出す悪魔のスキルを変更し。

 2度目の《契約》によって、メインスキルで呼び出す悪魔のステータスを変更する。

 どちらか片方ではなく、両方を変更したもの。見た目とはまるでことなる、内面を保有する悪魔の改造。

 不可能だったならば失敗だった、1つめの賭けの成功。

 あとは――これが成功するか否か。

 

 『スキル正常起動。行けます主様!』

 

 その報告に喜びながらも、ソレを喜ぶ時間など与えられてはいない。

 ブルーノは槍を手放し、新しい槍をアイテムボックスから取り出そうとしているし。

 ガードナーは黒い盾によってひるんだ後も、臆さず次の突撃を行おうとしている。

 だからもう……“速効”しかない。

 

 『《偽証》をポイント・《旅団》・《師団》にセット』

 「《速効…召……喚》“来…い”《コール・デヴィル・チョアプラトゥーン》!!」

 

 苦しみを押し殺し、悪魔召喚スキルを実行する。

 AGI3000オーバーでさえ、一瞬にしか映らない速度で呼び出された90体の悪魔。

 

 「くそっ!」

 

 ブルーノはバックステップをしながら、《瞬間装備》を使い新しい槍を取り出す。

 だが逃がしなどしない。

 もしあいつがバックステップしなければ、俺も爆発にやられて死んでいただろう。

 だがこの開いた距離ならば、俺は自爆することもない。

 これが2つ目の賭け。

 

 「行けっ!!」

 

 俺の号令と共に《チョアプラトゥーン》が地面を駆ける。

 ブルーノを上回るスピードを持って移動するその突撃をかわすことなど出来ない。

 あの小ささなら打ち落とすのも不可能だ。

 

 「GUWAAAAA」

 

 ガードナーが俺を殺そうと突撃する。俺の残りHPを考えればこの一撃で死亡は確定だろう。

 だが、遅い。

 

 《チョアプラトゥーン》が1体そしてまた1体とブルーノの体に張り付き爆発する。

 《契約》による改竄は望んだとおりに正常に動作して見せた。

 エラーがおこればその時点で敗北であった。

 これが3つ目の賭け。そして俺はすべての賭けに勝って見せた。

 後は――勝利だけだ。

 

 どれだけHPがあったのか、あの爆発を5度耐えてみせたブルーノだが、ついに終りが来る。

 

 ガードナーが残り数cm前まで届き、そしてブルーノのHPが0になる。

 ブルーノの体は光の塵になり、ガードナーが消滅し、そして同時に俺たちの立っていたこの舞台を包む結界が消えうせる。

 

 『…決着!勝者【悪魔騎士】ローガン・ゴールドランス。そしてこれでローガンが10連戦勝利したため決闘予選通過し、決闘ランキング30位への挑戦権を得ます』

 

 アナウンサーのどこか事務的な決着の宣言が告げられ、少し遅れて観客の歓声と拍手も聞こえてくる。

 いままでの9連勝とおなじで、そして達成感がまるで異なる高揚感を覚える。

 拍手喝采を浴びながら、満悦に浸りながら再度勝利を実感する。

 

 

 

 そしてこれで――決闘ランキングに挑める。

 

To be continued

 





余談1:
(=○π○=)<ずいぶん後になりますが、レジェンダリア編で天空院翼神子ちゃん?と戦わせたくなりました。
(=○π○=)<その時を書ききるのはいつになるのやら。

余談2:
(=○π○=)<それと……【魔将軍】って呪われていません?なんかAEみて不憫だと思ったり。

余談3:
(=○π○=)<あと、この小説で出したいと思っていたジョブを、掲示板の方が出されたんですが、別にこっちでも出してかまわないですよね?……まあ二次創作同士ですし…
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