次で一巻終わります!ではどうぞ!
その映像が通神に流れたのはガンダムブエルアスタリスクが見せた赤黒い血の光から僅か一瞬の出来事。
トーリと抱き合うホライゾンの二人。取り戻した現実とそこから始まる未来が見てとれた。
「時間さね!」
直政が輸送船に乗ってその場に現れた。
撤収と叫び、輸送品の網を投げ込んだ。投げられた網に地上にいた武蔵の学生たちは一斉に駆け出した。次々と乗り込む中、トーリはその場を走り出すインノケンティウスを追い出した。それに続いてホライゾンも後を追う。
「おい、ちょっと待てオッサン!?」
「トーリ様、状況的に見てもう一つの大罪武装は無理かと思います」
「ごめんな淫乱に出来なくて!」
「「「そうじゃねぇえから!?」」」
全員から違うと突っ込まれた。
「どちらにしろ時間切れだ、来い!」
正純に言われて垂らされた網を掴もうとしたところ、そこにインノケンティウスが現れた。その後ろにK.P.A.Italiaの部隊が隊列を組んで立っていた。
「行かせるかよ!」
「だいだい姫の推薦入学だと!?帰るまでが遠足だと言うことを忘れたか!」
インノケンティウスが術式が纏められた紙を取り出し、輸送艦へ撃った。
「武蔵に戻るまでは受理無効だ!馬鹿者がぁぁぁぁぁぁ!」
術式を撃った衝撃で輸送艦が上下に激しく振られた。そのせいで網に捕まろうとしたトーリたちが置き去りになった。
形勢逆転から一気に大ピンチに陥ってしまった。
「やばくねこれ……!?」
『なら、そこから動かないことだな!』
優頼からの通神が聞こえると、武蔵が停泊している陸港から砂煙を巻き上げながらブエルアスタリスクが現れた。そして、K.P.A.Italiaの部隊に囲まれる寸前、兵ごと突っ込んでいった。
その巨体に突っ込まれたらいくら屈強であろうと高い防御術式であろう、塵に等しかった。
『早く乗れよ』
「さっすがだな優頼!」
手を差し出し二人を乗せて、一気に空へ飛び立った。
後方に離れていたお陰で難を逃れたインノケンティウス。苦々しい顔をしてブエルアスタリスクの姿を見ていた。
その時だった。後ろに待機させてある栄光丸が勝手に離陸し始めたのだ。
「え、栄光丸!?何をしておる!」
「か、艦長や先輩たちが自分たちで追うと」
振り向くとそこにいたのは皆若い学生ばかり。代表して一人の学生が言い出した。
「若者ばかり降ろしただと!?」
『聖下船をお借りします!』
「どういうことだ!?」
『聖下がご健在であればK.P.A.Italia、旧派は敗北したと言えません』
「返す気はあるのか?」
『Tes!テスタメントに謙譲しているのであれば!』
「ならば行け!貴様ら時代を刻め!俺は不断を担当する!」
『気遣い、至福を!』
艦長は応え、武蔵へ向けて栄光丸を飛ばした。
二人を回収したブエルアスタリスクは輸送艦へ向けて飛んでいた。
センサーに大型航空艦の反応があった。
「ちっ、なにがなんでも逃がさないわけか!おい、副会長とおっさんの娘!馬鹿と姫の回収を頼む」
『了解したで御座る』
二人を輸送船の上に降ろし、向かってきている栄光丸に向く。血華鋏を分離し鉄血と鉄華にした。
「さてと、どうしたものか……な!」
船橋へ向けて攻撃を加えた。連続で同じ箇所へ的確に打ち込んでいくが、ビクともしない。
「硬すぎるだろ!?」
血華鋏の上位駆動を使いたいが、先ほどの起動とグレイズの時に流体を使ったため使えない。
「ならよ、これならどうだ!!」
鉄血と鉄華を背中に仕舞い、腰から二本の流体剣を引き抜き船橋付近へ刺した。内部で爆発しているのが流体剣から伝わってきた。
『急いで戻ってきてくれ、今からアリアダスト君が悲嘆の怠惰を撃つ』
「了解!」
流体剣を船橋から引き抜き、栄光丸から離陸した。
その直後、武蔵側から黒い手を表した光線が撃たれた。遅れながらも栄光丸からも白い光線を撃った。二つの光線がぶつかり合い拮抗し始めた。若干ながらも悲嘆の怠惰が押され始めた。
『オイ馬鹿押されているぞ!?』
『え?じゃ、じゃあ、お、押し返し』
『疑問しますが、何故ホライゾンの尻をこね始めるのですか?』
『危険なんですってば!?』
そんなときでも通常通りである。優頼は生きていたら殴ると心の中で決めた。ふと、通神に顔を向けると浅間が此方を見ていた。
「どうした?」
『いえ、こんなときによく笑っていると思いまして』
「笑っている?」
浅間に言われて、自分の口許を触った。確かに上がっていた。こんな状況の時でも笑っていたのだ。それがおかしくて、懐かしくて、それでいて悲しくて。
「そうか。そうだったな」
『どうかしましたか?』
「浅間ありがとな」
『えっ?』
『『『優頼がお礼を言っただと!?』』』
「よしてめぇら帰ったら武蔵艦内の甘味処買ってこい。それで許してやる」
そうこうしているうちにトーリ話し出した。
『お前らいまカッコいいことしゃべってんだから邪魔するなよ!』
悲嘆の怠惰の出力が上がった。黒い光線から黒と金の光線に変わり栄光丸の光線を飲み込み始めた。
『歌えよホライゾン、通すための歌を!!』
涙を流しながらホライゾンは歌い始めた。
毎朝聞いていたPー01Sの通し道歌ではなくホライゾンの通し道歌。己を通すための歌を歌い出した。
通りませ 通りませ
行かば 何処が細道なれば
天神元へと 至る細道
御意見御無用 通れぬとても
この子の十の 御祝いに
両のお札を納めに参ず
行きはよいなぎ 帰りはこわき
我が中こわきの 通しかな
悲嘆の怠惰から撃たれた光線は金色の光線に変わり、栄光丸の光線を飲み込み、その船体を破壊していく。栄光丸から撤退にしていく船員はいたが間に合わず、船橋を破壊し船体を半分破壊した。
操縦不能になった栄光丸はそのまま墜落し爆発した。
『どうして、感情とは、こんなに、こんなに辛いものですか』
『泣けよホライゾン。俺がここにいるから。辛い感情を吐き出せよ』
悲嘆の怠惰を投げて、トーリに身を預けた。そんなホライゾンを優しく抱く。声を殺しながら感情が辛いのかを問った。
『どうして!?』
『そりゃ簡単だ』
そっと肩に手を置き、ホライゾンの目線に合わせた。
『……すべてを取り戻した後のオマエには、もはや、嬉しいことをたくさん得ることしか、残ってねんだからさ。だったら、楽しんでいこうぜ、俺と二人で』
いいかと、小さく笑いながら話し出した。
『もう、俺は泣くことができねぇ。だから俺の代わりに泣いて、叫んでくれ、そして……』
梅組や教師、警備隊などが集まった。
そこには夕日の逆光を浴びながら唇を会わせた二人の姿だった。
ブエルアスタリスクから降りた優頼はその光景に、良かったと思った。昔見た光景が脳裏に浮かぶ。
優頼と浅間と喜美、トーリそしてホライゾンの五人でまた過ごせる。
「すべての感情を従えて、俺と一緒に笑ってくれ、ホライゾン」