(=○π○=)<投稿後、一度加筆修正をしています。
(=○π○=)<未完成の状態であげてしまったので、追加で書き直しさせていただきました。
(=○π○=)<もし、改稿前のをお読み下さった方は、よろしかったら見直していただければとも思いますが、本筋に変更は一切ないので、面倒であれば構いません。
(=○π○=)<本当に申し訳ありませんでした。
第5話 奈落での出会い
25 day
□〈クリエラ渓谷〉
闇が近づき、光が遠のく。
足場が崩れた為に、4人と一匹は落ちていく。
慢心・自信故の未警戒だった突然の出来事で、全員は咄嗟に動くことはできなかった。
硬直していた最小時間はおよそ3秒。
地上から45メテル程落ちた時点で、まず最初にブルーノが反応した。
「クー」
「グゥワゥ」
その短い言葉だけでお互い意思を疎通しあい、体勢を崩して斜めになっていた身体をなんとか元に戻そうとする。
〈マスター〉と〈エンブリオ〉の間につながる絆。お互いに口に出さなくても心の奥深くで通じ合う事ができるため、その一言で犬のガードナーは動く。
このままでは墜落してしまうと、我が身を犠牲にするのを覚悟で、クーは着地をするべく4脚の足に力を入れる。
さらに長い尻尾を自身の上に乗る、〈マスター〉を含む4人に巻き付け落ちないようにした。
ブルーノは今の自分にできる事は他にないと、自分の〈エンブリオ〉と4人に託した。
「それならっ」
次に動くことができたのは桜火だ。
硬直していた時間はおよそ5秒、地上から120メテル程落ちた時点だった。
桜火は自分の左手の燃え盛る蛇の形をした紋章から、一本の西洋風の片手剣を取り出す。
自分たちの体にクーの尻尾が巻きついて行くのを確認しながら、桜火は右手に握った剣を振り上げる。
もちろんただ振り上げただけではない。
その剣は、特性である蛇腹剣としての機能を発揮して、この窮地を脱しようと主の意のままに動く。
まず剣は3つの節目にわかれて、ワイヤーのようなもので繋がれたその剣は、落ちていく自らの定めを覆すかのように、天へと延びていく。
その剣先の速度は高速だ。彼らが落ちていく速度よりもなお速く、AGIに換算するならば6000近い速さで天を目指す。
「っち、間に合わない。リャナンシー!」
次に動いたのはミック。
動くことができたのは落ち始めてから8秒後。地上から300メテル程離れた時のことだ。
ミックは【才金貨 リャナンシー】のスキルを起動する。
起動するスキルは当然、《ブラッド・アビリティ》。
このスキルによって、新しく得るスキルは2種類。《暗視》と《視力強化》の二つのスキルを、自身が取れる最大限で会得する。
もちろんこのスキルは、この状況を変える事ができるものではない。
あくまでこのスキルは、状況を確認し把握するためのもので、安全性の確保率を高めるためのものだ。
落ちていくのを他の3人に任せて、ミックは本来暗くて、見通せるはずのない地の底を見つめる。
「っぐ、シュテル。《速効召喚》“来い”《コール・デヴィル・チーム》」
最後に動いたのはローガン。
他の3人から遅れて、落下をし始めてから丸10秒。現在地点は、地上より500メテル下でようやく動くことができた。
呼んだのは《速効召喚》により、瞬時に呼び出された3体の悪魔。
戦闘ではなく、ただ落下を防ぐための足として呼び出したために《チーム》という、最近では使う事がなかったスキルを発動する。
刹那の内に泡が生まれてはじけ、呼び出された3体の悪魔は主の命令をそのまま実行しようとする。
1体ずつ反対側から胴体をもち、残りの1体は下から身体で持ち上げようとする。
用途ゆえに今回呼び出された悪魔はAGIとSTRが3倍化されている。
本来であれば、如何に巨体で4人の人間を乗せているとは言っても、問題なく持ち上げる事ができるはずのステータス。
これで大丈夫だと、ローガンは結果を見ずに安堵をし、
「なっにぃー」
……その安堵が裏切られる。
どう裏切られたかと言えば、悪魔が持ち運ぶことすらできずに、多少落下速度を落とすことができたという程度。
自分が予想した結果とはまるで異なる事態に、ローガンは声を上げる。
そしてローガンだけではなく、もう一人だけ異常事態に驚く者がいた。
「なっ、はぁ?」
ミックは疑問の声を上げる。
そんな声を上げた理由は、次第に視界が暗く狭くなっていくからである。
この世界でもそうなっていく理由はいくつかあるだろう。
病気や加齢や状態異常、スキルによるもの等々可能性をあげればきりがない。
今回のケースにおいては、スキルによるものといえる。二つの面を含めてだ。
視界が暗く狭くなっていくのは、ミックが使用している《暗視》と《視力強化》の二つのスキルの効果が正常に働かなくなったためだ。
「どういうことだ、これは。説明をしろシュテル!」
『申しわけありません。原因は不明ですが、スキルの効果がダウンしております』
そして、不具合が出ているのはミックだけではなく、ローガンもまた同様の不具合が発生している。
ローガンが呼び出した3体の悪魔が、本来の性能を発揮することができずに、犬の〈エンブリオ〉であるクーを持ち上げる事が出来なかったのが、その証左だ。
この状況を生み出しているのは、この〈クリエラ渓谷〉という地に蔓延するひとつのスキル……いや、これはもはやひとつの特性・性質と言いかえてしまってもいいだろう。
それほどに異質なこの土地に、彼らは迷い込んでしまったのだ。
「だめなのです!」
不具合が起きているのは、明確に問題があるとわかったのは、ローガンとミックの二人のみ。
しかし、不具合が起きておらずとも残りの二人、ブルーノと桜火にも予想外の事は起こりえる。
桜火の手に握る蛇腹剣から伸びる剣先は、天を目指そうと伸び続けて……心半ばか、途中でその進みを止めてしまう。
それは蛇腹剣が伸縮する機能に性能をあまり振り分けず、純粋な武器性能とステータス補正とスキル性能にも平等に配分したが故の結果。かの【星天到達 テナガアシナガ】は遠くに手を伸ばし、足を向けるためが故の特性を保有しているが、桜火が持つ〈エンブリオ〉の特性はそれとは少し異なっているためだ。
地上に剣先を刺してアンカーにしようという、桜花の試みはもろくも崩れ去った。
もし仮に最初から地上を目指そうとせずに、落下途中に存在する岩壁に刺すことができていれば、ここまで悪化することも無かったかもしれないが、いまはもしもはいらないだろう。
これで二人に続き、桜火まで失敗した。
「これは……クー!」
そして、ブルーノと犬の〈エンブリオ〉であるクーにも予想外はふりかかる。
それは彼らのもつ固有スキルひとつのエラー。
ミックやローガンと異なり、この〈クリエラ渓谷〉の地の特性ではなく、彼らの固有スキルの特性故のエラー。
自身のステータスが激減していくのを、ステータス画面ではなく感覚で気がつく。
ブルーノは困惑する。何が起きたのかは理解できても、それがなぜ起きたのかはまるで分らなかった。
そのステータスの減少は、〈エンブリオ〉であるクーの身体の大きさの変更という形で現れる。元々の大きさより半分以下と言う大きさと言う形で。
そして当然、その〈エンブリオ〉の上に乗っていた4人の〈マスター〉は、その上に乗っている事ができず放り出されてしまう。
「っぐ、戻れクー」
「っちぃ」
「どういうことなのです?」
「もう一度だシュテル。《速効召喚》“来い”《コール・デヴィル・バタリオン》」
ブルーノがクーを左手の、鎖に繋がれた犬の紋章の中にしまう。
そしてローガンが、再び悪魔を召喚する。ただし今度は《チーム》ではなく、よりステータスと召喚数に優れた上位互換スキルである《バタリオン》を使おうとする……が。
「なっ、呼び出せない!」
『そんな、どうして!?』
ローガンが呼び出そうとした悪魔は、だが失敗する。
それは、《暗視》や《視力強化》が正常に働かなくなったのと同じで。
それは、呼び出した悪魔の性能が大幅にダウンしてしまったのと同じ。
この地における特性によるもの。落ちていくごとに、なお深くなるごとに強くなる特性。
それにとらわれた4人は、満足にスキルを発動させることができず落ちていく。
そして……。
「まずい!」
「いやぁぁぁーー」
「南無三!」
「ふざけるなぁ」
彼ら4人の前に、壁が立ちふさがる。
落下していく彼らの目の前に現れた、地表と言う名の壁。
数千メテルからの自由落下をした後に、確実な死という形で彼らの前に現れる。
誰もが皆、死を覚悟し、
「……ふむ。《偽典・神域花園》」
花のベッドに包まれるという、意外な形で助けられる。
「これは……」
「おやおや、大丈夫ですかな?このような地に足を踏み込むとは、もの好きもいたものだ。もっとも私が言えることではないでしょうが」
全員が予想だにしていない形での救出により、頭が真っ白になる。
数瞬の空白を経て、やっと動き出すことができたのはブルーノとミックだった。
「ここは、ワシらはどうなったんじゃ?」
「えーと、助けてもらったん……だよな?誰だか知らないがありがとうな」
二人が発した声を聞き、桜火とローガン、そしてルンペルシュティルツヒェンも同様に動き出すことができた。
「うーん、私たちはどうなっているのですか?」
「暗くて何も見えないな。どこに何があるのか……」
『主様、落下時間からすると、ここは数千メートル地下のようです。かなり深いですね』
足音が、彼ら4人に聞こえる。そしてそれは次第に強くなる。
その足音は、彼ら4人を助けた存在のもの。
その足音の主は、花のベッドに足を踏み入れた後、立ち止まり……
「ふむ、暗くて何も見えないようだ。それならば明かりを出すとしましょうか。《偽典・サンライズ》」
地底に太陽が現れる。
その眩しさに目を焼かれそうになるが、咄嗟に目をつぶり、偽とはいえ陽の光になれた4人は順次目を開けていく。
「まぶしいな……おお、これならよく見えるぜ」
「ふむ、ワシは生きているのか」
「助けてくれてありがとうなのです」
「それで、お前は……って、お前は!」
「どうしたんだよローガン?」
ローガンが助けを出した主の顔を見て驚く。
それは彼にとって既知の顔だったからだ。
もっとも既知と言っても、何回もあったことのある知り合いというわけでもなく、この前に一度見かけた顔というだけだ。
「ふむ?おや……。今生で会ったことがありましたかな?」
「あ、ああ……。まあ観客として見ていただけだからな」
彼らを助けたのは、モノクルをかけ、シルクハットをかぶり、タキシードに身を包んだ黒い男。
それはローガンが2週間前に、ドライフの皇都で出会った手品師だった。
「ふむ、あれを見てくださったのですね。気がつかずに申しわけありませんな」
「観客が結構いたからな、あれじゃあ気がつかなくても無理はない……って、そういえばお前、皇都の警吏に連れ去られなかったか?もう釈放されたのか」
ローガンがあの時の光景を思い出し、そう呟くと手品師は「っぐ」と言いながら動きを止める。
その何かあった様な、手品師の動作に不穏な物を感じてローガンは恐る恐る尋ねてみると、
「いやぁ、世紀の大マジックショーを行ったのですよ。監獄の中より皇都の外へと、瞬間移動するマジックなのですが、うまくいって何よりです。観客がいないのが残念でした」
笑顔でそんなことを、口走った。
「「お巡りさん、このひとです」」
4人とも何とも言えない表情で、手品師を見る。
ローガンと桜火は、息があったように口を滑らす。
「ま、まあいいではありませんか、そのことについては」
「いや、犯罪者に合って流すのもなんだかな―、という感じなんだが」
「まあ、怪しくはあっても、悪人ではなさそうだが」
全員が手品師にくわしく話せ、という雰囲気を醸し出すが、それにひるまずに手品師は無理やり流そうとする。
そのことについて、おそらく年長であろうブルーノが問いただそうと、口を開こうとして……
「敵襲だっ!」
そんなことができる状況でないことに、ブルーノは気付く。
それは1体のモンスター。
堅そうな岩でできた四足歩行のゴーレム。名は【グラン・ロックゴーレム】。
ローガンはモンスターの上に現れた名前を見て、それが下級職の頃に倒したことがあるモンスターであると気がつく。
それならば、今の自分に倒せないはずはないと、ローガンは悪魔召喚を実行し、
「“来い”《コール・デヴィル・チーム》、……っなぁ?!」
その召喚スキルは成立せずに、悪魔が呼び出されない事態に陥る。
続いて動き出そうとしたミックもまた、落ちる時と同様にスキルを使う事ができずに立ち往生する。
それを見て、奇術師はふらり、と【グラン・ロックゴーレム】の前に立ち、
「危ない!」
「ダメなのです!」
「……《偽典・天下一殺》」
奇術師が繰り出した、杖による一撃のもとにもろくも崩れ去った。
いくら下級とはいえボスモンスターの誇る膨大なHPを唯の一撃で削りきるという異常。
それを成したのは《天下一殺》の効果。
初撃にかぎり、絶大な一撃を放つことができる【伏姫】の奥義。
しかし、彼は【伏姫】についているわけではない。この異常は、その超級職についているためではなく、ある一つのジョブによるものだ。
「……おっさん、一体何もんだよ」
「すごいのです」
「《天下一殺》……?!」
「これはすごいの」
4人全員ともに驚く。
《天下一殺》の効果を知るローガンを含めて、それをなした事を物凄いことだとわかる。
「ふむ、このあたりはあのスキルの影響が色濃いですからな。今のあなた達にはきついでしょう」
ボスモンスターを倒した余韻など悟らせず、奇術師は4人に向き直る。
4人共に驚いていた、その中でミックは奇術師が先ほど口にした言葉に反応し、どういう意味かを尋ねる。
「ちょっとまて、あのスキルって一体何なんだ?もしかしてここに来てから俺たちが、うまくスキルを使えないのって、それが原因なのか?」
「ああ、あなた方は知らないでここに来たのですね。ふむ、少しばかり昔話を語る事にしましょうか」
一息つき、奇術師は言う。
「この土地はもともと何もない荒野でした。しかし約600年前にそれが少しばかり変わりました。
現れたのは一体の〈UBM〉。突如としてこの地に現れたUBMに、ここドライフの人間たちは困惑し、驚き、そして絶望しました。
徐々に皇都へ近づく〈UBM〉に対して、時の皇王は明確な対処法を見出せませんでした。なにしろ、あの〈UBM〉は特殊も特殊。あれを相手に皇国の最大兵器である【煌玉座 ドライフ・エンペルスタンド】は有効ではありません。
純粋な能力であれば、勝てるはずの【機皇】も相性と言う壁は崩せませんでした。
このままではどうしようもない。
逃げるにしても、東側にはその災厄のごとき〈UBM〉が存在し、西は海で北は山。唯一逃せることができるであろう南側は……戦乱の真っ最中。
皇都の人々をすべて逃がすことができる手段はありませんでした。
ドライフの滅びを前に、時の皇王が選んだのは救援を求める事でした。
その相手こそ【覇王】ロクフェル・アドラスター。侵略国家アドラスターの王であり600年前の三強時代の中心人物の一人。
【覇王】はドライフに対して、戦力と技術の拠出と引き換えに、その救援に応じました。もっとも【覇王】がこの救援に応じたのは、情にほだされたから等では全くなく、自身の望みの為にそれが最速であるだろうと、踏んだから受けたにすぎないのですが。
それはともかくとして【覇王】はただ一人、その〈UBM〉に挑みました。
もっともそれは当然と言えるかもしれません。なにせ【覇王】はいうまでもなく一騎当千。同じ超級職とでさえ、隔絶とした差を生みだす規格外のイレギュラー。
供など当然不要といいきり、ただ一人戦おうとして……
一人の乱入者が現れました。
乱入者は【覇王】にとって邪魔でしか無い存在。しかし、如何に【覇王】と言っても根絶が無理難題な強者。
その乱入者の名前は【猫神】シュレディンガー・キャット。
【覇王】と同様に、三強時代の中心人物の一人。
風来坊であり、神出鬼没な彼がなぜこの場に現れたのか、いまだに謎とされています。
しかし彼はそこに現れて、【覇王】に共同戦線を提案しました。
【覇王】は一度はそれに反対し、逆に剣の一振りで【猫神】を吹き飛ばしました。
ですがそれに懲りず、3日後に再び現れた【猫神】は、〈UBM〉と【覇王】の戦いに乱入し無理やりな共同戦線を築きました。
その状況下に至っては、いかな【覇王】といえども【猫神】を先に潰すことなどできず、結果的に共同戦線が成立いたしました。
こうして〈UBM〉と【覇王】【猫神】の戦争がはじまりました。
その戦いは熾烈を極めたとも言います。もっとも観戦者など一人もいなかったので、当事者である【猫神】が語った内容をそのまま話しているのですが……。
〈UBM〉の攻撃を受けて、自身の分体が消滅しながらも即座に補給し、戦線を維持し続けた【猫神】。
〈UBM〉の守りを破ろうと、剣を振るい地平の彼方まで消滅させ、戦線を崩壊させ続けた【覇王】。
そして【覇王】の性能をある程度ばかり弱体化させながら、【覇王】と【猫神】と戦い続けた〈UBM〉。
その戦いは3日3晩に及びました。
そして3日たった、戦争最終日の事。
まず初めに【覇王】が放った最大の一撃は、このドライフ皇国の南東から西北にかけて斜めの傷を生み出しました。これほどの威力の攻撃を【覇王】が行ったことは、【覇王】の生涯においても数度しかないほどの、希少な一場面ですね。
次に【猫神】が動き、百を超える自身の圧量で、〈UBM〉もろとも【覇王】が創りだした亀裂に押し込みました。【覇王】でさえ影響を受けた、〈UBM〉の力を全く受けなかった【猫神】はそのまま亀裂の地底でたたかい続け、押さえる事ができました。
最後に動いたのは、これまで舞台に上がってこなかった時の三神。すなわち【天神】【地神】【海神】の三人の超級職保持者。彼らはある存在を封印するために開発していた三神が、共同発動魔法の実験として、そして【覇王】と【猫神】でさえもあれを倒すのは至難だとして、その魔法を発動しました。
その魔法は正常に発動し、その割れ目に抑えつけられていた〈UBM〉を地中深く封印することができたのです。もっとも彼らの活躍はあまり知られず、【覇王】と【猫神】の二人が活躍したという事になっていますが、彼らとしてもまだ表に出るわけにはいかなかったので、それがちょうどよかったのでしょう。またこの時の魔法発動におけるいくつかの問題点を洗い出し、本命を封印するためにさらに改良をくわえられていったのですが、それについてはここでは割愛するとしましょう。
なお、戦い終わった【猫神】は、「封印の所為で、本体つかえなかったなー」という独り言をつぶやいたとされていますが、そのつぶやきの意味はいまだにわかっていません。
そうして封印された〈UBM〉ですが、その影響はまだ色濃く残っています。
それがこの地におけるその〈UBM〉の誇るスキルの一つ《スキルエラー》の力。
一言で言うなら、一定以下のジョブスキルの性能をダウンさせ、場合によっては発動させなくさせるスキル。その一定値は発動する人間の合計レベルや、下級・上級・超級職のくぎり、あとはその発動するスキルの性能に左右されます。
少なくとも合計レベル百以下が使用する上級以下のスキルはすべて無効ですね。
最も封印される前では合計レベル千を超える超級職のスキルさえも弱体化させ、使用不可能にするという、もっと強力なスキルだったらしいですが。規格外のレベルを誇る【覇王】とそもそもそんなものは関係ない【猫神】に関しては問題ないことでしたね。
さてさて、これで話しも終幕です。
この地において、あなた方がジョブスキルを発動させることができなかったのは、その〈UBM〉の《スキルエラー》によるものです。
封印されてもなお、世界に力をふりまく、神話級さえも超えた〈イレギュラー〉。
その〈UBM〉の名は、【職害魔晶 クリスタルエラー】。世に知られる〈UBM〉の中でも、災厄の一つとして知られる規格外です。
ああちなみに余談ですが、この渓谷の名前が〈クリエラ渓谷〉と呼ばれるのは、この渓谷の名前を考えようという段になって、【覇王】が〈クリスタルエラー〉でいいといったことが原因です。
【覇王】が生きている間はだれもが恐れて、その名前を通しておりましたが、【覇王】がいなくなった後は、〈UBM〉の名前をそのまま使い続けるのはどうか?という話になりまして……。
しかし、もはやすでに〈クリスタルエラー〉の名前が浸透してしまっていたため、とりあえずその名前を縮めて〈クリエラ渓谷〉にしてはどうかという案が通り、それが使用されていったのです。
」
ふぅ、話した、と奇術師は額を腕で拭う。
ローガンたち四人は、その話の内容を聞きながら驚き、そして「長いな」とも思っていた。
とりあえず、これで話しが終わったと踏んで、ミックは話しの最中に気になったいくつかの事について尋ようと口を開く。
「いくつか質問いいか?」
「ええ、もちろん構いませんとも、どうぞお聞きになってください」
「んじゃ、まずひとつ。その〈UBM〉の《スキルエラー》の効果で、スキルを使えないのって、ジョブスキルだけだよな?」
「肯定です。ジョブスキル以外……たとえば、装備スキルや配下のモンスターのスキルなどは十二分に使えたという話です」
「なるほど……ってことは〈エンブリオ〉のスキルも問題なく扱えるという事か。俺とローガンはどっちも〈エンブリオ〉の性能がジョブスキルに依るからな。……あれ、でもブルーノのクーはどうしてダメになったんだ?別にジョブスキルで呼び出しているわけじゃないよな」
そう疑問に感じ、ミックはブルーノの方を向き、ブルーノはああ、といいながら頬を指で掻く。
「ああ、クーがダメになったのはワシたちのスキルの所為だから関係ない。ワシらの都合だよ」
「へぇ、そうなのか。それならまあ追求しないけど、桜火もそんな感じ?」
「あぅ、すいません。私のは単純にミスなので気にしないでくれると嬉しいのです」
しゅん、となる桜火にあわててフォローして落ちつかせた後、ミックはもう一つの気になる事を尋ねる。
「んで、ここに〈UBM〉が封印されているって話だが、それって解くことができるのか?」
「通常の手段では無理でしょう。私は知りませんが、それに関してはある系譜が受け継いでいるとかなんとか。それにここで開放しても、三強がいない現代では倒す手段も封印する手段も無いので、藪をつついて竜を呼び込みかねません」
「ふーん。今は無理でも超級職を得た後なら、俺たち〈マスター〉なら何とかできそうだけど……まあ、知らないならいいか。
それじゃあ、もうひとつ。最後に聞きたいことがあるんだが、あんた何モンだ?少なくともレベル百以下の上級ってわけじゃないよな?なんでここに居るんだ?」
ミックが疑問に思うのは当然だ。
なぜなら、彼自身が言っていた通り、この地はレベル百以下の上級職程度では生き残れない死の大地。
そんな所に現れた奇術師に対して、悪人ではないとミックは思いながらも警戒する。
そんなミックの質問に対し、「ああ」と自分が何者か言っていなかったと思いだし、その奇術師は自らの事について紹介を行う。
「そうですね。この状況でついつい、言っておりませんでした。自己紹介は大切だというのに。
それでは、言いましょう。私の名はルパン。ルパン・ジ・アシッドと申します。恐れ多くも【
そして、神の座をえた男は、恭しく礼をとる。
To be continued