閣下改竄   作:アルカンシェル07

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第3話 イツワリ

第3話 イツワリ

 

Day 1

 

□第2小決闘場 【司祭】レオン・アーノルド

 

 「はぁっ、はぁっ、はぁっ」

 

 息をつく。

 こんなにも息を荒げているのは、僕の友人が遅くまで狩りをしようといいだして、そしてみんなが寝坊したからだ。

 ちなみに寝坊したのは他の人間であって、僕がしたわけじゃない。僕はちゃんと朝の7:00に起きたんだけどね……。他の人が起きてくれなかったら意味がない。

 

 「いやぁ、ぎりぎりだったな。ローガンのやつは間に合ったのかね?」

 

 さすがに間に合っているんじゃないかな?

 今の時間は11:52分。決闘ランキング30位をかけた決闘の開始時間は12時ジャストなので、まだ少し余裕はあるからね。

 

 「ミックの上級に上がったテンションの所為で寝坊したよ」

 

 キャロル、演技とれて素が出てるよ?星は付けなくていいのかな。

 確かにミックの〈エンブリオ〉が上級に上がったおかげで、キャロルやローガンが俺たちも続くぞ!とか言い始めてかなりハイペースなスピードで、モンスターを倒し始めたからね。

 それでもさすがに朝日が見えるくらいの時間帯まで狩り続けるのはやりすぎだよ。しかも少し仮寝するだけとかいって、みんな仲良く寝始めて寝坊するんだから。まったくもう……。

 

 「おっ、どうやらはじまるようだね」

 

 考え事をしていた僕をとめたのは、アンジェラの一言だった。

 時間を確認すると、確かにもう正午になっていた。

 そして、アナウンスが始まる。

 

 「これより、本日の第1セミイベントの挑戦者。【悪魔騎士】ローガン・ゴールドランスが東門より入場いたします」

 

 そのアナウンスとともに、東門といわれた僕たちから見て右の出入口から、ローガンが闘技場に入って来る。

 シュテル……彼の〈エンブリオ〉も共についてきている。どうやら最初から合体しないみたいだ。

 

 「おー、ローガンが☆やってきたのですね!」

 

 キャロルが元気を取り戻したのか、今までの演技をしはじめる。

 決闘に興味がないといっていたキャロルだったけど、やっぱり知り合いが決闘をするというのなら、気にはなるのかな?

 

 「では次に防衛者。【剛剣士】マカロ=カルボナーラが西門より入場いたします」

 

 そして西門と言われた僕たちから見て左側の出入口から決闘ランキング30位にいるティアンの武芸者がやって来る。

 30位とはいえ決闘ランキングに入るだけの実力を兼ね備えた技術を持っているらしく、その合計レベルも200近くになるらしい。

 29位よりもレベルが高いらしく、決闘がすきな人たちの間では、この人は手を抜いているんじゃないか?と言うもっぱらの噂らしい。

 

 「へー、あれが30位の決闘ランカーか始めてみるな。……にしても変な名前だな」

 

 ミックが言う通り、あの名前は少し変だと僕も思う。

 〈マスター〉ならともかく、ティアンであの名前になっているってことは、親はどんな積りでつけたのかな?

 まあ、性は変えられないだろうから、仕方がないのかな?

 

 「ロイ……じゃなかったミックは30位の人の事☆知らなかったのですかー」

 「リアルネームで呼ぼうとするなよな」

 「お前に言われたくはない」

 

 だからキャロル、いきなり素に戻るのは止めよう?

 まあ、キャロルとアンジェラの名前は言いにくいからね。仕方がないね。

 「んー、まああんまり興味なかったからなー。目の前の敵に全部を費やすほうが、俺の好みだからな」

 

 まあミックはそういったタイプだよね。

 

 「あんたら、雑談も結構だけど、そろそろ試合が始まるよ?」

 

 うん、どうやらそのようだね。

 もうすでに二人とも設定を終えているようだ。

 二人がウインドウを閉じるのと同時に結界が起動する。

 

 『両者によるルール確認が終了しました。それではこれより結界を起動します』

 

 シュテルの身体が光り、塵となってローガンの体の中に入っていく。

 ローガンの準備は出来ているようだね。

 

 『これより本日の第1セミイベント。【悪魔騎士】ローガン・ゴールドランスvs【剛剣士】マカロ=カルボナーラの試合を開始いたします』

 

 そして二人の戦いが始まる。

 

 

 ローガンがバックステップをしながら黒く光る。

 そしてマカロというティアンも追撃して、特攻する。

 

 「おっ、AGIをあげたな」

 「すごい速さですね。はっきりいって☆よく見えません!」

 

 確かにすごい速さだね。

 マカロ…さんも頑張って追いつこうとしているけれど、まるっきり速さが足りていない。おそらく3倍近い速度差がある。

ローガンの技量が未だに拙いといっても……それだけの速度差があれば、圧倒することは可能だ。

 

「なるほどね。これが〈マスター〉とティアンの差ってやつかい」

「うーん。相手も弱くはないんだろうけど〈マスター〉を相手にするには少し力不足なんだろうな」

 「結構一方的☆ぽいね。どっちが挑戦者なのかわからないや」

 

 みんな同意見みたいだね。

 本来高いはずの防衛者の方が、守勢に回らざるを得ない状況になっている。

 先ほどからローガンは悪魔を出さずに、剣を取り出して闘っている。

 剣を使う事に向いているはずの【剛剣士】を相手にしているはずなのに、AGIの高さだけでその摂理を逆転させることができている。

 ローガンの剣の一振りを、マカロさんも剣で防ぎ、そして防いだ途端にローガンは剣を切り返して相手の首を狙う。日本ではあれをツバメ返しと言うんだっけ?

 だがやはりマカロさんも決闘ランキングに入るだけの実力者。その首を狙った一撃をちょっとの首の動きだけで回避しきる。

 確かにローガンの速さはすごいけど、でもこのままだと追い詰めきれない……いや、変わったね。

 

 「おっ、ローガンが悪魔をやっと出したな」

 

 見たらローガンが一体の騎士型悪魔を呼び出していた。

 ローガンが今召喚している悪魔は《コール・デヴィル・ナイト》とかいったかな?僕がこの目で見るのは初めてだけど、一応簡単には教えてもらったからね。

 そして……これで終わりかな?

 

 「流れが一気に変わったな」

 

 ミックの言う通り、今までローガンが優勢ではあったもののある程度は拮抗していた。

 だけど、亜竜級という戦力が一体増えたことで、その拮抗は崩れ去った。

 マカロさんも頑張ってはいる。

 あの悪魔が呼び出されてから一人と一体の連携の隙をつき、避けて逃げて反撃をすることもあった。

 だけども……

 

 「「「ああっ」」」

 

 観客席からさまざまな声が上がる。

 それはなんとか耐えていたマカロさんがさばききることができなくなり、そして亜竜級悪魔がもつ大剣がマカロさんの身体に突き刺さる。

 そしてHPのすべてを散らして……結界が消える。

 

 『試合決着。決闘の勝者は【悪魔騎士】ローガン・ゴールドランスになります。これでローガン・ゴールドランスが30位に昇格。そして残念ながらマカロ=カルボナーラは決闘ランキングが剥奪され、予選からやり直しとなります』

 

 淡々と事務的に告げられるのもひどいかな?

 もうすこし、興行的にはできないものなのかな。

 

「これでおわりですね。一応このあと15位の決闘もあるけど☆見る必要はなーし、かな?」

 「そうだなー。一応メイン決闘ではあるけど、あんまり興味ないしいいかな?」

 「ならこれでかえるかい?あたしはどちらでもいいけどね」

 

 みんな、次の決闘に興味はなさそうかな。

 

 「ならこれで、帰るかい?ローガンなら僕たちのことなんか気にしないで、外に狩りに行ってしまうかもしれないし」

 「あー、あいつならありそうだな」

 「やっぱあいつ☆勝手なのです」

 

 あはは、なんかひどい言われようだね。

 それじゃあ、観客席から出ようとしようか。

 

 

□第2小決闘場 【悪魔騎士】ローガン・ゴールドランス

 

 「今回も見事に勝てましたね主様」

 「ああ、しかも想像はしていたが、ブルーノやミックより数段やりやすかった。この分ならもっと上位にあがるまで苦戦はしなさそうだな」

 

 30位のマカロ=カルボナーラとかいうふざけた名前のやつに勝ち、決闘ランキング30位という座を奪い取ることに成功した俺は、さらに上位にあがるべく受付まで進んでいく。

 

 「決闘30位にあがった【悪魔騎士】ローガン・ゴールドランスだ。次の決闘戦を挑みたい」

 「……はい、確認終了いたしました。それで次回の挑戦相手はいかがしましょうか?こちらが現在ローガン様が挑むことができる相手の一覧になります」

 

 そうして一枚の紙を差し出した。

 どうやらこの状況を予測していたらしい、早い様で何よりだ。

 そして一覧を見て、次の対戦相手を確認する。

 一応、29位とは明日から戦う事ができるようだが、ちまちまと戦い続けるのは性に合わないし、それにこれで時間をかけてミック達に追いつかれてしまったら、負ける確率が大幅に上がってしまう。

 ならば、一気にあがるとしようか。

 最初から挑める、最大の相手にするとするか。その相手だと……

 

 「よし、こいつだな。俺は決闘ランキング25位に挑む」

 「……25位ですか?!…いえ、一応挑むことは可能ですが、いくらなんでも無謀に過ぎます。スキップ制度を利用するにしても、二つ上の28位にしておくべきです!!」

 

 スキップ制度……ようは、数階級上の闘士相手に挑むことができる制度。ランク帯によってどれだけ上にまで挑めるかが変わり、30位なら5個上まで可能である。

 だから俺はこの制度を使い、一気に上にまで跳び決闘ランクを上げる積りだ。

 

 「問題ないな、むしろ一気に決闘ランキング10位に挑みたいくらいだ」

 「10位ィッ?!……いえ、失礼しました。こちらとしては闘士の方がソレを望まれるというのであれば、受領するまでです」

 

 ずいぶんと驚かれたものだな。

 それほど一気に駆け上がるのがめずらしいというところか。

 さすがに1位にいきなり挑むほどではないが、それでも10位までなら十分相手になると思うんだがな。

 

 「えっと、はい。決闘ランキング25位への挑戦でしたら、最速は10日後になります」

 「ずいぶん時間があくものだな」

 「25位との決闘となると小決闘場のメインイベントか、大決闘場のセミイベントにならざるを得ないからですね」

 (なるほど、試合のメインか、メインの戦場で…というわけか。ふっ、滾るな)

 「わかったそれでいい」

 

 再び何回も書かされた用紙に記入する。

 当然受け入れるにきまっているいくつかの注意事項に軽く目を通して、自分の名前を署名することで、受付を終了してこの場から立ち去ることとする。

 

 

 「おいおい、とっとと帰ろうとするなよなローガン」

 

 用事が終わり、次の試合が10日後と遠いため、レベル上げのためにモンスターを狩り続けようと外へ向かおうと、第2小決闘場の門を抜けて階段を降りようとしたその時に声がかかった。

 声をかけた主はミック。

 他にもレオンやキャロル、アンジェラも後ろについている。

 

 「試合が終わったのだ。帰るのは当然だろう、15位の試合になんて興味なんてないしな」

 「まー、俺らも特に興味ないから途中で帰ったんだけどな?それはそれとして、俺らに何も言わずに帰ろうとするなよな?」

 「別れるなら☆あらかじめ言いやがれです」

 

 ……なるほど、その事か。

 確かにさっきまでこいつらと一緒に居たのに、いきなり離れるというのなら少しは声をかけるべきだったか?

 まあ、そこそこ付き合いがある知人だしな、一応気をつけておくとしようか。

 ……キャロルの口調には突っ込まないぞ。

 

 「まあまあ、ローガンも反省しているようだし、そこまでにしておきなよ」

 「ぜぇぇぇったい☆反省なんかしていないですー」

 「よしときなよ、キャロル。そこらへん突っ込むと、藪だよ。長くなりそうだしね」

 「そうだね、とりあえず僕はそろそろ帰らなくちゃいけないから、ここでお別れだしね」

 

 レオンはここでログアウトするのか。

 前にあってから約丸一日。現実の世界での計算だと、大体8時間程度。

 長いと云えば長いけど、そこまで喫緊ではないとは思うんだが、忙しいんだろうか。

 キャロルやアンジェラもログインは時間空いているしな。ミックだけは変わらず、ほぼ20時間ログインしっぱなしだが。

 

 「へー、レオンはログアウトするんだな。俺はこのままINし続けるけど、キャロルとアンジェラはどうするんだ?」

 「えーと、私もそろそろ☆帰るとしましょうか―」

 「そうだねぇ。あたしは生産に打ち込むとしようか、ここでお別れだね」

 「ってことは、俺とローガンだけか。でもこの二人だと効率悪いしな、今日はこれで解散とするか」

 

 俺が静かにしている間に話が進んでいるな。

 結局、ここで別れて俺だけになるということか。

 これなら、そのまま決闘場から帰らせてもらっても、とも思うがそういう事ではないのか?

 

 そして二人がログアウトをして、他の二人も別々に行動をする。

 とりあえず、騒がしかったな、とも思いながら皇都を歩くことにするのだった。

 

 

 街を歩く。

 これからの目的としては、モンスターを倒してレベル上げ、という事になる。

 レベル上げの為のモンスターの狩り場として、東西南北どちらがいいか?と考えて西に移動することにした。

 狩り場として選定したのは、昨日・今日とミック達と一緒に狩り場として使用していた《カルリッサ平原》だ。

 こっちを選んだのは東西南北のうち、唯一俺一人で戦闘していないからというだけだな。

 

 「昨日こっちを歩いていた時にも思ったが、意外と賑わっているな」

 「たしかに北や南と比べると結構違いますね」

 

 北は行政、南は商業の施設が多いのに比べて、西は興行の施設が多い。

 一応西地区に代表される、決闘施設なんかもそのたぐいだ。

 レベル上げの為なら、今すぐ西門に移動した方がいいのだが、少し好奇心がわき起こり道中の興行施設を冷やかしがてら覗いてみる事にした。

 

 「さあさ、寄ってらっしゃい、見てらっしゃいィッ」

 

 あそこで客引きを行っているのは、紙芝居なのだろうか。

 男性が大きな声を上げて、手を叩いて宣伝をしている。

 今回やっている題目は『三英雄物語』というものらしい。

 軽いあらすじの様なものを見ると、どうやら六〇〇年前の三強時代を結構アレンジをして、子供向けに話を作り替えたものらしい。子供向けと言っても、童話ではなくまるで漫画みたいな出来になっている。

 もちろん対象年齢は低いみたいだが。

 少し興味がそそられるが、とりあえずは冷やかしなのでここを離れる。

 

 「……他には、あれは劇場か」

 

 かなり大きな建物が見える。

 形は大きな円形で、何十人もの人間が出たり入ったりしている。

 旗がいくつもかかっており、劇のタイトルらしきものが複数描かれている。

 後で聞いた話だが、この劇場はとあるカルディナの豪商が経営している演劇のための舞台で、天地を除いたすべての国に一つ以上置かれているらしい。あの国におく勇気はなかったのか、それともただ遠いからなのか。

 決闘の花場であり、他の興行も合間に行う決闘場とはことなる、興行の聖地のひとつらしい。

 他には……。

 

 「レディーーース・アーーーンド・ジェントルメェェーーーン」

 

 歓声が沸き起こる。

 歓声がおきた場所に目を向けると、その中心には一人の男がいた。

 シルクハットとモノクル、それとタキシードというのか?正装をしている一人の紳士風の男がいた。

 その男は杖を地面に叩くと、同時にどこから現れたのかハトが一斉に飛び立つ。

 その男が右手を振り払うと、その右手から紙吹雪が吹きあがる。

 その男が杖をくるりと回すと、その杖が花束に変わり、その花束を天高く宙に放り投げるとその花束が花火に変わる。

 どうやら奇術師のようだ。

 ……いや、どうやっているんだよ。

 スキルあり魔法アリのこの世界だから、出来ていることに驚愕はしない。

 だけど、どうやっているのかは皆目見当もつかない。

 腕がいいのか、いろいろなスキルを持っているのか。《看破》を持たない俺には判別がつかない。

 そう思いながら、奇術をみていると後方から数人の足音と、声が聞こえてきた。

 

 「ほら、どいたどいた」

 

 後ろを振り返ってみると、数人の警吏がこちらに向かって来ていた。

 あの奇術師を囲むように立っていた観客をかき分けて、奇術師の元まで歩み寄り。

 

 「貴様!許可を取らずに皇都の中心で花火を上げるとはいい度胸だ!詳しい話は白で聞かせてもらおうか」

 

 ……許可を取らずに街中で花火を上げたのか、確かにそれは起こられるな。

 観客の中から「えー」とか、不満な声がいくつか上がるが、それを「これは職務だ」といって黙らせる。

 間違っていないが、もう少し穏便に鎮められないのか?

 

 その後、警吏によってあの奇術師が連れ去られていった。

 あの奇術師は連行されながら「バレなきゃ犯罪じゃなかったのにー」とか言っていた。

 どこの邪神だよ。あんな街中で花火をやったらいくらなんでもばれるにきまっているだろうに。

 

 「さて、演劇は終わりだし、そろそろモンスターを倒しに外に狩りに行くか……」

 「はい、そうですね。結構おもしろかったのに残念です」

 

 ルンペルシュティルツヒェンはこう言ったのが好きなのか?

 まあ、今の俺たちにのんびりしている余裕はないが。

 そう思い、西門に足を向けて――

 

 「あれっ?ローガンじゃないのか?久しぶりだね」

 

 その声に振り向くとそこに居たのは、懐かしい人物だった。

 

 「…お前はジャックか。確かに久しぶりだな」

 

 そう、そこに居たのはジャック・バルトだった。

 この〈Infinite Dendrogram〉の世界に初めてログインした時に出会った一人目の人間。

 それゆえに覚えている。

 

 「うん、やっぱりローガンだね。久しぶりに会ったから、一瞬分らなかったよ。装備も結構変わっているし、他の人間と行動しているしね」

 「ああ、そうか。ジャックとシュテルが会うのは初めてだったな」

 「そうですねはじめまして、シュテルとお呼びください」

 「ジャック・バルトだよ、よろしくね」

 

 シュテルとジャックがお互いに挨拶をして、握手をする。

 

 「………それにしても?」

 

 ん?なにか疑問点でもあるのか。

 ジャックが頭をかしげて、んーと悩んでいる。

 

 「……どうしたんだ、ジャック」

 「……ああ、ちょっとわからなくてね」

 

 わからないこと?

 何か不明な点でもあるのだろうか?

 ジャックは先ほどから俺のことを、上から下まで見ながら時折んーと呻いている。

 ……分らないこと、というのは俺のことなのだろうか?

 

 「ジャック、何が分らないのか聞いてみてもいいか?」

 「……そうだね。ジャックにも聞いてもらおうか」

 「ああ」

 「実はね、僕はこれでも人を見極めるのが得意なんだ。いままでに人の鑑定……スキルではなくて、もともとの天性の能力の事だよ?……で間違ったことが無いんだよね。なかったんだけど……」

 

 ん?俺の鑑定?

 どういう事だ。俺の事が分らなかったってことか?

 

 「うん、実はね僕の君に対する印象は『50を過ぎた人間が、ある日新しい子供の姿を取り戻し、さらにその子供がまったく別の子供の形になった』っていう物だったんだよ」

 「……はぁあ?」

 

 なんでそんな印象を持ったんだか。

 まったくもって意味不明だな。

 ……いや、全く分からないものでもないのか?

 もし俺が生前50過ぎで、ローガンという子供に転生して、さらに新しいアバターであるこの姿になっていたらそういう印象になるのかな?

 だが、そんなふざけた事情はない。

 俺の生前の年齢は50になんて、まったく届いていないのだから。

 いや、ほんとにどうしてそんな印象を持ったのだか?

 

 「いや、まるで意味が分らないぞ!」

 「ああ、やっぱそういう反応が来るんだ……はぁ」

 「…うん?俺がこういう反応をするってわかっていたのか?」

 

 自分の考えが間違っていると分っていたのか?

 いや、でもジャックの言い分は少し変だな。

 ジャックは自分の鑑定結果に絶対の自信を持っているみたいだった。

 それなのに、間違っているとは思わないだろう。

 ならば……後は………。

 

 「もしかして、その印象を他人に行って否定されたりした…とか?」

 「……ああ、そうだよ。仕事中に面白い人間に会ったから、その事について話をしたら『ありえない』と笑われてね……はぁ」

 

 ああ、そんなことがあったんだな。

 まあ、そんなことがあったら、そんな落ち込んだ表情になるのもわかるな。

 ジャックがなんで俺の事をそう思ったのかも、気になるが今一番気になるのは……。

 

 「ふーん、そうなのか。それで、誰に俺のことを話したんだ?」

 

 誰かに話したか、だな。

 あんまり俺のことを変な噂と共に広めるのは止めてほしんだが。

 

 「ああ、そうだね。姫様だよ、この皇国の今は亡き第4皇子の忘れ形見であらせられる、朱紗・I・ドライフ殿下さ」

 

 第4皇子の娘の朱紗姫?

 

 「いや、あのあとローガンの事について姫様に話したら、『妾、片腹大激痛ww』とかいて大爆笑されたんだよ」

 

 そんなことがあったのか。

 

 ……それにしても、そうか。

 

 ここで、のことがでてくるんだな。

 作中でだと、たしかアルター王国の第3王女であるテレジア並みに、重要そうな位置にいるからな。

 アルターもアルターだが、ドライフもドライフでティアンの質がおかしいな。いや一番は天地だろうが。

 

 「ああそうだ、ローガン決闘ランキング入りおめでとう。僕も姫様も応援させてもらうよ、それと姫様がローガンといつかお茶会をしたいと云っていたから、その時がきたら連絡するよ。姫様は結構忙しいから、かなり後になりそうだけどもね」

 「お茶会?……まあいいだろう」

 「っと、そろそろ時間だね。ローガン僕はこれで失礼させてもらうよ、それじゃあね」

 

 考え事をしていたら、ジャックが行ってしまったな。

 まあいいか。俺たちもモンスターを狩りに行こうか。

 

 そうして俺たちは西門へと歩いて行く。

 

To be continued

 




(=○π○=)<……当然ですが、朱紗・I・ドライフなんていう人物は原作には登場いたしません。

(=○π○=)<それとこの時点で、2章中にいった制限は解除です。
(=○π○=)<あれの制限は単に、こっちの設定ミスと思われたくなかったからですしね


余談:
(=○π○=)<ちなみに決闘30位だったマカロ=カルボナーラの名前が決定したのは去年の12月26日でした。

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