(=○π○=)<遊びすぎた・・・
第17話 四方四散の迷宮遊戯・下
□迷宮内 【剣舞士】七咲桜火
――炎の蛇を走らせる。
いきなり、この暗い空間に放りこまれて、あたふたしていた私の目の前に数十という光がキラキラとしたかと思ったら、そこからビームが発射されました。
この状況下にくわえて、いきなりのビーム発射という事態に対して、混乱していた私が避けられるはずも無く、私の身体に数十という光がつきささり、その反動で私は遠く飛ばされてしまいました。
マスター保護の痛覚設定という素晴らしい機能の御蔭で、私にダメージはあっても痛みはないのはよかったですが………
「《
ビームを受けた反動で後ろに吹っ飛ばされながら、ネフシュタンのアクティブスキルを使い、右手に握る剣身に炎を纏わせながら、右手を大きく振り払います。そうでなければ、次の攻撃で今度こそ私はやられてしまうのです。
私は吹き飛ばされ宙を飛んでいる状態から、左手を地面につけ、反動で左の掌で地面を数メテル程滑った後、左腕の力で地面を強くたたき、私の身体を跳ね上げます。
再び宙を舞いながら、右腕振りまわし、ネフシュタンを伸縮させて炎の蛇を自在に動かすことも忘れないのです。
炎の蛇は私の思った通りに動き、数十といそうな敵に向かい……そして次弾のビームとぶつかり合って、壊れてしまいました。
でも――それでも問題はないです。ネフシュタンは《炎華再生》のスキルを使い、壊れた剣の破片が燃え上がり、私が手にもつ本体と合わさって………再び完全な状態に戻ります。
私は剣とビームがぶつかり合ってできた、時間の空白を使って地面に着地に成功しました。
この数秒で私も状況の把握ができました。もう慌てません。もう混乱しません。
一寸先も見えないという言葉の通りに、広がる闇の先に居る敵と戦うべく、踊ります。
踊りといっても、私にちゃんとした踊り方はできません。知りません。
私の記憶にある限り、私が踊ったことがあるのは、修学旅行のフォークダンスぐらいです。もしかしたら幼稚園の時とかに踊ったこともあるかもしれませんが、私は覚えてないのです。
だから私にできるのはダンスの真似ごと。おそらく私にはローガンから聞いたことがある
私はあくまで、《ダンス・ダンシング・ダンサー》の影響が及ぶ程度に、ただくるくると回っているだけですから。一度、ちゃんとしたダンスの名人だというNPCにみてもらったことがありますが、その時は『これは踊りではない』という、かなりの酷評を受けてしまいました。すごい落ち込みましたが………同時に『これは戦舞だ』という評価ももらいました。
踊り系統の神の条件は、あくまでちゃんとした、人を感動させることができるタイプの踊りをできるもの。私の様なただ、戦いにのみ特化させた人殺しの舞にはなれないのです。
それは、残念だと思いましたが。同時に納得もしました。確かに私には踊っているというよりかは、本当にくるくるとしているだけという自己評価でしたし。ただ、あくまで普通の超級職を目指そうという変化が起こっただけにすぎません。
――それでも。踊りの才能がなくても、私のこの舞は敵を倒すのに十分な戦舞です。
踊りながら、剣を振るい、剣を燃やし、剣を伸ばします。その勢いのまま剣先は闇の中を突き進み、ビームを撃って来たと思わしき場所を薙ぎ払います。
幾つかの手ごたえと、幾つかの金属がぶつかり合う音、幾つかの破壊音を上げながら、役目を終えた炎の蛇を縮めながら、踊り続けながら、横に移動します。
移動したのは、そのままそこにいると、相手の攻撃が当たってしまうからだと思ったからであり、実際にその通りに私が移動した後、すぐに闇の向こう遠方で光が輝き、そして私がさっきまでいた場所をビームが通り過ぎて行きました。ギリギリセーフなのです。
縮めて再びちゃんとした剣の形に戻ったネフシュタンを再びふるい、先ほどの再現みたく剣を伸ばし、敵を薙ぎ払い、そして縮めるというサイクルを起こします。
そしてそのサイクルを行いながら、くるくると踊り続けながら、「そういえば確認しないと」と思いだし、ステータス画面を開きます。
開いたのは最初の敵の奇襲で数十というビームが私の身体に突き刺さったからです。
あれで「どれくらいダメージを受けたのだろうか?」と疑問に思い、確認しているのです。
結果は、HPの半減。および装備していた【救命のブローチ】が無くなっています。
……あのビームはそれほど威力があったという事でしょう。私の“特殊加工”の一つを無視して大ダメージを与えるほどの。
とりあえずは踊りながらポーションを使ってHPを回復しておきます。
「ずいぶん多いのです……。それに強い」
《
敵の総数は百を超えているでしょう。
そしてその敵は、パーティーで襲撃して来たあいつらの一種。機械の兵隊さんなのです。あの時はローガンや、その後にミックさんの友人方が助けて下さったおかげで、何とか持ちこたえる事ができましたが、おそらくこの機械の兵隊さんの強さは並みの上級職についているNPCと同等の実力はあると思います。
間違いなく強敵。一機程度なら、問題はないですが、それでも数が揃えば厄介ですね。
このまま戦い続けても、時間がたてばたつほどに、私の攻撃力が上がっていき勝ちの目は高くなっていきます。
だけど、私が今しなくちゃいけないのは、この場での勝利ではなく、さらわれてしまった朱紗ちゃんを助ける事です。もちろん、他の人も動いているはずです。ローガンたち決闘仲間の実力は当然よく知っていますし、ミックさんのパーティーメンバーもまた、たまに組んだことがあるため、どれだけ強いのか知っています。
他の人たちなら、私がいなくても助ける事ができるかもしれません。
でもそれは――私が今全力を出さなくても、いいという理由ではないのです。
「時間はかけません。一気に行きます!」
撃鉄を上げる。そんな言葉が思い浮かびました。こんなフレーズが浮かんだのは、私の友達の未亜ちゃんの影響かもしれません。ローガンに行ったら、「厨二病だな」とか言われそうなイメージを持って、私は切り札の一つを切ります。
その切り札は、私の物であって、私の物ではありません。
あくまで仮初の私が借り受けた力。でも、間違いなく今の私を強くしてくれる本物の力なのです。
その
「起動! 《ゴールド・ラッシュ》」
言葉を口にするのと同時に剣が黄金色に輝きます。
このスキルは、当然私の物ではなく、アンジェラさんの〈エンブリオ〉【錬換金湖 マーキュリー・オブ・ザ・ウッドマン】のメインスキル《
《ゴールド・ラッシュ》という、一瞬のみ機構を強化するスキルを使ったのです。
あの塔の戦いでも使っていたように、元々ローガンとミックさんはアンジェラさんに頼んで、それぞれ幾つかの武器に《ゴールド・ラッシュ》を付与してもらっていました。
二人が使っていた、黄金色に輝いた後で、消滅する。そんな共通点をもつスキルを使用していたことに関して、何気なく聞いてみた答えが、このアンジェラさんのスキルだったというわけです。
私はそこでは、「そういうスキルがあるんだな」としか、思いませんでした。あくまで、高価な機械武器を壊して強力な攻撃を行う、もったいないおばけが出てきそうなスキルだな、と。
しかし、その考えは思いっきり壊されました。壊して下さったのは、ミックさんの友人の一人のレオンさんです。
ミックさん伝手で、レオンさんたちと仲良くなった私は、人が足りないという理由でレオンさん達とパーティーを組んでクエストを受けたのが始まりです。
クエストをクリアーして、一度解散して……再びレオンさんに会った時、一つの疑問がレオンさんから投げかけられました。
それは「その〈エンブリオ〉って、もしかして機械武器なのかな?」、という物。
当然、答えはYESです。私の〈エンブリオ〉であるネフシュタンは、連結刃と発火機構がつけられた機械武器。そして、「そうであるなら、一つ面白い手段がある」とレオンさんは言って、一つのギャンブルを持ちかけました。
それこそが、ネフシュタンへの《ゴールド・ラッシュ》の付与。《ゴールド・ラッシュ》によって、ネフシュタンの
《ゴールド・ラッシュ》のデメリットさえも、私のネフシュタンならば無視できるかもしれないという利点を聞かされ試さずには居られませんでした。
破壊されてもいいように、闘技場の結界内で行われた実験は成功しました。この上なく、私にとって有利な内容で。
「まだです! 《狂乱の舞》」
《ゴールド・ラッシュ》によって強化したネフシュタンに加えて、【剣舞士】のスキルも使用します。
効果は単純に、攻撃力を1.5倍にあげるという物。もっともその代償として毎秒HPが1減っていき、その間HPを回復することができないというデメリットがありますが。
――黄金色に輝く炎を纏った蛇が、この空間内を蹂躙する。圧倒的な威力をもつ炎蛇の牙は容赦なく、機械の兵隊を喰らっていく。
さすがに、これだけ重ねれば一撃必殺なのです。
強化は4種類。
《ゴールド・ラッシュ》によって、全ての武器性能・武器補正の強化がされていて、単純な武器攻撃力だけで1000にいくほどにアップします。
【剣舞士】特有のスキルである《舞踏強化》もレベル10にいくまであげていたおかげで、時間が3分程度しかたっていないというのに、《ダンス・ダンシング・ダンサー》の強化値は2000に届きます。
さらには《狂乱の舞》の効果によって、攻撃力自体にもバフがかかります。
そしてそこに追い打ちをかけるように《焔を纏う蛇》も加わります。このスキルは単純に剣に炎を纏わせるスキルです。ただし、その威力はこのスキルを除く
合計一万オーバーの大火力。そしてそれを無尽蔵に叩きだすことができます。
◇
「まだ湧くのですか!」
あれから踊り続けて、さらに3分ほどが経過しました。
これまでに倒した機械の兵隊の総数は150を超えているでしょう。
最初に遭遇した敵を倒している途中に追加で呼び出され続け、10・20と増えていき、今の総数は200に届くかもしれません。
いちいち数えている暇はないので、数え方が適当な所もあるでしょうけど……、それほどに多いというのは間違ってないでしょう。
あれからさらに時間がたったことで、《ダンス・ダンシング・ダンサー》の強化値は4000を超え始めました。もっとも、既に一撃必殺の状況だったので、これ以上の火力強化がいるかどうかは分りませんが。
はっきりいって大変です。これだけ危険な戦いが連続して続くと、集中力を切らしてしまいそうになります。せめて、この戦いのゴールだけでも教えてほしいのですが……
敵が発射して来たビームをネフシュタンを盾に防ぎ、防げなかった攻撃を踊り続けながら、敵とは逆方向にステップします。
私の立っていた位置に突き刺さる十条の光線を見ながら、さらに襲いかかる光線を背後の壁を伝い宙に逃げながら回避します。もちろん、このときでも踊るのはやめません。やめたら《ダンス・ダンシング・ダンサー》の効果が切れてしまいますからね。
踊り続けながら、ネフシュタンを動かし一機そしてまた一機と潰していきます。
そして、ついに最後の一機に炎の蛇が噛みつき……
蛇のアギトが無機質な
「ふー。やっと終わったのです」
敵の残骸を椅子代わりとして、今回の成果を確認したところ………なにもありませんでした。
レベルが上がっておらず、さらにはドロップアイテムが欠片も存在しない。
倒したモンスターがいつもどおりに光の塵にならないことと関係するのでしょうが、これだけ戦い続けて成果が何一つとしてないことに、肩を落とさざるを得ないのです。
光の塵にならなかったということは、この機械の兵隊たちはモンスターではなかったのでしょうか? もしかしたら………
「っと、そんなに休んでいる暇はないのです。今はとにかく朱紗ちゃんを助けなくちゃいけないのです」
座っていた機械の残骸から下りて、地面に立つ。
後はどこに行けばいいかだけど………
「その前に、真っ暗で見えないのです」
基本的に夜の時間帯でモンスターと戦う場合、他の人と一緒になって戦っていたので、私自身は夜活動用のアイテムの類いを一切持っていません。
もちろんカンテラやライトなんかもです。
なのでこの暗闇のなか、どうすればいいのかと悩みます。
一応ある程度時間をかければ、多少は夜目はなれるでしょうけど、時間はかけたくないしそれだとあまり高速で移動しづらいです。
戦闘中は《焔を纏う蛇》の炎を明かりとしていました。
でも今は戦闘中じゃないですし、どうすれば………
「ああ、いや別に戦闘中でなくてもいいんですよね? 《焔を纏う蛇》」
剣に炎を纏わせます。
いつも使う蛇腹剣ではなく、ただの西洋剣としての状態で炎を纏わせ、即席のたいまつ代わりにします。
これで明かりの問題は解決ですね。別に戦闘スキルだからといって、戦闘以外で使っちゃいけないと決まっているわけではないですし。
ただ、ちゃんとした明かりじゃないから見づらいのが難点なのです。
前方に明かりを集中させるため、剣を正眼に構えて走りだします。
走りだして数分後、私の耳が異変を捕らえました。
明らかな戦闘音。それもかなり激しいものです。
敵と味方が戦っているのだと、気づいた私はそちらに向かって足を進めます。
そして、見たのは――
――巨大な機械の怪物が、女性……キャロルさん達に向かって、拳を振り下ろされようとしている場面でした。
「危ない」と思った私は、咄嗟にネフシュタンを鞭のように使い鎖として敵の拳を止めようとて、しかし一瞬しか止める事ができず、ネフシュタンの鎖は簡単にちぎられ、拳を振り下ろされてしまいました。
拳を振り下ろされ、キャロルさんが死亡……はしておらず、どうやら鎖で一時的に止めた甲斐があって、その一瞬で避ける事ができたようでした。
安堵を覚えながら、先ほどは必至でおぼろげながらしか見ていなかった敵の姿を確認し―――驚愕しました。
なぜなら、その敵は――
□迷宮内 【賢者】キャロル・キャロライナ・キャロライン
「一体☆どれだけ出てくるんですか―!」
先ほどから面倒なことだ。
いきなり、この暗い空間に移動させられたかと思えば、私とアンジェラの前に現れた機械の軍勢。
とりあえず、目の前が暗闇だとどうしようもない。《ライト・ボール》の魔法を使用して光源を作り出そうとする。すくなくとも10分程度は継続して使い続けようか。
私の手にもつ〈エンブリオ〉を握りしめながら、呪文を唱える。このゲームでは別に魔法を使う時に、詠唱をする必要はない。あくまでスキル名を唱えるだけで魔法を発動することが可能だ。
だが、私がしたいRPは、魔法を唱えなければならない。ただ魔法の名前を唱えるだけなんて、つまらないしおもしろくない。たとえ、それで敵にこちらの行動がばれるとしても、呪文を唱えるべきだろう。
呪文は即興で考える。詠唱をする必要はないが、《詠唱》スキルによって詠唱をする利点が生まれるのはいいことだ。
「――
――今こそ、我の声に応じよ。
――其は、世界を照らす、一粒の光明。
――
――
5秒ほどの《詠唱》によって、本来の
魔力が削れて行くのを確認しながら、スキルを実行する。
「《ライト・ボール》!」
一粒の光球が生成される。その光球は、光源となって周囲を明るく照らす。
一応、敵の姿はある程度認識できていたが、これではっきりと見える。
敵は襲撃者共が使っていた、機械の軍勢。
しかも、
数は20程度だが、私たちではきついかもしれないな。
アンジェラの方に視線を向ける。あいつも敵の軍勢を睨みながら、ちらりとこちらにも目を向け視線が合う。
アンジェラもわかっている。今の私は力になれない。
なぜなら、私は大火力にこそ特化している。ここがただの荒野であるというのならまだいいが、ここが私たちのいた場所の地下に創りだされたというのなら……私は全力を出せない。
そして、私の力の方向性も、主戦力としてあの敵軍と戦うのには向かない。
だから、アンジェラに向けて視線を向けた――今は任せるという意味を込めて。
「了解ッ! ほんとにあんたの力は使いづらいねぇキャロル!」
「文句は☆後です! 蹴散らしてね!」
「可愛い口調で言っても、中身が黒いってわけだ。これで魔法少女とは笑わせるねぇ」
余計なことを言うな。
自分も心の奥底で分かっている事実を指摘してくれるな。
もっとも、それに対する文句は言わない。私が魔法少女っぽくふるまおうとしているのと同様に、アンジェラもまた被ろうとする仮面がある。
それに、これはただの軽口だ。私たちのパーティーの中では、ミックに次ぐ純粋戦闘能力を持つアンジェラだが、それでもステータスがあまり伸びない【工兵】と生産職である【技術者】の混合でジョブを取っているため、ステータスはそこまで高くない。
あんなことをいいながら自分を鼓舞しているわけだ。「自分にできるのか?」「いや、これだけ無駄口をたたけるくらいに余裕のある自分が負けるわけない」、と。
だから文句は言わない。だが、
「まかせるのです☆」
応援はさせてもらおう。
アンジェラは地面から2丁の銃を取り出す。この世界での逸品。リアルでも使われるその銃の名は、
私の言葉に、「まかされた」という自身の想いを表すかのように、アンジェラは銃を黄金色に輝かせながら、敵に向かって突撃していく。
ここからの銃撃戦では、さすがに
さて、友人が私のために敵に向かって突撃してくれているんだ、このまま何もしないわけにはいくまい。
メイン戦力にはならないが、後方支援だけでもさせてもらおう。
呪文を唱える。唱える魔法は、妨害用の魔法。
「――
――今こそ、我の声に応じよ。
――其は、全てを包み込む、大地の抱擁。
――
――
補助はいらないな。
敵を認識しながら、その内の一体に向けて魔法を放つ。
「《グランド・ホールダー》」
地面から腕が出現する。
アンジェラを攻撃しようとしていた内の一体を、その腕をもって地面に押し付ける。
見れば、アンジェラがその間に1体の機械兵を倒していた。
まだ先はあるが、この調子なら問題ないだろう。アイテムボックスから【MPポーション】を取り出し、飲み干してMPを回復しておく。
初級の回復薬なので回復値はそこまででもないが、いまはすこしずつでも回復させてこちらに有利な、この戦況を長引かせたい。
再び、アンジェラがもう一体の敵に攻撃し始めたのを見ながら、私は再び詠唱をし始める。
◇
「やれやれ、これで終わりかね?」
アンジェラが最後の一体に銃弾を撃ち終えて、戦いを終了させる。
さすがに20足らずとはいえ、疲れたな。
精神的な疲れを感じながら、クールタイムが経過した【MPポーション】を再びアイテムボックスから取り出して飲み干す。
この戦いはこれで終了したが、全ての戦いが終了したわけではない。
ミック達他のやつらのこともあるし、なにより皇女がさらわれている。助けに行かなければならない。
ああ、そういえばアンジェラがいつもより焦っている気がしたが、皇女の事を考えていたからかもな。あいつはそういうのを放っておけない。
私としても、見逃せないしアンジェラにいって、次の場所へ移ろうかとしたその時。
―――怪物が現れた。
□迷宮内 【大戦士】ジャック・バルト
「ここは……全く何も見えないっ」
ルパン殿が使用したスキルによって暗転した先で、目を開くとそこもまた暗闇でした。
姫様を早く助けたい。だというのに、これでは姫様を助ける所ではない。
焦燥が口に出てしまう。
どうすればいいかと、悩みながら遮二無二駆けだそうとする私の肩を誰かが掴む。
焦っていた私は、それをはねのけようとするが、以外にその力は強くはねのける事が出来なかった。
暗い世界でようやくなれてきた目で、肩をつかんだ相手の顔を確認すると、それはルパン殿であった。
ルパン殿は、ダメですよ? とでもいうようなしぐさをしたかと思えば、口を開き一つの魔法を唱える。
「《ライト・ボール》」
光の球が生み出される。
その球によって、暗闇に慣れようとしていた私の目は眩しさを覚えるが、だがそれでも見えるようになったことに安堵した。
「すいません、ルパンさん。僕が《暗視》スキルを付与するスキルを使えばよかったんですが………《支柱は獣に変わる》のクールタイムですぐには出来なくて」
「なに、構いませんよ。元より、私の役目は探索とサポートですから。それにジャック殿が突っ込んでいって死なれてしまったら、私も悲しいし皇女もふさぐでしょう」
「申しわけありません。姫様を助けるのには、落ち着かなければいけないというのに」
反省をしなければならないですね。
姫様を助けたい思いに当然変わりはないですが、それでも確実に助ける為にはここにいる彼らの力が必要だ。
「いえ、ここで話しているわけにはいきません。先に進みましょう」
「そうですな、少し急ぎましょうか。《エンチャント・アジリティ》」
「はい」
ルパン殿がまた魔法を使う。スキル名からして、AGIをアップさせる付与魔法だろう。
スピードの上がった脚で駆けだす。
――自分にとって何より大切な彼女の事を救い出すために。
◇
「はあぁ!」
敵を切り伏せる。
敵は2種類。機械の軍勢と……そして手の甲に紋章を刻まれた、〈マスター〉とよばれる相手。
機械はいままでに15機ほど切り伏せ、〈マスター〉は5人ほど切り殺した。
これらを倒したのは私だが、しかし私の力ではない。私の力だけでこの20の敵を倒すほどの力を持っていないからだ。
それを助けてくれたのは、私の同行者であるレオン君とルパン殿の二人。
この二人がいなければ今頃私は殺され、そして姫様を救いだせなかったかもしれない。
もっとも二人の力は前面にでて戦えるものではないというので、戦っているのは私だけだが。二人は回復魔法や強化魔法をつかい私のサポートとして動いている。
それに不満がないと言えばうそになる。
レオン君はともかくルパン殿はあきらかに前面に出て戦う事ができる力を有している。
レオン君もルパン殿が戦えないといった時に、疑問を持った顔をしていた。
この状況下で、なぜ戦わないのだろうかという疑問がある。
もちろん、戦える力を持つのだから、戦え。なんて無責任なことを言うつもりはないです。
ルパン殿がおっしゃられたように、彼は今この状況下で戦う必要性を感じないのでしょう。生死が重要ではないらしい〈マスター〉と異なり、ティアンなのだから当然かもしれない。
私の見る限り、ルパン殿に悪意はない。人を見ることが長所な私の見立てだから間違いは……いや、わからない時も間違った時もあったか。
だけど彼が基本的に善人だという事は直感としてもわかる。しかしそれならば一体、ルパン殿は何を抱えて……
「申しわけありません」
そう考えていた、私の思考にルパン殿の声が介入する。
もしかして、失礼なことを考えていたことが、ばれたのか? とも思ったが、どうやら違うらしい。
一体どうしたんだろうか? と思い、ルパン殿の声を待ち、
「結論から言います。朱紗・I・ドライフおよび【山賊王】ヴィシャート・アングリカスの反応を感知しました」
それが私の待ちわびていたものであると知り、喜ぶ。
そして、私たちは先に進む。ルパン殿の道しるべによって一直線に姫様のもとへ向かう。
そして、私の目に飛び込んで来たものは――
□■迷宮内 【山賊王】ヴィシャート・アングリカス
「フンヌゥ」
拘束を砕く。
天より降ってきた4本の柱が、俺に拘束系の状態異常を与えていたため、しばらく動けなかった。
なんとか複数の耐性装備を使用した御蔭で何とか拘束を砕くことはできたが、間に合わなかった。
あと、数秒早く間に合えば、この迷宮から抜け出せただろうに。
しかし、そのことを悔いても仕方がない。
今はなによりも、この手の中にあるモノを旦那に届けなくてはならないのだから。
もっとも、そこまで面倒ではない。
迷宮から抜け出す方法などいくらでもあるし、その方法を身につけている俺がここから抜け出すのは時間の問題だろう。
さすがにそこまでに劣化化身どもの妨害を受けたら遅くはなるが、それも問題はない。
何せこちらの戦力は整っている。
雇った20人近い劣化化身共。
そして旦那から受け取った200近い、【自立型煌玉兵】。
なによりもあの怪物。伝説級とうたわれる、昔旦那が創って、進化の化身に干渉されてしまい封印することになってしまった、あれがある。
こちらの戦力は十分。あの怪物のみ、こちらがコントロールすることはできないが、それでも劣化化身共は俺までたどり着けまい。
もし仮に、幸運にもあれらに妨害されず、俺の元までたどり着けたとしても、その時にはこの俺が相手になってやる。
超級職という、この世界最大の力の一つをもってな!
だから負けなどない。
そう俺は負けない。俺より
To be continued