さて、今回は咲夜が光にキレた所からの話です。
「待ちなさい咲夜!」
咲夜のナイフが俺の首を跳ねる寸前、咲夜の背後から荒らげた声が聞こえた。
「……パチュリー様ですか、申し訳ございませんが御用があるのでしたらこの男を始末してからでもよろしいでしょうか?」
「ダメよそれは私が許さないわ」
「どうしてですか?この男はお嬢様を傷付けたのですよ!パチュリー様はそれを許せと!?」
「そうじゃないわ、私が
「パチュリー様が……?」
「ええそうよ、それに話があるのは私じゃなくてレミィの方よ」
「…!」
「さっき永遠亭で目覚めて咲夜に会いたいって言ってたわ、あとの事は私に任せて貴女は早く行ってあげなさい」
「……失礼します」
深々と頭を下げた咲夜はその場から消えた。
どこまでもレミリアが大好きなんだなあの人は、俺だったらその命令を無視してでも裏切り者を殺してから向かうって言うのに。
ため息を付いたパチュリーは俺に近づくと止血剤と包帯を取り出した。
「まったくレミィは…自分から打ち明けたのに、やられたら元もこうもないでしょ」
「って事はパチュリーは…」
「安心しなさい、レミィから全て聞いたわ…とんだ災難だったわね、咲夜の代わりに謝るわ」
「なんだよ、パチュリーからそんな事言われると雨が降りそうだ」
「うるさいわね、本当にぶっ殺すわよ」
「おー怖い怖い、あと数秒遅れてたら今頃俺の首は吹っ飛んでたってのに」
「貴方ねぇ…それは助けてくれた人に対する態度なのかしら?」
「別に俺は助けろと頼んだわけじゃない、ただ…助かったよ、サンキュー」
負傷した足の手当をしているパチュリーを見ながら光は言うと静かにパチュリーは
「どういたしまして」
…と何処か嬉しそうな表情をした。
・・・・・・・・・・・・・・
「お嬢様!!」
永遠亭に到着した咲夜は早速声を荒らげながら永遠亭の中に入ってきた。
その声にびっくりした鈴仙が前に立つようにして注意した。
「ちょっとちょっと咲夜さん!ここは
「す、すいません…か、仮は後で永琳に怒られそうですけど」
「レミリアさんなら今病室で安静にしてます。案内しますのでこちらへどうぞ」
咲夜は言われた通り鈴仙の後に着いていくとひとつのドアの前で止まり、鈴仙がノックして入るとそこには付き添いの美鈴と所々に包帯が巻かれているがいつもと変わらない様子のレミリアが居た。
「お嬢様……」
「咲夜、心配かけたわね」
「本当ですよ!お嬢様にもしもの事があったらと…」
「大丈夫よこれでも吸血鬼なのだから簡単に死なないわ」
涙目になりながら手を握った咲夜にレミリアは微笑みながら答えた。
隣にいた美鈴も咲夜の様子にやれやれとため息をついた。
そして微笑んでいたレミリアはあと一人足りないと周りをキョロキョロ見て再び咲夜の方を見た。
「……ところで
「っ……お嬢様それは…!」
レミリアの質問に美鈴は何か言いたげだったがすぐに黙った。
そんな美鈴の事も知らず咲夜は口を開いた。
「ご安心ください、お嬢様を傷付けた裏切り者は今頃屍になってると思われます、小賢しい真似をして時間を費やしてしまいましたが、後はパチュリー様が始末してくれると言ってましたが、やはり心配です。あの男は1度パチュリー様に勝っている…パチュリー様の身に何かあれば大変です…ここは私がすぐにーーーー」
「へぇ………そうだったのね」
「お嬢様…?」
「っ……………」
普段聞かないレミリアの声に咲夜は戸惑いを隠せなかった。
美鈴は目を逸らしながら1歩後ろへ引いた。
「それで?彼はどんな状況なのかしら?」
「後に苦しみながら死ねるように足を負傷させておきました、すぐに死んでもらっては困りますので」
「咲夜が?」
「はい、私の手で」
「…………………」
「あー……」
レミリアの反応に美鈴は頭を抱えた。
久しぶりに冷静じゃないということだろう。
「これは私が光を庇ったことで変な誤解を生んだのね」
「お嬢様それはどういう…?」
「どうして咲夜は光を裏切り者だと思ったの?」
「あの時お嬢様とあの男以外他の者はいませんでした。裏切り者として断定するのは間違ってないかと」
「光の話は聞いたのかしら?」
「いいえ、聞く必要も無いかと」
「…………」
「ひぃ……!」
その瞬間、レミリアから強烈な霊力が放たれた。
美鈴は瞬時に距離をとると既にレミリアは咲夜の手を握っていた。
「お嬢様!?」
「私がどんな気持ちで光に頼んだのか…彼がどんな気持ちでそれを受け取ったのか!」
「え……?」
「不覚だった…分かっていたはずの運命を…私自身の手で導いてしまった…!」
「お嬢様!落ち着いてください!」
「落ち着いていられるものか!これも全て
「策略…?お嬢様それはどういう意味ですか」
レミリアは咲夜に今までの事を話した。
運命について、咲夜の過去、紅魔館に襲撃してきた何者かの攻撃をレミリアが庇って受けたこと全て。
それを聞いた咲夜は力なく膝を崩した。
「光さんが…お嬢様を傷付けた犯人ではなかった…?私は勘違いをしていた…?私が…私が…光さんを…!」
「しっかりしてください咲夜さん!今からでも遅くは…」
「ダメよ、行かせないわ」
「お嬢様…!どうして!」
「今この状況で咲夜が光と接触すれば何が起こるかわからないわ、私の責任だけれどこれ以上悪化させたくないわ、だから咲夜はここに居なさい」
レミリアは咲夜に永遠亭で待機することを命じた。
元はと言えば光は人間不信、咲夜の過去を話し、それを受け入れたとしても、もしもの事があれば、最悪な事態を招くのだと予想したのだろう。
しかし、そんなレミリアの命令に咲夜は立ち上がると。
「お嬢様…申し訳ありませんがその命には従えません」
「咲夜…貴女は…!」
「分かっています、お嬢様の責任だとしても、私が光さんを傷付けた事実は変わりません。ですからこの件は私が治める必要があります」
「咲夜!待ちなさい!」
レミリアの声に聞く耳も持たず咲夜は永遠亭を飛び出していった。
「光さん申し訳ございません、どうか…どうかこんな私を許してください…!」
・・・・・・・・・・・・・・
「はい、とりあえず軽い応急処置はしておいたわ、あとは永遠亭に行ってちゃんと治してもらいましょう」
「分かった、俺は少し休んでから行くからパチュリーは先に行っててくれ」
「怪我人が何言ってるのよ肩くらい貸すわよ」
「いや、問題ねぇよこれくらいの手当なら1人でも歩ける、それよりも今頃レミリアが咲夜さんに全部話してくれてるだろ、きっと鳩が豆鉄砲を食らったような顔してるだろうし早く行ってやってくれ」
「……咲夜に裏切り者と言われて精神的に来てたでしょうに、ほんと貴方変わったわね」
「なんも変わっちゃねぇよ、結局レミリアとの約束を守れなかった」
「……それじゃあお言葉に甘えて私は先に行ってるわ、くれぐれも寄り道しないで」
「りょーかい」
そう言うとパチュリーは永遠亭へと向かった。
そして光は大きなため息をついて立ち上がると。
「居るのはわかってんだぞ
「流石は『想いを読み取れる能力』を持っているだけあるな」
すると目の前の木の裏からフードが無い黒マントを着た一人の男が姿を現した。
茶髪が森の中の風に揺れていて茶色の瞳がギラりと光っていた。
「『読み取れる』んじゃねぇ『想いを力に変える程度の能力』な?」
「どうでもいい」
「俺とパチュリーが会話してる間に分かりやすい殺意を放ちやがって、わざとやってたのか?」
「さぁな?どちらにしろ片方の女がいなくなって好都合だ、
「ほぉ…?凄い自信だな」
「本当はあのメイドに殺されてくれれば最高の結末だったが、お前が小賢しい真似をしたせいで死に損ないになっちまった」
「ということはお前がレミリアを攻撃した犯人か」
「あぁ…俺の名は リクイッド
タロットカード
そう言うとリクイッドは黒マントを投げ捨てる。
その姿は茶色と黒のダイバースーツのようなものを着ていた。
今まで戦ってきた奴らと全く異なる服装だったが、そんな事はどうでもよかった。
「自己紹介どうも、丁度いい…俺は今最高に苛立っててなぁ?レミリアを傷付けた犯人なら遠慮なくぶっ殺せるって訳だ!!!覚悟しろ!!!」
光は即座に刀を抜くと、リクイッドに突進した。
次回は戦闘回です。