閣下改竄   作:アルカンシェル07

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(=○π○=)<閑話だから、7000字程度で終わるだろう……

(=○π○=)<そんな甘い考えでした。

(=○π○=)<書いてみたら普通に1万を軽く超えてた

(=○π○=)<なんで分割です

(=○π○=)<できれば今日中に連投したいけど、どうだろうか? まだ書いている途中なので……


閑話1 悪魔剣・上

閑話1 悪魔剣・上

 

33 day

 

□〈エディア丘陵〉 【悪魔騎士】ローガン・ゴールドランス

 

 木々が生い茂る小高い丘の中腹。

 俺は48の悪魔を放ちながら、狩りをしていた。

 狩る標的は一種類のモンスター。

 この地に到着してから、十時間程かけてモンスターを討伐し続けている。

 これまでに討伐した目当てのモンスター総数は90程度、目標にはまだ少し遠いがそこまで遠いわけではない。

 あともう少し、と思いながら悪魔に令を放つ。

 放つ命令は、これまでにも何度か放ったもの。「猪を追い立てろ」という悪魔を猟犬とした狩りの命令。猟犬代わりの《バタリオン》にモンスターに攻撃しないように注意させつつ、俺の方にモンスターを誘導するように、という命令。もっともそこまで詳しい命令を出すことはできないので、ちょくちょく《バタリオン》にやられるモンスターを何度か見たが、さすがにそれは仕方がないだろう。

 そして今こうしている間も、《バタリオン》という猟犬に追い立てられ、こちらに向かってくる一体のモンスターを見る。

 

 「BOAAAA」

 

 猪突猛進という四字熟語さながらに、猪がこちらに向かって突進してくる。

 猪の頭上に浮かんでいる【リトル・アーマー・ボア】という表示を見ながら、俺は剣を構える。

 持っている剣は【ビギナー・ブロードソード】と呼ばれる、最初に手に入れられる武器で、その性能はレベル10程度の【剣士】が使うようなひどい性能の物だ。

 だが……仕方がない。

 俺にはこれしか扱えない。何よりもステータス面において、現在の俺は強力な武器を保有することを拒まれている。

 もしくは、もっと強力な武器に目を向ければ、それを解決することもできるだろう。

 だが市販されている武器に、俺が望む性能の物はなにひとつとしてなかった。

 確かに俺が装備できる、装備攻撃力が高い武器はあったが……、そんなものは必要としない。

 だから俺はここにこうしている。

 本来の俺の適正レベルである102よりはるかに低い、適正レベル10程度の雑魚モンスターを相手に。

 

 その理由は二つ。

 自分が望む性能の武器を、オーダーメイドするためと。

 自分の欠点のひとつである、近距離戦闘能力を改善するための手段の一つとしてだ。

 

 「はぁあっ!」

 

 両手に持った、剣を振るう。

 狙うのは当然、こちらに愚直に向かってきている猪のモンスターの首めがけてだ。

 俺のSTRは低く、武器攻撃力も拙いが……

 それを覆すのは簡単だ。

 

 「BUAAAAAA」

 

 猪の猛突進を横にサイドステップをしてよけながら、同時に両手に握った剣を思いっきり横に振るう。

 真っ当な剣の使用方法を考えるならば、バットを振るようなフルスイングは本来の剣の使用方法とは外れているだろう。

 使用方法の違いを知りながらもなおこういった戦いをしているのは、自分のステータスの低さと技巧の低さを補うため。

 

 〈Infinite Dendrogram(このゲーム)〉では、攻撃力を生み出しているのはステータスの多寡だけではない。俺たちの世界と同様に如何に筋力が高くても、触れただけで敵を吹き飛ばすなんてことはできはしない。

 高い威力は、それをともなう物理の法則をもってなされる。

 攻撃の速度、力の伝導。これらを上手に出すことができるのなら、ステータスを活かした高い威力を出すことができる。逆に言うのなら、そこをうまくコントロールできるのなら相手のHPを1にする手加減()等ということもできるが、それができるのは一部の頭のおかしい技術を持った連中限定だろう。

 俺がフルスイングをしている理由はそれに起因する。簡単に言うのなら、要は威力がほしかったのだ。

 大半の〈マスター〉は、STRのすべてを威力に変換できない。その中でSTRのすべてを威力に変換できるのなら、大抵の下級より威力を出せるはず、という確証のない理論を試してみていたのだ。

 

 「BUWOOO」

 

 ……そう思って、試していたのだが……

 

 (やはり、これでは無理か……)

 『見た目は、ダメージを与えられていないように見えますね。おそらく全力で振った分、うまく相手に当てられなかった、というところでしょうか?』

 

 ……おそらくそうだろうな。

 全力で振るったフルスイングは、猪に当たりこそしたものの、敵の鎧じみた毛皮と皮膚に弾かれて、鉄と鉄がぶつかりあった甲高い音を奏でるだけに終わってしまっていた。

 俺の攻撃力が、あの【リトル・アーマー・ボア】の防御力を貫通出来なかったわけじゃない。

 全力で振るった所為で、高速で突っ込んでくる猪にうまく当てる事ができず、相手の毛皮と皮膚の上を滑って弾かれただけ。全力投球のストレートに対して、フルスイングを行い、バットの上をかすめてファールになる感じか。

 

 (これではだめだな。一か八かに欠ける状況でもないし……、戦士としてではなくいままでどおり【悪魔騎士】として倒すとするか)

 

 俺を中心として猪が楕円を描き、走り続けている。

 おそらくは機を窺っているのだろう。俺の隙を弱点を、モンスターながらに観察している。

 このまま待てば、いつかは突っ込んでくるのだろうが、わざわざそれを待つ必要も無い。

 元より、この戦いはただの素材回収。時間をかけず、ただ作業のように狩るのみ。

 

 「悪魔たちよ……、おいたてろ」

 

 命令を下す。

 《バタリオン》という名の猟犬に、素材元を俺の所に来させるという命令を与える。

 俺の命令を聞いた悪魔たちは、望みの通りに【リトル・アーマー・ボア】の進路に立ちふさがる。

 悪魔たちの役割は、壁か赤い布を持った闘牛士か……

 

 (さて、どう動くか……)

 

 俺が猪の動きを見つめる中、猪は走り続け、悪魔に迫り……

 そして、悪魔を避けるように別の方向へ走る。

 

 (壁の役割か……、なら!)

 

 さらに悪魔を動かす。

 今回使うのは10体程度の悪魔のみ、壁として使うのならそれだけで事足りる。

 猪の進路を悪魔の壁でうまく調整し、猪の進行方向をこちらに向けさせ……

 

 「さあ、こいモンスター」

 

 こちらに向かって、茶色の弾丸が向かってくる。

 【リトル・アーマー・ボア】はその名の通り、END(硬さ)が高めのモンスターだが、決してAGI(速さ)が劣るわけではなく十二分に早い。さらにはあの速度での突進は低いSTR(筋力)を補う威力を生み出している。

 防御は不可能。まともにぶつかれば、死が待ち受けるのは当然。

 回避は無意味。ここで避けても、敵に決定打を与える事は出来ない。

 どちらも選択せずに敵の攻撃をただ座して待ちうける。

 もちろん諦めたわけではない。

 ひとつの狙いを胸に、敵がただ突っ込んでくるのを待つ。

 

 「BUOOO」

 

 敵が近づく。

 10メテル。

 

 「用意しろ」

 

 狙いを悪魔に伝えて、行動させる。

 残り5メテル。

 

 『……2・1』

 

 時間を正確に測れない俺に変わって、ルンペルシュティルツヒェンに時間を数えさせる。

 カウントダウンの対象は、俺の目の前に猪が届くまでの時間。

 そしてそれに間に合うように、悪魔の手が届くように計算された時間。

 俺がすべきことは、カウントダウン終了とともに悪魔たちに号令を与える事のみ。

 ……残り3メテル。

 

 『ゼロッ!』

 「今だ! 行けぇ」

 

 眼前に猪が迫り…………そして同時に横から2体の悪魔が飛び出す。

 当然、瞬間移動など出来るはずもない。この2体はあくまで突進する猪に合わせて、横から攻撃させておいただけの悪魔だ。

 だがそれでも、猛突進していた猪にこの挟撃を防ぐ事は出来なかったようだ。

 奇襲ではあるが、もし失敗したら失敗したで狩りを継続するだけだから、こちらにとって悪い事は何もない。

 何より成功したしな。

 

 「BUOOOOO」

 

 2体の悪魔が押さえる【リトル・アーマー・ボア】が暴れて、大きな鳴き声を喚き立てる。

 暴れてはいるが……この猪の攻撃力は速度あってのもの、それを押さえてしまっているなら、悪魔2体がかりでなら暴れられても問題はない。

 とはいえ、このままにしておいては、いつか抜け出てしまう可能性もある。やることはさっさとやってしまおうか。

 剣を押さえられて地面に伏している、猪の頸部に当てる。

 威力を出すために、剣を上に振りかぶり、

 

 「処刑者のまねごとだ、頸を落いていけ」

 

 俺が放った剣戟は、本来の俺のステータスの低さをものともせず、そして俺より高いはずの猪のステータスの高さを無視して、猪の首を両断する。

 それを為しているのは、俺の持つ特典武具である【悪魔手甲 ゲーティア】の固有スキルである《六法悪書》からなる《融合召喚(フュージョンサモン)》の力。

 これによって俺のSTRは300上昇し、並みの下級戦士系統カンストと同等の攻撃力を誇っている。

これでもそれほど高いわけではないが……それでもこの程度のモンスターを相手にするのならば、問題はない。

 この300という上昇値は《バタリオン》によるものだ。本来なら《クラッシャー》というSTRが高い悪魔をコストにすれば3000という10倍差のSTRを手にいれられたが、今回は費用対効果を織り込み、《バタリオン》で我慢している。

 

 首を絶った猪が、光の塵になっていく。

 周囲を一通り見渡せば、もはやすでに俺が呼び出した《バタリオン》達しかいない。

 もう少し居ると思ったんだが……どうやら《バタリオン》が追い立てる際に無駄に討伐しまくっていたらしい。

 俺の出す命令に悪魔がもっと忠実に動いてくれたなら……いや、命令に対しては忠実だ。だが、細かい命令を下すことができず、ここで思考することもできないのは面倒だな。

 もし広域制圧型に特化するのなら、召喚悪魔の戦技能力向上スキルをもつジョブをとるのもいいかもしれないな。

 

 「狩り場を移すか。あと数十狩れば目標にも達するだろう」

 『はい、このまま南下してしまいましょう。確かそちらにも【リトル・アーマー・ボア】の生息群生地帯があったはずです』

 

  ――よし、では次に行くか。

 

 

 それから、何体も狩り続けた。

 とはいっても、目標自体が近くなっていたためそこまで大量に狩らなくてもよかったが。

 

 ウインドウからアイテム画面を開き、自分の目的とする物が揃っているかどうか確認する。

 ほしかったのは当然、【リトル・アーマー・ボア】のドロップアイテム。

 種類にはこだわらなくていい、という事なのですべて合わせて100のアイテムがあるつまり、あの【鍛冶師】に用意しろとされていた分はこれで完遂した。

 そしてこの戦いでほしかったもう一つのカウントもこれで打ち止めだ。

 そのカウントは……

 

 『主様、これでジョブ条件の討伐カウントが貯まりました。第1条件はすでに満たしているので、これであのジョブに就くことができますね』

 「ああ、そうだな。これで条件成立だ、もっとも何体かは外れてしまっているものもあるかもしれない、帰り際にあと何体かモンスターを倒していくぞ」

 『はい、かしこまりました』

 

 

 ぴちょん、という水滴の音が聞こえる。

 雨が降ったわけではない。そして水道から零れおちたわけでもない。

この水滴音がなった理由は、路上に置かれている机の上にある、杯が倒れこんできた男につられて横倒しになってしまったからだ。

 男が倒れた理由は、おそらくカードゲームで金を賭けて負けた男が勝者に対して暴力を振るったからで、そこからお互い喧嘩に発展している。

 特に俺がかかわる必要も無いので放置しているが、やはりここの治安はひどいな。

 それでも武器をとりださずに徒手空拳のみでやり合っている分、【悪魔戦士ギルド】がある地区よりはまだ治安がましだといえるが。あそこは人死がたまに発生するし、後ろ暗いところがあるギルドも多いからな。

 本来なら、俺はこんな所を通ったりはしない。それなのにここを歩いているのは目的があるからだ。

 【リトル・アーマー・ボア】を規定数である100体分倒し終えたことで、すべての素材を集め終わった俺は、鍛冶師に会うという目的の為にここにこうしている。

 

 「えっと、こっちだったか?」

 

 皇都の裏路地を歩いて行く。

 このあたりは一度、鍛冶師と会うためにミックに連れられて来たことがあるが、それでも曲がりくねった路は、どう行けばいいかを覚えておくのはきついものがある。

 覚えなくても、地図に書き込めばいい……と思うかもしれないが、それができない理由が大小とある。

 小さい理由が、俺が会おうとする鍛冶師が地図などの公開情報に書き込まれることを望まないからだ。鍛冶師とは人がたやすく来れない秘境で鉄を鍛えるべし、という俺には理解できない信念をもっているため、誰かが知ることができる状況を好まない。

 その結果が会員制・紹介のみの、偏屈さじみた鍛冶師の誕生だ。

 俺はミックに紹介されているため、その鍛冶師に武器制作を依頼できるが、他の〈マスター〉がいきなり尋ねても門前払いになるらしい。

 《真偽判定》がつけられたアクセサリーを持っているようで、もし鍛冶師に対して「地図に書き込んだ」とか「誰かに無断で教えた」という嘘を言ってしまえば、その時点でその嘘を言った人間は鍛冶師に追い出されてしまうほどだ。

 

 「はい、確かにこちらであっているはずです。目印から考えても、今はこちらにあると考えていいでしょう」

 

 戦闘を警戒する必要性がないため、アポストル形態になっていたルンペルシュティルツヒェンが俺の独り言に答える。

 やはりこっちでいいらしい。俺だけだと見逃しかねないから、こうしてもう一人の眼を利用できるのは便利だな。

 見逃してはいけないのは、ルンペルシュティルツヒェンも言っていた鍛冶屋につながる目印のこと。

 そしてそれが地図にかけない大きな理由である。

 この鍛冶屋は移動する(・・・・)

 移動と言っても、扉を開けるごとに違う世界(とびら)につながるとかいう、二次元じみた方法ではなく、単純に彼の鍛冶師がログインごとに商売および錬鉄を行う工房の位置を変えるというだけである。

 そんな、ログインごとに位置を変えることができる工房が、普通の家の形式をとっているはずがない。

 理由としては、さほど不思議ではない。その形式を為しているのはTYPE:キャッスルという工房の形をした〈エンブリオ〉を鍛冶師が持っているからだ。もっとも俺が知るのはそこまでで、その〈エンブリオ〉の名前やスキルなんかは何一つとして知らないわけだが。

 目印はその移り変わる工房の位置と鍛冶師の現在地を知るための物。ステータス地点から置かれた目印をたどっていくことで、本命の場所にたどり着くことができるのだ。

 目印はそこまで複雑な物ではなく、今回の目印はハトが描かれた看板に沿って行く、というだけであり、そこまでたどるのは難しくはない。ただし小さく書かれているせいで見逃しかねないというのが難点であったが。

 

 「ん。見当たらないな。どこか見逃したか?」

 「いえ……。こちらであっていたはずですが。ということはここが目的の場所……と言う事になるのでしょうか?」

 

 周囲を見渡す。

 先ほどまで通っていた少し物騒な通りから外れた場所にある、ひとつの踊り場のような休憩地。

 黒と肌色が組み合わさったレンガの足場と俺の身長を優に超す3メテル程の塀。

 裏路地でありながら、特に不自然な所はないように見える周囲の光景………だが、ここが終着点だというのなら、何かしらの仕掛けがあるのだろう。

 ならば後は――

 

 「シュテル、このあたりを二人でくまなく探すぞ。最後の目印が書かれているかもしれない」

 

 はい、というシュテルの声を聞きながら、二人で手分けしていろいろと試してみる。

 地面を構成しているレンガを一つ一つたたいたり。

 塀を造っているレンガを一つ一つたたいたり。

 二人で手分けして3分ほどが経ち……やっと発見することができた。

 仕掛けは塀の一番右下のレンガ。それを軽く押すと、少しへこみそのままにしておくとレンガが元に戻る、というもの。

 間違いなくこれが入口だろう。

 シュテルを呼び戻し、レンガを押す。そうすると岩……レンガが動く音が響き、地面のレンガがいきなり一列分ガコッと下に落ちる。

 

 「おおっと」

 

 それで仕掛けを理解して、邪魔にならないようにシュテルとともに横にずれる。

 そうしている間にも、仕掛けは動き続けている。

 下に下がった一列に加えて、さらに一列さらに一列と順々にレンガが下にさがっていき、そしてできた物は、

 

 「……これは階段ですか」

 

 人一人が通れるかという程に横幅が狭い階段だった。

 レンガひとつ分の幅しかないせいで、一つ一つの段差の幅が足をうまくかけにくい階段としてなら失格な物だろうな。だからといって、ここから先に進まないという手を使う事は出来ないわけだが。

 

 「こんな仕掛けがあるんだな、このドライフには……」

 

 複雑な仕掛けで、秘密基地への入口を開いたこの階段だが、しかしこの入口を造り上げたのは、俺をここに呼び出した鍛冶師ではない。

 俺も詳しくはよく知らないのだが、このドライフ皇国には普通の人が知らない裏道や隠し通路が沢山用意されているようだ。ここもそのひとつ。

 本来なら、始めたばっかの〈マスター〉が知りえる物ではない。もちろんソレに特化した〈エンブリオ〉を持っているというのなら話は別だが。だが鍛冶師が持っている〈エンブリオ〉はそうではないだろう。キャッスル系でそんな能力を持っている〈エンブリオ〉など希少種もいいところだろうし……。

 俺も詳しい回答ができるわけではない。だがジュジュに聞いたところ、昔受けたクエストの報酬の一つらしい。どういうクエストで、どういう報酬だったかは教えてくれなかったが。それで隠し通路の部分に〈エンブリオ〉による工房を築いて、居を構えているわけだ。

 ドライフ皇国という国の地下にどうしてこんな仕掛けがあるのか、という疑問はあるがそれは考えても仕方がないし、先に進むとしようか。

 ルンペルシュティルツヒェンに「いくぞ」と告げ、階段を下りていく。

 

 「暗いな……」

 

 明かりがついておらず、足もとさえおぼつかない。

 地上から階段を十段程度降りただけでこれだけ暗いと、この先どれくらい暗くなるか見当もつかないな。

 アイテムボックスからカンテラを取り出す。使うかどうかわからなくても、簡単な冒険用装備一式は用意してあったからな。

 暗い通路を道なりに進む。そして歩き始めて一分が過ぎた時……その工房が姿を現した。

 

「相変わらず変だな」

 

 思わず感想が口に出てしまう。

 工房である鍛冶師の〈エンブリオ〉、それは奇妙奇天烈な威風の家。屋根だけ見てもサンタクロースが入るような煙突があり、屋根の一部は瓦が積み重なってできた古風な屋根があり、一部の屋根がセリ上がっており……、和風・洋風・中華等々さまざまな国の建築様式が混ざり合ったような、そんな家だった。

 

 「さて、素材は集めた。俺の理念は伝えた。あとは解読不能な箱(シュレディンガー)を開けるのみ」

 

 そして、俺はドアをたたき……

 

To be continued

 

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