(=○π○=)<今回の話は、何回かいろいろと書き直したりして難産だったのです。
(=○π○=)<いまも、どうだろう? とか思ってるのですが、さすがにこれ以上遅れたらエタりそうなので、これで投稿いたします。
(=○π○=)<(ゲームしまくっていた事は内緒にしよう)
第9話 天蓋を穿つ
□■
炎の蛇が手と足でできた樹の枝を剪定する。
百にも及ぶ悪魔が仮初とはいえ、命を賭して造られた屍山血河の道を突き進み四肢でできた醜悪な人形に鉄杭を喰らわせる。
鉄杭を胸の中心に叩きこまれた人形はばらばらに砕けて……残骸を周囲にまき散らす。
だが、これで終わりではない。
この戦いはまだ始まったばかりなのだ。
先制攻撃を加えた程度で、終りになどなりはしない。
とはいえ、このあとから話を進めるのは、少しばかり性急に過ぎる。
書きたいところがあるだろう、描きたいところがあるだろう。
故に視点を変えよう、中心を変えよう、そして時間を変えよう。
今からは、話を少しだけ戻すとしよう。
時間は戦い始めて少しばかり。
前衛と後衛で異なる結果を生み出していたその時。
後方で力を振るう二人の子供とは対照的に、今前方では二人の大人がその力を振るえずにいた。
今からは、その内の片方に
さあ、とくと見るがいい、ある一人の赤枝の末裔を。
◇◆◇
男が槍を振るう。
墓標の如く突き立てられた、性質の悪い墓石を槍の一振りで砕く。
これが墓標だというのなら、死した者を弔っているのなら、この槍を振るう男は悪鬼羅刹の類いなのかもしれない。
地に眠る物と、壊され宙に舞う光の粒子に変わっていく、手と足の亡骸。
まさに死屍累々。もしくは四肢累々だろうか。
暴雨のごとく荒れ狂うその様は、通り過ぎた後を死で埋め尽くす。
だが、その光景を生み出しているその男は、表情にそれをなした結果によって生まれるであろう、その類いを浮かべてはいない。
歓喜を浮かべてはいない。モンスターをいくら屠っても、歓喜など浮かべることなど出来ない。なぜなら、敵はいまだに無尽蔵に出てきているのだから。
狂気を浮かべてはいない。モンスターをいくら殺しても、狂気に染まることなどしない。なぜなら、男はこの程度の惨劇に浸るほど、人間として落ちてはいないのだから。
傲慢を浮かべてはいない。モンスターがいくら弱くても、傲慢になどなることなど出来ない。なぜなら、男は自分のことをよくしり、また本来相対するべき敵にとって、この程度のモンスターなど消耗品に過ぎないのだから。
無論、感動・快感・安心・恐怖・嫌悪・軽蔑・殺意・興奮、そのいずれにも合致はしない。
ただ彼にあるのは、この停滞した状況を作り出されたことによる、不満しかなかった。
もとより彼が槍を再び握ったのは、強敵との心躍る戦いのため。
こんないくらでも湧いて出てくる敵を倒し続ける為ではない。
不満は覚えている。だが、それでも槍を振るう事を諦める事など、出来るはずもない。
それに――かっこ悪いところを見せるわけにはいかない、と彼は槍を振るい続ける。
急遽加入することになった、あの【
だからこの中で最初に諦めるわけにはいかん、と決める。
だが現状、彼はさほど役には立ってはいない。すくなくとも彼自身はそうと思っている。
彼自身の成果としては、襲い続ける手と足の軍勢の大半をなぎ払う事に成功している。
だがそれでも、時折討ち漏らしたモンスターがこちらに攻撃を加えてくるせいで、すこしずつ彼のHPは削られていってしまう。
それに彼が相対しているのは、万に届くかもしれない軍勢の本の一角。
一角をなぎ払う事に成功しているからと言って、それを誇ることなどできようはずもない。
手は当然抜いてはいない。
今もなお、彼は槍を降り続け、彼の〈エンブリオ〉もまた縦横無尽に走り回り敵を討つ。
本来、軍勢に対して守るべきものを守れない個人戦闘型といえど、それを突破して首魁を打つことは可能なはず。
特に彼ら程の力を持っていればなおさらだろう。
それが不可能な理由はひとつ。
敵が周囲一帯の地の利を得ているからである。
《グレイブアームズ》の効果によって、【アルヴィオン】は自身から周囲100メテルの範囲内であれば、地面からいくらでも四肢を呼び出すことができる。
一体一体がそれほど強くなくても、突然四肢が生み出されれば対応するのは難しいだろう。
踏み出そうとした足の先に腕が造られれば、歩みを止められることになり、場合によっては身体のバランスを崩すことになってしまうかもしれない。
槍を薙ぎ払おうとする時に足が造られれば、攻撃を止められることになり、手酷い隙をさらすことにもなるだろう。
さらには人間にとっての死角の一つである、真下から攻撃を加えられれば、避けるのも防ぐのも厳しい。
他にも多種多様な方法で、手を呼び出し、足を造り、【アルヴィオン】は敵の行動を阻害する。
近接戦闘型にとっての死地。
それが今、前衛として出ている彼らが満足に活躍できない理由であり。
後方から攻撃を加えているローガンと桜火が活躍している理由でもある。
それでも、彼らが戦えている理由はある。もっともそれは異なる理由だが。
ミック・ユースは〈エンブリオ〉によってもたらされる複数のスキルによって、この状況を切りぬけている。
対して、今こうして槍を振るう彼――ブルーノが戦えている理由はどうか。
それはブルーノ自身がもつ、ブルーノが今までに積み重ねた歴史の蓄積によるものと、〈エンブリオ〉の能力によるものだ。
彼はグスターボ・カレスティア・デ・サンタマリアとして、スペインの片田舎に生を受けた。
そして彼は
彼が学んだのは片田舎でひっそりと続けられていた、廃れかけた古き武術。
槍を用いた実戦重視の殺人技術。
その武術を学ぶものはそう多くなく、彼と同世代の人間は10人いるかいないかというくらいだった。
むしろ多いと言っていいのかもしれない。その片田舎ではその武術を学ぶものが多かったとはいえ、総数にして百程の子弟はいたのだから。
ともかく、彼はそこで武術と言う物を学び続けた。
それは彼が槍を握れなくなるまでの60年の間、ずっと。
自らに教えを授けた師が死に、自分が師となってからもなお。
その年月の蓄積こそが、彼の力。彼の生きた証。
彼の誇る技量は、この〈Infinite Dendrogram〉の世界においても上位に位置するといっても過言ではないかもしれない。もちろん彼以上に頭のおかしい技巧を保有するティアンなど天地を筆頭にそれなりにおおいし、〈マスター〉という枠に限ってもなお彼以上の技巧を保有するものは数十いるかもしれないが。
そして、彼の〈エンブリオ〉の力もまた、この状況を戦いぬく力を彼に与えている。
彼の〈エンブリオ〉の名は【誓血猛犬 クー・フーリン】。
クー・フーリンは犬型のガードナーとして彼の〈エンブリオ〉として生まれた。もっとも上級に至った現在においてはガーディアンとしてカテゴリーが変わったのだが。
そして、クー・フーリンのもつ特性はなにかと問われれば、答えは簡単だ。
それは誓いの力。
それは誓約にして制約にして、成約を行う主をも蝕むかもしれない諸刃の
ケルト神話に曰く、ゲッシュとは各人がさだめた
ケルトの大英雄の名を冠する【誓血猛犬 クー・フーリン】もまたその性質を持つ。
形態ごとに定められた
この1つにして4つのスキルによって、彼はこの四肢からなる軍団をはねのける事に成功しているのだ。
【誓血猛犬 クー・フーリン】のもつ、《
効果自体としては、その特性である誓約強化というものに沿ったものではあるが、その誓約により得られる効果はそれぞれ異なる。
《
獣殺しを戒めた名前の通りに、このスキルは獣……魔獣系のすべてのモンスターの討伐を禁止している。
そしてこの誓約を守ることによって得られる効果は、ステータスの大幅強化。
もっと正確に言うのなら、その効果は『〈マスター〉と〈エンブリオ〉のステータスを「魔獣種を除くすべての討伐合計数÷3 - もっとも討伐数の多い種族の討伐数÷2」の数値分アップする』というもの。
【殺人姫】の《屍山血河》に匹敵する強力な、ステータスの底上げスキル。
この時点で、ブルーノが討伐した魔獣種以外のモンスターの合計は12000近くで、もっとも討伐数の多い鬼の討伐数が1000ほど。
よって、現在のブルーノとクー・フーリンのステータスは共に4000近く上がっている事になる。さらにそこに、彼ら自身のステータスも加わるのだ、この4人の〈マスター〉の中でもブルーノ達は桁違いのステータスを誇っている。
だが……誓約による強化が行われるのと同様に、禁忌を踏むことによるペナルティーも同様に存在する。
《禁戒》全体のペナルティーとして、その犯した禁戒の重さに応じてその禁戒の効果が消滅し、しばらく使用できなくなることに加えて、さらにその禁戒独自のペナルティーが科せられる。
《獣の不殺》の禁戒は……というと、それは同じくステータスに対するペナルティーであり、内容は『すべてのステータスを魔獣種討伐数*1000ダウンする』というものだ。
この時点でブルーノが討伐してしまっている魔獣種の数は2体。どちらも過失と偶然とで彼自身が討伐したわけではないが、倒してしまっていることには変わりはなく、2000ものステータスがお互いのステータスから差し引かれてしまっている。
それでも〈マスター〉と〈エンブリオ〉が共にHP・MP・LUC以外の4種のステータスが4000を超えるステータスを持っているのは十二分に脅威と言えるだろうが。
1つの禁戒によって得られる莫大なステータスを使い、この不利な地で戦い続けている。
相棒であるクーとともに。
◇◆◇
□【剛槍士】ブルーノ
「ミックは……、頑張っているようだな」
自分と同様に、前衛として戦っている、もう一人の相棒を見る。
あちらもこの厄介な状況に苦労しているだろうに、それを分らせないほどに両手に握った剣を振るいながら、進んでいく。
全く持って見事だ、とワシは感心するしかない。
ワシから見てミック・ユースと言う人間には、
今まで何人もの、才能ある人間に教えを授け続けたこの身としては、彼のような人間は一種の希少種とさえいえる。
一を聞いて十を知る、ということわざの真逆。それこそ百を聞かせて一を覚えるといってもいいかもしれない。
ある一点においてずば抜けた才能を持つ桜火や、まんべんなく高い才能を持つローガンとは違う。それほどにミックは武の才能を持ちえていなかった。
だからワシはあいつらと、共に行動しようと思ったのだろう。
いろいろな観点からみて自分と同じ3人の異なる人物と。
「っと、いかんな。今はこちらに集中しないといけないが……、さてどうするか? クー」
この状況下において、感傷に浸る時間などない。
頭を振り雑念を散らした上でワシは、自分とは別方向から縦横無尽に走り回り、手足を散らしている自分の〈エンブリオ〉であるクー・フーリンをみる。
クーもよくやってくれている。
あちこち回りながら敵を倒しつつ突破する手段を模索しているが、てんで解決策が思い浮かびもしない。
いまもなお、敵を倒し続けていることでステータスこそ上がってはいるものの、だからと言ってそれだけで倒せるほど甘くはない。
さて、どうするか?と考えを巡らせていたワシの考えを吹き飛ばすかのように、事態は急転する。
それは百近い、ローガンが呼び出し続けていた悪魔が消え去ったこと。
そしてその悪魔がいなくなった跡をとおって、一体の悪魔が高速で宙を跳びその悪魔の金色のパイルバンカーらしきもので、あの〈UBM〉に直撃を加えたこと。
この二つ。
「やったのです!」
桜火の喜んだ声が聞こえる。
これであの〈UBM〉を倒すことができたと思ったのだろう。
ローガンもまた満悦の表情を浮かべて、この成果を喜んでいる。
だが………喜んでいるのはあの二人だけでしかない。いや、ローガンもまたある事に気がついたかのように、その喜びの表情をひそめている。
前方にいるワシらが喜ばない理由、それはワシらがまだ戦い続けているから。
この手と足からなる軍勢がいなくならないからだ。
モンスターを生み出し続けていた〈UBM〉がいなくなってからもなお、モンスターはいなくならない。
いや、既に呼び出されたモンスターがいなくならないというのはまだわかる。
だが、今もこうしてモンスターが湧き続けているのは、訳がわからない。
その意味を考えようとして、
「気をつけろ! まだあの〈UBM〉は死んじゃいない!」
ミックの一言に気付かされる。
確かに、ローガンの放った悪魔の一撃であの人形の身体を打ち砕くことには成功した。
それは間違いない。身体のパーツはちぎれて……あたりに散乱している。
だが……あれが本体である保証はない。
元より大量の手と足を生み出し続けていた〈UBM〉なのだ。
そしてあの人形の身体は、複数の手が組み合わさってできていた奇形の異形。
もっと早くに気がついてもよかったはずだ。
あれはただの仮初の肉体であると。
だがそれでもわからない事はある。
あの人形の頭上には間違いなく【肢造傀儡 アルヴィニオン】という表記があった。
だからワシらはあれを本物の〈UBM〉だと認識していたのだが。
なら、あれは一体?と考え、
「上だッ!!!」
再びミックの言葉に現実に引き戻される。
ミックの言葉を聞いて、上を見上げた先に合ったのは石の壁。
いや、正確に言うなら数百にも及ぶ石でできた足が、上から降ってきていた。
一体一体が弱いモンスターだといっても、それがこうしてこれだけ降ってきているのなら、それは容易にワシらを殺す一手になりうる。
「《
踊り続けていた桜火の〈エンブリオ〉が天の壁を切り刻み、破壊する。
だが、それだけでは敵は倒しきれない。
桜火の処理能力をはるかに超える数と、桜火の攻撃性能に耐えうるだけの防御力をもった石の壁は、なおもこちらに向かってくる。
「全員耐えてくれ!」
ミックは地面のモンスターを倒し続けながら、こちらに向かいつつある。
しかし、あの壁に対抗することができる手段は持っていないのだろう。
空を睨みながら走り続けている。
こちらに注意を促しているが、あれは耐えきれない。
もしかしたらワシだけは耐える事ができるかもしれないが、他は無理だろう。特にステータスが最弱なローガンはその筆頭だ。
「っくそ! 《速効召喚》“来い”《コール・デヴィル・バタリオン》」
ローガンもまた、100近い悪魔を呼び出している。
だが、本人もこれでは無理だと分っているのだろう、焦った苦々しい表情で敵を睨んでいる。
悪魔たちはそれぞれ飛び立って、石の壁を支えようとするが……どう考えても不可能だ。
それほどに数は多い。
他のだれも、この状況を変える事は出来ない。
だから……ワシらが動くしかない。
「クー!」
槍を振るい、地面からなおも湧き続けてくる手と足のモンスターを倒し続けながら、自分の〈エンブリオ〉であるクーを呼び付ける。
これから行うのは、ワシらの誓いによる
クーの命を代償として行われる、その生におけるただ一度の力。
「GUAAAAA」
数百の地面から湧いて出てくる、モンスターを蹴散らしながらようやくクーはこちらに戻ることに成功する。
数秒と言えど、余計な時間をかけてしまったことに、「遊撃などさせなければ」という思考が邪魔をする。
だが、今それを言っても仕方がない。
もうあと数十メテル、あと数秒という所まで、天を覆う壁は近づいてきている。
クーの背中を踏み台として、ワシは空へ跳ぶ。
わざわざ跳んだのは、ただ一度限りの攻撃を、手と足によって邪魔されたくはないからだ。
踏み台として使用したクーもまた、ワシに続いて空へ飛び………光の粒へと変換されていく。
光の粒へと変換されたクーは、ワシが持つ武器へと集まり、ただの武器であったはずのその槍は、光を放ち始める。
これがワシらの第4の禁戒。『弱武器の使用』によって得られた《禁戒:弱武器使用》の効果。
そのスキルはその武器に新たなるスキルを発現させる。
3つのパターンを持つ、槍による奥義。
今回使用するのは、この状況を打破するための広域拡散型攻撃。
ただし、広域を攻撃することができる代わりに威力はそれほど高くはなく……なによりコストが厳しい。
だが、そうも言ってはいられない。このままでは全員が死んでしまうのだ。
………いや、あの【偽神】ならばどうとでも出来るような気はするが、ワシの勘ではあれにあまり頼らない方がいい気がする。結局頼ることはできない。
だからすべてを込みでこの一撃を放つ。
またただでさえ足りない威力を少しでも上げるために、槍を持つのを腕ではなく、足へと移行させ………
「うぉおおおおおお! 《
天へ向かって解き放つ。
投擲した光り輝く槍は、その槍を起点に赤い幻の槍を周囲にちりばめさせる。
敵が無限の系統樹を気取るなら、こちらも一本の槍から続く無限の系統樹を築こう。
それこそが、ワシらが誓った
それこそが、ワシらが守った
それこそが、ワシらが決めた
一本の槍から続く赤枝の槍は、いま天蓋を穿つ。
◇
その分かたれた槍の枝は、ワシの狙い通りにすべての敵に命中し………轟音とともに瓦礫が散り飛び、光の粒へと変わっていく。
それを見届けながら………武器とそしてクーに内心で別れを告げる。
天に向かって放った槍は、そのスキルの威力に耐えきれずに砕け散り。
槍に力を与えたクー・フーリンは、その力のすべてを使い果たし消えていく。
これが第4の禁戒。
〈エンブリオ〉をコストとすることで、上級職の奥義以上の火力を行使できる魔の槍を生み出すスキル。
この『
今の時点だと『威力500の幻の槍を、500本生み出す』ということになる。
お互いのステータスが上がれば上がるだけ、高い威力の槍を複数生み出すことができるようになる。
なお、このスキルのペナルティは、『一定期間、ジョブスキルを発動できない』こと。
もともとあまりジョブスキルに頼らない、ワシらにはそこまで重くも無い。どちらかというと、ペナルティよりコストの方が重い禁戒だな。
もちろんクー・フーリンは〈エンブリオ〉。ここで消えてもまたふたたび、数日後に合う事は出来る。
だが………それでも一端のお別れはさびしいものだと、胸の内で涙を流す。
それに、〈エンブリオ〉が消えた事によって、ワシにかかるすべての固有スキルの効果も切れている。
さすがに、これ以上戦うのは無理だろうな、と思い見上げた先には異形がいた。
それは一体の〈UBM〉。
もちろん新たなる〈UBM〉ではなく、今まで戦っていたはずの相手。
変わらぬ上に表示される【肢造傀儡 アルヴィニオン】の文字。
しかし、先ほどまで戦っていた相手とはまるで異なる姿かたち。
それは手だった。
見た事も無い材質でできた右手の怪物。
それが………百メテル上の天井に張り付いていた。
「あれは一体」
それは誰の呟きだっただろうか。もしかしたらワシが口にしてしまったのかもしれない。誰ともわからぬ、おそらく全員が共通して疑問に思った事。
その疑問に答えられるものは、誰もいないだろうと思い、
「なるほど、そういうことでしたか。道理でモンスターの生体をうまくとらえられないと思っていましたが………、迷宮の中ではなく領域外に設置されていたという事ですか」
すぐに答えが返ってきた。
「どういうことだ? お主は何か知っているのか」
「ええ、まあ。ご存知の通り、迷宮作成時には周囲からモンスターを集めて、各階層に設置する機能があります。しかし、なにかしらの原因で、あの〈UBM〉のみ100階層ではなくさらにその上………天井に設置されてしまったのでしょう。……いえ、気をつけていたつもりでしたが、私も【クリスタルエラー】の影響にさらされていたということでしょうか」
そこまで喋ると【偽神】は、「ともあれ」と続けて言い放つ。
「疑問はそこまででいいでしょう。今はあれをどうにかするのが先決ではないですかね? 私も最初は弱い〈UBM〉かと見誤っていたのですが、あれは十二分に伝説級を名乗るにふさわしい相手です。よそ見をしている暇などありませんよ………、ほらそうこうしているうちに、あれが崩れ落ちてきます」
あれ?と疑問に思ったのは一瞬だった。
ワシの放った『鏃』によってダメージを受けていた天井が崩落し………そしてそこに挟まっていたらしい、あの奇妙な手も同時に落ちてくる。
「離れろっ!」
ミックの言葉が、この空間内に響き渡る。
豪華絢爛をもようしていたこの闘技場は、もはや見るに値しないほどに崩れ果てている。
そして降りてきていた……落ちてきていた〈UBM〉は指を上手に使って、器用にこの地面に降り立つ。
たしかに……違うと感じる。
あの異形の人形と、この異形の手のもつ威圧感はまるで異なる。
ああ、今なら確かにわかる、こいつこそが〈UBM〉だ!
To be continued
(=○π○=)<クー・フーリン
(=○π○=)<結構バレバレな名前のエンブリオ。
(=○π○=)<外すと強くなる系、パーソナルどうなってんだ枠
(=○π○=)<個人的にスキルの性能を少し盛りすぎかな?とも思うけど、ペナルティとか条件とかいろいろあるし問題ないかな?とも思う。
(=○π○=)<第2の禁戒と第3の禁戒は、あとで。まあこの章で出しますが。
(=○π○=)<とある理論を用いるとやばいことになる〈エンブリオ〉の1つ。
(=○π○=)<最初にこのエンブリオを考案したのは実は5章時点で、その時の第一の禁戒は少し違っていた。
(=○π○=)<1つめは『ジョブについてはいけない』だった。
(=○π○=)<それで設定としては『いかなるジョブにもつかない、レベル0の超級にして、技巧で強い奴らをたおす”技巧最強”』というものだった。
(=○π○=)<被りまくりどころではない。なので没に。まあ設定はおしいのでこうして流用していますが。