東方想伝録   作:司馬懿です

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はじめまして。
司馬懿と申します。
呼びやすい名前で呼んでください。
本日から東方の新作を投稿していきます。
前回まで投稿していた作品とは全く違う物語なので、是非新しい東方作品をご覧くださると幸いです。
ではどうぞ


プロローグ『人間不信が幻想入り』
幻想郷入りした人間不信者


11月 秋の終盤。

気温も下がり、先月まであんなに色鮮やかに街を彩っていた紅葉も枯れ落ち、クリスマスという、来月のイベントにも関わらずそのイベントの象徴であるツリーが店や街の中央などに飾られていた。

 

「もうそんな時期か…」

 

俺、天雨 光(あまぞら ひかる)は食材を買った帰り道、そのツリーを眺めながら白くなった息を吐いていた。

辺りを見渡すと、そこには笑い声を出しながら肩を組み合って歩いている高校生のグループ、お互いにマフラーを巻いて手を繋いでいるカップルや子供と楽しそうに会話をしている親子、もう日も暮れるというのに未だスーツ姿で耳に携帯電話を当て、歩道を走るサラリーマンなど、人で溢れかえっていた。

その人達を見て俺は酷く『哀れだ』と思った。

友人?恋人?家族?全て『他人』だ。

中学時代に友人になっても、三年も経てば切り捨てて新しいモノに移り変わる。

『何があってもお前を助ける』という言葉に何人もの被害者が救われ、絶望を味わったのか。

実際に助ける場面に陥れば本人は知らないふりをして加害者側に加担したり、見捨てたりするだろ。

付き合って、『これからもずっと一緒だよ』と口で約束するのは簡単だ。

数ヶ月経ってしまえばその約束も忘れてお互いに別れを告げ、また新しいものに移り変わっていく。

血筋が同じでも考えは全く違う他人に過ぎない。

いつまでも一緒にいるわけでもないし、一緒に死ぬわけでもない、『親だから子供を守るのは当たり前』なら何故子供に対する親の虐待が無くならない?

結局は自分が大切なのだ、自分の都合で何もかもを切り捨てて都合良くする。

それがこの世の中だ。

自分がいつでも優勢に立てれるように作り上げられている。

俺はそんな世の中を憂鬱に思いながらまた足を動かした。

俺の家は古い三階建てのアパート、一人暮らしだ。

16歳からこの暮らしを始めていて、めでたく6周年でございます。

やはり独りは楽で良い、誰にも邪魔されず、臭い言葉を投げかけられる事もなく、誰かの顔を見る事も無い。

俺の唯一の楽園は独りである。

親は16の時に事故で亡くなっている。

そのためこの暮らしを始めたきっかけでもある。

22にもなって職業には属していない。

俺がこんな性格をしていたせいか、職場での印象は悪く、周りにも嫌われ、僅か半年で退職した。

幸い両親の遺産がとてつもなくあって一生暮らせていけるのでなんとかやっていけてる。

……まぁ何が言いたいかと言うと俺は『人間不信』という事だな。

かつて仲の良かった友人との連絡手段を削除したし、恋人もいるはずもない、家族も死んで、本格的に孤独になっている。

そんな何の面白みもないニート生活を俺は毎日送っているということさ。

 

「……とまだ7時だというのに眠気が襲ってきたな……」

 

まぁ粗方話はしたし、あとはお前らの理解力に任せるよ。

そうして俺は深い眠りについた。

何気ない眠りだったが、まさかこの後とんでもない事になっていたとは…俺すら知らなかった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・

 

ふと目が覚めた。

いつもは眠気が残っていて視界がぼやけていたが、そのぼやけている視界でさえ分かるほどで俺の眠気は一秒も掛からないうちに吹っ飛んだ。

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白くてカビが生えている屋根がガラッと変わって真紅の色をした屋根に変わっていた。

それにいつも背骨をやらかしている布団とは違って今すぐにでも眠ってしまいそうなフカフカの布団になっていて、この瞬間から俺の思考はそれだけになっていた。

少し経って周りを見回すと、これまた赤一色に染まった部屋だった。

本棚も机も椅子も変わっていて、ついに俺は孤独のあまりやってしまったんだなと思った。

 

「……ハハ……気が狂ったか…ついに人殺しなんて…」

 

「あら…目が覚めたようね」

 

俺が一言呟くと扉の向こうから女性の声が聞こえた。

『誰だ』と扉の方へ声をかけると、ゆっくりと扉が開き、その姿を見せた。

 

青みがかった銀髪に真紅の瞳。

身長は人間で言えば10歳にも満たないような背の高さだが、口元から鋭い牙が顔を出していて、背中に大きな翼を持っている。

見た目からして吸血鬼だろうか。

頭にはナイトキャップを被っていて白の強いピンクで、周囲を赤いリボンで締めている。結び目は右側で、白い線が一本入っている。

衣服は帽子に倣ったピンク色、袖口には赤いリボンを蝶々で結んである。

小さなボタンで、レースの服を真ん中でつなぎ止めている。

 

「おい…ここは何処だ、そしてお前は何者だ…何の目的で俺をここに置いた」

 

俺は目の前に非現実的な生命体がいるにも関わらずその幼女に質問した。

幼女は半分呆れた顔で答えた。

 

「ここは『幻想郷』という貴方の暮らしていた世界とは全く違う世界に建っている『紅魔館』所謂私の家ねそして私の名はレミリア・スカーレット、レミリアと呼んでちょうだい吸血鬼として500年以上生きていたわ、そして目的は無いわよ、貴方が紅魔館の道端で倒れ込んでぐっすり眠っていて正直驚いたわ、眠ったまま幻想入りしたのね」

 

「……すまない少し時間をくれないか?頭の中を整理する」

 

「構わないわよ」

 

俺はレミリアという吸血鬼を前に彼女の口から出る言葉に頭がついていかなかった。

少し時間を置いてなんとかまとまった。

 

「えーと…まずは自己紹介が遅れたな、俺は天雨 光 つまりここは俺の知っている世界じゃなくて、今ここで眠らせてもらってたのが紅魔館というレミリアのお家でレミリアみたいな吸血鬼が普通にいるということは…」

 

言いかけた瞬間俺のポカーンとしていた目付きが一変鋭くなった。

 

「…吸血鬼以外の生物…例えば妖怪や魔法使い…神々といった人間離れした奴らが住んでる世界ということか…?」

 

「めんどうな説明が省けて気が楽だわ、その通りよ」

 

レミリアは変わらず笑顔で答えた。

なるほど、この幻想郷はレミリアみたいな吸血鬼とかの人間離れした奴らがうじゃうじゃいるのか…またこりゃ大変な事になっちまったな…

 

「そうそう、寝起きなところ申し訳ないけれど今から向かって欲しい場所があるのよ」

 

「場所?」

 

「幻想郷でも数少ない神社なのだけれど貴方の世界でもあると思いから詳しい説明は不要よね」

 

神社…確か愚かな人間が何も努力せずに神頼みする場所だったか?普通に考えてみろ金使って神様にお願いしてんだぞ、だんだけ神様曲がってんだよ。

神様に頼むけど最終的には自分の実力次第ということなんだ。

神頼みなんて単なる自分を安心させるようなもの。

まぁ今からそこへ向かうらしいが道が分からないな…

 

「とりあえずこの世界については私の自慢のメイドが案内してくれるわ」

 

「……メイド?」

 

メイド…たしか喫茶にオタッキーな男が扉開けてご主人様呼ばれされて飯とか作って食べさせて男が満足してる奴のアレか…?

 

「今貴方が考えている事とは180度違ってるわよ、実際のメイドは召使いのようなもので私のメイドもその部類よ」

 

なるほど、ただ単に仕事として働いているのか…ん?メイド喫茶も立派な仕事だよな…?いや、もうこの話はやめようめんどくさくなってきた。

 

「今は朝食を作ってるから食事場を案内するわ」

 

レミリアの言葉に俺は一つ疑問が生じた。

 

「おいレミリア」

 

「何かしら?」

 

「……今何時だ?」

 

「んー…正確に分からないけれど朝の10時くらいかしら?」

 

おいおいおいおいおい俺いつの間に睡眠障害になった夜7時に寝たんだよな…?今朝の10時………15時間も寝てたのかよ待ってくれ俺そんなに寝たなんて初めてだぞ、ってかいつからここで寝てたんだ俺

 

「そうね…大体みんなが寝静まった頃だから…11時とか?」

 

ほぼお世話になっちまってるじゃねぇかよ、ドウシテコウナッタ、いやこれきっと夢だ、俺が孤独を愛しすぎて見えてしまった夢だ、今すぐ目を覚ますために…

 

「残念ながら夢じゃないわよ。頬をつねってみるわよ?」

 

「いででででで!タンマタンマ!ほっぺが千切れる!」

 

クソ痛かった…これが現実か…

 

「ほら、茶番はこれくらいにして早く朝食にするわよ」

 

「え、俺も朝食にすんの!?」

 

「当たり前じゃない、貴方何も食べてないでしょう?」

 

「まぁそうなんだが…」

 

「良いから行くわよ」

 

俺はレミリアに袖を引っ張られた。

なんかこの図妹みたいで可愛いなっと心の中で呟きながら俺は思うがままに食事場に連れていかれた。

 

食事場に着くと、広い部屋にその部屋と同じくらいの長さの机に沢山の椅子屋根にはシャンデリアがこの部屋全体を照らしていた。

この館何人住んでんだ…?

レミリアに指定された椅子に座るとレミリアはその反対の席に座った。

そこへさっきまで居なかったはずのメイドが2人分の食事を持って来た。

これがレミリアの言うメイドか…

 

っと俺はメイドの顔を見た瞬間、ほんの一瞬だった。

そのメイドの顔を無意識に見つめてしまった。

それは恐怖心や警戒心でもない何かである。

一体なんなのか、違和感を感じながら俺は近付いて来るメイドを目で追った。

 

「ありがとう咲夜、紹介するわ。彼は天雨 光 昨晩紅魔館の門前で倒れてた人よ」

 

「この方でしたか…初めまして十六夜咲夜(いざよいさくや)と申します」

 

咲夜という名の美しい女性はメイド服のスカートを両手で掴んで頭を下げた。

思わず俺はその美しい姿に魅入ってしまった。

髪型は銀髪のボブカットであり、もみあげ辺りから三つ編みを結っていて髪の先に緑色のリボンを付けている。

瞳の色は青、身長は、女性からして大きい方だろう。

服装は青と白の二つの色からなるメイド服であり、頭にはカチューシャ(ホワイトブリム)を装備している。裾の長さは膝上丈~膝丈程度。

凛々しい声に反応が遅れかけたが何とか自我を保ち、自己紹介をした。

 

「こちらこそ先程レミリアさんから紹介されましたが、改めて 天雨 光と申します」

 

「……よろしくお願いしますね、天雨さん」

 

なんだ今の間は?

俺何かまずい事言ったか…?

少し心の中で嫌な感じがした。

その後レミリアから「さ、食べましょう」と言われて目の前に置かれた、朝食に目をやった。

タマネギと肉汁のソースがかかった南蛮チキンだった。

一度食べてみたいと思っていたが、まさか本当に食べられるとは思っていなかった。

俺は内心歓喜に包まれたが、表上無表情で用意されたフォークとナイフを持った。

 

……いや待てよ?考えてみろ、相手は対面して数十分の生物、こんな見知らぬ人間に食事を提供するなんて馬鹿にもほどがある俺がこいつらを殺して紅魔館を支配する可能性だってあるのだぞ。

……本当はこいつら目的があるのではないか?…これ何か薬入ってるのではないか…?

俺は南蛮チキンをナイフで切る直前にそう思った。

 

「失礼ながら薬などの物騒なものは入れてませんが…?」

 

しかし横にいた咲夜さんが表情は変わらないが怒りがこもっている声を発した。

言葉ではいくらでも言えるだろう、俺はそう簡単に騙されないからな、どいつもこいつも簡単に口説けると思ったら大間違いだ。

しかし、一度は食べたかった食べ物に心とは裏腹に俺の体は既にその料理を口の中に運んでいた。

内心『しまった!何やってんだよ俺!』と思ったが、体は言うことを聞かず歯で肉をかみ、喉に通した。

そして次の瞬間…

 

「……美味しいです」

 

思わず思った事が口から漏れてしまった。

本当に美味いだけで特に何も起こる心配はなかった。

 

「これで私達が貴方に対してなんの目的もないと言う事を分かってもらえたかしら?」

 

「…………」

 

俺は黙り込んだ。

確かにこの料理は美味しくて、特に何も起こる訳でもなく、何より吸血鬼であるレミリアが俺を襲ってこない事に疑問を感じていたし、この11時間、眠っている俺を殺す事だっていくらでも出来たはずだ。

本格的に俺に対してなんの目的もないのだろうか……俺は……俺は……

 

「……分かりました」

 

考えるのがめんどくさくなったのでとりあえずこの言葉で返事をしておいた。

まだ出会ったばかりだし、まだその時が来る日ではないということだろう。

まずは様子を見て、危険だと思ったら逃げ出すとしようか。

 

こうして俺の人間不信幻想郷生活は始まったのだ。




如何でしょうか?
題名とは違ってとんでもない始まり方でしたが、そこから脳みそフル回転で制作していきます。
次回はいつになるか分かりませんので、気長にお待ちくださると幸いです。
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