閣下改竄   作:アルカンシェル07

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第3話 初戦闘

 

第3話 初戦闘

 

□□皇都郊外 【悪魔戦士】ローガン・ゴールドランス

 

 南門から5分ほどかけて歩いて行くと、周囲にいろいろな〈マスター〉と思える人間とすれ違う。

 ほぼ全員が初期カタログで手に入れることが可能な、初心者用の装備を着ている。

 だが全員が全員、同じではない。同じではあり得ない。

 

〈マスター〉の中には伸縮するハンマーで敵をなぐり飛ばすものがいる。

触れた敵を通常の物理法則ではあり得ない、現時点のステータスではあり得ない程にふっ飛ばす力をもつ武器をふるう。

初期に手に入れる性能としてはあり得ないその武器はやはり〈エンブリオ〉だろう。

 

〈マスター〉の中には猪の動物と一緒に戦うものもいる。

猪の突進にあわせ電気がほとばしっている。

初期にテイムすることは出来ないだろうその性能は、やはり〈エンブリオ〉なのだろう。

 

〈マスター〉の中には足もとに魔法陣らしきものを常に描きながら戦う物もいる。

 魔法を使うのにあんなものが常時出ているとは思えない。

 あれもやはり〈エンブリオ〉なのだろう。

 

他にも、いろいろな〈マスター〉たちが、6人でパーティーを組み、2人でコンビを組み、中には俺と同様に、一人で戦っている者もいる。

 

「戦い始めている奴も、もう結構いるな。俺たちは後発組ってことだ」

 

ゲーマーとして初期リソースの奪い合いに遅れ、後追いの形になってしまったことは残念だが、初期準備である情報や準備の大切さも含めて考えれば、まだ挽回のチャンスはいくらでもあるだろう。

 

「はい、ですがこれから私と主様でなら先発組を追い越せますでしょう」

 

ルンペルシュティルツヒェンもそう意気込みを見せて、問題ないと胸を張る。

 俺もそれに対し軽くうなずくと戦いの準備をする。

 俺たちの前には他のマスターからの攻撃から、からくも逃れることができた1体のモンスターが近づいてきていた。

 そのモンスターを確認すると、上に【ティール・ウルフ】という名前とそのモンスターレベルとHPが見える。

 レベルは2であり、俺たちより高いが……問題はない。

 ティアンなら互角かもしれないが、俺たちは〈マスター〉なのだから。

 

 「さて、モンスター1体だけか、俺たちよりレベルは高くとも、弱小モンスター1体相手に使うのは少しもったいない気もするが、初戦闘だシュテル少し派手に行こうか」

 

 ルンペルシュティルツヒェンも敵を認識し、己の〈マスター〉が全力で戦えるように自身の形を本来のものに変化させる。

 

 「はい、行きましょう。mode change 内包形態いきます」

 

 そういうと、ルンペルシュティルツヒェンの身体が光り輝く。

 身体を光の粒に変え、その光の粒が俺の体の中に入っていく。

 それこそがルンペルシュティルツヒェンの本来の戦闘形態。

 アポストルにならなければ、もとからこの状態で存在したルールとしての姿。もっともまだ第一形態のため、現時点でのカテゴリーはテリトリーのままだが。

 数秒もたたないうちに光の粒は俺の体の内に入り終え、形態変化の終了を知らせる。

 

 『主様、私の固有スキル《我は偽証より黄金を紡ぐ(フェイク・イズ・ゴールド)》の発動行けます!』

 

 身体の中のルンペルシュティルツヒェンの声が響く。

 外には一切声を漏らさず、俺たちだけで共有する秘密の回線がつながる。

 

 俺はそれと同時に自分の準備を進める。

 『詳細ステータス』から、ジョブのスキルを開き、決めていた項目をすぐに見つけると、その数字をなぞり己のエンブリオのパッシブスキルである《我は偽証より黄金を紡ぐ(フェイク・イズ・ゴールド)》を自動発動させる。

 なぞる数字は2つ。

 

 1つは、【悪魔戦士】のジョブにたまったポイント。

 最初のコストのやりくりに苦労するであろう点を、軽減するためには必須の雑魚狩り用の選択。

 初期にもらった儀礼剣の25ポイントと、その後店で購入した1本50ポイント程になった初心者用の剣4本で、現時点で合計225ポイントを持つ。

 最初に仕える唯一の悪魔召喚スキルである《コール・デヴィル・チーム》に必要なポイントは100ポイントなので、このままでは2回分しか悪魔を召喚できない。

 そのため、ポイントを倍加して550ポイントにしておく。

 

 2つ目は、召喚に使うスキルである《コール・デヴィル・チーム》のスキルの文面の一つである召喚数。

 俺という弱点があるため、ステータスを直接強化するより、現時点では数を増やした方が隙をなくせるのではないかという判断によるものだ。

 ポイントの消費を抑えられる召喚時間ではなく、あくまで召喚数なのは【悪魔戦士】のジョブスキルの一つである《旅団》スキルの為だ。

 スキルレベルがあるスキルは、ジョブにより上限が決められ、その行使した数によりレベルが上がる。

 ならば《旅団》スキルの上げ方は、数多くの悪魔を何度も繰り返し召喚することだと推測したのだ。もっとも、当たっている保証はないため、のちに【悪魔戦士】ギルドに行った時に確認するつもりではあるが。

 

 この2つをエンブリオの力で倍加し、改竄し終えた後、ようやくこのスキルの発動となる。

 

 「さあ行くぞ、“地獄より来たれ、三位一体の小さき悪魔”《コール・デヴィル・チーム》」

 

 同時に、地面から闇が泡のように浮かび上がり、破裂する泡の中から悪魔が現れる。

 自分が望んだとおりに出てきた、合計6体の悪魔を眺め知れず口をゆがめ喜ぶ。

 

 「よし――いけ悪魔ども、あのモンスターを蹴散らせ」

 

 その言葉とともに呼び出された悪魔は行動を開始する。

 一体は飛び上がり、ティール・ウルフの頭上から。

 一体は少し迂回し、右側から。さらに一体は直接正面から突破する。

 六体それぞれが全く異なった方法で、ティール・ウルフに襲いかかる。

 それに対し、ティール・ウルフも応戦するが、数の暴力におされそのまま光の塵になって消えうせる。

 おそらくティール・ウルフと呼び出した悪魔一体一体に戦闘能力の差はない。

 あくまで違うのは数であろう。だがその数の差によってティール・ウルフは倒された。

 

 『主様!我らの軍勢は圧倒的ですね!』

 

 ルンペルシュティルツヒェンはそう喜ぶが、このくらいの数では軍勢とは呼べないだろう。それにそこまで圧倒的でも無かった。

 

 ティール・ウルフが光の塵になって消えた後に残されたドロップ品を拾い上げ、すぐさまポイントに変える。

 このくらいの場所に居るモンスターのドロップは売るよりも、ポイントに変えてリサイクルした方が効率がいいだろう。一回一回皇都に戻るのも面倒だしな。

 

 「シュテル、このまま南下しながら進んでいくぞ。悪魔共もそのまま進んでいけ」

 

 その言葉を聞き悪魔たちは命令通りに前に進み、ルンペルシュティルツヒェンも心の中でうなずく。

 

 『はい、このまま行きましょう。主様と私ならどこまででもいけるでしょう』

 

 おまえは少し俺たちの力を過信している気がする。

 

 そして南下し続けながら、悪魔たちに俺たちの前に出てきたモンスターたちを倒し続けてもらいながら10分がたった後。

 悪魔たちは出てきた時のように泡につつまれ、その後、霧散して消えてしまった。

 

 「10分がたったか。とりあえず走り続けて南下したが、皇都から結構離れたみたいだな」

 

 『そのようですね。周囲の他のマスターたちもあまり見かけなくなってきました』

 

 とりあえず、ここで一休憩しながら、自身のステータスを開く。

 レベルをみてみると、どうやらいまのレベルは3に上がっているようだ。

 10分ほどしか狩りをしていないとはいえ、この最初のレベル帯で走りながら何体も倒し続けていたおかげなのか、レベルの上りが早い。

 【悪魔戦士】のジョブを見てみると、合計ポイントが57ポイント分たまっている。

 十数体程のモンスターを倒し、でたドロップ品をすべてポイントに変換したというのに、ポイントを倍にしなければ赤字確定なその収支なのは、どうしてもため息が出てしまう。

 ステータスも見てみると、初期ステータスにはまだ及ばないが、そこそこに上がっていた。

 ステータスの確認を終了し、ステータスを閉じた後、次の戦闘を行う前に戦闘中に疑問に思っていた点をルンペルシュティルツヒェンに確認する。

 

 「シュテル、一つ確認したい。前回俺は、ジョブの文面をなぞり数字を倍加させたが、その倍加は口頭でも可能か?」

 

 そう、それは戦闘中における隙の一つを無くすことができ、高速戦闘においての一助になりうる技。それが可能なのかどうかを確認する。

 

 『はい、可能です(・・・・・・・)』

 

 俺の問いに対してのルンペルシュティルツヒェンの回答は、俺の希望に沿った断定の一言だった。

 

 「そうか!可能なのか」

 

 元々、原作においての【技巧改竄ルンペルシュティルツヒェン】はアポストルでも何でもない、ただの意思を持たないTYPE:ルールのエンブリオであった。

 基本的にこの《Infinite Dendrogram》において、エンブリオのスキルを発動するためには、使用者の意思が必要である。発声が必要でないスキルはエンブリオのスキルであるのならば数多く存在するが、スキル自体を発動させるのにマスターの意思を無視して発動可能な物はそれほど多くはない。もしくは無意識化で使用しているのだろう。

 だが例外はいつでも存在する。それこそがTYPE:メイデンなどの意思を持つエンブリオの存在である。

 彼女ら、彼らは意思を持つがゆえにマスターの意思とは無関係に行動をすることができ、マスターの代わりにスキルを発動することが可能となる。余談だが、マスターをひき殺すエンブリオも存在する。おそらく事故であろうが()。

 ゆえに意思を持たないエンブリオであるルンペルシュティルツヒェンのマスターであるローガンはスキルを使用する度に、わざわざジョブのウインドウを開き、スキルの数値をなぞり、倍加をしなければならなかった。

 

 しかし原作と異なり、意思を持つTYPE:アポストルのエンブリオを持つこの俺ローガンなら可能であった。ジョブスキルの数値をなぞらずにスキルを発動させることが。

 それは俺たちの最強への道の一路となる。

 その喜びを胸に、新たな狩りを、スキルを起動させる。

 

 「よし、ではシュテル。《チーム》を使うぞ、今度はポイントと詳細ステータスのAGIを倍加させてみろ」

 

 俺の言葉を聞くやすぐに行動を起こす。

 

 『はい……、設定完了しました、発動行けます』

 

 その内に響く声を聴いた後、俺はそのスキルを起動する。

 

 「さあ、もう一度行くぞ、“地獄より来たれ、三位一体の小さき悪魔”《コール・デヴィル・チーム》」

 

 また闇の泡が地面から噴き出て、その泡の中から悪魔が出てくる。

 ただし、今回は6体ではなく3体。

 ルンペルシュティルツヒェンに命じた通り、召喚数が変化しているのがわかる。

 呼び出した悪魔に対し命令をする。

 

 「悪魔どもよ、俺たちの行く先に現れるモンスターを倒せ」

 

 特に凝った命令ではないが、命令をしないと始まらないため口にする。

 その言葉を聞き終えた後、前回召喚したのとは段違いのスピードで、悪魔たちが飛び立つ。

 移動速度が上昇しているのを確認した後に、成果の達成を確信する。

 

 速いスピードで動きまわる悪魔たちを追いかけながら、悪魔たちが倒していったモンスターのドロップ品を間髪いれずポイントに変換し続けながら、次の問題点を口にする。

 

 「うまくいったな、シュテル。後は、お互いに内心で話せるかどうかか」

 

 そうこのまま口にしていたのでは、敵になにをどう強化するのがばれてしまう。

これからは敵に知られないように、強化項目に関しては心の中で話しかけた方がいいだろう。

 そう口にした後、しゃべるのを止めて走りながらではあるが、心の中に存在するものと話す気持ちで語りかける。

 

 『……シュテル、聞こえるか?』

 

 はじめて心の中で会話を試みていく。やったことがなかったので、すぐにできるかどうか不安ではあったが、無事にできて何よりだ。

 

 『はい、もちろんです』

 

 ルンペルシュティルツヒェンもその成功を喜びながら、出来ていることを教えてくる。

 

 『心話だけなら問題ないが、通常の会話と混ぜるとすこし難しいか?戦闘中も後方に居るならまだいいが、集中しなければならない時は少し怖いな』

 

 どうしようか?

 少し考える。一応は慣れればそれで済む話ではあるが、慣れるまでに時間は必要であるだろう。

 それならば…。

 

 『よしならプロトコルを決めよう。俺たちの間で、召喚する区別ごとに簡単に記号を決めておけばいいだろう』

 

 『プロトコルですか?』

 

 『ああ、そうだ。そうだな、まず倍加の一カ所はポイントで固定する。あとはもう一つの指定個所を簡単に記号で言う。《コール・デヴィル・チーム》を使用し、召喚数を倍にするのなら、「チーム・N」とかだな。ちなみにNはナンバー、つまり数を適当に略したものだ』

 

 『なるほど、それはいい考えだと思います』

 

 『悪魔召喚のスキルが新しく増えたり、お前が進化して指定個所を増やすことができるようになれば、またその都度決めればいいだろう。あとはプロトコルによらない指定をするときは、そのまま一からいうさ』

 

 その後、呼び出した悪魔が消えるまで、走りながらプロトコルの設定とドロップのポイント化を続けていったのであった。

 

 

 To be continued

 




(=○π○=)<アポストル化によるルンペルシュティルツヒェンの強化ポイントその1、会話による強化ポイントの指定
(=○π○=)<いちいちリストを開かなくてもいいため、高速戦闘にも向いている。
(=○π○=)<残りの強化ポイントもおいおいでてくると思います
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