(=○π○=)<9時に間に合わなかった……
閑話1 悪魔剣・下
□ドライフ皇国地下 【悪魔騎士】ローガン・ゴールドランス
「俺だ。ローガンだ。ジュジュはいるか?」
一部が障子になっている鉄製のドアをノックしながら、俺がやってきたことを告げる。……が。
「来ないな。〈エンブリオ〉がある以上、
数分またされても、鍛冶師が出てこない。
もしかしたら気がついていないんじゃないかと、再びドアをノックしようと扉を叩こうとしたちょうどその瞬間、
「あー、だれだ……、あーローガンかできてるぞ」
一人の男が扉をあけて出てきた。
20代ぐらいの男で、黒髪黒目の……おそらく日本人。
頭に白いタオルを巻き、上半身裸で、右腕に赤いスカーフの様なものを巻き、下はインナーらしきパンツしかはいてない男。前に会った時は、服を一応着ていたはずなんだが、鍛冶をするために脱いだんだろうか?
「そうか、できているか」
「お久しぶりです。えー、ジュジュ」
「おう、あー、とってくるからちょっと待ってろ」
やはりルンペルシュティルツヒェンもこいつの名前はそう呼ぶか、まあそうだよなキャロルもだがこいつも相当な名前だからな。
ジュジュが工房の中に戻っていく。これから取りに行くのだろう。
俺も懐から普段使っているアイテムボックスとは別のアイテムボックス……、ジュジュに頼まれた素材ひと組をつめた、いらないアイテムボックスを取り出す。
「待たせたな、ほれこれがお前の新しい武器の素体だ。あとは魔改造するのみだな」
戻ってきていたジュジュがアイテムボックスをこちらに渡してくる。
これが俺の新しい武器。その始まりの形なんだろう。
アイテムボックスをすぐに開きたいが……、その前に俺は手に持っていた素材入りのアイテムボックスを渡す。
「これが依頼されていた素材ひと組だ、確認してくれ」
「ほいよ、んむんむ。あーちゃんとあるな。毎度ありー」
ジュジュが確認している間に、俺もアイテムボックスから剣をとりだす。
とりだした剣の名は【無銘】。
今はまだ何にも成れていない、始まりの形だからだろう。
ミックに聞いた限り、この鍛冶師はどんな武器・形であろうと、最初の素体はこの名前で統一するそうだ。名前を考えるのが面倒なのだろうか。
剣の形は典型的な西洋剣。
一応、両手で持てるだけの広さを持たせてもらった剣の柄以外は、普通の剣とさほど変わりはない。
変わるのはこれからなのだから。
剣を軽く振り回す。
「……これ自体に問題はないな。後は頼んだぞジュジュ」
「ああ、任せておけ」
これ自体に問題はない。だから次に進める為、剣をジュジュに再び手渡す。
次に会うときはどんな形になっているだろうか、と少しわくわくしながら。
「どれくらいかかる?」
「うん? んー、まあ一時間程度かねー。それでローガンはずっと待っているのか?」
「……それでもいいが。いや、やはりもう一つの用事を済ませておこう。一時間後までにはここに戻る」
「まー、遅れても数日ぐらいなら、俺が保管して置いてやるけどな。……分った、それじゃ俺は作業に入らせてもらうぞ」
そう言って、ジュジュは扉の奥に姿を隠す。
今から作業に入るのだろう。
先ほどジュジュに言った通り、ここにいても仕方がない。
後はジュジュに託して、俺は先にもう一つの用事を済ませるとしよう。
「これで一つ目……だな。さて後もう一つを手に入れに行くとしようか」
「はい、お供します主様」
◇◇◇
□■
あの少年から手渡されたアイテムボックスを手にする。
同時に、あの少年がいいと言った武器を机の上に置く。
これから行うのは、今まで通りの魔改造武器の作成。
特になんという事も無い、普通の作業。
今回は少し特殊なオーダーが入っているが、それでも問題はない範囲だ。
俺の名はジュジュ………と、今は名乗っている。
《看破》なんかのスキルを持っている連中相手だと、俺の名前がばれてしまうこともあるが、それでもなるべく隠しておきたい。
名前はまだない……というフレーズを使ってみたくもあるが、残念ながら俺の名前はあるし変えられない。
今までに何回も体験したVRMMO。
本当にバーチャルという物を体現できただけの今までの作品と同じだろうと考え、そして失敗した。
好奇心で変な名前をつけてしまったからだ。
俺みたいな名前の〈マスター〉も、同じ境遇の〈マスター〉も、誰一人としていないだろうな……、という確信がある(後日知った話だが、その確信は間違っていたらしい)。
俺がこうして一人で黙々と鉄を鍛えているのも、それが原因の一つだ。適当に付けた名前だと言っても自分の名前を笑われたくないしな。ちなみにここの入会……というか顧客の条件もそれが含まれる。俺の名前を笑うやつに武器を造りはしない、という多分他の人に行ったら何か言われそうな予感がする基準があったりする。
頭を振りかぶる。
たまに思考がずれてしまうのが俺の欠点の一つだ。欠点自体は多いから、特にというほどでもないが。
頭を仕事のモードに切り替える。切り替えると言っても、明確に変わるわけではない。というかそんなことができる奴がいるはずがないだろう、という確信がある(……後日 知った話だが、本当にそういうやつがいるらしい。しかもそれなりの数が)。
俺の場合、よし仕事するぞ! という意識の切り替えのようなものだ。たいていの人間がやっている事でしかない。
まずは、今回の依頼者である、ローガンのオーダーを確認する。
ローガンから頼まれたのは、単純だが難しい、ある一つの事のみだ。
そのオーダーの内容は、『武器性能のすべてを犠牲にして構わない。補正のすべてを投げうって構わない。俺のステータスの低さを補う、または利点を強化する装備スキルをつけてほしい。それと装備制限はジョブレベルで』、と言う物。
武器攻撃力がいらない、とかどんな理由だ? とおもったが、それはローガンが習得したいと言っていたジョブスキルの内容を確認して理解した。
確かにこれなら武器攻撃力はいらないな、と。
補正が要らない、と明確に言うのは珍しいなとも思った。MVP特典のように補正が勝手につく装備はある。だがそれは一部の高ランクの装備のみだ。
ティアン・〈マスター〉問わず、補正を積極的につけられる鍛冶師はそれほど多くはない。
どちらかと言うと、高ランクの武器を造った拍子に勝手に付いてしまう、というレベルだ。
勝手に付かない……とはいっても、だからといって最初からそれを投げ出すのは珍しいなとはおもった。だが彼の
武器につけたいスキル、つけられるスキルはそれこそ無数に存在する。
だが俺は、その中でももっともローガンに合うだろうなという組み合わせをイメージする。
それがローガンに採取してもらった3種類のモンスターの素材。
【ガードキャンサー】【ティールウルフ】【リトル・アーマー・ボア】を数百回倒してもらって、手に入れてもらった素材の……素材。
これらすべての素材を、俺の〈エンブリオ〉のスキルで一つにする。
俺の〈エンブリオ〉のスキルは、第一形態になった時から2つ存在し、そしてそのまま追加されることはなかった。
上級になった現在でもそれは変わらない。
俺が今回最初に使うのは、《千種千器多種多様融合融解一切一助天号炉》。
このスキルがどんなものかと言うと……素材となるアイテムを最大1000個まで選び、それをもとにした新たなるアイテムを創造する、と言う物。
アイテム合成に特化した俺の〈エンブリオ〉の誇る、大多数合成スキル。
これで素材のアイテムを、まとめて新たなるアイテムとして産み出す。
俺はスキルを行うために、手に持った素材アイテムが入ったアイテムボックスを放り投げる。
捨てるわけではもちろんない。投げ入れる先は、いまかいまかと
俺の〈エンブリオ〉が、キャッスルだからだろう。俺のスキルを発動させるためには素材をそれぞれの投入口に入れなければならない。他の〈マスター〉に聞いた限り、俺みたいなタイプは少数みたいだな。
放物線を描いて、綺麗に炎の中に投入された、
炉でこそあるが、これは俺の〈エンブリオ〉の固有スキル。
融解して、形成して……という、鍛冶や合金形成の手順を一切飛ばして、瞬時に完成される。
正確にはすべてのアイテムが瞬時に完成されるわけではなく、素材によって多少時間差はあるが、これくらいなら瞬時に完成可能だ。
《天号炉》の火を落とし、アイテムをとりだす。
とりだしたアイテムの名前は《ararak;dlfajfasl:001》
どうやらこの《天号炉》で制作したアイテムの名はランダムに決まるようだ。変えることはできないし、出来たとしても変えるのは面倒だからしないが。
もちろんこれで終わりではない。
あくまでもこれは一つの素材を造ったにすぎない。
素材をさらに加工しなければならない。
次に行うのは中枢となる機械部品の製作。
もっとも、さほど難しいものではない。
俺の〈エンブリオ〉は合成特化で、俺のジョブは【鍛冶師】。
機械を制作できない俺が、機械部品を製作するのは不可能に近い。
いくらなんでも、スキルを何も使用せずに、自分の頭のみで高度な機械なんて製作することはできないだろう……そういう確信はある(後日ry)。
だから基本となる機械部品の製作は、外注である。
俺の数少ない客じゃない知り合いの〈マスター〉に頼んで造ってもらった一つの機械部品を取り出す。
もっとも外注で頼んだだけあって、その性能はそこまでの物ではない。この機械でできることは『あるスキルをパッシブで起動させ続ける』というだけのものだ。とはいえ重要部品に変わりはないが。
俺は機械部品と、新しく制作された素材アイテムを手に先ほど使った炉とは別の炉へと移動する。
この炉が、俺の〈エンブリオ〉の第2のスキルを起動させるために必要な特殊炉。
スキルの名は《双発双機合成合体高度高域天上天下地号炉》。
このスキルで合成可能なスロットは二つしかない。二つしかいない代わりに……このスキルは操作によってアレンジ・創作が可能になっている。
機械部品と、素材アイテムを二つある入口に入れる。
多少乱暴でも構わない《天号炉》とことなり、こちらは少しデリケートなので、静かに入れる。
入れ終ったら炉の入り口を閉じ、操作を行い、合成をおこなう。
合成の方法は今回は単純だ。機械部品の中枢に、うまく素材アイテムを入れ込む。ただそれだけ。
ただし、操作をミスると、両方のアイテムを一度にロスしてしまうため、慎重に不具合が出ないかどうか確認しながら操作を続ける。
時間にしておよそ20分。
慎重に操作を行いながら、問題がないか確かめ、トライ&エラーを繰り返し……
そして完成する。
出来たのは機械部品A。
当然、これは中枢の機械部品を仕上げただけだ。
これで終わりなはずがない。
出来たアイテムを手に持ちながら剣を手に持つ。
そしてその二つを、再び《地号炉》に入れる。
後は焼き直しだ。先ほど通り幾つものトライ&エラーを繰り返し、真正の武器を創り上げる。
時間が40分近くかかり……、少しだけ時間がオーバーしてしまったものの、納得のいく物が仕上がった。
後は名付けだな。
この傑作にはやはり、〈エンブリオ〉と同様の上と下の二つで構成した名前が合うだろう。
下の名前は……、いままでどおりの命名でいいな。よし下の名前はキボウソードだ。
上の名前は……、何をさせたいか、だな。……そうだな、やはり守らせるわけだし守護、守護剣心だな!
【鍛冶師】の持つジョブスキルの一つで、制作した武器に銘をつけるものを利用して、俺が造り上げた武器に銘をつける。
そうして完成した武器を眺めながら、ウインドウを開き詳細を確認する。
【守護剣心 キボウソード】
一人の鍛冶師によって造られた改造剣。
自らの命と引き換えに、主を守る障壁を常時展開している。
・武器攻撃力
10
・装備補正
なし
・装備スキル
《
※装備制限:合計レベル100以上
……うん、狙った通りの出来だな。
想像以上に、かなりピーキ―な性能をしているが。
さらに《
そこにはやはり、俺が狙った通りの性能が記されていた。
《
装備者がダメージを受ける場合、かわりに受けるダメージ分の1/5の数値分、この武器の武器攻撃力を下げる。
※発動時間1sにつき武器攻撃力を1下げる。
……やはりピーキ―だな。
このスキルは、ようは武器がある限り、常時ダメージを無効にしてくれる。
ただしその分、攻撃力が下がり攻撃力が0になってしまえば、武器が壊れさらには超過ダメージをそのまま受けてしまう。
《キボウソード》の武器攻撃力はたったの10。このままでは50以上のダメージを受けただけで、この武器が壊れてしまうんだが……、大丈夫なのかね。
ちなみにこのスキルの元となったスキルは2つ。
一つは《ライフリンク》という自分につき従う好感度の高い従魔とHPを共有するスキル。
もう一つは、《ブレイドハート》という自分のダメージを武器に移すスキル。
この二つの構成を元に、アレンジして造り上げたのが、この《
その後、戻ってきたローガンに武器を渡し、依頼が完了された。
あいつはどれくらい武器をうまく使ってくれるか、少し楽しみではあるな。
喜んでいたので使い捨てたりはしないと思っておこう。
さて、それではこれでお疲れ様だな。
今日の依頼はこれで終了。後はレベル上げ用に幾つか武器を造って、店に売り込むだけでしかない。
だから、これで俺の〈エンブリオ〉の役目は終わり。また明日頼むな、と思いながら自分の〈エンブリオ〉を撫でる。
俺がここまで〈エンブリオ〉をいたわるのは、やはり名前のせいだろうな、と思う。
俺と同じ名前の〈エンブリオ〉。
だからこそ共感し、いたわるんだろうと思う。
まあ〈マスター〉の中に自分の〈エンブリオ〉を悪く思うようなやつはいない……そう確信している(ごry)。
そうして俺は〈エンブリオ〉を左手の幾つもの文字が組み合わさった紋章の中にしまいこみ、上に出る。
俺の〈エンブリオ〉――【長名多言寿限無融合合成結界領域工房 ジュゲムジュゲムゴコウノスリキレカイジャリスイギョノスイギョウマツウンライマツフウライマツクウネルトコロニスムトコロヤブラコウジノブラコウジパイポパイポパイポノシューリンガンシューリンガンノグーリンダイグーリンダイノポンポコピーノポンポコナーノチョウキュウメイノチョウスケ】に別れを告げて。
◇◆◇
□■
この〈Infinite Dendrogram〉の世界において、ジョブは多種多様にある。
レベル50まであげられて、最大6つのジョブをとることができる下級職。
レベル100まであげられて、最大2つまでのジョブをとることができる上級職。
そしてレベルを無制限にあげられて、かついくつでも取ることができる超級職。
〈マスター〉の一人、ローガンもまた他の〈マスター〉同様にジョブについている。
彼がついているのは下級職である【悪魔戦士】をレベル50と上級職である【悪魔騎士】を52まであげている。
本来なら上級職を上げる途中に他のジョブを取得する意味はあまりない。なぜなら、上級職の方がステータスは上がりやすく、またレベルが上がれば上がるほど強力なスキルを習得するからだ。
複数を平行にレベル上げしようとすれば、どっちつかずになりレベルが上がりにくくなる。
戦闘職と生産職を同時にあげているアンジェラあたりが一番わかりやすい。彼女はレベル上げを両立しているためレベルの進みが遅く、いまだに100に遠く及ばない。レオンと異なりログインは頻繁にしているはずなのに……である。
複数のジョブに手を伸ばせば、逆に効率が悪くなる。その理屈を知るローガンが、レベル上げを途中で中断し、複数のジョブを取得しようとするのは手札を増やすためである。
ローガンの〈エンブリオ〉はステータスの多寡よりも、スキルの多様さこそを是とする。
【悪魔騎士】を上げる事で手に入れられる悪魔召喚スキルも強力ではある。だがそれよりも手札の幅広さを重視したい。そう考えてローガンは新たな道に突き進む。
□皇都 【悪魔騎士】ローガン・ゴールドランス
あれから地下を抜け出し、レンガが降りてできた階段を元に戻し(戻すためのスイッチが地下にあった)、そして今は目的の物を見つける為にまた辺鄙な所をうろついている。
ここもまたドライフ。そして皇都である。
辺鄙なところと言ったが、ジュジュがいた所や【悪魔戦士ギルド】がある区域と異なり、こちらはきらびやかな印象を受ける。
それもそのはず。俺が今居る所は、俺が良く通う〈大決闘場〉のすぐ近くなのだから。
エンターテイメントの一大拠点である決闘場のすぐ近くにあるだけあって、店や人が多い。だがこのあたりは大通りから外れていて、喧騒はあまり届かない。このぐらいになると辺鄙と言っていいだろう。
そんな所に来ている理由は……俺が望むジョブが、こちらにしかないからだ。
自分が選ぶ選択がどうなるか不安はある。
おそらく、ただ広域制圧に特化するのならこんな道を選ぶ必要はないのだろう。
だが――それでも……
「これが幸となるか、災となるか……、やってみなければわからないな」
幾度目かの葛藤を振り払いながら歩き続ける。
闘技場を経由し、歩くこと数十分。
ようやく目的のジョブクリスタルに到達する。
汎用のジョブが込められたジョブクリスタルなら、皇都広場に存在する。
だが俺が求めるジョブはレアジョブ。普通のジョブクリスタルに入ってはいない。
だからわざわざここに来たのだ。この皇都周辺で唯一このジョブに就くことができるジョブクリスタルを求めて。
レアジョブがあるとはいえ、それを求める人以外には普通のジョブクリスタルだからだろう。
周囲に人がほとんどいないな。
一応の警護役としてか、一人の兵士がいる事以外は皇都広場のジョブクリスタルとさほど変わりない。あちらは複数いたからな。
兵士に軽く挨拶をして、ジョブクリスタルに触れる。
俺が求めるジョブは【
空想生命体を利用して戦うジョブであり、それを使い捨てるジョブ。
ジョブリストから【空想戦士】を選ぶ。
【空想戦士】はレアジョブの一つであり、下級職でありながらこのジョブに就こうとするならば果たさなければいけない条件がある。
条件は二つ。
一つ目は『自分が空想生命体を100時間以上保持していること』。
二つ目は『自分が近接攻撃のみで、敵のHPを90%以上削ったモンスターの数が500体を越えること』。
このうち一つ目の条件に関してはとっくに満たしていた。これでも最初の方は常時悪魔召喚していたからな。
問題だったのが二つ目。この条件を満たすために1週間近くを費やし、条件を達成することに注力した。もちろんそれだけでなく、あの鍛冶師の依頼を達成することも同時に行ってはいたが。
本来ならいつかこの条件を満たそうと思っていただけで、すぐにこの条件を満たそうとは思わなかった。理由は今就いているジョブのレベルが半分しか到達していないからだ。
しかし、そのいつか、が今すぐ、に変化したのはあの〈クリエラ渓谷〉に落ちる日の事が原因だ。
もちろん、落ちた事が原因ではない。最大の理由はミックに負けたからである。
最初はすべてを投げ出そうかとも思ったあの敗北であったが、だがあの戦いは後で振り返ってみればいろいろと考える事が多いものだった。
あの敗北の原因は大別すれば二つの要因だと思う。それは召喚悪魔の性能の低さと、自分の性能の低さ。
細かい理由はそれこそ山のようにあるとは思うが、大きなものとするならその二つになるだろう。
問題は強くなるためにどちらを強化するべきか、だ。
真っ当に強くなるならば、悪魔強化一択だろう。純粋に広域制圧型としてなら、そちらの方が簡単に強くなれる。
だが、決闘を視野に入れるとするのなら、その選択では……とどかない。
個人戦闘に特化した者に、雲霞のごとき悪魔の群れも、強力な悪魔の精鋭でも、どちらをとっても勝てない。個人戦闘型は単体で蹴散らし、召喚者である俺に攻撃を加える事ができるのだから。
そして俺が選んだ道は広域制圧型と……個人戦闘型によるハイブリット。
【空想戦士】というジョブは本来ステータスの低い、召喚師系・従魔師系のステータス不足を補うためのスキルをいくつか持っている。
もっともそれが芽吹くのは上級になってからではあるが、最大の問題の攻撃力不足に関してはすぐに解決するし、手札として使う分には問題ない。一応、今日中にあげられる程度はレベルを上げておいて、すぐに【悪魔騎士】に戻すつもりであるが。
あとはジュジュのところにもどって、武器をとりに行くだけだな。そこからはレベル上げだ。忙しくなりそうだが……
「……さて、これで【空想戦士】に就くことはできた。これで攻撃力に関しては不足はなくなる。防御力に関しても武器で補える。速さに関しては……これは上級職に上がるまで解決はしないが、今のままでも《融合召喚》である程度は補える。……個人戦闘型と広域制圧型のハイブリット! 最強のやつらとはちがって広域殲滅ではなく、広域制圧なのが気がかりだが……、だがこれで俺はもっと強くなれるぞ! あーっはっはっはぁ」
◇
◇◆◇
(主様が喜んでおられるようでなによりです)
ルンペルシュティルツヒェンは、自分の主であるローガンが笑っているのを見て、自分も喜ぶ。
主の喜びこそ、自らの喜び。
それこそが
自身の思いを押し殺し、口にせず、心のうちでただ思うのみ。
(しかし…………、剣をとらずに悪魔召喚のみに特化させた方が、もっと強くなると思うのですが……、ですが主様がそうされたいのなら私は突き従うのみですね)
たとえ、それが――主の為にならないとしても。
To be continued
(=○π○=)<……そんなわけで、前からちょくちょく出していたジョブにつきました。
(=○π○=)<感想から、もっと広域制圧に特化しろよ、とか言われそうですが、いろいろあるのです。
(=○π○=)<本来ならもっと後につける積りだったけど……、ある割烹情報の所為でそれがくるってしまった。
(=○π○=)<違和感は多いかもしれませんが、とりあえずはこれで
余談:ジュジュ
(=○π○=)<キャラネームで遊びすぎた系マスターの一人。
(=○π○=)<文字制限がないときいて、名前を入れてみて、修正するのを忘れた人。
(=○π○=)<エンブリオの特性は素材合成・武器改造。
(=○π○=)<必殺はまだ習得していないですが、漢字です。効果はオンリーワン制作に特化したタイプ。詳しくはおいおい。