東方想伝録   作:司馬懿 雄也

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今回は光くんを少し強くしてみようと思います。
とあるゲームの能力を参考にしています。
では、どうぞ


第2章『新たな能力と迫り来る脅威』
想いと記憶


「……おはようございます」

 

「おはようございます光さん…ってどうしたんですかその目の下のクマは!?」

 

 

「あはは…」と苦笑いするしかなかった俺は今日も眠気覚ましに顔を洗いに行った。

パチュリーとの対戦が終わったその夜から何故かずっと眠れない日々がここ数日続いている。

悪夢やストレスとかで眠りにつかなかったのは前の世界に居た時もこういう事があったし、いつも通り眠りにつきやすいように温かいミルクを飲んで、ストレッチをして体を解してから床に入っていたが、それでも解消されずにここまで引きづった。

稽古の合間に仮眠を取ってなんとかバレないようにしていたが、ついに目の下のクマの酷さを指摘されてしまうくらいにまで進展してしまった。

顔を洗ったあと鏡を見て何度も確認するが…酷いなこれ映画のホラーシーンで亡霊に取り憑かれた人の顔みたいになってるぞ…。

これが更に続いたら不眠症ということなんだが、どうするか早めに対応しておかなければならないんだが…永遠亭に行くか?その前にレミリア達に伝えておくべきか?でも変に心配されたくないし、隠れて1人で行くか。

 

 

「そんなコソコソやってても既にみんな気づいてるわよ」

 

「レミリア!?いつからそこに」

 

「貴方が鏡を見ながらため息をついてる辺りからよ…まったく貴方の事だしどうせ隠れて永遠亭に行こうとか思ってないかしら?」

 

「………思ってねぇよそもそも永遠亭に行く気なんてまったくねぇよ」

 

「はぁ…貴方が行く気なくても紅魔館(わたしたち)は無理矢理連れて行くわよ」

 

「……」

 

「どうするのかしら?何より()()()が一番心配してるわよ」

 

「あの子?」

 

「咲夜よ、稽古中妙に静かな貴方を見て自分の料理が当たったかとか寝床の掃除に誤りがあったか、なんて言ってたわよ」

 

 

咲夜さんがそんな事を思っていたのか、確かに咲夜さんの料理が当たった、寝床の掃除に俺の体が合わなくて眠れなくなったのもひとつの原因として取り上げても良いだろう。

だが、俺はそうだとは思わない、何故なら咲夜さんの料理はいつも美味しく頂いているし、体の変化に関しては1番気を使ってくれている。

何より手伝いをしている俺が咲夜さんがどんな食材や入れ物を使っているか1番間近で見ることが出来るし、変な入れ物を使った際、味の変化にはこれでも敏感な方だ。

寝床に関してもこれは無いに等しいだろう。

昔から俺はどんな場所でも寝ていたのでまず寝床が原因で不眠症になることはまずないし、そもそも原因として不眠症は食欲低下や心や体の病気、ストレスで発症するものだ、食欲は旺盛だし、なんなら咲夜さんの料理をおかわりしているくらいだ。

どちらも当てはまらない話だ、となるともっと他の問題になってくるのだが、まずは咲夜さんの不安を解消するためにここはレミリアの言う通り永遠亭に行くとするか。

 

 

「分かった、咲夜さんの不安も解消したいしな咲夜さんと2人で行ってくるよ」

 

「素直で良いわじゃあ朝食を食べた後に行ってきなさい」

 

 

そして朝食を食べた後咲夜さんと一緒に紅魔館を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・

 

永遠亭に向かう途中、というか紅魔館出る前からすごく気になっていた。

咲夜さん…()()なんですけど!?

白色のワンピースにエメラルドを付けたピアスに白の真珠のネックレス、灰色のバッグを腕にかけて一緒に歩いているが、これ完全にデートモードだよな…?いつもはメイド服なのにどういう風の吹き回しだ…?

 

 

「えっと…今更なんですが咲夜さん…どうしてそのような服装を?」

 

 

目のやり所に困ってついに根負けした俺は森の中という雰囲気台無しな場所で乙女にとってはめちゃくちゃ失礼な発言をした。

 

 

「これは…お嬢様が『せっかくだし今日は休養日にして羽を伸ばしてお出かけを楽しみなさい』と言われて私服を用意したのですが、やっぱり似合わないですよね」

 

 

咲夜さんは俯きながらそう答えた。

表情からして罪悪感にかられているように見えた。

やっぱり俺の不眠が自分のせいだと思っているのか…。

仕方ない無意味かもしれないが、ここはひとこと言ってやるか。

 

 

「すごく似合ってますよ咲夜さん!やっぱり美人な女性はなんでも似合うって言うのは本当なんですね!」

 

「そ、そうですか…?」

 

「はい!」

 

 

咲夜さんの表情にも少し緩みが出てきたな、いや正直言って俺にはもったいないくらい似合ってると思う。

これはお世辞でもなんでもない、マジでコンクールに出しても文句なしの1位だと言っても良いくらいだ。

心なしか眠気が無くなってきたように感じる…これが目の保養と言うやつか…!

…と意味の分からない思考をしながら歩いていると、咲夜さんから例のことについて切り出してきた。

 

 

「…光さんの不眠…やっぱり私のせいですよね…」

 

「レミリアから聞きましたよ、心配し過ぎですよ咲夜さんは」

 

「で、でも…!」

 

「咲夜さんの料理はいつも美味しく頂いています、なんならおかわりだってしてますよね?もし咲夜さんが料理に変な薬とか入れていれば1番最初に気づくのは俺です、これでも味の変化とかに気づくのには自信がありますし、俺は寝床の場所問わずぐっすり寝ることが出来ることで評判です。咲夜さんが毎日整えている綺麗な寝床で眠れるのが俺なんかに勿体なさすぎるくらいです」

 

「そんなこと…」

 

「あるんですよ、時を止める能力を使えるとはいえ咲夜さんは俺が紅魔館に住む前からこんな大変な仕事を1人でこなしていたんです本当に凄いですよ、お世辞でもなんでもありませんこれは俺個人の気持ちです。だからこそ貴女の手伝いをしたいと思うんです。人間不信な俺でもね」

 

「光さん…」

 

 

今までの気持ちを伝えた俺は「だから咲夜さんのせいではないですよ」と言うと咲夜さんはさっきの曇った表情とは変わっていつも通りの咲夜さんが微笑んで「ありがとうございます」と礼を言ってくれた。

やっぱ咲夜さんはこうでないといけないな

…とはいえそれと同時に俺自身焦りが生じた。

これでもし永遠亭で検査して咲夜さんが原因だとしたらなんて言おうか…と

あんな臭い事言い切ってこれでもし確証を得たら顔合わせられる気がしない…

俺は咲夜さんにバレないように溜息をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・

 

「……突然だけど光、眠ってる間とかに何か()()()()()()はしなかったかしら?」

 

「不思議な経験…?」

 

 

永遠亭に着いた俺達は早速永琳に検査をしてもらった。

いつから眠れなくなったか、どれくらいのペースで起きてしまったり、寝付けなくなったりするかと。

そして検査を終えて結果の資料を見て眉をひそめた永琳が突然変な質問をした。

 

 

「例えば現実のような夢だったり、トラウマがフラッシュバックしたり、()()()()()()()

 

「声が…聞こえたり…?」

 

 

もしかしたら一昨日感じた()()か?

話してみても良さそうだな

 

 

「一昨日声とかではないんですが、砂嵐のような雑音が頭の中で流れた事がありました」

 

「…もしかしたらそれが原因かしら」

 

「原因?」

 

「貴方不眠になる前に何か能力の中で相手を使っていないかしら?例えば…()()()()()()使()()()とか?」

 

「っ!?」

 

「光さん…?」

 

 

永琳から言われた俺はパチュリー戦で使った「アブソリュート・イメージ」の事を思い出した。

あれは相手の想いと自分の想いを使ってひとつの力にする効果なのだが、それが原因なのか?

 

 

「あぁ…新スペルを対戦の際に使ったんだ」

 

「それが原因ね、貴方が眠っている間、脳の中で何が起こっているのか検査したのよ、そしたらこのデータを見て、貴方が眠っている間に()()()()()()()()()()が確認出来たわ」

 

「俺以外の人物の脳波…?」

 

 

多重人格とかか?

 

 

「安心して多重人格とかではないわ、これを見て、これは貴方以外の人物から読み取れた言葉よこれが恐らく貴方の言っていた雑音かもしれないわ」

 

 

永琳に渡された資料を見て俺は目を丸くした。

そこにはまるで俺の頭の中でひとつの物語が描かれているかのような言葉の使い方だった。

口調からして男性、誰かと会話をしていたのだろうか。

着物の話をしているということはこの2人は着物の商売人なのか?

文字を読んでいて、終盤に差し掛かった時俺は違和感を感じた。

()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

これはどういうことだ?ここから先は文字が途切れていて全然読めなかったのだが、確信できるのはこの2人に問題が発生したという事だ。

読み終えた俺は永琳に資料を渡すと永琳が次に口にした言葉は俺を驚愕させるのには十分な理由だった。

 

 

「この2人の会話を特定して、調べてみたのだけれど先日人里であった()()()()()()()2()()()()()()()()あったわよね?あそこ着物屋だったのよ」

 

「着物屋…だと!?」

 

「着物屋はそこだけじゃなくまだ数店舗あるのだけれど2人で経営しているのはあそこだけだったのよ、まだあの事件は明け方だったし、みんな寝静まっているはず、恐らく開店前の仕込み中にやられたという事」

 

「つまり…俺はその死んだ2人の魂を頭の中で留めているということか?」

 

「いや…それは違うわ、もし2人の魂を留めているのだとしたらどちらかの魂が暴走して貴方の精神を乗っ取る…それこそ多重人格になるわ、新しいスペルカードを使ってから死んだ人の会話が頭の中で流れる…貴方そのスペルカードのきっかけで()()()()()を得たのかもしれないわね」

 

「新しい能力…?」

 

「『想いを力に変える程度の能力』の副作用と言ってもいいかもしれないわ恐らくこれは死んだ人にしか効果がないのかもしれないわ」

 

「その能力は…?」

 

 

永琳は少し考えると直ぐに結論を出すと光の目を見て答えた。

 

 

「そうね…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言う所かしら」


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