武蔵では、正純がトーリの後悔の話を聞かされていた頃、ここ三河では忠勝達が用事で席を立ったあたり。
外には優頼、酒井、榊原の三人が店を出ていた。空はもう少し綺麗な夕日が見られるころ。
軽い雑談をしながら目的地まで歩いていた。話題が少なくなってきたころ、酒井から本題を話出してきた。
「井伊はどうした?あいつは国政や開発担当だったよな?」
「神隠しにあったんですよ」
神隠しにあった。ここ三河は怪異が多く出現していると。その時にやられたんだろう。だが、酒井にはあり得ないと思った。仮にも一緒に戦った仲間であり、その強さも衰えたからといってもあり得ない。次に榊原の口から言われたことによってさらに頭を悩ませることになる。
「その神隠しを起こした者達のことを、公主と呼ぶことを」
「公主だと?」
「聞いたことがありますか?三十年くらい前に言われるようになった存在。子供たちの間では都市伝説として広まっていることを」
「聞いたことがあります。ここ最近、少しづつ噂になっていますね」
「公主ってあれだな。中国における王家の娘のことだよな。正純の母がそれにあっているしな」
「話ははやいです。二人とも今の三河は昔と大きく変わっています」
榊原は息を吐き、言葉を出した。
「公主を追ってください。それが全てを知る答えです」
「どういうことだよ?」
「公主があった場所ではこんなマークが見られます」
榊原は足を使ってそのマークを書きはじめた。円を書きはじめて真ん中に一本の線を引いた。
「二境紋。血で描き、メッセージも血で書いています。井伊君のところには“もう遊べないと”これが消えたものたちの所にあるものです」
「待ってください。霧に隠れるというより、ダメージを与えてその場にヒントを残すって、あきらかに誰かやったということですよね。それに公主ってどういう存在なんですか?」
「そうですね、誰か名付けたのか、それに誰が犯人なのか数多にあります。それに個人犯なのか複数犯なのかわかりません」
「ちょっと待てよ。それだと、公主は神隠しじゃないのか?」
「ええ。井伊君の書斎には争った形跡はなく、そのままの状態でした」
「どうやって、拐ったんだよ?自動人形はいたんだろ?」
「ええ。ですが、死角に潜りこめばいいですし、酒井君や本多君のような早さで動けるならいけるはずです」
納得してしまった。だが、目的はなんだ?と二人は考えた。神隠しと言う名の誘拐。それになんのメリットがあるのかが分からなかった。
「知っていますか?公主達は人を拐うことで世を救おうとしていることを。そして、二境紋はその警告。人好んで誰が証拠を残しますか?彼らは好んで印を落とすのです」
まあ、井伊君が調べたことですけどね、と付け加えた。酒井は次の質問をした。
「なら、どこの教導院や教譜なんだ?そいつらと三河の現状どこに関係ある!?」
「少し待っていてください。その資料を持ってきます」
「おいおい、だったらお前の家で待たせてもらえればいいじゃねえか?」
「私の家は本多君の近くなんですよ。ただでさえ本多君、君に今回のこと知られたくないんですよ」
「俺だけのけ者かよ。一緒に四天王した中なのに」
「心配させたくないからですよ。では、八時半にここで」
そう言って榊原は自分の家に向かおうとしたとき、優頼が止めた。
「行く前に一つ、ホライゾンのことを聞かせてくれ。あいつの背中に俺と同じものがあった。ずっと聞けなかったことだが、なんで記憶と感情を消し、名前まで変えたんだ?」
「私にはわかりません。ですが、感情なら大方考えている通りでしょう」
「そう、か。なら、最後だ。今日何をするんだ?」
「それについては今夜、殿が話すでしょう。では」
榊原は家に向かっていった。
優頼と酒井は茶屋でお茶を飲みながら、ゆったりと待っていた。
「優頼、お前さんその背中のものは何か知っているのか?」
酒井が聞いてきた。
「さあな、これといって使ったことがないどころか使い方がわからない」
優頼はそう答えると、注文した団子を食べた。続け様に話した。
「さて、と。学長、いや酒井のおっちゃん。思い出したこと話すよ」
「ほう、珍しいな。進展でもあったのか?」
「まあね。結局、戦闘だけだけどね」
優頼は見た夢を話した。
優頼は何故夢を話始めたのか。それは、記憶に繋がる大事なヒントだから。それが確信になったのは、優頼の近くに落ちていた武神の特徴が似ていたから。所詮、子供の夢だと関心は持たなかった。松平・元信公以外は。
夢がどんどんと現実みを帯びてきたのは、武蔵に来てからだった。子供にはない体力と戦闘能力が現れ、成長していくうちに力を取り戻していったように思えたのだ。夢を見終えたときに、そう言った普通の人間ではあり得ない成長と力の解放が起きた。
「今回は何も起きない?」
「ああ、いつもなら戦い方を叩き込まれるんだけど、今回は何か違った。今回の夢はブエルに乗って仲間を助けると言う何時ものと大体似ていた。似ていただけで、戦闘が終わるまでじゃなくて、戦っている最中に目が覚めたんだ」
「そうか。別に気にしなくてもいいんじゃないか?今日はそう言った夢を見たってことで」
酒井の言葉で渋々納得した頃、自動人形がこちらへ向かってきていた。
「酒井様、旦那様からの資料をお持ちしました」
自動人形から渡された資料を見たのだが、何も書かれていなかった。いや、薄くではあるが何かかが書かれていた。
「二境紋を追え、だと。それに創世計画?なんだこれは」
「酒井のおっちゃん、なんかヤバイ気がするんだけど」
「いくぞ!」
走り出した酒井の後ろを優頼は追い、榊原の屋敷へと向かっていった。門をくぐり、部屋を目指すと、扉が開いている部屋を見つけたので、そこに入ると壁には赤い円に横に一本線を引いたマーク二境紋と血文字で、なにをしてるのと書かれている壁を見つけた。荒らされた形跡はなく、人だけが取っ払った感じだった。
「おいおい、榊原の奴危ない道には行かないだろ」
「松平四天王が二人、公主隠しっておっちゃん、急いで殿のおっちゃんところに行こう」
「いや、下手に動くとこっちが危なくなる。だが、情報だ!いくぞ」
二人は、榊原の屋敷を後にして、武蔵へ向かう時、関所のあたりの山で爆発音が聞こえた。そこへ急いで向かった。山に入り、隆起している木の根や藪を走りぬけ、そろそろと言うところで妨害を受けた。酒井は足を払われたが、うまく避けた。優頼は藪から見える影を殴ろうとしたが、地面に叩きつけられていた。
「がはっ⁉」
「大丈夫か⁉」
「老いたな。優頼成長したな。だが、少しは落ち着いて行動しろ」
そこにいたのは忠勝と鹿角がいた。その手にはシンプルながら機械的な槍があった。酒井は気づいた。
「蜻蛉切、神格武装じゃねぇか!」
空からは武神と警護艦の飛行音、そして、地中からも音が聞こえてきた。
「地脈が暴走しているのか⁉」
「ああ」
「そんなことをしたら、三河が消滅するぞ⁉」
「それが殿が求めていたことだ。榊原には何も聞いていないのか?」
「公主隠しにあった。そこまでして、なにがしたいんだ本多のおっちゃん!いくら、殿のおっちゃんが望んだことだからって」
「創世計画のための一歩だ。それによって救えるかもしれないと」
酒井は小太刀を、優頼は足に術式を展開した。だが、先に忠勝が蜻蛉切を突き出した。
「結ぶぞ」
ドスの効いた声で言った。
「そういうことか。事象すら割断する蜻蛉切。番屋という事象を割断し、騒ぎが大きくなる前に制圧したのか」
「ああ。お前ら、早く立ち去れ。こっから聖連の奴ら迎撃するからな」
「死ぬぞ」
「殿の命だからな。それに、殿が望みを守り、ただ勝つのが我の忠義だ」
そういって、立ち去って行った。
「おっちゃんいくぞ」
「……ああ」
二人は急いでその場を去った。