東方想伝録   作:司馬懿です

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2ヶ月ぶりくらいですかね。
今回は日常回です。


謎の男

「……ここは…どこだ…?」

 

 

ふと目を開くとそこは何も無い場所だった。

建物や人もいなければ、道もない…自分自身もフワフワとした感覚で生きているという実感は無かった。

周りを見ても歪んだ空間が辺り一面に広がっていて不気味だ。

そもそも…俺は何故ここに居るんだ?

確か…リクイッドと戦って…意識を…

 

 

「……!傷は?腹を貫通したはず…」

 

 

俺は慌ててその負傷した腹部を触ったが、貫通した跡もなければ傷一つなかった。

となると…導かれる答えはひとつ

 

俺は…死んーーーーーーー

 

 

「死んでないよ、雨天 光くん」

 

「っ!?」

 

 

何も無いと思っていた空間に突然声が聞こえた。

しかも遠距離からの発声ではなく、至近距離で…!

俺は再び周りを見渡したが、声の主は見つける事は出来なかった。

 

 

「誰だ!ここは一体どこなんだ!俺は死んでないってどういう事だ!」

 

「はぁ…質問するならひとつに搾って欲しいよ」

 

 

再び声が聞こえ、後ろを振り返るとさっきまで居なかったはずの()()が立っていた。

耳までかかった長さの黒髪に黒い長袖のシャツの上にフード付きのコートを着ているその男は、つり目ながらも曇りなき黒い瞳で俺を見ていた。

 

 

「お前…見た事ない顔だな、名を名乗れ」

 

「おいおい…初対面の人に対してその態度はないだろう?まず自分から自己紹介するのが礼儀ってものじゃーーー」

 

「そんな事はどうでもいい!お前は誰だ!そしてここは何処なんだ!答えろ!」

 

「だから質問するならひとつに搾ってーーーー」

 

 

やれやれと溜息を付いたその男にシビレを切らした俺はドス黒い殺意を向けてみせた。

これで何かが変わる訳じゃないが…それなりの態度は示さないとな。

そんな俺に男はニヤリと笑いコートのポケットに両手を突っ込んだ。

 

 

「僕は折神 誘八(おりがみ いざや)ちょっとした能力を使える一般人、そしてこの空間は君の意識外の世界なんだ」

 

「意識外の世界…?」

 

「君は致命傷を負って意識を失った後、病院に運ばれたんだ()()()()()()によって」

 

「メイド…咲夜さんが…?」

 

「…どうやら君達2人は知り合いと言う関係では無いようだね」

 

「…ただの知り合いだ、それ以上でもなければそれ以下でもない」

 

「またまたぁ〜?あんなに仲良くしてた上に激しい戦闘までしてたのに?」

 

「お前……一体何なんだ!」

 

 

俺は思わず、折神の胸ぐらを掴もうとした…が身体が動かなかった。

意識外…まだ向こうの俺が寝たきりの状態って事か

 

 

「まあまあそんな熱くならないで、僕から見たら2人は夫婦喧嘩のように見えるけどな〜」

 

「……お前に何が分かる」

 

「分かるわけないじゃ〜ん!だって僕は君じゃないからね♪」

 

「………」

 

「あれ?怒っちゃった?ねぇねぇ!急に黙っちゃってどうしたの?」

 

 

こいつ…本当に何なんだ?俺の名前や咲夜さんとの関係をベラベラと喋り…如何にも自分が優れているように見せてくる…話し方も腹立つし、そんな奴がちょっとした能力を使えるただの一般人?冗談じゃない、こいつからもっとドス黒い何かを感じる。

 

 

「今の日常を守りたいとは思わないかい?」

 

「……は?」

 

「だーかーらー僕が君の手助けをしてあげようか?って言ってるんだよ!」

 

 

俺は一瞬正気を疑った。

突然何を言い出すかと思ったら俺の手助け?こいつ訳が分からないぞ、何処の馬の骨なのか分からない奴に手を貸すなんてありえない。

ましてや助けて欲しいとも思っていない。

 

 

「何を企んでいる折神 誘八」

 

「企んでいるって…僕はただ単純に君を助けたいと思ってるんだよ」

 

「そうだとしてもお前が俺の手助けをして何の得がある?」

 

「得とかそんなの関係ないよ〜僕はただ()()()()()だけさ」

 

 

なるほど…こいつの本性が分かってきたぞ、こいつは自分が楽しければそれでいいんだ。

だから土足で人の事情に踏み込んではヘラヘラと人の反応を嘲笑う…それが折神 誘八

 

 

「だったら断る」

 

「えぇー!?ここまで来て断るのー!?それはないよ〜!」

 

「俺はお前に助けて欲しいと頼んだ訳でもなければ、そのつもりも無い、分かったらさっさとこの世界から出せ」

 

「…………」

 

 

その瞬間折神からとんでもない圧迫感を感じた。

今にでも押し潰されそうな、息が詰まるような感覚…!

ちょっとした能力だけでは済まされないレベルだ…やはりこいつ普通じゃない!

そして少し経つとその圧迫感が消え、折神は微笑むと

 

 

「分かった!それじゃあ僕はお暇させてもらうよ!君の決めた事だそれを否定するつもりは無いよ!」

 

「…………」

 

「それじゃあ…()()()()()()()()()()()()()()()

 

「お前…!それは一体どういう…っ!?」

 

 

折神はそう言い残し俺の視界はまた暗闇に染った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

再び視界に光が差し込むと今度は見覚えのある天井が見えた。

…永遠亭だ、きっと咲夜さんが俺をここまで運んでくれたんだな、まったく…悪夢を見た気がする。

病室の天井を見て安堵した俺はふと横を見ると、そこには…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パチュリーが座っていた。

 

 

「パチュリー…」

 

「……いい目覚めかしら?光」

 

 

パチュリーは目覚めた俺を見て、読んでいた本を閉じて微笑んでみせた。

 

 

「あぁ…最悪な目覚めだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

少し経ってパチュリーが優曇華に光のことを伝えると、一斉に紅魔館組が病院に集まった。

 

 

「ひがるざぁぁぁぁぁぁん!!!」

 

「ちょ!ぐしゃぐしゃな顔で俺に近づくな美鈴!気持ち悪いぞ!」

 

「だって咲夜さんに殺されちゃうんじゃないかど思っでぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

「あれは事故みたいなもんだ!俺はちゃんと生きてるから安心しろ!まったく…」

 

「その様子じゃ心配する必要はなかったかしら?」

 

「もう身体は大丈夫なのか?レミリア」

 

「貴方どれくらい眠ってると思ってるの?2週間よ2週間」

 

「に、2週間!?そんなに経ったのか!?」

 

「当たり前よ、致命傷を負ってすぐに回復する人間なんて見た事ないわ」

 

「それもそうか…」

 

「次からは私も同行して戦おうかしら♪」

 

「必要ねぇよ、俺は助太刀される程貧弱じゃない」

 

「いつも病院送りにされてるのに…」

 

「なんか言ったか?美鈴」

 

「い、いえ!なんでもありませんからその刀を仕舞ってください!」

 

 

焦る美鈴に俺は呆れながら刀を仕舞った。

まったく…疲れるこっちの身にもなれ、そしてレミリア、パチュリー、小悪魔、フラン、美鈴が揃ってあと一人…咲夜さんが居ない俺を運んだのは咲夜さんのはずだよな…?

 

 

「……咲夜が気になるかしら?」

 

「あぁ…運んだのはきっと咲夜さん…だよな?」

 

「そうね、レミィの命令も聞かずに永遠亭を飛び出して行ったわ」

 

「あの咲夜さんが…どうしてそこまで…」

 

「咲夜の事よきっと後悔と懺悔にいてもたってもいられなかったのよ」

 

「俺はそれくらいの価値に値しねぇよ、それにレミリアの運命で会わせちゃいけなかったはずだ」

 

「実は光を運んだ後その話の件で咲夜自ら接触を避けると言って来たのよ」

 

「咲夜さんが?」

 

「えぇ…きっと自分のせいで光を追い詰めてしまったんだと思ってるのよ」

 

「はぁ……そこまで考えなくてもいいのに……」

 

 

咲夜さんはとても真面目な人だ、少し抜けてる部分はあるし怒ると冷静じゃなくなる、それでもこんな俺に沢山接してくれた。

咲夜さんが居なければきっと俺は変わろうと思わなかっただろう。

俺と咲夜さんが接触してはいけない運命があるのなら俺はそんな運命ぶち壊してやると開き直るけどな。

 

 

「俺……咲夜さんに話し付けてくる」

 

「待ちなさい、まだ貴方は安静にしなきゃ行けないのよ、傷が開いたらどうするの?」

 

「だが…!」

 

「咲夜は今紅魔館にいるわ、今貴方が行っても戸惑ってしまうと思うから今は我慢して欲しいわ」

 

「……わかった、俺よりお前らの方が咲夜と一緒にいるしな…任せる」

 

「傷が治ったらまた話し合いましょう」

 

 

俺は頷くと、レミリアは「それじゃ」と言い他の奴らと共に病室を出た。

しばらくは咲夜さんと顔を合わせられないって事か…それよりもあの夢に出てきた折神とかいう男…去り際に言った言葉が気になる…。

 

 

『君のせいで死ななければいいね!!!』

 

 

それがどういう意味なのかこの時の俺はまだ知らなかった。

 

 




実はこういうウザイキャラクター作ってみたかったんですよね笑
実現出来て良かったです。
また不定期に投稿しますが、ごゆるりとお待ちしてくれれば幸いです。
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