東方想伝録   作:司馬懿です

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もう一人の自分

翌日の早朝、俺は紅魔館の門前で刀を振っていた。

咲夜さんより早起きしたのは初めてかもしれない…というよりそもそも寝付けなかった。

結局昨日の咲夜さんの笑顔がフラッシュバックして汗が止まらなかった。

このままだと咲夜さんとの関係にヒビが入るどころか紅魔館の奴らに心配されちまう。

その為俺は身体を動かして忘れる事にした、というより一旦落ち着いて普段通りに接しられるようにしないといけないからな。

呼吸を整え、俺の能力で具現化された刀を振り続ける。

心做しかいつもより輝きがないように感じた。

まだ俺の心は弱いままという事だろうな…。

 

 

「……悲観的に考えてどうするんだよ……今は全部無かったことにして普段通りに過ごそう」

 

 

光は首を振った後、皆が起きる前に自室に戻ろうとした時。

 

 

「ほぉ…?あのメイドを気にかけているようだな?」

 

「っ!?」

 

 

この寝静まっている早朝に突然声が聞こえ、光は刀を抜いた。

しかし周りを見渡しても誰も居なかったが、一つだけ心当たりがあった。

そしてそれは確信に変わった。

 

 

「やっぱり悪夢…では片付けられるものでは無いか」

 

「そうだなぁ…お前がだらだらと病院で寝ていた時に話しかけていたからな…()()()()()

 

「姿形は見せないくせに口だけは達者なんだな」

 

「当たり前だろ?俺はお前の未練から産まれたんだから」

 

「お前が俺の未練…?何言ってんのかさっぱり分からねぇが、しょーもない能力で俺に嫌がらせしようとしてもそうはいかねぇぞ」

 

「そう簡単には信用しないだろう…まぁもうすぐ()()()()()、楽しみにしておけよ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「お前……それはどういうことだ!」

 

 

しかし返ってきたのは鳥の鳴き声だけだった。

光は溜息をつきながらも紅魔館の皆を起こさないよう自室に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

「おはようございます咲夜さん」

 

 

皆が起き始める時間帯、廊下で咲夜さんにすれ違った俺は変わらず挨拶した。

咲夜さんも昨日の事があって少し戸惑い気味だったが「おはようございます」と返してくれた。

いつもだったら二人ともそのまま通り過ぎるはずなんだが、咲夜さんが何か言いたそうにしていたので、待ってみると…

 

 

「あの…もし何かありましたら迷わず頼ってください、何かお力になれると思いますから」

 

「言われずともそのつもりですよ」

 

 

その言葉は心の底から思っている事だと感じた。

昨日の夜も咄嗟とは言えあんなにベラベラと喋ったけど、俺は少しずつ咲夜さんを信頼しているのだろうと思った。

俺がそう返事したのもその証拠だ、不安な表情をしていた咲夜さんは俺の言葉を聞くなりぱあと明るくなりその場を後にした。

ほんと、表情豊かな人というか…そこがギャップ萌えというか面白い人だ。

とりあえず俺と咲夜さんのいざこざはこれにて解決と言ったところかな?

さて、と今日も居眠りしているであろう美鈴に嫌がらせしながら幻想郷を見回ってみようか。

……と思い門前に行こうとしたら、そこには霊夢が立っていた。

 

 

「朝早くから血気盛んですなぁ霊夢さん、どうしたんだい?そんなに眉間にしわ寄せて」

 

「……そりゃ眉間にしわ寄せたくなるわよこんな朝早くから、あの鴉天狗……」

 

「鴉天狗……射命丸のことか」

 

「そう、妖怪の山の連中が言うに今朝から様子がおかしいみたいなの」

 

「様子がおかしい…?いつもの事だと思うがそんなに変なのか?」

 

「椛が声掛けても返事するのが遅いというか…なんか行動が鈍すぎるらしいのよね」

 

「……それは確かに変かもな、あー見えて記者でキビキビ動いてるしな」

 

「だから妖怪の山の連中に頼まれて今回は私と光の二人で調査して欲しいって」

 

「はぁ……まぁそれも俺達の仕事だし、付き合うよ」

 

 

そう言うと二人は早速妖怪の山へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

「すいません霊夢さんに光さんまで来てくださってしまい」

 

 

妖怪の山に到着した俺と霊夢は早速待ち合わせていた椛と合流した。

 

 

「気にするな、それより射命丸は今どこにいるんだ?」

 

「……案内します」

 

 

椛に言われるがまま二人はついて行くと、そこにはいつもと変わらない射命丸が居たので声をかけてみた。

 

 

「おい射命丸……射命丸!」

 

「うえぇ!?光さん!?どうしたんですかこんな所まで!」

 

「どうしたも何もお前の様子がおかしいって言うから来てやったんだよ」

 

「あやや…やっぱり私、おかしいですか?」

 

「自覚はあんのかよ…いやまぁ元々おかしい奴だけども」

 

「ちょっとそれは失礼すぎませんか!?」

 

「……それよりどうしたんだ?ボーッとして」

 

「いやぁ…ボーッとしてると言うか()()()()()()()()()

 

「待っていた…?誰を?」

 

 

すると射命丸はおもむろに立ち上がると光の方を見てニヤリと笑い、横にいた霊夢がハッとした表情になり、光の方を向いた。

 

 

「光!逃げて!!」

 

「は……?」

 

()()()()()()()()()()()()()

 

 

その瞬間射命丸からどす黒い霧が放出し、光を飲み込んだ。

光は刀を抜いて振り払おうとした瞬間とてつもない目眩を感じた。

力を入れようにも入れられず意識が遠のいて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

再び意識を取り戻すとそこは何も無い真っ黒世界だった。

足が地に付いている感覚が無く、浮いている気分だった。

射命丸から出てきた霧は一体なんだったのか、光はなんとかして動こうとすると、やはり奴の声が聞こえた。

 

 

「やはりお前では力不足だ」

 

「射命丸はお前が仕向けたのか?」

 

「そんな訳ないだろう?俺はお前の心の中に居るだけでそんな能力などない」

 

「どうだかな」

 

「ただ…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だろうな」

 

「ハッ!それこそ馬鹿げてるな」

 

「その余裕も一瞬で無くなる…何せお前の弱さが()()を殺したんだから」

 

「彼女…?まさかーーーーー」

 

「やはり良い反応を見せてくれる、何度も助けを求められたのに、それでもお前は逃げ続けたーーーーー」

 

「黙れ!どうしてあいつを知っているんだ!?」

 

 

俺はもう一人の俺の声をかき消すように叫んだ。

俺の過去を知っている奴、こいつは一体何者なんだ?

しかし、そんなことは知ったこっちゃないと続ける。

 

 

「言っただろう?俺はお前の中に居る俺だと、あぁ…今頃あの世で恨んでいるだろうなぁ…どうして?っと」

 

「違う…あいつは俺を庇ってーーーーー」

 

「そう、彼女がお前を庇ったんだ、お前のせいで彼女は()()()()()

 

「黙れ、黙れ、黙れ!お前にあいつの何がわかる!?」

 

 

すると声は俺を見下すように笑うと続けた。

 

 

「なるほどぉ…やはりお前の弱さが()()()()()()()()()

 

「俺は…あいつが幸せになって欲しかっただけなんだ…!」

 

「じゃあお望み通り、()()()()()()()()()()()()

 

 

直後、再び光の意識が遠のいていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

「………うわああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

 

 

光を包んでいた黒い霧が叫び声と共に弾け飛ぶと明らかに違う光の姿が立っていた。

 

 

「目的は果たした、こいつはお前らに返してやるよ」

 

 

そう言った射命丸は突然力なく倒れ、霊夢がそれを受け止めた。

 

 

「……意識がないわ、操られていたのね射命丸は」

 

「そんな…射命丸さんが…」

 

「椛、射命丸をお願い私は()()()()()()()()を退治するから」

 

「わかりました…!」

 

 

頼んだわよと霊夢が言うと椛は射命丸を抱えてその場を後にした。

そして二人が退避したのを確認したあと霊夢は再び前を向いて身体から()()()()を放出している光の方を見た。

 

 

「さて、アンタは誰かしら?人の身体を借りてこそこそとしている臆病者さん?」

 

「臆病者?面白い冗談だな、そうだな…お前らが普段馴れ合っているヤツが雨天 光という男なら俺は()()()()()()()()()()()と言うべきか?」

 

「心の中の闇……それで?アンタはタロットカード使い(あの連中)と関係してるのかしら?」

 

「答えてもいいが…お前はもうすぐ死ぬからな」

 

「へぇ〜?そこは光と変わらず随分とデカい口を叩くのね」

 

「俺はコイツと違って強い自信を持っているから……な!!!」

 

 

偽光は刀を出現させると一気に接近し、霊夢に振り下ろそうとしたが、ただならぬ殺気を感じその場を離れた。

するとさっきまで偽光が居た場所に無数のナイフが刺さっていた。

 

 

「このナイフ……予定より早いお出ましですね()()()()

 

「偽物の貴方に私の名前を言われる筋合いはありません」

 

「咲夜…どうしてここが分かったの?それにまだその腕の怪我も大丈夫なの?」

 

「問題ないわ、怪我した腕を使わなければいいだけの話だもの、妖怪の山からとてもとは思えないほどの瘴気を感じたから美鈴に聞いてみたら光さんと貴女が妖怪の山に向かったと言ってたからまさかと思ったのだけれど、こうなっていたとはね」

 

「せっかくの機会だ、特別に貴女には聞かせてあげますよ」

 

 

そう言うと、偽光は俯いた。

すると

 

 

「……咲夜……さん!」

 

「この声……光さん!?」

 

 

身体がピクリと跳ね上がったと同時に偽光の内側から声が響いた。

 

 

「俺……の事は気にしないでください……何としてでもこいつを……止めてくださ……ぃ」

 

「光さん!!!」

 

「……いずれお前は消える、それまで自分の過ちをじっくり思い出すんだな」

 

 

再び意識を偽光に戻されたあと、刀を下ろして空を見上げた。

 

 

「感謝します、名も無き能力者…お陰で私の願いが叶える事が出来ます、早速使わせてもらいますよ」

 

 

その瞬間今まで以上に強い黒い霊力を発し、刀を構えた。

 

 

「来るわよ!咲夜!」

 

「言われなくても!」

 

 

そして偽光はニヤリと笑い地を蹴った。

 

 

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