(=○π○=)<タグではずいぶん前に消していたのですが、こちらでも……
(=○π○=)<嘘ではないけど……な部分だったのでタグ指摘されたくなかったので早めに消したんですが、こちらも残しておくのは止めた方がいいという結論に達したので……
エピローグA 登りきった先は、明と宵の狭間
26 day
□【悪魔騎士】ローガン・ゴールドランス
手と腕の怪物が消えていくのが見える。
大きな右手の怪物が光の塵になっていくのが見て取れる。
あれがミックの切り札の一つなんだろう。
理屈こそわからないが、あの切り札によってあの〈UBM〉を倒し、そして周囲の雑魚モンスターをも一掃した。
……それが悔しい。あいつに出来て俺に出来なかったことが。
やはり、今の俺には強力な一撃を与える事ができる手段を持っていないのは、弱点と言えるだろう。
それを解決するための手段はいくつか考案しているが、それでも他の方法を模索するのは悪手ではあるまい。
そう思いながらMVPを獲得したであろうミックの方を見る。
《ボムトルーパー》によって地面を破壊したせいで、ミックは下に向かって急降下している。下の階層であるはずの99階層を含めていくつかの階も、落盤に巻き込まれて大きな穴をあけている。
いくらミックが複数のスキルを併用することによって、高い実力を誇っているとは言っても、あの高さから落ちたら無傷では済むまい。というよりデスペナに陥るだろうな。
MVPを取られた腹いせに死んでもらうというのも一興かもしれないが………
「行け」
腕を振りおろし、悪魔たちに指令を下す。
下す指令は当然『ミックの救出』。
さすがに知人を見殺しにするのは、気が引けるからな。
俺の命令を聞いた《バタリオン》はミックがいる真下に向けて飛ぶ。むしろ落ちるという雰囲気だが、まあそこは気にはしない。
ミックが落ち始めたのは数秒前とはいえ、タッチの差で結構下まで落ちていっている。
ステータスアップ系の魔法で強化しようにも、最初の《スカウト》による特攻攻撃の際に、なけなしのMPを総動員して使ってしまったため、俺の現在のMPは空に近い。
MPを使う事なんてそうそうなかったから、俺が持っているMP回復用のアイテムも最下級の物でしかないから、瞬時に回復できない。
このままでは《バタリオン》がミックに追いつく前に、ミックが地面に激突してしまう気がするが、どうしようもないな。今からAGIを得意とする《スカウト》当たりを呼び出そうとしても、時間が足りない。その前に地面に激突してしまうだろうな。
さて、どうしようか? と俺は考えて、
「ふむ、これはすこし緊急事態ですかな? いいでしょう。このままではミック君が死んでしまいかねません。よみがえらせるのも難しいでしょう。ここはひとつ私が手助けをいたしましょう」
ルパンがひとつの手段を使用する。
「《偽典:スペリオル・アジリティ・エンチャント》」
それは単体のAGIを大幅に上げる事が可能な、【付与術師】系の超級職のスキル。
強化する割合は、元の数値の10倍。
元々AGIを《偽証》によって3倍化させていたのもあって、現在の《バタリオン》のAGIは3000に至る。
素の3倍化《スカウト》に匹敵する
数十メテルを落ちた時点で、俺が差し向けた《バタリオン》による悪魔の手は、無事にミックに届くことになる。
次の階層まであと何十メテルしかない地点まで落ちていたので、素の《バタリオン》ではミックが地面にぶつかるまでにとらえるのは不可能だったな。
ミックを捕まえた《バタリオン》は、そのまま空を飛び悪魔の背に捕まる俺たちの元へ向かってくる。
「助かったみたいですね。よかったのです」
モンスターを倒し終えたからだろうが、空を飛ぶ悪魔の上を器用に踊りながら跳んでいた桜火は踊るのを止め、おとなしく悪魔の上で待機をすることにしたようだ。
俺は桜火とは闘技場で戦ったことがない。あくまで桜火が戦ったことがある姿をちゃんと見たのは、闘技場におけるいくつかの試合とこの塔に上ってからでしかない。
闘技場で戦っている時には、さして疑問に思う事も無かったが、あいつの能力は一体どれくらいなのか、はっきりいって想像したくも無いが、あんなアクロバティックな戦い方ができるくらいだ、相応なのだろう。
「ふぅ、やっと勝てたな。あれが〈UBM〉か、今までに戦ったことがある敵とは一段も十段も格が違ったわな。にしても今回は疲れ果てたわ、クーも元に戻るまでに結構な時間はかかるだろうし、しばらくはのんびりさせてもらおうか」
「ええ、皆さんお疲れ様です。百層からなる塔を登りゆき、最後にこうして物語の最後を飾るにふさわしい強敵を倒すことができた……、自殺などという手段を使わずにあなた方はこうして
ブルーノはあの槍の投擲で力を使い果たしたのか、あれ以降悪魔の腕の中で疲れ果てたようにおとなしくしている。
ルパンの奴もおとなしくしていた分、にこにこと笑顔を輝かせながら、こちらに近寄って来る。
さっき、いきなり声をかけられた時も思ったが、やっぱりこいつ空中を歩けるのか。どうやっているんだと聞きたいところだが、聞いてもどうせ『手品です』としか言わないのは目に見えているがな。
「おおー、すごいのです、ルパンさん。どうやって空中を歩いているのですか!」
「ふっふっふ、手品です。ネタばらしは禁物にお願いいたしますぞ」
……やはりな。
短い付き合いだが、なんとなくわかったぞ。こいつ人を驚かせたり、はぐらかしたりするのが好きだ。
奇術師というのなら、そういうのも普通なのか?
「あ、ミックさんが戻って来たのです」
悪魔の上に器用に正座していた桜火が、下から悪魔に抱えられえ上がってきていたミックに指をさす。
……さて、これでミックを救出することに成功したわけだが。どうしようか。
特典を手に入れた祝いに、背中を強くたたいても文句はないだろう………、いや俺のステータスじゃあいつが痛むレベルは無理だろうな。
仕方がない、普通に迎えるか。
「お疲れ様です。おめでとうなのですミックさん」
「ええ、おめでとうございますミックさん」
「よかったなミック」
「………おめでとう」
『やはり、許せませんね。主様が手に入れるべき、アイテムを横からさらうなど』
(……うん。俺が納得したことを蒸し返すなよなシュテル)
ミックは手を振り、俺たちに返事とする。
「おお、みんなありがとうな。ようやく〈UBM〉を倒せたな」
「ええ、おめでとうございます。さて、こうして悪魔の上に立っているのも大変でしょう。私が凱旋の路を築くとしましょう、起動《偽典:
ルパンがそう言ったかと思うと、空中にたつルパンは杖を自分がたっている空間に向けて叩く。
杖に叩かれた空間から放たれる波紋は、虹色に輝き地上の崖にまで光が伸びる。
虹色の光によってできたもの、それは……
「わー、綺麗なのです。これってもしかして橋なのですか?」
「ええ、そうでございますとも。虹を生み出し、その虹を通り道とするように形成するスキルであります」
「ほぅ、虹の橋か。北欧神話のようじゃの」
「……ふむ、そのような物語があなた方〈マスター〉の世界にはあるのですね」
「これってもう降りれんだよな? っと」
ミックが悪魔の腕の中から抜け出して、虹の橋の上に立つ。
おー、と感嘆の息を漏らした後、つま先でコンコンと虹の橋をたたくが、それで壊れることはなさそうだ。
桜火はそれを見て、「私も」と悪魔の上のから飛び降りて、橋の上に飛び降りブルーノもそれに続く。
俺も、悪魔に抱かれているのは心地が悪い。飛び降りて他のやつと同じに虹の橋に降りる。……少しだけ心配したが、無用だったな。
「ふむ、みなさんお気に召して下さったようで、よかったです」
「ふぅ、やれやれ長い道のりだったな。もう敵が襲ってくることもあるまい、シュテル合一形態を解除していいぞ」
『よろしいのですか? ……かしこまりました。アポストル形態に移行します』
ルンペルシュティルツヒェンの返事とともに、俺の身体から光の粒が漏れたかと思うと、その粒は人の形となる。いうまでもなく、ルンペルシュティルツヒェンがアポストルの形態になったということだな。
「お疲れ様です主様、長い道のりでしたね」
「ああ、そうだな。登り始めて大体一日くらいか、リアルだとおよそ8時間といったところか」
「あー、そういやもうそんぐらいたっているんだよな。道理でさっきから【空腹】や【尿意】がずっと鳴りっぱなしだったわけだ。……こんな状態でよく〈UBM〉を倒せたな―俺」
「ワシもそうだな、やはり時間が結構たっているから、相応に覚えるか」
「はー、私も早く帰りたいのです」
全員そんなに、【空腹】や【尿意】がひどいんだな。俺はそこまででもなさそうだが。
そういうアナウンスが出た覚えがないしな。
「ああ、もう大丈夫ですよ。この橋を登りきった先は、【職害魔晶 クリスタルエラー】の影響圏外ですから。そこからならもしかしたらあなた方の世界に戻る手段を使えるかも知れませんね」
「本当なのですか? それじゃあみなさん急ぎましょう!」
ルパンの言葉を聞いて桜火が、道を走っていく。
そこまで急ぐほどか? とも思うが大変なのかもしれない。女の子らしいしな。
(にしても、速いな。桜火のAGIは確か1000越えていると言っていたな? 【舞剣士】なんてAGIが高くなさそうなジョブについているというのに、そこまでAGIを出せるという事は〈エンブリオ〉の補正が随分と高いという事か)
(そうおっしゃらないでください! 主様には私がいますよ!?)
なんかルンペルシュティルツヒェンがすごい迫力に満ちた顔で、こちらを見ているんだが………
理由は大体想像できるから、放っておくとするか。
「おー、急ぐな桜火。そんなに厳しかったのか……」
「ミック老婆心ながら忠告しておくが、女性の前でそういうデリカシーの無いことを言うのは止めておいた方がいいぞ。ワシも若い頃にそういう事を妻の前で言ってしこたま殴られた覚えがあるからな……」
「「「うわー」」」
妻の暴力性に驚けばいいのか、ブルーノの無神経さに嘆けばいいのか。
……夫婦なら問題なさそうな事案だろうが、気にしたらいけないかもな。
すくなくとも俺にそういったのはまだまだ早いだろうしな。
「おーい、皆さん速くー。景色が綺麗ですよー」
「……まあ急ぐとするか」
虹の橋を登りきった先で、桜火が手を振ってこちらに合図をしている。
景色と言っても、荒野でしかなかったと思うが……、ミックのいうとおり急ぐとしようか。
空が見えてくる。
男5人で黙々と歩きながら、俺は開いている〈クリエラ渓谷〉の
もう結構遅いのだろう。空を彩るのは、深い青と紅に両断されていた。
渓谷から見上げる空の景色は、虹の橋を登っていく毎に広がっていく。
そして、塔と虹の
「へー、綺麗なもんだな。スクリーンショットにとって、キャロルたちに見せてやろうっと」
「ううむ、いい景色だな。婆さんと一緒に見たくもあったが、仕方がないか」
「月は東に、日は西に、ですね。終幕を飾る景色としては、最高峰と言えそうですね主様」
群青色に染まる東の空には、青白く光る真円の満月が浮かび。
緋色に染まる西の空には、橙と赤で輝く太陽が燃えている。
黄昏時としても絶景といえる、その光景はたしかに桜火の言う通り、綺麗で急がせたくもあるだろう。……【尿意】がひどかったからじゃないんだな、ブルーノの勇士?を聞いた俺が桜火にそれを訪ねる事はないが。他の奴ならともかく、俺相手ならPKも辞さないかもしれないしな、あいつ。
「やーっと、来たのですね。遅いですよ」
のんびり歩いてはいたが、そこまで遅くはなかったとは思うんだがな。
「ふむ、お待たせしましたな。いやいや、老骨には長旅は疲れる物でしてな」
「老骨って……、見たところルパンの歳って40位だろ?」
「はは、年齢は内緒です」
ルパンはシルクハットを深くかぶり直して、持っていた杖の先端を唇にあてる。
言う気はないという事か。正体不明、年齢不明で結構怪しい気はするが、まあ悪い奴じゃなさそうだしな。
「さて、地上に戻ったわけなんだが……、ここでお別れと言う事でいいか?」
「異議なーし、なのです。さすがにここから皇都までもどるのは、骨が折れる所じゃないのです」
「クーもいないしな。徒歩だとあそこまで戻るのに数十時間掛かるだろう。走れば桜火は数時間まで短縮できそうだがな」
走ることになったら、俺がいつまでたっても戻ることができなくなるな。
そんなことになる位なら、普通にログアウトするぞ。
「そういえば、クーちゃんの姿が見えないけどどうしたのです!? もしかして死んじゃったのですか?!」
「死ん……、まあそういう事になるか。ワシのスキルの一つに〈エンブリオ〉であるクーをコストにしなければならない奴があるからな」
「そんなぁー」
スキルの発動に〈エンブリオ〉のコストが必要なのか、ずいぶんと重いな。
俺の知る限り〈エンブリオ〉自身をコストとして指定しているのは、【アマノジャク】くらいでそれも必殺スキルだったからな。
だが……いくら重くても、闘技場で使用する分には問題ないのか。俺と同じでいくら重いコストでも踏み倒せるのは強いな。
やはり――
「とはいっても、クーの奴も〈エンブリオ〉だし、数日経てば復活するぞ?」
「うぅ、クーちゃぁぁん。……はぁ、それならまた会える時を待っているのですぅ」
考え事をしていたら、桜火が項垂れているな。
そんなにあの犬が気に行ったのだろうか?
塔を登り始める前の小さい形態だったならそれもわからなくもないが、あの大きな犬の状態で気にいるのはどうしてだろうか。……考えてもはじまらないな。
そう思って、桜火の方を見ていたら、気持ちの整理がついたのか顔を上げてミックの方を見て口を開き、
「そういえば、ミックさんが手に入れたMVP特典ってどんなのです?」
そんなことを聞いた。
脈絡がないいきなりな質問だったが、その質問は俺にとっても有意義だ。
なんせ、この時点で俺の【魔式手甲 ゲーティア】と同等かそれ以上の性能を誇る、MVP特典を手に入れたのだ、どんな能力を持っているのかは聞いておきたい。
ナイスだ、と桜火に心の中で呟きながら、ミックの返答を待つ。
ミックは、「ああ、そういえば」といいながら、アイテムボックスからひとつのアイテムを取り出す。
あれがMVP特典なのだろう。だが、そのアイテムの形は……
「……一応、これがMVP特典だな」
「……え? なんなのです、それは。ローガンのとはまるで別物なのです」
「そんなものが、MVP特典なのか?」
「ふむ、面白い特典が出ましたね。ええ、《鑑定眼》をもつ私が宣言しましょう、間違いなくこれはMVP特典であると」
「……鞄ですねこれは。武具防具らしい主様の【ゲーティア】とはまるで別物ですね」
そう背負う事ができる黄土色の鞄、またはリュックの形をしていた。
大きさは一昔前のゲーム機体である、任天堂switchを3つ4つ程重ねた程度。
小さめの背負い鞄というところか。
「えーと、名前は【肢造背嚢 アルヴィニオン】だな。それで、えーとスキルはっと……、はぇ?」
特典武具を左手に持ちながら、右手でウインドウを開き特典武具の性能を見ていただろうミックが、変な声を上げて固まる。
「どうしたんですか。ミック・ユース、主様達に性能を速く言ってほしいのですが」
「……あー、いや。変な特典武具だと思ってな……、なんて言ったらいいのかはっきりいってこいつの使い道が分らないぞ」
使い道が分らない?
特典武具は、討伐MVPに対してアジャストされる。
討伐者が使えない特典武具なんて出るはずも……、いやそうか。
あの【犯罪王】のやつが手に入れた効果が分らない【再誕器官 グローリアε】に関しても、【犯罪王】のやつでも使い道が分らないことがあった。
【黒纏套 モノクローム】のようなアジャストしているけれど使いやすいものではないのかもしれない。
アジャストはしているのだろうが、使い道が分らないという事はあり得るのか。
「スキルはえーっと、《クリエイト・ザ・イリーガル・オブ・ユース・ハンド》だな。というかそれしかない。スキルの効果を見る限り手を生み出すスキルみたいだな」
あの〈UBM〉が使っていた、手と足を生み出すスキルか。
確かにあのスキルは強いのかもしれないが、前線で戦う事を求めるミックにとっては不要かもな。
「へー、そんなMVP特典もあるのですね。もっと強いものだと思っていたのですが」
「うーん、見た限りあんまり強いって感じじゃないな。まあ仕方がない、外れだと思って諦めるさ」
ミックはそう言いながらも、特典武具を背負い装備するみたいだが。
まあさすがに特典武具をしまうほど装備が充実しているという事も無いだろうしな。
にしても………
「いや、これ俺に似合わないよな?」
ミックも自分で言っているが、あまり今のミックにあった服装ではないな。
特典武具は、装備した場合の服装としてアジャストまではされないからな……、もっともそれがされていればフィガロや先々代【龍帝】のような存在は生まれなかっただろうが。
「あー、まあそれに合った装備を手にいれればいいと思うのです……」
「それ似合ってないってことだよな……」
「ふむ、特典武具が必ずしもMVP獲得者にとって、似合いの装備が出るとは限りませんからな。ですがMVP特典は優秀です、手に入れたのなら例えに合わなくても装備した方がよろしいかと」
中には、全身暗黒装備の【聖騎士】とかいるしな。6章時点だと【斥候】だったが。
俺もこれから特典武具を手に入れていくのだろうが、なるべくちぐはぐな装備は勘弁したいな。
「おっと、リアルからの呼び出しだな。そろそろいいだろう、ワシはそろそろ帰らせてもらうとするぞ。それじゃあな、あと今日は助かったぞルパン。またいつかお礼をさせてくれ」
「おう、じゃあな。また決闘場で」
ブルーノが別れのあいさつをしてから消え去る。
用があったのか、どうやら急いでログアウトしたみたいだな。
「さて、これでお別れなのですね。私もそろそろログアウトさせてもらうのです……結構さっきからアナウンスが激しくなっていますしねー。ルパンさん有難うなのです」
「そうだな、それじゃ俺も帰るぜ。またなローガン、使い道よく分からないけど特典手に入れたし、すぐにお前のとこまでいってやるからな」
そういって、残りの二人もログアウトする。
後は俺だけか。
ログアウトせずにこのまま帰るのは……、ポイントの無駄だな。
経験値も低いし、剣が無くなった以上雑魚の相手をする意味も無いか。
「さて、俺たちも帰るぞシュテル」
「はい、かしこまりました主様。それではルパン・ジ・アシッド、今日は主様達の為に有難うございました、礼は言わせてもらいます」
「ええ、こちらとしても理由はあったので構いませんとも」
さて、それじゃあ俺たちも帰るとしようか……
いや、その前にひとつ聞いておきたいことがあったんだ。
「そういえばルパン。ひとつ聞いておきたいことがあったんだがいいか?」
「ふむ? 一体なんでしょうか。私に答えられる事でしたら、お答えいたしますが?」
「お前が造った塔の事だ。ルパンは塔の中でなら【クリスタルエラー】の影響は受けないっていっていたよな? だが最後のあの〈UBM〉との戦いで、あのとうの上層部は崩れ去っている。
もし、あの塔の内部でのみ【クリスタルエラー】の影響が及ばないというのなら……塔の上層部が崩れ去った時点で俺たちも
あそこまで上なら影響を受ける規模も少ないかもしれないが、だがあの時点で俺のスキルもそれに他の奴のスキルも、影響を受けたような風には見えなかった。
他者接触状態が続いていてログアウトができなかったのだから、俺たち全員が【クリスタルエラー】の影響圏内にいたのは確かだ。
だからわからない。俺たちはどうして塔の上層部でもジョブスキルを発動できたのか」
一息で捲し立てる。
あの塔の上層部で、ブルーノの一撃で塔の上部が完全に崩壊した時点から感じていた違和感。
それがどういう意味なのかを尋ねる。
結局俺たちはどうもせずにこうして帰ることができた時点で、こいつが何かを企んでいたわけではないというのは分る。
それにあの時は他の事が気になっていたしな。ミックのMVP特典とか。
だが、こうして尋ねる機会が生まれたなら聞いておきたい。
俺の質問に対して、そんなものが出てくるとは思わなかったのだろう。
ルパンが少し息を詰まらせる。
だが、「いいでしょう」とため息をはき杖を持ったまま、こちらに向かって器用に拍手をしてくる。
「ええ、コングラチュレーション!! ええ、その通りでございます。確かにあの説明は多少なりとも嘘をはらんでいました。しかしあなた方をだますつもりではなく、あくまでもこちらが言いたくない事実を隠そうとしただけという事は理解してもらいたい」
「……それはどういう事なのでしょうかルパン・ジ・アシッド。なぜわざわざそんなことをして主様達に隠し事をしたのか尋ねたいのですが?」
やはり、俺の考えはあっていたのか。
シュテルが言う通りに、俺もその内容に対して尋ねてみたいな。
「ふむ、仕方がありませんな。私にも隠さなければならないことがあるので、言える範囲でしかありませんが、それでもよろしいならお話しましょう」
「構わない」
「さて、まずあなた方が他の世界に飛ばされない理由ですが。それはひとつのスキルが影響しています。言うまでも無く〈イレギュラー〉と呼ばれる〈UBM〉【職害魔晶 クリスタルエラー】のスキルです。
その固有スキルの名は《ミリオンズ・エラー・ハンズ》というもの。
そのスキルの効果は見えない百万の手を用いて相手に『エラー』を送り込むという物ですね。
三神の手によって、【クリスタルエラー】は封印され、《スキルエラー》の効果は大幅に落ちました。実を言うと、地底深くならともかく……20層位まで登った時点で《スキルエラー》の影響圏外からは逃れられていたんです。ですが、【クリスタルエラー】には遠方に対してスキルを送り込むことができるスキルがありました。
見えない手で触れた相手に『エラー』を送り込むという性質上、触れられない相手にはスキルが意味をなしません。実際【覇王】はすべての腕をたたき落とした上で、【クリスタルエラー】に対処していました。
ですが、残念ながら私にはその方法が使えません。いえ、そういう事ができるジョブ使いを見たことがあるのならば可能でしょうが、私の今生においてそう言ったジョブを持っている人は見掛けたことがないものでして。
なのであなた方に対して私が行って手は一つです。
それは影響を受けたジョブスキルを、あなた方のスキルの影響を行わないように元のスキルへとチューニングをすること。それができる方法を私は所有していました」
そこまでいってルパンは息をつく。
ルパンが話した内容は……まあ、わかる範囲のものだ。そう言ったスキルなら俺たちに効果が及ぶし、ルパンがそれに対処していたというのなら、塔が崩れ去っても俺たちに何の影響も無いからな。
「これが真実です。私が言いたくなかったのは、『エラー』を中和できる方法を取得しているという事を言いたくなかったからですね。できれば塔の力で効果が受けないということで納得してほしかったのですが……、仕方がないでしょう」
そういうことだったのか。
疑問が無いわけではないが、これ以上の事はルパンが言うこともないだろうな。
さて、聞きたいことも聞けたしそろそろ帰るか。
「そうか、わかった。それではなルパン、今日は“自害”を選ばすに済んでよかったぞ。それじゃ帰るぞシュテル」
「はい、主様」
そうして俺はメニュー画面から、『ログアウト』を選択し、この世界から消えうせる。
かすかに「私も助かりました」という言葉を耳に残して。
◇
「さて帰ったな」
〈Infinite Dendrogram〉の世界からログアウトして、元の現実世界に戻る。
このまま、ログインしたいが………
その前に、トイレとご飯を済ませないとな。
そこまでしたいわけでもないが、今やらずにログイン中にしたくなったら目も当てられない。
大量に買い込んでいた、カップラーメンから適当に一つを選び、ポットのお湯を入れて、出来上がるまでの3分を待つ。
この空いた時間で、トイレに行っておこうか?
と、思った俺はトイレに行き、手を洗い食事ができるようにしておく。
ふと、この現実世界における疑問点の一つが沸く。
それは、この家に住むことになってからずっと疑問に思っていた事……、それは!
「なんで、この家は鏡の類いがないんだよ! それも洗面所を含めてさぁ!」
いや、他の部屋に関しては神の奴が用意し忘れただけというのも、わかるが。
さすがに洗面所に鏡が無いのは、家の不都合だろう。
すこしだけここのオーナーである椋鳥修一に、修理の依頼を出したくはなったが、特に使う物でもないし、金はそこまで余裕がない。
一応、敷金・礼金・月々の家賃に関しては振り込まれているようだが、俺に用意されていた口座にはそこまで多い額が入ってなかった。
それこそ、毎月の〈Infinite Dendrogram〉の費用を払い、3食分のカップラーメンを買いこめば、それでお金の大部分が消え去るほどだ。
多少の金の余裕はあるが、だからといって使わないモノに対して金を掛けたくはない。
「まったく、ここは高級なマンションじゃなかったのか……、とそろそろ3分か」
いつまでも洗面所の前に突っ立って文句を言っても仕方がない。
俺は洗面所から抜け出して、キッチンに向かい、カップラーメンのできを確かめる。
「うん、ちょうどいいな。やっぱりラーメンは美味しいな」
自分の部屋に戻りながら、カップラーメンを食べながらパソコンに向かい〈Infinite Dendrogram〉の情報が乗っているサイトを見る。
基本的に俺はずっとログインしているからな、こういう機会で情報を集めておかないと。
そうしていくつかのサイトを見回って、ほしい情報のいくつかを集める。
一番欲しいのは超級職や〈UBM〉の生息区域の情報なんだが、さすがに今の段階でそういうのは出回っていないな。
そうして、食事の後片付けをした後、俺は再びログインする。
自分が目指す物の為に。
To be continued Episode Ⅲ-B
(=○π○=)<長かったですが、これで3章A終了です。
(=○π○=)<ええ、Aですとも
(=○π○=)<いくつかの小話をはさんでから3章Bに続きます。
(=○π○=)<………なお、この話しの後半に出てくる設定は後付けです。
(=○π○=)<6話でやらかしてしまったので、それの修正後の設定ですね……
(=○π○=)<幸いなのは、全体的には問題ない設定と言う事ですね。元の設定でもこれは可能でしたし
(=○π○=)<大幅に変わったのは、【クリスタルエラー】が強化されてしまったくらいです
(=○π○=)<それと、6話に「ああ、それと地上に上るまでは、【クリスタルエラー】の影響圏内であることには変わりないので、おそらく地上に出るまではあなた方は他の世界に飛ばされることはないでしょう」という科白を追加しました。
(=○π○=)<ログイン時間も含めて3章Aは結構見直すことが多いなと思いました。
(=○π○=)<今度からこういう事がないように、これからもがんばっていくので、お付き合いいただければ。