閣下改竄   作:アルカンシェル07

52 / 52
(=○π○=)<思った以上に筆が進んだので投稿

(=○π○=)<ちなみに、感想で返したんですが。「これいじょう第一部でオリキャラがでない」っていうのは

(=○π○=)<重要キャラが出ないってことなので、雑魚キャラや村人A的なのはそこそこだします、あしからず。


第25話 【悪魔騎士】悪魔による蹂躙の仕方

第25話 悪魔による蹂躙の仕方

 

□迷宮内 【悪魔騎士】ローガン・ゴールドランス

 

 「っつ! まだ、こんなにいたのか!」

 

 俺が無数の機械兵――イラストを知らないから正確なことは言えないが、もしかしたらあの【煌玉兵】かもしれない敵……を倒し、進んだ先には広大な空間。

 半径十数メテルはあるだろう、円形の広場じみた空間に、9人の人間が連れだって歩いていた。

 それは手に各々別の紋章を輝かせる〈マスター〉であり…………まず間違いなく、俺の()

 俺が出くわしたのは敵の背後だったため、気が付いていなかっただろうが、俺の声であいつらも俺のことに気がついてしまったようだ。………っち、うかつに声を荒げたのは失敗だったか、次は気をつけるとしよう。

 まずは、その前に………

 

 「敵を皆殺しにするとしようか、シュテル!」

 (はい、主様!)

 「あいつは! 決闘2位のやつだ! ステータスは低いから、速攻でやっつけちまうぞ、悪魔を召喚させるな!」

 

 敵の中から一人の〈マスター〉が俺を指さし、指示を出す。あれがあの中の司令塔のような存在なのかもしれない。だが、パーティー会場に強襲して来た、あの3人がいないな。ミックたちがおっていったから、別の場所にいるのか?

 

 「くらえぇ!」

 

 俺の元に〈マスター〉の一人が向かってくる。通常の武器ではあり得ないような奇形の剣を携え、赤い外套を纏ったその男は、上段より振り下ろそうとする。

 その〈マスター〉のスピードはかなり速い。おそらく相手のAGIは1000を軽く超え、俺の経験的におそらくAGIは3000近い。

 ジョブ構成はおそらくAGI特化の上級職ひとつと下級職を1~2個取っていると言ったところか。

 俺の今のAGIがやっと150を超えたと言ったところだから、お互いの速度差は3倍はあり、移動や攻撃速度はもちろん認識にもその差は及んでいるだろう。………赤いからと言って、なにも本当に3倍で動かなくてもいいんだがな。

 相手はまぎれもなく速い。しかし、いくら早くても………ステータスが高くても、

 

 「それではダメだな――」

 

 足を半歩ずらす。それだけで、敵の攻撃を避ける事ができる(・・・・・・・・)

 こいつはあれ(・・)と同じだ。

 何も考えず、ただステータスのまま振るえば、自分よりステータスが低い相手にあたるなんて考えている。それが【獣王】や【殺人姫】くらい、馬鹿げている差ならまた話は別だが、3倍差程度なら、別の要因で軽く覆すことができる。

 俺は相手の剣戟を避けながら、剣を振り下ろした〈マスター〉の後ろから近づいてくる、3人の〈マスター〉を見る。

 この3人は今の男よりは遅いが、それでも俺よりステータスが高いのは間違いないだろう。だが、それでもなっていない(・・・・・・)

 これなら、こいつらに対する対策はいらないな。あいつらの後ろにいる残り数人の〈マスター〉も魔法を発動させようとしていたり、もしくは遠距離攻撃だったりで、危険性は感じない。〈エンブリオ〉特有のわけのわからないスキルによっては、こちらもなにかしらの危険を背負うことになるかもしれないが、今は考える必要はないだろう。

 今やるべきは、こいつらの殲滅だ。

 

 (シュテル……いつものだ。PMD(汎用強化)

 (了解です。設定問題ありません、蹂躙なさるんですね!)

 

 シュテルが喜んだ声を上げる。今はプレイヤースキルと《空想武装》のスキルレベル上げの為に、剣を振るって戦う事の方が多かったが、その所為でシュテルが「悪魔を沢山よびだしましょうー」と何度も催促をかけてきて、若干面倒に思っていた。

どうやら、シュテルは【改竄悪魔】の名の通り、悪魔を沢山呼び出して闘う事を好むらしい。他の武器を装備することを嫌うネメシスと同じ感じだろうな。

決闘でさえ、自分の手札を隠すために悪魔をどれだけ(・・・・)出せるのか見せようとしなかっため、本当に悪魔を真っ当に召喚する機会に恵まれなかった。

だが、今回は別だ。いくら、なんでも〈エンブリオ〉の能力が判らない〈マスター〉複数相手に近づいて攻撃すると言うのは、防御力に今だ不安の残る現状試したくはない。

それにこいつらには………接戦による敗北ではなく、圧倒的な実力差による惨敗を味あわせてやりたい。

だから、

 

「いくぞ、《強化召喚(アドバンスドサモン)》“地獄の底より来たれ、我が最強の騎士よ”《コール・デヴィル・メガロニカナイト》!」

 

俺が呼び出したのは1体の悪魔。

敵の攻撃から避け、バックステップにより俺と敵の中間地点に黒い泡を浮かべ、それから俺が今呼び出せる最強戦力を召喚する。

自らの最強戦力を呼び出すことに高揚を感じ、すこし長めの召喚文を詠唱してしまったが、敵の〈マスター〉の中でこれを妨害できそうな相手はいないから問題はないだろう。

泡がはじけ、その中から悪魔が現れる。大きさはおよそ5メテル近く。全身を金属製の鎧をまとった巨大な悪魔。悪魔の半分ほどの大きさの巨剣を構え、赤い(まなこ)で目の前の剣を振り下ろした体制のままの赤い外套の男を見下ろし………そして、無造作に振るった巨剣で、ただの一撃でその男を光の塵に変える。蘇生猶予など、一秒さえも許さずただ無慈悲にデスペナルティに追い込んだ《メガロニカナイト》は、俺の意思を汲み己が蹂躙するべき相手を認識する。

 

「そんな、クルクルシュナイダー! 馬鹿な、あいつはAGI型だから防御力低いっていっても、それでも一撃で殺されるなんて!」

 

………あいつ、そんな名前だったのか。

まあいい。AGI型だからといって、一撃で倒されることに驚いているようだが、もしそいつを“上級”という区切りの中で止めたいなら、覚悟をすることだな?

本来の《メガロニカナイト》は純竜級の悪魔。【悪魔騎士】の奥義だが一つの街程のコストを要求されるというのに、その能力はそこまで高いものではない。純竜級といっても、数千万リルを払えば純竜級を買う事は出来るしな。

だが、俺が呼び出したこいつはそんなレベルではない。

 

「俺がタンクをする。他の奴はその間に決闘2位のやつをやっつけてくれ! 《オート・ヘイトカヴァー》《アストロガードォ》!」

 

鎧を着た男が構える。

盾は持っておらず、《アストロガード》を使用したという事は、おそらくあいつのジョブは【鎧巨人】ということだろう。

“蹂躙天蓋”も就いていたタンク向けのジョブの一つ。

そして確か《オート・ヘイトカヴァー》はタンク向けのジョブが持っていることが多い、ヘイトを集める事ができるスキルのひとつだったはずだ。特性としては『一定以下の自我を持つモンスターにしか効かない』という制約があったものの、それさえクリアさえできれば、どれだけ高レベルのモンスター相手にも使える便利と攻略サイト(というよりは情報収集サイト)で評価が与えられていたスキルの一つだったはずだ。

たしかにそのスキルは、意思と言う物を持たない召喚悪魔には効果的だろう。レジストなんて一片の可能性も無く、《メガロニカナイト》に効く。

実際に《メガロニカナイト》はあの【鎧巨人】の影響を受けて、あいつの元までまっすぐ駆けていく。

そして一直線に進む《メガロニカナイト》を迂回するように二人の〈マスター〉が武器を構え、連れ添う狼にのり、全く違う方法で俺を殺そうとしている。

おそらくあいつらの考えとしては、あのタンクが動けなくなる代わりに防御力を5倍にする《アストロガード》を使い、悪魔の攻撃を耐えている間に、無防備な俺を倒すつもりだろう。

だが、いくつか思い違いをしているな。

まず一つ、俺はそんな簡単に死にはしない。

 

「《レーザー・スラッシュ》!」

「《狼天…》」

 

一人の男が振るった剣をよけながら、敵が振るった剣を握る腕をつかみ、大外刈りの要領で敵の体勢を崩しながら、いまだ攻撃のエフェクトができる剣を、男の代わりに俺の敵に向けてふるう。振るわれた敵は俺に攻撃しようとしていた狼に乗った少年。

俺の知らないスキル………おそらく〈エンブリオ〉のスキルを使おうとしていた少年は、《レーザー・スラッシュ》をまともに身体に受け、攻撃がキャンセルする。

そのまま剣を振るった男を飛ばし、距離を取る。

剣を振るった男も、あの一撃を受けて未だに生きている男も、どちらも驚いているがそれほど大したことではない。

 

これが今の俺の実力。この世界に来てから約半年、〈エンブリオ〉の進化と言うわかりやすい強化が後回しにされた俺が、必死にプレイヤースキルという実力を手にするために重ねてきた努力の結果だ。

本来なら俺はそんなことをせずとも強くはなれるだろう。だが、最強には届かない。

俺は原作知識で知っている。俺と同等もしくはすこし低いと言っても、天才であり努力や研鑽を行っている連中を。

だからそのために、見返すために俺は自分のパーソナルを改竄する。

それで最強に至れるというのなら、努力だってしてやるし、知り合いを利用することもいとわない。

それと………、驚いて俺を見つめているようだが、そんな余裕は貴様らにないぞ?

後ろから後方役の数人の〈マスター〉が騒いでいるが、それは届いていない。

もっとも、今からではあいつらのAGIからしたら手遅れだろうがな。

俺に対して口を開こうとした剣をもった男が口を開こうとする。おそらく「なんで?」とかそんなことを言うつもりなのだろう。

だが、それを聞き届けるまでもなく、後ろから悪魔が追い付く。

 

「ガッ!」

「はっ!? なんで、ライ、ちょめ助――あ」

 

後ろから《メガロニカナイト(・・・・・・・・・)》が剣を振るい、剣を持っていた男の首を薙ぎ、そしてデスペナを与える。

それに驚き、声をあげた狼に乗る少年に、反応すら許さず音速(・・)で近づき、再び剣をもって一刀両断する。

その間わずか5秒。

《メガロニカナイト》がタンク役の【鎧巨人】に向かっていってから、俺を攻撃して来た二人とタンクの一人、計三人の〈マスター〉を瞬く間に処理した悪魔の騎士は、今度は敵に向かわず俺の前でその身体を張る。

理由は魔法使いの男を含めて火力の高いスキルを複数こちらに向かって撃って来たからだ。俺一人でも対処できないわけではないが、こいつの性能の高さを思い知らせるのなら、この方法がもっとも冴えたやり方だ。

俺をターゲットとした《クリムゾン・スフィア》や《ハイパー・ショット》などの、俺も知る強力な攻撃や、中には俺も知らない〈エンブリオ〉やレアジョブ由来の攻撃もいくつかまじっている。

HPがやっと300を超えた程度の俺なら、その内の一撃でも貰えばたちまちHPを削られてしまうだろう。まあ今は【救命のブローチ】をつけているから、一撃程度なら回避できるが、複数喰らえば死んでしまうし例えダメージが0でもダメージによる痛みがなくても、わざわざ喰らおうとは思わない。

もっともこの攻撃を喰らうのは俺ではなく、この《メガロニカナイト》だから問題はないだろうがな?

 

(シュテル、逃げられる可能性がある。あいつらが向かってくるならこのまま《メガロニカ》に任せるが、そうでないときのためにPMD(汎用強化)は維持しておけ、いざとなったら悪魔軍団を呼ぶ)

(了解いたしました主様。………いやぁ、早く逃げてくれませんかね、あいつら。すごいわくわくします)

 

いや、逃げるのを期待するなよ。一応は逃げてくれない方が楽なんだから、コスト的にもな。

そう思っていた俺の頬を熱風が通り過ぎる。どうやら攻撃を《メガロニカナイト》が防ぐことができたようだな。俺の位置からでは向こう側が良く見えないため、その瞬間を目撃することは出来なかったのが残念だ。

《メガロニカナイト》の向こう側で困惑した焦った声が聞こえる。「どうして」という声は今の一連の攻撃で《メガロニカナイト》が傷ついていない(・・・・・・・)からだろう。

それも当然、今の《メガロニカナイト》のENDとHPをもってすれば、あの程度の攻撃を多少の傷で抑える事ができる。

さて、驚き絶望している所悪いが、生憎とそんな時間は残されていないぞ?

俺の召喚悪魔はいまだ健在で力は十全を発揮できるんだ、そら今から悪魔が地獄へ向かいに行くぞ?

 

「っぐ、どうしてだよ! いくらなんでも俺たちと同じ〈上級〉がこんな強い悪魔を召喚できるわけない! 一体どうしてっ、ぐァ!!」

 

俺を指さし文句を言おうとした一人のPKを、《メガロニカナイト》が容易く屠る。

ヒーラーだったからだろう、前衛を倒した時以上に容易くそのPKは光の塵へと姿をかえる。

それにしても、「俺たちと同じ〈上級〉がこんな強い悪魔を召喚できるわけはない」、か。

一応訂正しておくと、俺はいまだに〈下級エンブリオ〉なんだが、指摘する必要性はないな。

確かに俺が呼び出した悪魔は本来の位階は“純竜級”として扱われている。

戦闘職の〈マスター〉なら〈上級エンブリオ〉に進化した段階で、“純竜級”を倒せるようにはなっているだろう。

だが、そいつはちがう。

悪魔のSTRはEND特化の上級タンクを一撃で屠ることができ。

悪魔のAGIは音速に移行する1万を優に超し。

悪魔のENDは上級の必殺を複数受けてなお、無傷でいることができる。

他のステータスも同様に高い(LUC以外)、そいつのSTR・END・AGIのステータスの数値は36,000。

すなわちそいつの位階は、ステータスのみで見るのなら“伝説級”に値する。

超級職である【魔将軍】の《ギーガナイト》に匹敵する大戦力だ。並みの〈マスター〉に超えられるものではない。

 

「っちっっっくしょう! 全員逃げるぞ、あんなのに勝てっこねぇ!」

(おや? 向かってこないのですね、残念ですがそれならこのまま殲滅するまでです。主様よろしいですね?)

「追いかけるのは面倒だしな。《強化召喚(アドバンスドサモン)》“来い”《コール・デヴィル・バタリオン》」

 

再び悪魔召喚を行う。今度はいつも使う《バタリオン》による悪魔の軍勢。

召喚数はいじってないため、その数はたった16だが、《メガロニカナイト》と一緒に敵を追い詰めるのに使用するのならこれでも十分だろう。

残りの(えもの)は6体。これで事足りるだろうし、足りなければ足せばいいだけだ。

呼び出した悪魔は、俺の号令を聞き飛び立つ。その速度は《メガロニカナイト》には遠く及ばないが、それでも元の数値から比べれば速いその悪魔は、PKたちを追い詰め狩るために飛び立つ。

この悪魔たち、そして《メガロニカナイト》共に、汎用強化と《強化召喚》による補正が加わる。

 

強化の数は3つ。

【魔式手甲 ゲーティア】による6つの召喚強化式のひとつ、《強化召喚(アドバンスドサモン)》によって全ステータスが2倍に。

シュテルによる《偽証》によって倍加されているスキルによってステータスがさらにアップしている。そのスキルは、【従魔師】のスキルである《魔物強化》。元のスキルレベルは下級で手にれられる最大数値にしているため、全ステータスは本来なら30%アップするが、それが今は3倍になり90%の強化がなされている。

そして同じく同系統の強化スキルがある。全種族平等強化の《魔物強化》とは異なる、特定種族限定の強化スキル。そのスキルの名は《悪魔強化》、見たままの通りに悪魔種族限定で強化するスキルであり、俺が就いている下級職のひとつである【邪教徒(ヒーザン)】によって得られるスキル。《悪魔強化》によるステータス強化は、《魔物強化》と同じで元々30%強化の所、《偽証》が加わり90%の強化がなされる。

結果的に、元が5000の《メガロニカナイト》のステータスは36,100へと至り、元が100の《バタリオン》は722になる。

《バタリオン》程度の強化率でも、並みのティアンなら強敵だし、《メガロニカナイト》に至っては………この通りだ。

 

「っちっくしょう!」

 

また再び同じ悲鳴が聞こえる。伝説級にまで至った悪魔を今のあいつらでは倒すことは難しいだろう。もっとも「不可能」だと断定はしない。それは慢心だ、〈マスター〉がそれぞれ持つ〈エンブリオ〉はそれを覆すことが可能な「わけわからない殺し」がある。俺もそうであるように、あいつらにもこの状況を覆すことが可能ななにかしらがあってもおかしくはない。

だが――見る限りそれは杞憂だったようだな。

あいつらは群れを崩し、散り散りになって逃げようとしている。もし手立てがあるのなら、それを企てようと思うだろうにそれが全く見られない以上、問題はなさそうだな。

いまも《バタリオン》が追い詰めた〈マスター〉の一人を《メガロニカナイト》が切り捨てた。

お互いの戦力差は一方的に広がるばかりだ。

 

そう――思っていた。

 

突如、爆炎が巻き起こる。

この空間すべてに爆風が届くほどの巨大で、おそらくかなり強大な爆発が都合3度。

発生源は元々《メガロニカナイト》がいた場所。

俺はそれに驚愕する。爆炎を起こせる相手がいたことよりも、あの《メガロニカナイト》を倒せる相手(・・・・・)がいたこと。

爆煙の端から、《メガロニカナイト》の身体が光の塵になっていくのが見える。あの3度の爆発だけで18万を超えるHPと3万を超えるENDを持つ、俺の最強戦力を倒せる奴が敵の中にいる事を考慮していなかった。故の驚愕。

そんな馬鹿火力を叩きだせる奴はあの変なRPをしている女か、もしくはファトゥムのような、大火力に特化した魔法職ぐらいだと思っていたからだ。

 

「……な…に!?」

(……主様! 気をつけてください! 今の攻撃(・・)は!)

 

ああ、《メガロニカ》を倒せる敵があっちに……いや、違う!

俺は全力で全速で、身体を崩し後ろからのあるだろう(・・・・・)奇襲に備える。

一瞬で注意を払ってなかったせいで、よく見ていなかったが、爆発が起こる直前………なにか光り輝く物を見た気がした。

あれは【魔術師】系統が魔法を通常通りに発動したことによっておきた事象(こと)ではなく、まずまちがいなく強力な魔法が込められた【ジェム】を使い捨てることによる最近語られ始めた【ジェム】生成貯蔵連打理論の体現。

純粋に強力な超級職の魔法(・・・・・・・)を込められた特性品。

しかし、そんなもの《大火力のジェム》を俺から逃げようとしていた〈マスター〉が持っているとは思えない。

ならば、そんなものを持っていそうな相手はひとつに絞り込める。

それは――

 

(っち、やはりか!)

 

俺のこめかみを通り過ぎる、一刃を横目で確認する。その位置は元々俺の首があった場所。

ジェムによって《メガロニカナイト》を倒した男は、気配を消し音速で俺の背後から奇襲を行ったのだろう。物凄く速く、そして容赦がない。

目線を少し横にずらし、攻撃して来た敵を確認する。

その人物は40を超した男性で、へんな形の頭部の骨を帽子代わりに被っており、そして服装はジーンズと革でできたジャケットという、変な恰好をしている。………〈マスター〉から変とは言われたくないだろうが。

 

(この男は……!)

(間違いなく、襲ってきた集団の一人です。お気を付け下さい主様)

 

 その男は、今日………いや、昨日になるだろう、パーティーに突っ込んできた4人の襲撃者の一人。

 この事件を引き起こした原因だろう男は、その顔に驚愕を浮かべてこちらを睨んでいる。推測だがその驚愕の原因は、奇襲を避けられたことだろう。俺のようにステータスの低い相手が、自分の攻撃を避けられるはずはないと、そうタカをくくった思いが裏切られた故の驚愕。

 俺のステータスの低さは、行動の一つ一つを見れば察することはできるし、なにより【斥候】なんかの基本的なジョブを取っていれば《看破》できるから、ばれたこと自体は問題ではない。

 いま重要なのは、この状況をどう切り抜けるか。敵の攻撃を避ける為とはいえ、体勢が崩れていてすぐに動き出せない俺を、今度こそはちゃんと仕留めると意気込みを見せながら第2の刃を振るおうとするティアンから、どう切り抜けるか、だ。

 

 (《融合召喚(フュージョンサモン)》によるスピードアップ……は間に合わないし、なにより逃げる為のダッシュをする余裕がないから却下だな。なら……シュテル、PSA《物理強化》―チーム!)

「《速効召喚(クイックサモン)》“割りこめ”《コール・デヴィル・チーム》!」

 

《速効召喚》によりAGI型の超級職からしても速いといえる速度によって、3体の悪魔が瞬時に召喚される。

強化部分は、ポイント節約のためのポイント()と、《チーム》の平均ステータスであるSTR()AGI()の3つ。

このお互いの距離が近い状況では、数をいくら増やそうと意味はあまりないし、強力な悪魔を呼ぶよりは使い捨ててでも、この状況をリセットした方が得策だろう。

敵の男は仕留めようとした俺が呼び出した悪魔によって、その攻撃が鈍っている。これなら“保険”を使わずとも、凌ぎきることができそうだ。

 

「投げろ! はじけ! 盾になれ!」

「邪魔ダァ!」

 

悪魔に命令を下す。

呼び出した3体の悪魔の内1体に自分を投げ飛ばさせ(・・・・・・・・・)

1体を敵に向かわせ、弾かせる。もっとも、倒されるだろうが、時間を造り出せれば問題ない。

そして最後の1体はそのままそこで防御に努めさせる。こいつも倒されるだろうが、それでも時間は稼げる。

 

「っぐ!」

 

自分に圧力がかかったと思うのと同時に、身体が浮遊感に包まれる。

うまく悪魔は俺を投げ飛ばしてくれたようだ。3倍化が入ったとはいえ、元々ステータスが低いが、子供一人を投げ飛ばすことくらいはできるからな。

数メテルの距離を飛ばされながら、必死に体制を整え、地面に身体をすりつけながら、立ち上がる。

同時に、敵を確認すると、男の周囲から光の塵が3つ立ち昇っていくのが見える。やはり、速攻で倒されたか。

だが、役目は果たした。

 

「シュテル汎用強化――《二重召喚(デュアルサモン)》“来い”《コール・デヴィル・バタリオン》」

 

悪魔が稼いだ数秒を利用して32体の《バタリオン》を呼び出す。

敵の男は「面倒だ」とでもいうように、顔をゆがませてついていないというのに、地を払うように両手に握った短剣を振るう。

まだ、こちらからはしかけない。悪魔を追加することもしない。

俺は自身の強化にジョブの方向性を進めてきた所為で、《看破》をはじめとする便利なスキルを一切持っていない。だから、敵の情報が全くない。

敵が応じるかはわからないが、と思いながら口を開く。

 

「ずいぶんと物騒な物を持っているな。あの強化した《メガロニカナイト》を倒すアイテムなんて、どんな手段で手に入れたんだ? それもやっぱり、盗んだのか?」

「ハァ? なに勘違いしてやがンだ!? あれは盗んだんじゃなく、旦那が念のためって渡してくれた、《恒星》を込めたってヤツで………って、なにおれはまじめに化け物に返事を返してるんだか?」

 

馬鹿正直に答えてくれるとは思わなかったな。

なら、もう少し話を続けて、情報を聞き出そう。

そう思った、俺の話を切り、あいつは獰猛な顔を浮かべて、宣言する。

 

「俺の名前は【山賊王】ヴィシャート・アングリカス。化け物どもにいちいち名乗るのも無意味だろうが、生憎とこれから全てを奪うときめた相手に名乗るのは、俺の流儀なんでな。さあ、とっととくたばってもらうぜ?!」

 

そして――この世界の【超級職】(絶対強者)の一人が動きだす。

 

To be continued

 




(=○π○=)<《恒星》を扱える魔法職……きっと、【炎王】に違いない!(ミスリード)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。