閣下改竄   作:アルカンシェル07

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第6話 ヴァニリア村

 

第6話 ヴァニリア村

 

 

□皇都中央広場 【悪魔戦士】ローガン・ゴールドランス

 

 あのあと深夜近くまで俺とルンペルシュティルツヒェンの二人で、貰った情報を読みながら、効率のいい方法をいろいろと模索していた。

合い間の息抜きがてらにステータスなども確認してみたがレベルが14に上がっていたこと以外にはたいしていうこともなかった。

新しいスキルも覚えていなかったしな。

それと初心者パック代わりのアイテムボックスに入っていたのは、本当に500ポイント分の素材アイテムだった。

後に調べた情報によると、この素材アイテムは使用する状況が少ないため換金アイテムとしては価値が低く売却金額がかなり低いとのことだ。

 一度、食事と排泄のためにリアルに戻ったが、すぐにこちらに戻ってきた。

まあリアルの眠りなんてずっとこっちに居れば問題ないしな!すごい廃人思考ではあるが、他にもそういうやつがちらほらといる所に〈Infinite Dendrogram〉を含めたMMOの闇があると思う。

俺はこういうのは好きだからいんだがな。

 

 夜遅くまで起きていたせいか、朝早くに目覚めることは出来ず、俺たちが目覚めたのは朝の7時くらいだった。

5時起きが目標だったんだが。

 起きてから宿屋を出た後、まず初めにもらったリストをもとに換金用アイテムとして目星をつけたアイテム数十個をそれぞれに別れて、これまた貰った情報をもとに一番売却による利益率が高い店を探しだして売却した。

アイテムボックスも最初に貰えるのとギルドで貰ったやつの2つがあったので、別々に持つことができたという理由もある。

 昨夜に効率化の為に別れて行動することをルンペルシュティルツヒェンに説明した時、「主様と別行動をしたくないです」とかいってかなり嫌がっていたが、安全だという事を説明して効率の為に分けさせた。

結構最後の方まで反対はしていたが。

 分担して売却が終わった後、お互いに合流して保有リルを共有したあと、また食糧や回復アイテムなど数点を別れて購入した。

こういうときはフレンド等と違い、マスターと意識を持つエンブリオはどんなに離れていても心の中で会話ができるので便利だと思う。

 その後は、お互いに近い位置での合流ではなく南門に直接集合をした。

クエストのある地方である東門ではなく南門にした理由は2つ、俺たちが売却・購入をしていた商業区域が南門のすぐそばであり、これからすぐにクエストに行かないからである。

 ルンペルシュティルツヒェンより用事がすぐ終わり、あいつに「先に南門でまっている」と心の中の会話によって伝えた俺は、ルンペルシュティルツヒェンの「申しわけありません、すぐにそちらに向かいます」という焦った声を何度も聞きながら南門で少し待つことにした。

 

 

 特にやることも無く、南門の端っこの方でのんびり青空を眺めながら10分ほどしていたら、皇都の商業区の方から何度も大声で謝りながらルンペルシュティルツヒェンが走りながらこっちに向かっているのが見えた。少し恥ずかしいんだがな。

 ちなみに恥ずかしいのは大声の方で、10分前から10秒おきにルンペルシュティルツヒェンから内声で何度も謝って来ていたのでそっちの方に関してはもう何とも思っていない。

もうあいつの性格に関して、そういうものだと諦めかけている。

 

 「申しわけありません、主様。不肖、この私主様を10分もまたせてしまうとは……」

 「ああ、もういいよ謝らなくて、別にシュテルが悪かったなんて思ってないから、ただ単にお互いに振った仕事の量がそっちが若干多かったっていうだけの話だろう?もうこの話はおしまいにするぞ、クエストにすぐ行かずこっちに来たのはいくつか実験をしたかったからなんだからな」

 

 また長い懺悔になりそうなルンペルシュティルツヒェンの科白を途中で打ち切り、こっちの意思を伝える。

というかさっきからそのセリフは十分前から何十回何百回と聞いていて耳に残っているんだよ、あの後の科白を一文たがわずに当てられる自信があるぞ。

 

 「実験ですか?それはもしかして昨日の夜に主様がおっしゃっていた、あのやってみたいことという奴でしょうか」

 「ああ、そうだ。とりあえず昨日はモンスターを倒すこと一辺倒だったからな、道中ではやりづらい課題だったからな。今日はここであと1時間くらい一通り試してみるぞ」

 「わかりました主様。モード内包形態移行します」

 

 そういいながら、ルンペルシュティルツヒェンは光の塵となり俺の中に入る。

 上手くいくかな?と思いながら俺はいくつかの試してみたいことをやってみるべく、悪魔を召喚する呪文を唱え始めた。

 

 

 あの後、いろいろと試したいことを行っていたらいつの間にか1時間がたとうとしているのに気付き、今召喚している悪魔を消して、クエストの地へ向かうべく歩きだした。

 最初はこの皇都から〈ヴァリニア村〉まで馬車に乗っていく積りだったんだが、さっきの買い物の時についでに話を聞いた限りでは、ここから村まで馬車で1日位はかかるそうだ。

さらに俺たちは〈マスター〉のため、半日以上の長距離移動はログアウトが気にならないように共同ではなく個別に馬車を借りることになるため、かなり割増しになるようで通常なら1日1000リルのところを5000リルくらいまで値上がりするそうだ。

払えない金額ではないがいろいろと入用だし、そこまで急ぐ旅でもないのでのんびりと歩いて移動することにする。

それに場合によってはこのほうが早いしな。

 ちなみに馬車以外にも竜車なんかもあるが、そちらは通常1日10000リルで個別にチャーターすると10万リルもするらしい。そんなお金持ってないし、持っていたとしても俺なら装備やポイントに変換するだろう。

後半の億単位を簡単に稼げる位にレベルがたかければ話は別だが。

 場合によっては、非常食(コスト的な意味で)兼移動手段として、亜竜でも買おうかな?まあ、今の所持金事情だとそんな高価な物は買えないんだが。

 

 「実験の成果は成功と言っていいのでしょうか?」

 

 歩きながらルンペルシュティルツヒェンはそう問いかけてくる。

 ちなみにもう内包形態は維持していない。

ずっとあの状態になっていると、俺がエア友達と話しているような感覚に襲われる。

必要な時ならいいが、別に通常の移動時ならアポストル形態のままでいいだろう。

このあたりに出てくるモンスターで奇襲をしてくるモンスターはいないし、周囲にはモンスターはいない。

どうやら〈マスター〉たちに近場のモンスターはある程度倒されてしまったようだな、と思いながらルンペルシュティルツヒェンの言葉に返す。

 

「成功と言っていいのかはわからないけどな。まあ一番確かめたいことは確かめられたしいいか」

 

一時間という短時間で調べたため不明な点もまだまだあるのだが、ここは最大の疑問を確かめられたことをポジティブに喜ぼうか。

 

「そういえば主様。聞いていなかったですが、ここから村まで結構ありますよね。馬車で1日かかかるのに歩いて行くのは時間がかなりかかりませんか?」

「ああ、そういえば説明していなかったな。昨日貰った初心者用セットの中に地図があったのは覚えているな」

「ええ、そういえばしれっとありましたね。」

「んで、皇都のすぐ横側、ようは皇都と村の間に北西から南東にかけてそこそこの大きさの亀裂があったんだけど判っていたか?」

「いえ、申しわけありません。まったくもって気づきませんでした」

 「まあ、俺も昨日の夜に地図を見た時はあれ?っと思っただけだったんだが、今日馬車小屋の人に話を聞いた限り、皇都と村の間はそれほど距離が離れてはないらしい。それなのにここから村まで時間がかかる理由はその亀裂なんだ。〈クリエラ渓谷〉っていわれているらしいんだがその亀裂があるせいでまっすぐ進めないせいで、迂回しなくてはならないから余計に時間がかかるらしい。天竜とか怪鳥とか従魔にしている人は1時間もかからずに到着できるという話だったな」

 

ちなみに〈クリエラ渓谷〉ができた原因は伝説によると、時の【覇王】と【猫神】がぶつかったかららしい。

まあぶつかるというか【猫神】の分身を一掃するために【覇王】が吹き飛ばしたって感じじゃあないかな。

ちなみにカルディナに向かう場合は普通に迂回しながら進めばいいせいで、その渓谷に橋なんかを掛けることはなかったそうだ。

まあ一部の村の為に大規模工事をするのは国政上きついかもしれないな。

ルンペルシュティルツヒェンは俺の説明を聞き、なるほどと納得していたようだが気になることができたようで「あれ?」という言葉とともに質問をしてくる。

 

「主様。ここから村まで近いというのは解りました。ですがその渓谷はどうやって超えるというのでしょうか?私たちもまた天竜や怪鳥を従魔にしてはおりません」

 

 ああ、何だそんなことか。

まあ確かに疑問ではあるのかもな。

 でもそんなことは全然問題じゃあない。

確かに俺たちに従魔はいない。

でも決して空を飛べないわけじゃあないんだ。

一応説明しておいてやろう、つまり―――

 

 

皇都から歩いて13時間後、空は完全に陽の光を落とし完全な夜になっている。

周囲が荒地で障害物も何もなかったから歩き続けることができたが、そうでなかったらもっと早めに休む準備をしていただろう。

 現在の時間は夜の10時。

目の前には大きな亀裂、というか崖がある。

夜目に見ることができる範囲に対岸が見えないので、どれくらいの幅があるのかは見当もつかないがかなりあることは確かだろう。

 

 「とりあえず今日は野宿だな。一応野宿の為のアイテム一式を購入して置いて正解だったな。値は張ったが」

 

 そう言いながらルンペルシュティルツヒェンと一緒にテントを張りその中でくつろぐ。

 野宿のアイテムの中にあった、使い捨てのモンスターよけの結界をアイテムボックスより取り出し起動させる。

この結界はレベル20以下の通常のモンスターという狭い範囲ではあるが、モンスターを近寄らせないという優秀なアイテムだ。

その分使い捨てではあるが。

 

 「今日は結構歩きましたね主様」

 「そうだな、昨日は合間に休憩をはさんでいたが、今日は道中のモンスターを倒し続けながら歩いていたからな結構疲れた。とはいえ明日は朝早く起きるぞ、この結界もそれほど長く持つものではないそうだからな」

 

 そう言いながらアイテムボックスから買っておいた二人分のサンドイッチをとりだして食事をとる。

 食事をしながらアイテムドロップを軽く整理しておく。

覚えているポイント交換リストと照らし合わせながらいくつかのアイテムを交換しポイントの残存数を3000ポイントまで回復させておく。

食事をとり終えたら、軽くルンペルシュティルツヒェンと雑談をした後二人して寝ることにしたのだった。

 

 

 「おおすごい大きいですね主様!」

 

 あの後何事も無く朝起きた俺たちはテントの外に出て、その光景に驚いた。

俺たちが見たのは広大な割れ目だった。こちらの崖から向こう側の崖までゆうに数kmはあり、その底は全く見えない。

確かにこれに橋を架けるのは大事業だな。

モンスターもいるだろうし数百年単位で国庫を使いつぶす必要があるだろう。

今日はこれを越えなければならないが、その前に。

 

「まずはこのテントを片付けるぞシュテル」

 

 まあ後始末は基本だな。

 

 テントを片付けて、簡単に食事をとってから移動をする。

 もちろんこの割れ目を歩いて行くのは不可能だ。

だからこの手をとる。

 

 「さあ俺たちの足となれ“地獄より来たれ、三位一体の小さき悪魔”《コール・デヴィル・チーム》」

 

 その言葉とともに泡が噴き出て3体の悪魔が出てくる。

 そう今回は数を倍加してはいない。

 今回倍加しているのは召喚時間とAGIの二つ。

 昨日、ルンペルシュティルツヒェンに説明した通り、倍加の箇所を変更して生み出された俺たちの移動手段(・・・・)だ。

 俺たちに天竜や怪鳥と言った従魔は存在しない。だが空を飛べるのはそれだけではない。

俺たちが創りだせる《チーム》の悪魔もまた空を飛び移動することができる。

長距離を移動するためにポイントの箇所を減らし、長距離を飛ぶために生み出されたその3体の悪魔の内1体に俺を持たせて、残り2体を俺たちの護衛とする。

ちなみに速度で勝る《ビギナースカウト》は飛ぶ能力を保有していないため今回は《チーム》1択となった。他のスキルも同様に飛べないしな。

 

悪魔に抱えさせて空を飛ぶ。

速度はそれほど速いわけではないのだろう。

AGIも並みの戦闘型下級マスターと同程度だ。

だがいままで歩いて走ってきたのに比べれば、それは画期的ともいえる。

いままでにない経験というものに心を僅かばかりだがふるわせて空の旅を楽しむのだった。

 

 

 割れ目を超える積りで長距離飛行用の《チーム》を生み出したのだが、どうやらすこしばかり余分をとりすぎたらしい。

 割れ目を超えた時点でまだ半分ほど召喚時間が余り、楽だからと空を飛びながらいくと近道を結構できてしまったようで、《チーム》が消える頃には〈ヴァニリア村〉のほとんど目の前に着いてしまった。

 

 「予想外に早く着きましたね主様」

 「そうだな、考えてみれば今の俺の5倍近いスピードを出せるんだものな。そりゃはやいよな」

 

 ちなみに俺の今のAGIは19である。

金やポイントに余裕ができたらブルジョア移動も悪くはないか?ないな。

 空から眺めながら来た感じだと、風星なんかがまわっているという事も無いし、この村の第一印象は普通の山間の村といった印象ではある。

 建物の数が少なく、農地や牧場がそれなりにある。

もちろんRPGのような2・3軒しかたっていないわけではなく百軒くらいは建っているが。

 どうやら朝の仕事があるようで、何人かがまわりで農作物を育てたり家畜の世話をしていたりする。

 仕事中に俺たちに気付いた人間もいるようだが、それほど気にせずにまた仕事に戻っていく。

警戒心が薄いのか、歓迎する心が無いのやら。

まあ盛大に歓迎してほしいとも思わないし、警戒されまくるのは困るからこれくらいでもいいんだが。

 とりあえず、クエストを達成するために村長に話を聞くとしようか。

 仕事中の人間に声をかけるのは少し気が引けるので、誰に話しかけようかと思っていたが、ちょうど建物の中から40くらいの女の人が出てきたのでその人に村長が居る所まで案内してもらうことができた。

 

 

 案内してもらったのは、一軒の高床式の木でできた家だった。

イメージとしては軽井沢にある別荘やコテージのような感じであるだろうか、少し違うかもしれないが。

 女の人に案内してもらった礼を言うと、階段を上り木製のドアをノックすると、少し間があいてから中から一人の老人が出てきた。

 背は腰が曲がっているせいか、それほど高くはなく俺より少し高い程度で髪は禿げていて白くて腰まで届くほどに長いひげを蓄えている。

 この人が村長なのだろう。

 

 「何だ坊主ども、見かけない顔だな」

 

 いの一番に、そんな失礼なことを渋い声でぶつけてきた。

まあ相手は依頼人だ、我慢してこちらから挨拶するとしよう。

 

「俺は悪魔戦士ギルドから依頼を受けてやってきた【悪魔戦士】のローガンだ。こっちはルンペルシュティルツヒェンだ」

 「よろしくお願いします。主様の〈エンブリオ〉のルンペルシュティルツヒェンです」

 

 そう言いながら簡易ステータスとクエストの控えを見せる。

 

 「悪魔戦士ギルドの人間じゃと?はて、わしが依頼したのは一人のみという話だったが、なんでお主らは二人もおるんじゃ。それにいくら下級で構わないという契約だったとはいえ、少しレベルが低くはないかの」

 「俺は〈マスター〉だからな、そこらへんの下級よりずっと強いぞ?それとこいつは俺の〈エンブリオ〉だから契約した人数には数えなくていい」

 「〈マスター〉とはなんじゃ?まあいい、お主らが一人として換算されるのならば、こちらとしても問題はない。では契約の内容を確認するとしようかの」

 

 そういい、中に案内される。

 どうやら家というより集会場のような感じらしい。

 中に物はそれほどなく、広い木張りの床が続いている。

 イメージ的には体育館だろうか、まあ普通に集会場をイメージしてもいいが。

 村長はアイテムボックスをとりだすと、その中から座布団を3枚と地図を1枚取り出した。

 村長が座るといいと促したため、俺たちは座布団に座って村長の話を聞くことにした。ちなみに俺は胡坐でルンペルシュティルツヒェンは綺麗な正座だ。

 

 「さて、お主らのギルドに依頼したのはこの周囲に存在する森の中のモンスターの一掃だ。少し前からモンスターが増えてきたのか森の中から出てきて、この村に悪さをかなりしおっての、既に村人に怪我をする者も出ている。さすがにすべて除去しきれるとは思えないから、3日という期限の中でモンスターを可能な限り倒してくれ」

 「いくつか質問をしていいか?」

 「構わんぞ」

 

 とりあえず、今の話の中でまたはこのクエストを受けた時から気になっていることをいくつか聞いておこうか。

 

 「まずはモンスターを討伐した証についてはどう証明する?する気はないが討伐結果を騙る奴もいるだろう」

 「それに関しては雰囲気かの。とりあえず、森からモンスターが出てこなければいい。もしお主が一掃した後にもモンスターが変わらずに出てくるようならギルド伝手で請求しなおす気じゃったからな。まあそんな事を言い出すのならお主に関してはそんなことも気にしないでいいじゃろうが。ああ、報酬に関してこっちが難癖つけるのも気にしなくてよいぞ、基本的に前払いする気じゃったからの。悪魔戦士ギルドのマスターからも言われておったが、お主たちは先に報酬があった方がいろいろと戦いやすいのであろう?」

 

 大雑把だな。

まあ先に貰えるというのなら有り難く受け取るが。

 それに確かに俺たちのジョブは最初に報酬を受け取った方が戦いやすいな。

 さてこの質問はいいとして、その次はどうかな。

 

 「それじゃあ次だ、なんで悪魔戦士のギルドに頼んだんだ?クエストを依頼してくれたことはうれしいが、普通の冒険者じゃあだめだったのか?」

 「だめじゃの、冒険者ギルドに連絡するといろいろな人間が来る。こっちは一人を雇う金しかないのに数人に来られても困るんじゃ、一人のみ指定も玉石混合だからの。それに十数年前に冒険者ギルドに依頼した時、魔法使いが一人きおっての。そいつがモンスターを一掃しようと森の中で火属性の魔法を唱えおったのじゃ、あのときは火を鎮火するのにかなりの労力が必要になった。あの森も資源の宝庫じゃし、広範囲を一気に破壊するようなタイプには来てほしくはないんじゃよ。だからジョブを指定できるお主らの所に依頼したのじゃ、一人でかつ複数人分の仕事ができて広範囲を攻撃できないジョブであるお主らにの」

 

 へえそんなことがあったのか、その魔法使いは何を考えていたのやら。

 やっぱり広域殲滅型はこういうのには向いていないな。

マップ破壊はモンスターを倒すことには向いているけれど、破壊してはいけない場所があると一気にその価値を落とすからな、市街戦とか。

 

 「それじゃあ最後かな。なんで下級でいいんだ」

 「さっきも言ったが上級を雇う金なんてないからの。それに出てくるモンスターが弱いのばっかりという事情もある。内には戦闘型の人間などいないのに怪我をするだけで済んでいるのがその証左じゃの。もっともモンスターが一度に2~3体しか来ないというのも理由じゃが」

 

 なるほどね、まあ問題はないな。

 

 「ふむ、了解した。それじゃあやらせてもらおうか。っとその前にもうひとつだけいいか?」

 「うん?まだあったのかの」

 「この3日の間、俺の食事と寝床はどうすればいい?」

 「なんじゃ、そんなことか。そうじゃのお主にはここに泊まってもらおうか、もちろん寝具などの一式は貸し出すぞ。食事も朝・夜用意してやろう、といっても普通の食事じゃがの。ちなみに今日の朝はいるのか」

 「ここか、そうだなそれじゃあ有り難くここに泊まらせてもらうとしようか。いや今日はもう食べたからいいさ。明日から頼む」

 

 少し広くて夜が寒そうな気もするが、贅沢も言えないな。

 この家は夕方まで村長が使うという事なので、家を出てクエストをクリアーするべく外に向かう事にする。

 戦闘を開始する前に、一旦この村にセーブポイントを移した後、ログアウトして食事なんかを終わられてから再びログインした。

あっちの時間でも10時間位はログインしっぱなしだったからな。

 

 ログインをした後、外に出て《チーム》の数倍加とポイント倍加の基本コンボでモンスターを倒しながら、ポイントが高いものを変換し続けていた。一度ログアウトも

夜深くまでモンスターを倒し続けていたおかげでレベルも一つ上がり、スキルも一つ覚えていたようだ。

 夜が深いため、試すことは出来ずにスキルの内容だけ確認してから用意された食事をとり就寝をすることにしたのだった。

 

◆◆◆

 

■〈ヴァニリア村〉郊外・森林奥地 ■■■■・■■■■

 

 それはまどろみから目を覚ました。

 それは最初からこんな所に居たわけではない、もともとは〈厳冬山脈〉に生息していた。

 ここに居る理由は生存競争に負けたから。

 その地である怪鳥に負け、仲間に頼ることなどもできず、この地まで逃げて来たのだった。

 手ひどい傷を負いながらこの地までやっとのことで辿り着いたそれは、この地で傷がいえるまで休眠をとることにした。

 村にモンスターがあふれ出した理由は増えすぎたからではない。

確かに十数年前のモンスターがあふれ出した理由は、森に収まらないほどに増殖したからである。

 だが今回はそうではない、その理由はそれが森の奥地に住み着いたからである。

 それの傷はまだ癒えてはいない。

 傷が治るまで休眠をとろうとしたそれが起きたのは、先ほどから周囲のモンスターたちが騒がしいからである。

 それは人間がモンスターを倒していくのを感じ取っていた。

 別に周りのモンスターがいくら人間に倒されようと問題はない。

それにとってとるに足らない雑魚がいくら倒されようと自身に関係が無い。それは間違いなくその森の中における絶対強者なのだから。

 だからその人間をどうかしようかという思いはただの気まぐれ。

 自身が傷をいやすのに周囲がうるさくてはかなわないから、その原因を取り去ってやろうというどこまでも上から目線の、当然の決定。

 そう決めたそれは、その身を起こした。

 それが足を踏み出すたびに地面は陥没し、地響きが鳴り渡る。

 

『GURURURU GAOOOOOOO!!』

 

 それは咆哮する。己の強さを示すために。

 その咆哮によって周囲のモンスターがチリジリに逃げるのを視界の端でとらえる。

 そして、それ――純竜と称される絶対強者は村に滅びをもたらすべく動き始めた。

 

To be continued

 




(=○π○=)<1章ボス登場。
(=○π○=)<最初の予定では亜竜だったけど、それだと簡単に倒せそうなんでグレードアップしました
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