(=○π○=)<そのままにしておいてもよかったのですが、やっぱり予約したかったので一時削除しましたー
1/27 原作の設定の一部を間違えていましたので、修正いたしました。
第6話 天への階(きざはし)
□〈クリエラ渓谷〉 【悪魔騎士】ローガン・ゴールドランス
「【
目の前の紳士風の奇術師が語った内容に驚く。
それには二つの内容が含まれる。
ひとつはそのジョブ。【偽神】というジョブ名は、
それがどういうジョブかは不明だが、重要なのは目の前の男が超級職についているという事。
そしてもうひとつは名前。ルパン・ジ・アシッドと言う名前は、原作者が考案しながらも、使われなかった名前だ。
それがこうして俺たちの前に現れているという事態に、疑問を感じる。
「【偽神】ってことは、超級職だよな。今どれくらいのレベルなんだ?」
「ふむ、私のレベルですか?【偽神】が300を超えた位ですね、合計800程度の弱者でございます」
「レベル800で弱者なら、ワシらは一体何なんじゃ、というはなしだが……まあいい。それで探索者というのはどういう事だ?」
ブルーノが尋ねた内容に、ふむ、と少し思案してから、「まあ、いいでしょう」と前置きしてからルパンが説明をする。
「探索は私が受けた使命です。
細かい理由を話す事は出来ませんが、私が上司……のような方から、ある探し物を依頼されまして、それを探すためにあちこちを歩き回り、探索をしていたのです」
「探索……何を探していたのかは、言えないのか?もしよかったら俺たちも協力するけど」
勝手に巻き込もうとするなミック。
知っているのなら、報酬次第で受けないでもないが、だからと言ってこんな面倒事に俺は好き好んで首を突っ込みたくない。
「申しわけありませんが、話すことができません。最重要秘密事項なのですよ、本来はここでこうして話しているのさえもアウトなのですが、あなた方なら吹聴して回ることも無いだろうと思い、ここまで話しましたがこれ以上はさすがにあなた方といえども……」
そうか、それならそれでいい。
ミックも納得したのか、その事に関しては置いておいて、今話さなければならない重要事項に関して議題をだす。
「それで、俺たちはこれからどうしようか? このままここに居るわけにもいかないし、ここから抜け出す方法を考えなくちゃな」
「そうですね、この岩壁をのぼるのは、骨が折れるのです」
桜火が疑似太陽の上を眺める。
その上は、本来の太陽が届かず暗闇におおわれている。
どれほどの距離があるのかはわからないが、ルンペルシュティルツヒェンの言葉によれば、ここは地上より数千メートル地下であるらしい。
それだけ地下であるならば、一流のクライマーが一級の装備を整えていたとしても、登りきるのは無理だろうな。
「そんなことをせんでも、ログアウトすればいいだろう」
「あ、そうか」
ブルーノが放った正論に、俺たちは単純解明な脱出方法を失念していた事に気付く。
「それじゃあ、ルパンだっけか? ここで俺たちは帰るな」
「ほう、あなた方はここから一瞬で抜け出す方法をお持ちであると……。ああ、あなた方は〈マスター〉なのですね。少し前から増加したという事を小耳にはさみましたが、まさか事実だったとは。……いや、ですが?」
ルパンは俺たちの左手をみて、俺たちが〈マスター〉であると気がついたようだ。
なにか考えている風なルパンだが、とりあえず俺たちはそれを気にせず、ログアウトをすることにする。
「それじゃあな。助かったぜルパン。それと、ログアウトしたら、すぐログインして皇都の中央広場でまた落ち合おうぜ」
「有難うなのです、ルパンさん」
「それではな、いつかまたあったら奢ろう」
「さあ、帰るとしようか」
そうして俺たちはメニューを開き、ログアウト処理を実行して……。
【他者接触状態につき、ログアウトできません】
「なっ」
「えっ?」
「ログアウトできないだと?」
「ふむ、飛ばされないのですか? あの噂は本当だったということでしょうか?」
ログアウトが出来ない事態に陥る。
他の3人の反応を見る限り、同じくログアウトできないのだろう。
なんで、こんなことが起きたのか、と疑問を抱き……そしてルパンの言葉の意味を把握する。
それは……
「あの噂だと? どういう意味だ、この状況に関して何か知っているのか?」
少し強めな口調で問い詰める。
もちろんルパンにこの状況に陥った原因があるとは思っていない。だが、それでもこの状況の理由は知りたいし、知らなければならない。
他の3人もどうやら、それに関しては同感のようだ。
「ああ、あくまでちょっとした噂程度のものでしかありませんが。
それによると、このちでは【クリスタルエラー】の影響下にあり、〈マスター〉はこの地では他の世界に飛ばされなくなっているらしいですね。
もっとも、私どもには真偽のほどが分らない内容ではありましたが、あなた方を見る限り事実だったようで」
ログアウト不可だと?
どういった原理かは、分らないがこんな場所で常時他者接触状態になる力を持つ〈UBM〉が、眠っているとか悪夢でしかないな。
「ログアウト不可か―、普通のゲームでならストーリー上、帰る事ができなくされることもあるけど、こういったVRMMOでそうされるとはなー」
「それじゃあどうしたらいいのですか? もしかして私たち、ずっとこのままなのですか?」
「詰みゲーってやつだな。最近のゲームでは珍しいが、まさかこのゲームでそんな事態に陥るとはな」
3人とも、落ち込んでいるな。
確かに、いきなりこんな場所で拘束される羽目になったら、絶望的だな。スキルが使えないのに強力なモンスターが蔓延っているわけだからな。
ここから通常の手段で抜け出すのは、不可能に近い……だが、別に普通の手段しかないわけじゃあない。
俺としても、あまり選びたくはない選択肢ではあるが、だからと言ってここにずっといるわけにはいかない。
この状況を抜け出す方法、それは……
「それなら問題はない。確かにこのままだと、ログアウトできない。
だけど、この場所から抜け出て、前のセーブポイントに移動する手はある。つまり皇都ヴァンデルヘイムにログインする手だな。
それは自殺だ。
自殺に限らず、すべての〈マスター〉は死んでから、3日後に再びログインする時、ログイン地点は前のセーブポイントにになるからな
俺たちで殺し合うのも面倒だろうし、自殺でいいだろう」
一息に説明をする。
そう、デスペナになってしまうと、3日間というログイン制限などの、厄介な制約が付きまとう。
特に俺の場合、ルンペルシュティルツヒェンの第三形態の進化に■■■を使用したせいもあって、今度の進化が絶望的に遅れそうではある。だがそれでも、ここにずっといるわけにはいかない以上、この手を使うしかないだろうな。
「ああ、そうか。自殺すればいいのか。俺もあまりしたくないけど、この状況的に仕方ないのかー」
「デスルーラってやつですね。私もあまりしたくはないけど、仕方がないのですね」
「ワシはこういうリアルなゲームで、デスルーラは好きじゃないんだが……」
やっぱり他の奴も、好き好んで死にたくはないか、まあ当然だな。
だがそれ以外の手はないし、自殺しようとして、
「お待ち下さい!」
ルパンの大声で中断させられた。
声に驚いて、そちらの方を見てみると、なにやらルパンがかなり焦った風な表情になっている。
一体どうしたのだろうか。
「ふぅ、どうしたのかと聞いていれば、自殺をするなど早すぎますよ?」
「いや、俺たちは〈マスター〉だからな、ここで死んでも3日後にこっちに戻ってこれるぞ?」
ミックの言う通りだ。
俺たちは死んでも死なない存在だ。自殺と言ってもそこまで忌避するようなものじゃない、もっともティアンには分らないだろうが。
「いえいえ、そういう事ではありません。あなた方のような若い身空の方々が、自ら死を選ぼうとなどとは、嘆かわしい」
「ワシはそれほど若くはないんだがな」
結局何が言いたいんだ?
自殺をするなってことなのか。
だがそれだと現状が俺たちにはどうしようもなくなっているんだが、そこら辺を考慮してくれないのだろうか。
「とはいっても、ルパンさぁ。俺たちはここに閉じ込められてるに近いんだぜ? 自殺して脱出しないと、一生ここに居る事になっちまうんだが」
「そうなのですね。私もこんな所にいたくはないのです」
「ええ、ええ。そのお気持ちは私もよくわかりますとも。ですが自殺はいけません、それは人間としてやってはいけない事です」
なら、どうしろというんだか?
俺たちのそんな心の動きが読めたのか、ルパンはゴホンと咳をつき足をそろえ両手を広げて、誇るように宣言をする。
「ここに閉じ込められているという心配は御無用にございます。あなた方が自殺など選ばなくて済むように、私があなた方を御救いします。私の力であなた方を地上にまでお送りいたしましょう!」
すこし、演技がかかった風な口調で、胸を張りしたその宣言は、俺たちが忘れていたひとつの事実を思い出す。
先ほど見たばかりだったはずだ、この男が【グラン・ロックゴーレム】を倒した姿を。
俺たちがここで何もできずとも、この【
「俺たちをここから出してくれるのか!」
「ええ、私の能力なら容易いといえるでしょう! もっとも、私の力では、一気に外に送りだすのは不可能なので、地上に戻るのはあなた方の力で為していただきたい」
「ワシらの力で、だと?」
「ええ、これよりお見せするのは、我が秘儀のひとつ。【
このスキルの力は、『偽典』という名称のあとに、行使したいジョブスキルを唱える事で、そのスキルを発動が可能になります。
もっとも本来の物より七割程度の力しか出せませんし、一度そのスキルを使う人間を見なければなりませんが。模倣は本物あってこそですからね」
そう言い、杖をクルリと指でまわし地面を杖で叩く。
杖で叩かれた所から金色の波紋がおこり、広がっていき、同時に俺たちが見つめるルパンの後ろに金色の波紋が収斂する。
「それでは、奇術師らしく盛大に行くとしましょう!
レディーーース・アーーンド・ジェントルメェーーーン。
お集まりの紳士淑女の皆様方、お待たせいたしました。
これより【偽神】ルパン・ジ・アシッドによる世紀の大魔術をお見せいたしましょう! 演目は『ミラクルタワーの出現!』。
何もない所より現れる、天を衝く魔天楼の勇士!
生憎とこの奇術には種も仕掛けも魔法もありますが、たとえそれでもこの奇跡の一場面、決して見逃すことなど出来ません。
さあさあ、カウントダウンを始めましょう!」
ルパンが右手をあげ、三本の指を立てる。
「スリー!」
指を一本たたみ、指を二本に変える。
あれがカウントダウンなのだろう。
同時に金色の波紋が早く大きくなり、収斂も大きくなっていく。
「ツー!!」
指をたたみ、指を残り一本に変える。
同時にルパンは、左手に握った杖を後方に投げ入れる。
桜火はわくわくと目を輝かせている。どうやらかなり待ち遠しいようだ。
「ワン!!」
指をすべてたたみおわった右手を、フィンガースナップを行うための形に変える。
後ろに投げ入れた杖は、一度地面にぶつかりカランという音を立てて跳ね返り……そして杖が膨張してはじける。
「ゼロっ!!! 《偽典・迷宮創造》発動!」
頭上にあげた右手で、パチンという音を響かせながらフィンガースナップを行い、それは奇術の開始を宣言する合図。
さらに、はじけた杖から白いハトが飛び出す。
その総数を数えるのがばからしい程の、大量のハトのカーテンがどこぞに飛び去り消えていった奥にあったのは…………まさに巨大な塔だった。
俺たちが良く使う、第二小決闘場に匹敵する直径と、登頂がまるで分らないほどに高い塔の頂上。
あれがルパンの言う通り本当に地上まで届いているのだとしたら、1000メテル以上の高さを誇るのだろう。
「すげぇ!! まるでバベルみたいだぜ!」
「……バベルに例えるなミック。途中で折れたらどうするんだ」
ミックの歓声に、ブルーノが突っ込むが、そんなものは気にしないぜ、とばかりに「すげー」と沸いている。
もっともそれはミックだけではなく、桜火もだし……それに俺も大きな歓声こそ出さなかったが、かなりわくわくした。
ルパンが行ったのは、超級職のスキルであるだろうが、それでも本来ならただの一スキルの効果。驚きこそすれ、わくわくするようなものではない。
それを演出で湧かせるというのはエンターテイナーだな。
「まあ、それはよい。それでワシらはこの塔を登ればいいんじゃな? 面倒ではあるが、確かに死を選ぶよりはいいか」
「でも、この塔すごい高いですよ? 何回あるのかわからないのです」
「何階あるのかは私もわかりませぬな。ただ私は地上付近まで塔……迷宮を創っただけですので」
もしかしてこれを登らなければいかないのか?
一階5メテルとして、上まで大体1000メテル以上だから、最低でも200階以上なのは確実だろうが。
上を見上げる。
塔は俺たちがたっている足場から、ルパンが生み出した疑似太陽を超えて、天上の暗闇の向こうに消えている。
「とんでもない、長旅になりそうだな……」
「まあ、こうして話し合っていてもしょうがないし、中に入るとしようか……」
「そうですね」
「地道に登っていくか……、幸いワシたちはしばらく予定がないからな」
その言葉に、ルパンはうんうんと頷きながら、ふと、思い出したように言う。
「ああ、言い忘れていましたが、このダンジョンの中にはモンスターが大量に発生しております、お気をつけください」
「モンスター出るのかよ!」
「だがジョブスキルを使えないとなると大変じゃあないか? 今現在満足に戦えるのは桜火だけだろう?」
「それもそうか」
どうしようか、と少し悩む。
はっきりいって、ジョブスキルを使えないと俺とミックは役立たずになってしまうからな。
「ああ、それなら大丈夫ですよ。迷宮内でなら【クリスタルエラー】の力は及びません、弱まった力では〈イレギュラー〉の力であろうとも寄せ付けません。ああ、それと地上に上るまでは、【クリスタルエラー】の影響圏内であることには変わりないので、おそらく地上に出るまではあなた方は他の世界に飛ばされることはないでしょう」
「まあ、レベルアップしながら進んでいけるので退屈はしなさそうなのです。大変ですけど」
「みなさま頑張り下さい。主様、私は合一形態をとります」
「ああ」
再ログインした影響でルンペルシュティルツヒェンの合一形態がとかれて、アポストル形態に戻っていたからな。
ここからこの塔に上るというのなら、そっちの方がいいだろう。モンスターとの連戦になるしな。
ルンペルシュティルツヒェンの体が光り、俺の中に入っていく。
「それじゃあ、行こうぜ!」
ミックが先に進み、俺たちがついて行く。
目指すのは天地を貫く、塔の第一階層。その一階層にのみ取り付けられた、観音開きの黄金扉。
先が見えず、長かろうとも踏破してみせると意気込み、両の扉を開いて……
◇
扉をくぐった先にあったのは、大きい広場と正面にある螺旋階段の入口。
そしてこの広場に大量に巣くうモンスターの群れ。
「ずいぶんと多いな」
「……大丈夫だ。こいつら全部弱いぞ、30レベル以下だ」
ミックは、《看破》を使ったのだろう、敵が雑魚でしかないことを知らせる。
それならば――萎縮する必要などないな!
「さあ行くぞシュテル! 対雑魚戦だ」
『はい主様! 《バタリオン》NA、《偽証》行けます』
「“来い”《コール・デヴィル・バタリオン》」
48体の悪魔が呼び出される。
そして俺が悪魔を呼ぶのと同時に、他の3人も同様に動き始める。
ミックは両手に剣を持って、敵に向かって突撃を行い。
ブルーノは左手の〈エンブリオ〉から、犬のガードナーを呼び出しつつ左手に槍を握り。
桜火は右手に握ったままの剣を振るう。その剣は、3つにわかれて桜火が振った剣の勢いのまま、この広場を覆うほどに剣の中心を通るワイヤーが伸びる。
「いくよ! 《
桜火の蛇腹剣に炎が燃え盛る。伸びた剣芯の合間に炎の剣の刃が作られる、いや生み出されると云った方が正確かもしれない。
蛇腹剣は桜火の思い通りなのだろう、自在に空間を動き回り、燃え盛る剣先で敵を抉り、敵を切り刻み、敵に巻き付き刃で噛み炎で焼いて行く。
「クー、ワシらも行くぞ! たとえ全力を出せぬとは言っても、ここで若い奴らに後れをとるわけにはいかん」
ブルーノも突っ込み、槍を握り、子犬になぜかなっているクーと一緒にフィールド内を駆け巡る。
「やはり、この程度の相手だと人数が多すぎるな……、これだと経験値が余り稼げないぞ」
今この時にも、敵の数はどんどん減っていっている。
俺が呼び出した悪魔も順調に敵を倒して言っているのだが、桜火とミックの討伐数が多い。
ブルーノと犬の〈エンブリオ〉は、前に決闘場で戦った時より、なぜか数段弱くなっている。なぜだろうか。
ちなみに俺たちは今回パーティーを組んでいない。その最大の理由は俺が全力で戦えるためというものだが、そのせいで経験値の分配が無く、倒したやつが倒したモンスターの経験値を総取りするシステムになっている。
そういうシステムにした理由はこのパーティーには、回復職などがおらず、全員が前線で戦えるからだ。全員が思い思いに戦えば、それでいいという企画で連れだされたからな。
……とはいえ、こうもモンスターを倒せないのはキツイな。さて、それなら……
(シュテル、次から少しペースを上げるぞ。コストは大きくなるが、経験値も惜しい。召喚数をSTRに変更するとしよう。召喚数は繰り返し呼び出せばいい、《
『かしこまりました、では次からそのように設定いたします』
ルンペルシュティルツヒェンとの会話を終えて、広場の方を見る。
みるともはや敵の数も減り、殲滅の完了まであと数秒と言うレベルまでになっていた。
やはりミックと桜火のスピードが速いな。
……そして最後の一体になり、
「これで、終りなのです!」
炎を纏った剣の蛇が、この広場に残った最後のモンスターである【ティール・ウルフ】を貫き光の塵へと変える。
そしてこれで終わりだな。
ミックと桜火も戦い終わってこっちに戻ってきて……、パチパチパチという拍手の音が後ろから聞こえてくる。
「えっ?」
振り返った先にいたのはルパンだった。
まあ、俺の後ろにいるような人物はそのくらいだろうが……
「お前も一緒に来ていたのか?」
「ええ、はい。ついてきました」
そう言葉を口にするのは仕方がないだろう。
なぜならルパンが俺たちと一緒にここに入って来るとは思わなかったのだから。
その理由は……
「ルパン、お前の探し物はいいのか? なんで俺たちについてくる?」
そうルパンはこの〈クリエラ渓谷〉に探しものにやってきたと、言っていた。
ここで俺たちについてくるという事は、俺たちとともに地上に戻るという事に他ならない。
つまりは、探し物をするという事を諦めたのだろう。もしくは地上に戻ってから、また再びこの渓谷に戻って来る気なのかもしれないが。
「ああ、その心配は御無用にございます。ここに来てから数日かけて探しまわりましたが、探し物はとんと見えずにもう帰ろうと思っていた頃なのですよ。どうやら私の探し物はここには無いらしい」
「へー、そうなのか。ってことはあるかどうかも、どこにあるかもわからない探索ってことなのか。なんか聖杯探索みたいだな」
「そうですね。上司のような方からは絶対にあるといわれて探していたのですが、どこにあるのかは全く分からずに、こうしてあちこちをさまよい歩いているわけです」
「ほぅ。ずいぶんと大変なのだな」
「……有難うございます」
……ん?なんだろう。
俺がルパンを労ったら一瞬詰まった気がしたんだが、どうしたんだ?
「それはいいだろう、一緒についてきてくれるというのならワシらも心強い。もしワシらが勝てないような相手が来た時には、手を貸してくれるというのだろう?」
「ええ、それはもちろんです。雑魚の時はお譲りし、強者の時は貢献度を奪わないように適度に援護をする。それくらいは弁えておりますとも!」
ほう、それはいい。
他者にそれを強要する気はないが、他者がそれをしてくれるというのなら止める理由はないな。
強くなれる機会は多ければ多いほどいい。
もっとも他の3人は、それでいいのか?という表情をしているが。
「お気になさらず。もとより私のレベルは結構高いので、いまさら下級が戦うような相手は経験値としてもあまりおいしくはないですからね。《迷宮創造》の特性によって、弱いモンスターは下に押し込められるので、しばらくは私の出番はないでしょう」
「《迷宮創造》の特性?」
「ああ、言っておりませんでしたな。《迷宮創造》は【
この《迷宮創造》によって作られたダンジョンは、いくつかの特性を含みます。
ひとつは、この迷宮を創った時点で、周囲のモンスターをとりこむという点。
ひとつは、この迷宮の中にあるモンスターは、その強さによって弱い順に下から詰められていくという点。
ひとつは、一定階層ごとに宝箱が自動生成されるという点。
ひとつは、階層が上がるごとに、モンスターが強くなり、宝箱から出るアイテムは高価になっていく点。
これらの要素が作られる時点で強制されてしまいます。コストも大きく、ほぼ【迷宮王】の一度限りのスキルに等しいですね」
なるほど、要は普通のゲームのダンジョンと同じという事か。
後はこの〈Infinite Dendrogram〉の世界にも〈墓標迷宮〉等はあるが、それらと同じダンジョンを創りだすスキルと言う事か。
だが、それなら――
「へー、そうなんだ。まっ、俺たちは問題ないぜ。そういうゲームは慣れているからな」
ああ、問題ない。
「それより、さっさと先に行こうーぜ」
「そうだな、行こうか」
『ここの部屋の高さは大体10メートルはありますね。想定より一部屋のサイズが大きいです。次へ進むための道が螺旋階段だというのも影響しているのかもしれませんが、案外それほど階数はないかもしれませんね』
まあ、それでも先は長いけどな。
「あうー、クーちゃんが行ってしまったのです」
桜火は喋らないと思っていたが、小さくなった犬の〈エンブリオ〉にずっと抱きついていたのか。
ブルーノが先に進んだ為に、犬……もう、クーでいいか。クーがついて行って離れてしまったので、泣き言を漏らしている。というか、少し泣いてないか?
そんなにクーのさわり心地が良かったのだろうか?
「あー、桜火。そんなに泣くな。後で存分に触らせてやるからな」
「ほんとなのですか!」
ブルーノが慰めたとたん、いきなり表情を変えてよろこんで万歳をし始めたぞ。
そんなに嬉しいのか。
「犬が好きなのか?」
「はい! 大好きなのです!」
「その割には、犬結構倒してなかったか?」
「あれは、モンスターなので対象外です。……そういえば、ブルーノさんは犬を一体も倒してなかったですよね? モンスターでも倒せなかったのですか?」
「………おう。あぁーまあ、そんな感じだな。悪いがワシらは犬の相手はせんから、その時は3人でよろしく頼むぞ」
……桜火怖いぞ。まあ、犬好きでもモンスターは別なのはわかるが。
だがブルーノは倒せないんだな。犬のガードナーを連れているだけあって、極度の犬好きなんだろうか。
「ほっほっほ、仲がよろしいですな。それで先に進まなくてもよろしいのですか?」
「ああ、そうだな。本当にもう先に進むぞー」
このままではいつまでたっても先に進みそうにないからな。
話を切り上げて、ミックが階段を昇り始める。
それに続いて、桜火とブルーノも昇る。
そして俺も階段に足を掛ける。
この地の底に築かれた塔の、第一段。
こうして俺は
To be continued
(=○π○=)<桜火の蛇腹剣に関して、言葉だけだと説明しずらいので、ちょっとだけ追記。
1・ <二二}― (=○π○=)<通常の両手剣形態
↓
2・ <―二―二―}― (=○π○=)<剣が分離してワイヤーで繋がれた状態
↓
3・ <―――二―――二―――}ー (=○π○=)<物凄く伸びる
↓
4・ <―○―二―○―二―○―}― (=○π○=)<まるをつけた所にスキルが発動。
↓
5・ <―二―二―二―二―二―}― (=○π○=)<スキルによって剣の刃が生成される
(=○π○=)<この追加した部分は桜火の任意で解除可能。縮めるときは当然全解除です。
(=○π○=)<ちなみに、こんかい桜火の使った《焔を纏う蛇》は剣の刃を生成するスキルではなく、剣全体に炎を纏わせるスキルです。
(=○π○=)<細かい事はおいおいで。
(=○π○=)<……設定だけ考えて、描写の手間を考えていませんでした。