「うぅん……?」
光はぼやける視界の中で自分の顔を見下ろす咲夜の顔を見る。
自分がどういう状況に置かれているのか少しずつ理解し始めると、細めていた目が一瞬で見開き飛び起きた。
「さ、咲夜さん!?」
「おはようございます光さん」
「お、おはようございます…じゃなくて!怪我は大丈夫なんですか!?戦ったって事ですよね?それに…その今膝枕……」
「問題ありませんよ使わなければ良いだけなので……私だと力不足でしたか?」
「いやそういう訳にもいかないですよ!それに俺なんか地べたに放り投げとけばよかったのに…」
「どうしてですか?それこそ私が嫌です」
「………」
少しムスッとした咲夜に光はこれ以上何か言うのは野暮だなと思い、苦笑いして返した。
そんな光を見た咲夜は微笑んだ。
「本当に…無事で良かったです」
「まったく最悪な体験をしましたよ」
「光さん本当に申し訳ございません、実は私また貴方に謝らないといけないことがありまして」
「大袈裟ですね〜最初から咲夜さんは、そもそもあれは霊夢がいち早く気付いてたのに反応できなかった俺の不注意です」
「いやそうではなくて、実は私一度だけ光さんに攻撃する時迷ってしまったんです…」
「え!?そうだったんですか!?そんなの迷わず俺の事は切り裂いてくださいよ」
「……私が言うのもなんですが、光さんはもう少し自分を大切にしてください」
「そ、そんなに怖い目で見られるとは思いませんでした……善処します……そういえば霊夢は何か言ってましたか?アイツと同行してましたので」
「いきなり操られて良い迷惑だったと言ってましたよ」
「いつもは俺も何か言い返すんだが、今回ばかりは霊夢にも迷惑掛けたなぁ…」
「霊夢も光さんの事心配してるんですよ」
「余計なお世話ですよまったく……さて俺が目覚めるまでとなると長い間ここにいた訳ですよね?」
「確かにそうですね」
「本当にすいません、身体冷やしちゃいましたよね?風邪ひく前に紅魔館に帰りましょう」
「そうですね、戻りましょうか」
咲夜はそう言うと立ち上がり、2人並んで紅魔館へと帰った。
・・・・・・・・・・・・
紅魔館に着くと美鈴が慌てた表情で扉を開けた。
その先にはレミリアが立っていた。
「おかえりなさい、霊夢から聞いたわよ光が乗っ取られたって」
「あいつ……すまん、心配かけた」
「いいのよ無事で良かったわ」
「おう」
素っ気なく返事をする光だが、何処か嬉しそうにも見えた。
咲夜は夕食の準備を始め、美鈴は再び門前へと戻る等、各々自分の仕事へと戻って行った。
光は大きく背伸びをした後咲夜の手伝いをするため台所へと向かっていった。
レミリアもやれやれと自室へ戻った。
「咲夜さん、手伝いますよ」
「え、大丈夫なんですか?あれだけの戦闘をした訳ですし…別人格とはいえ光さんの身体なんですから」
「どうですかね、意外とピンピンしてますし平気ですよ!またしんどくなったら言いますよ、それにその怪我があるのに一人でやらせる程俺も鬼畜じゃないですよ」
「…分かりました、ではお言葉に甘えさせてもらいますね」
「任してくださいよ!」
光は腕捲りをすると厨房に入っていった。
・・・・・・・・・・・・
その頃薄暗い空間に6人の人影が座っている1人の人影を囲むように立っていた。
そして座っていた人影が立ち上がると周りを見渡し、こう告げる。
「今回呼び出したのは言うまでもない、お前達を幻想郷に出す」
「ついにこの時が来ましたか!」
「早く暴れたくてうずうずしてたぜ」
「早速……と言いたいところだが」
人影は一度間を置く。
「お前達には準備を整えてもらう、エゲリアの配下のように勢いだけで幻想郷に乗り込んでも同じ事の繰り返しだろうからな」
「私は賛成だ、どのようにあの男を美しく殺せるか考える時間が欲しかったからな」
「この身体に宿る渇きを……奴は満たしてくれるのだろうか……」
「さぁな?それは自身の目で確かめろ、では各自数ヶ月の猶予を与えるその間に万全な状態で挑め」
「了解!」
6人の人影は散開した……と思いきや1人の人影を呼び止める。
「お前は最後に出す、
「……俺にとってあの世界に思入れなんてありません、ただ
「そうか……引き止めてすまなかったな、もう行っていいぞ」
「はい」
そして薄暗い空間に1人残った人影は椅子に腰かけるとニヤリと笑いこう呟いた。
「さてアイツらが出る前に俺が一足先に出てみるか…
・・・・・・・・・・・
あれからどれくらい経っただろうか。
丑満時 静夜を倒した時は桜が咲く時期だったのに、今じゃ蝉が鬱陶しく鳴き続ける季節になった。
俺や咲夜さんの怪我も癒えてすっかり元気になった。
……あんなにタロットカード使いが短期間で来ていたのにそんな期間が空いたのか?
思った以上に音沙汰が無くて困惑してしまう。
まぁ正直めんどくさい事はしたくなかったから、このまま平和が続いてくれればそれで構わないけどな。
そんな事を考えながら、虫のせせらぎを聴きながらパチュリーから借りた本を読みむ、そんな心地よい夜を過ごせると思っていた矢先、何故フラグというのは存在するのだろうか、吐き気がする程の霊力を感じた。
「人の霊力を吐き気がするとか言わないで欲しいわ」
「うるせぇよクソスキマ妖怪…それで?久しぶりに俺の前に現れたがなんか用か?」
「……タロットカード使いの新しい気配を察知したわ」
それを聞いた光は目を細め、本を閉じて向き直った。
「……何人確認出来たんだ?」
「……微かに確認出来たのも含めると6人よ」
「6人……か、これだけ間隔が空いた理由はまとめて相手になる為の準備だったということか」
「もしかしたら6人だけじゃ済まないかもしれないわ、油断は禁物よ」
「油断するとは一言も言ってないけどな、それにもし新しい能力者が出た時はまた俺のところにノコノコと報告しに来ればいいだろ」
「私は貴方のでんでん虫じゃないのよ」
「はー、そうだったのか?てっきりそうかと思ってた」
「……いくら私でもキレるわよ」
「さて、どうでもいい話はさておき明日にも仕掛けてくるのか?」
「それが分からないのよ、莫大なエネルギーを感じはしたけれど隠密しているのか場所までは特定出来なかったわ」
「おいおいそれじゃあ俺が不意打ち食らっちまうだろ」
「そこは貴方の勘で反応してちょうだい」
「はぁ〜めんどくせぇな」
「とりあえず今後も私は藍と一緒に目を光らせておくわ、相手側にはこちらの情報は漏れてないはずだからくれぐれもバレないようにして」
「りょーかい少なくとも俺は今まで通りやっておくつもりだ」
「それでいいわ、じゃあ私は失礼するわ遅くにごめんなさいね」
「へいへい」
手をブラブラさせて再び本を開いた光を見て紫は溜息をつきながらスキマの中へ消えた。
はぁ…つかの間の休息とはこう言う事なんだろうなぁ…。
そう思った光は大きな溜息をついたのだった。