閣下改竄   作:アルカンシェル07

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(=○π○=)<アナスタシアがすごいよかったー

(=○π○=)<そして前準備も含めて、あまり執筆時間とれなかった。(海道先生はどうやって時間を工面していらっしゃるのだろうか、すごい)

(=○π○=)<まあ、上下一緒に書き始めているんで、そんなに間をおかずに投稿できるとは思いますが


第16話 四方四散の迷宮遊戯・上

第16話 四方四散の迷宮遊戯・上

 

 

□■

 

 迷宮が誕生する。

 

 【偽神】ルパン・ジ・アシッドによって、地下に広がる隠し通路を素材として創られた〈ヴァイスガルデン〉全体を覆う大迷宮。

 横に広いだけではない、高さもそれなりに存在し、上り道・下り道・迂回路によって縦横無尽に広がる閉鎖空間。

 そんな中に彼らは招かれた。

 

 始まり(START)は同じではない。配置は各々異なる。基準となる始まり(スタート)は元の地点を基準としたランダム配置。近くにいれば一緒になる可能性も高くなるが、離れれば全く異なる地点に配置されるだろう。

 出口(EXIT)も異なる。入口が決まった一つの物ではないように、出口もまた決まったものではない。《迷宮創造》の制約として、かならず出入口となる部分が無くてはならないが、だからと言って出入口が一つ二つと決まっているわけでもない。通路の綻び、迷宮範囲の境界が入り混じったりすることで、複数の出口が生まれることもある。

 

 異なる場所で、攻略をしようとする彼ら彼女達。

 さて、この遊戯の主役たちの攻略風景を描写するとしよう――

 

 

□迷宮内 【悪魔騎士】 ローガン・ゴールドランス

 

 「ここは……!」

 『少し見覚えのある風景ですね。いつかあの【鍛冶師】に武器を作ってもらった時に通った地下通路に似ています』

 

 確かに似ている。全く同じではあり得ないだろうが、暗い通路が続く。

 この中を動き回るのは俺には無理だ。カンテラがアイテムボックス内にあるが、それを出すよりは。

 

 「“照らせ”《コール・デヴィル・ダークウォーカー》」

 

 俺が呼び出したのは1体の悪魔。フードを深くかぶった様な目が赤く光る身長60センチメテル程度の小ささだ。

 ステータスは度外視し、複数呼び出す利点も無く、召喚継続時間は再び呼び出せばいい。

 だからポイントのみ倍加する。

 呼び出した悪魔は、あのゲーティアが生み出された〈ミルキオーレ・ファミリー〉との戦いでギルドマスターたちが使っていた《ダークウォーカー》。《暗視》スキルを有し、使役者と視界を共有可能なスキルをもつため、この状況下では明かりをともすよりもいい。

 なにせ………

 

 「多いな……」

 『目視できるだけでも30以上はいます。お気を付け下さい主様』

 

 《暗視》スキルによって広がった視界の先に居るのは、30を超える機械の軍勢。

 それらすべてが手に持つ、銃器をこちらに向けて構えている。

 |機械の軍勢〈あちら〉も俺たちの事を認識しているのだろう。手に持つ銃器の銃身が光り輝く。銃弾による物理攻撃ではなく、電力(エネルギー)によるトンでも兵器(レーザービーム)

 一人の男として、ちゃんと見てみたい気もするが、この事態でのんびりと見ていたら死にかねない。

 俺は地面をけり、横に向かって飛びながら敵の軍勢に拮抗する。

 拮抗する方法は単純解明、敵を凌駕する規模の軍団を呼び出す、ただそれだけである。

 コストは度重なる戦いの果てにかなりの量を保持していた、それを第2位との決闘戦のために、今あるポイント変換可能なアイテムをほぼすべて費やすことで、今現在数十万規模のポイントを貯蓄している。これ以降の狩りにも影響するため、無駄遣いは出来ないが、この非常事態にコストを気にしすぎて死んでしまっても仕方がない。とりあえず今だポイントの倍加をとく必要はなさそうなのは幸いだな。

 敵の動きを見ながら右手を掲げ、召喚の呪文を唱える。

 用途は雑魚殲滅用(J・アドバンス)だと、心の中でシュテルに伝える。

 

 「《強化召喚(アドバンスド・サモン)》“来い”《コール・デヴィル・バタリオン》」

 

 呼び出したのは48の悪魔。

 敵の性能(ステータス)は分らないが、まずは試金石としてこいつらを向かわせる。

 元のステータスはほぼオール100の悪魔たちが、複数のスキルによって700オーバーにまで至っている。それによって用意できたのは、下級のモンスターとしては上位に位置するレベルのモンスターの群れ。

 そして悪魔たちに号令を下す。俺の意思どおりに召喚地点から飛び出した48の悪魔たちは、機械の兵隊たちが放つ光の光線(ビーム)を掻い潜り、またはその身体で受けながら敵への距離を詰めていく。

 同時に俺も次の準備に入る。腰に付けたアイテムボックスから、一つの剣を取り出す。

 数ヶ月前にジュジュという名の【鍛冶師】に作ってもらった唯一(オンリーワン)俺に合わせた(オーダーメイド)の特殊武器。あの後、一度だけこの武器を強化してもらったので、あのときの性能そのままというわけではないが、武器攻撃力を少し上げただけの変化だから、そこまで劇的というわけではない。……スキル強化ができればよかったが、そこまで行くのにはまだまだ素材とレベルが足りなさそうという話だし、ある程度は気長に待つが。

 そして、その武器にかけてあった封印を解く。鉄の輝きに満ちていた剣身は、スキルの発動と同時に黒く染まり、さらには剣から漏れ出した黒い波動が剣から零れ出ていく、

 ひとまずは単純に剣を強化するだけだ。それ以上の強化は枠が足りない。それにこれでも目の前の敵を相手にするならば十二分といえる。

 機械の軍勢はいまもなお《バタリオン》と戦い続けているが、その戦いはほぼ拮抗いや、すこしこちらが劣勢かもしれない。数の差はこちらが有利で、ステータスは若干だがあちらが上回っているのだろう。あっちには遠距離武器というアドバンテージもある。

 

 敵と自分の戦力を把握し、ならばと俺も動くことを決定する。

 《融合召喚(フュージョン・サモン)》によって、AGIを可能な限り高めながら、敵に向かって自分も突っ込んでいく。

 悪魔だけに向かわせたりはしない。もっと強力な悪魔を呼び出すというのならともかく、《バタリオン》だけに戦わせると、時間が余計にかかってしまうだろう。このままなら全滅させられるし、追加で呼び出すのは枠が足りずそれに呼び出せても邪魔でしかない。

 地面を駆けながら、レーザーの動きを敵の動きから察知しながら、避け続ける。

 これでもゲームを始めてから半年が経過しようとしているんだ、この程度をこなすことができるプレイヤースキルは否が応でも………いや、優先的に鍛えてきた。数多の敵との戦闘、幾度の師との訓練、それらが合わさることで、高度な戦闘が可能となってきている。

 もちろん、それだけで全てを避けることができているわけではない。いくつかは剣で薙ぎ払い、手甲(ゲーティア)でガードし、いくつかは被弾してしまう。だがそれでも前に進むことに支障が出るほどでもない。

 

 敵との数十メテルを駆け抜け、敵の喉元まで近づき、そして剣を無造作に横になぎ払う。

 正式な剣の使い方とはいえない。教官のもとで教えてもらった西洋剣の使い方はこうではなかった。

 それを知りながら、こうした剣の使い方をするのは、それで十分だからだ。

 あの【破壊王(キング・オブ・デストロイ)】と同様、牽制のような一撃で十分な程に、この一降りには威力が込められている。

 俺の振り払った剣は、俺の期待通りに敵の身体を通過し、敵の上半身と下半身を両断する。おそらく電気だろう、火花が飛び散り、閃光がはじける。

 それを横目に次の敵へ向かい、そして再び剣を振り下ろし、敵を唐竹に割り、それと同時に俺の背後で爆発音がする。アポストルとしての広い視界をもつシュテルによれば、俺が上下に両断した敵の機械が爆発したとのことだ。

 敵を連続で撃破できていることに喜びを感じながら、次の敵へ向かう。敵はまだまだ多いのだから………

 

 

 

 『状況終了。敵性反応なし、全て倒し終わったとみて問題ないでしょう。お疲れ様です主様』

 

 敵をすべて倒し終わった後、一息つくため、そして状況を軽く整理するために立ち止まってシュテルと会話をする。

 なお、悪魔はすべて帰還させている。召喚時間はまだ半分近く残っていただろうが、ここから次の敵までに時間が持つかはわからない。

 敵に対する用意は、この手に持つ剣だけでひとまずいいだろう、と思い一度返したのだ。

 

 「敵は30機だけか………、敵が突入して来たときの総数は100以上あったように見えた。おそらく他の所に居るのだろうな……。他の〈マスター〉はともかく、経験値()はなるべく倒したい……それに、クエストこそ発生していないが、一応さらわれた皇女を助けなければならないしな」

 

 クエスト担当管理AI達がこれをクエストにしないのはどうしてだろうか。

 十分に緊急クエストとしての条件は整えてあると思うんだが。

 おそらく、敵に〈マスター〉がいるからなんだろうが、クエストを受注できないのはすこし無駄に思えてしまう。

 メインで計画を立てているのは、あのティアンの男のようにも見えるんだがな……。

 

 『はい、ここは迷宮のようです。あの〈クリエラ渓谷〉の時とは違い、それなりに複雑そうですね。出来うる限り、迷宮の構造を脳内マッピングしておきます。失敗してしまう可能性は高いですが、むやみに歩き回るよりは……』

 「うん? いや何を言っている。他の〈マスター〉共ならともかく、俺ならば問題ないに決まっているだろう。忘れたのかシュテル、俺のジョブを」

 『ジョブ? ……あっ』

 「俺には|斥候()()()()という手段も、人海戦術という手段もあるんだ、脳内マッピングという手段を使う必要なんてない」

 

 そう言いながら、悪魔を呼び出す。100を超える悪魔といくつかの《スカウト(斥候)》。

 現実の迷宮ゲームならば、禁じ手にもほどがある手段を用いて、此処を攻略する。

 出口がどこにあるかはわからないし、敵が出口に向かうとも限らない。

 だが、今はこれでいいだろう。

 悪魔たちの情報をもとに、俺たちは迷宮の奥へ進んでいく。

 

 そして―――

 

 

□迷宮内 【万能者】ミック・ユース

 

 「っ! これは一体」

 

 俺は朱紗皇女をさらっていきやがった、犯罪者どもを追いかけて外へ向かって走り出していった、その数秒後に光が放たれたかとおもったら、この暗い場所に立っていた。

 一瞬何事かと、そして此処はどこかと思ってしまった。もしかしたら敵の〈エンブリオ〉の効果ではないかと。

 しかし、そのすぐ後に気がついた。これは別にそう言ったものではないと。

 それは、広がっていった光の波動を見たことがあったからであり、この暗い状況から薄く見える風景に覚えがあったからでもある。

 俺はリャナンシーに、《暗視》スキルを付与させて周囲を見渡す。

 視界に広がったのは、やはりどこか見覚えのある光景。あのクエストでジュジュと、俺たちのパーティーとで繰り広げた戦いの場にして、ジュジュが工房を築いている場所。

 皇都地下の隠し通路。俺はいまそこにいる。

 

 「驚いたな。いきなりこんな所に………、ルパンのスキルだろうけど、なんでわざわざ? いや、敵を閉じ込める為か」

 

 疑問に少し思い、考えるが答えはそこまで難しいものではないと合点がいった。

 間違えている可能性もあるが、多分そうである気がする。

 確かにこのままだと、俺とブルーノが追いかけていたPK達に追いつくことはできたかもしれないが、朱紗皇女をさらった【山賊王】に追いつくことは出来なかっただろう。

 敵襲の瞬間に《看破》で見た限り、万にこそ届いていないモノのかなりの高さのAGIに加えて、複数の強力そうなスキルを有していた。

 飛び出すのが遅れた、俺やブルーノでは追いつくのは無理だろうし、追いつけたとしても勝てるかどうか、戦いになるかどうかさえ分からない程の強者。

 ティアンの命と尊厳がかかっている状況で、負けるつもりも諦めるつもりも毛頭ないが、それでも保険は多い方がいい。一対一ではなく、こちらの〈マスター〉全てで戦えば、勝ちの目は高いだろうしな。

 その点で言えば、この迷宮はグッジョブだな。敵を逃がさず、閉じ込めておけるんだ。

 出来れば、他の〈マスター〉と合流しておきたいが……

 

 「周囲には俺一人だけ……か」

 

 《暗視》とついでに《視力強化》も合わせて周囲を見渡してみたが、俺以外人っ子一人としていない。

 別々の所に飛ばされたんだろう。前回のルパンが創った塔型の迷宮は、中でスタートではなく、入口の外で待っていたけど、今回は【山賊王】を閉じ込めるためにも、参加者(全員)を迷宮内に配置するしかなかったんだろうな。

 閉じ込められたかどうかについては………出来ていると思いこみたい。

 迷宮の範囲外に逃げられていたら、この迷宮はむしろ俺たちの行く手を阻む障害物にしかならない。その最悪のケースだった場合、出来るのは皇国全体にこの事件を知らせて世界中に捜査を配備してもらわなければいけない。

 どちらにしろ、今の俺たちはこの迷宮から速攻で抜け出すか、あの【山賊王】をこの迷宮内でとらえなければならない。

 今回がどちらかはまだわからないが………、今のところは後者の状況だと思っておこう。

 俺は脚に力を込める。このままここに居てもどっちの状況にとっても、悪手でしかないからだ。

 俺にマッピングの才能はない。昔懐かしのゲームをキャロがもって来ることがあったが、地図などが表示されないマッピングをしながら進まなければいけないレトロゲームを、満足にクリアーしたことはないからだ。

 リャナンシーのジョブスキルでそこらへんを補おうとしても………正直言ってそこらへんのジョブスキル名がどういう物があったか忘れてしまった。リャナンシーの《ブラッド・アビリティ》は俺が知るスキルしか、手に入れられないからな。

 レオンには全てのスキルレベルを有するジョブレベルを覚えておいた方がいい、といって1000以上に及ぶジョブスキルのリストを渡してきたが、あんなものすべて覚えきれるわけがない。俺が覚えているのはよく使うスキル50ちょいといったところだ。

 それで今まで十分だったが………さすがにこの戦いが終わったら一から覚え直すか・・・・・・

 

 

 「どこだっ!!……」

 

 走り続けて3分ほどが経過した。

 《暗視》を切らさず、常時かけ続けていたが、ここまでだれにも何にも会っていない。

 仲間にも敵にも、一切。

 胸の内に焦燥が芽生え始める。この迷宮はどれだけ広いのか、【山賊王】はもう逃げだしていないだろうか、そして俺はちゃんと道を間違わずに進んでいるのだろうかと。

 焦燥感が危機感に変わりつつある中、さらに先に進もうとT字路を左に進もうとして……

 

 「ガッッ」

 

 突然の襲撃を避けられず吹き飛ばされてしまう。

 

 「「あはは」」「「あれで生きているんだね、すごいね」」

 

 吹き飛ばされ、地面を擦りながら滑る状態を何とかしようと、腕と脚をうまく使って転がりながら跳びはねる。

 跳びはねながら空中で姿勢を制御して四肢を使って滑りながらうまく着地しながら、敵を睨む。

 そこにいたのは二人の少女。白髪褐色のドライフというよりは、カルディナの方に近い服装をした瓜ふたつの〈マスター〉だった。

 敵の動きを注意しながら、3本の武器を取りだし装備する。相手はこちらを警戒しているのか、それとも気にしていないのか、「あはは」と笑いながら、奇襲攻撃を行った姿勢から直立不動に姿勢を変化させる。

 正直言って幸いだ。俺以外に周囲に人間がいない以上、この戦いは2対1のPvPになる。先手こそ奇襲という形でとられたものの、こちらの準備を整える事ができる暇を与えてくれるのはこちらにとっては嬉しいことだ。

 懐を確認すると、装備していたはずの【救命のブローチ】が崩れ去っていた。

 俺のHPはそこまで高いわけでもないから、今の一撃で削りきるだけの威力を出せたということだろう。

 《看破》も同時に起動する。それによって判明したのは、やはりというか当然というか、二人とも同じジョブについていた。奇襲特化のジョブで、俺のHPを削りきるほどに高い威力を出せたのは奇襲成功時のダメージを3倍化する《スニーク・レイド》の効果だろう。

 

できるならもう少し準備の時間を取りたいが、残念ながらそこまでの猶予はない。

 二人の〈マスター〉がいまかいまかと、こちらの行動を待っていて、もしさらに遅れた場合何をしてくるかわからない。

 それに朱紗皇女をつれさった【山賊王】の事もある。

 時間をかけるわけにはいかない。

 

 手に握った剣をきつく握り締め、俺はPK達に向かっていく。

 

□迷宮内 【剛槍士】ブルーノ

 

 「ちぃい!」

 「ぎゃははhaharr」

 

 ワシの槍と無法者(PK)のハンマーをぶつけ合う。

 この周囲すべてが真っ暗闇の空間に放りこまれて、突然の状況にどう対応すればいいかと四苦八苦していたワシのもとにこいつが奇襲を仕掛けてきた。

 敵の攻撃がこちらに当たる寸前で、クーがワシを守り逆にPK相手にカウンターを仕掛けてくれたようだが、クーが気がついてくれなかったらもしかしたらやられてしまったかもしれないとぞっとする。

 クーは犬のガードナーだけあってか、多少の夜目がきき、それ以上に鼻がきく。

 幸いなのは敵が奇襲用のスキルを持ってなかった事か。もし気配を殺すスキルを使われておったら、むざむざとやられていた。

 クーには生物的な察知能力こそあっても、スキル的な察知能力はないからな。

 クーによって、敵が引いた時間を利用して、アイテムボックスから念のためと買っておいたカンテラを取りだし腰に装備しておいた。

 はっきりいって大きくて邪魔で仕方がないし、明かりも弱く、多少の衝撃で壊れかねない安物だ。小さくて、明かりが強く、壊れにくいカンテラや、ライトなども店には売っていたが、ワシらはあまり夜の狩りをおこなわないからと、この程度で我慢していたが……

 

 「失敗だったな。まさかいきなりこんな所で戦闘を行う羽目になるとはな!」

 

 明かりが届くのはせいぜいワシの槍が届く範囲。腕長から、槍の長さを含めた範囲を制空圏として、敵の攻撃に対処する。

 こちらから攻撃をすることは出来ない。なにせ敵の動きが読めない。

 経験則から相手の攻撃を判断できなくはない。お互いの攻撃の質の差、相手の性格、相手の移動にともなう地面をける音、相手の呼吸。それらを情報として見えない相手と戦う訓練はしたことがあるし、多少なりともこの身に覚えがある。

 だが、残念ながらその技術が、今役に立っているかといわれるとそうでもない。

 

 まず攻撃の質が読めない。

 敵は無法者(PK)らしく、ハチャメチャに攻めている。

 それに加えて、おそらくこの敵手はちゃんとした戦い方を教わっていないのだろう。真っ当な戦い方を学んだ者には身についているはずの武の(ことわり)というものが、欠片も感じられない。

 ローガンたちは素人なりに、武を学び戦い方も身につけているが、敵手はそうではない。ただ自らの性能(ステータス)と能力《スキル》のままに戦い続けて………何とかなってしまっているのだろう。

 それができるだけの才能は感じる。いわゆる、純粋培養の天才型闘士(ファイター)というやつだ。だがそれでも、ワシくらい武を修めた人間からすれば、まるで理解していない相手をどうにかするなど、造作も無いはずなのだが………状況が悪い。

 天衣無縫というべき(スタイル)に加えて、〈エンブリオ〉やジョブというわからない要素まで加わる。

 これではワシでも攻撃の質は読めない。

 

 次に相手の性格が読めない。

 素直に読むとするなら、相手の性格は非道を非道と思わぬ狂戦士なのだが……

 しかし時折、狂戦士としてはあり得ない、行動に出たりする。こちらの攻撃にビビったかと思えば、笑い狂いながら遮二無二突っ込んできたりもする。

 二重人格の様な性格の差異がありながら、おそらくは二重人格などではないのだろう。

 理由も簡単にわかる。ここがゲームだからだ。

 ワシは多少若くなるように言動をある程度変えているレベルだが、人によっては本来の性格とはことなる仮面(ペルソナ)を被ることもあるだろう。ワシの知り合いだと、ローガンやキャロル・キャロライナ・キャロラインやA・D・A(アンジェラ)がそれにあたる。

 だから読めない。本来の性格(リアル)演じている性格(ゲーム)が入り混じっているせいで、いつどっちの性格で動くのかがわからない。

 

 最後に音。

 移動音、呼吸音、どちらも含むが、そのどちらも判断材料としては使いづらい。

 移動音は、ワシと敵以外にクーという要素があるからだ。残念ながら、動物の足音を聞きわける特訓はしたことがない。

 呼吸音は、相手が笑い続け、喋り続けているからだ。ならばそれを判断材料とすればいいと思うだろうが、時折木霊が反射して声が入り混じり判別がつきにくい。

 それに敵が高速で動きまわるせいで、音によって判断しづらい。全く不可能というわけでもないが、この状況下でそれを為すのは今のワシには不可能だ。

 

 経験則が通じないために、敵の攻撃に対して後の後という、悪手を連発せざるを得ない。

 この場で明かりを使っているのが、ワシだけのため視界は暗く閉ざされて判断材料にさえならない。おそらく敵はこの状況下でも戦えるスキルの類いを持ち合わせているのだろう。

 クーががんばって動きまわってくれているおかげで互角にまで持ち込めているが、ワシだけだったらやられていたかもしれない。

 

 「まったくもって、厄介だな!!」

 

 槍を持ちながら、暗闇から襲い来る襲撃者を相手に相対する。

 どうやってこいつに勝てばいいか考えながら………

 

to be continued

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