東方想伝録   作:司馬懿です

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もうこの作品出してから6.7年くらい経過してるので
ほとんど読まれてないと思うのですが一応言っておきます

お待たせいたしました。


約束

 

 

 

 

 

 

蝉が騒がしく鳴き続けるこの季節、咲夜は大粒の汗をハンカチで拭きながら買い出しに出ていた。

昨日の光との会話を思い出しながら、今日は少し多めに料理を出そうかと考えていた。

最初は自分の料理にさえ疑いの目を向けていた人だったのに、今ではお互いに冗談を言いあったり、本音をぶつけたり、仕事を分担してこなしたりと何気ない日常だったが、咲夜にとってはそれをずっと大切にしていきたいと思っている。

かつて紅魔館で共に育ち、成長してきた丑満時 静夜のように。

だからこそ静夜が目の前で堕ちてしまったようにもう二度と失いたくないと固く決心した。

道中歩いていると向こうから霊夢が歩いてくるのが見えた。

 

 

「咲夜じゃない」

 

「霊夢?珍しいわね、こんな所で」

 

「昨日光が戦ったの知ってるでしょ?そいつらの手下達がそこら辺をウロウロしてるから潰しに回ってるのよ」

 

「なるほどね…手伝おうかしら?」

 

「いいわよ、所詮は能力が無い雑魚だし束になっても少し時間を使うだけ…それにーーーーー」

 

「私もいるからな!」

 

 

霊夢が何かを言いかけた瞬間、霊夢の後ろから魔理沙がひょこっと顔を出してきた。

 

 

「魔理沙…!居るなら言いなさいよ!」

 

「いや〜今来たところなんだぜ?ここはどっちがあの手下達を多く倒せるか勝負といこうじゃないか!霊夢だけ一人抜け駆けなんて許さないからな!」

 

「はぁ…またアンタはそうやって…」

 

「咲夜は?咲夜も勝負するか?」

 

「私は遠慮しておくわ、霊夢と魔理沙だけで事足りそうだし」

 

「ちょっと!私をこいつと一緒にしないでちょうだい!」

 

「おいおい霊夢、いいじゃねぇか!面倒事もこの私がいる事であっという間に終わるんだぜ?」

 

「まったく…分かったわよ」

 

 

霊夢は呆れながらも承諾すると魔理沙はニヒッと笑った。

咲夜は今日もこの2人は騒がしいわねと微笑んだ。

しかし、それは直後のドスグロい霊力によって雰囲気が一変する。

3人とも同時にそれを感知すると、武器を出して身構えた。

すると生い茂る森の中からより強い霊力がゆっくりこちらに近づいているのを感じた。

そしてその正体が太陽の光によって徐々に明らかになってくると3人は更に警戒を強めた。

黒髪に無地の黒ズボンと黒シャツに腰マントが付いた黒コートという服装が黒で統一されたその男は目の前に咲夜達が居ることに気づいたのか俯いていた顔を上げると、鮮血のような紅い瞳で見つめ、刀身がボロボロになっている刀を三人に向けてこう呟いた。

 

 

「貴様らは…()()()()を満たしてくれるのか…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

おかしい…咲夜さんが朝食後買い出しに出てからしばらく経っている。

もうすぐお昼の時間になってしまうというのに。

この時間帯に帰ってきたとして、昼食の時間に間に合わない、普段の咲夜さんならたとえ遅刻しそうになっても時を止めて無理矢理間に合わせているのにこの時間になっても未だに咲夜さんの姿が見えないのは明らかに咲夜さんの身に何か起きたに違いない。

光はすぐさまレミリアの元へ向かい咲夜が帰っていない事を伝えた。

不審に思ったレミリアは門前にいる美鈴を呼び戻すために館の出入口の方へ向かおうとしたが、その扉が勢いよく開かれる音が聞こえたと同時に美鈴がレミリアの部屋に入ってきてこう告げた。

 

咲夜と霊夢、魔理沙が重傷を負ったと…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

ここは…どこ…?

確か私は…霊夢と魔理沙と……一緒に謎の男と戦って…。

負けたんだ……それで大きな怪我をして…。

朦朧とする意識の中、僅かだが永琳と光達の声が聞こえた。

 

 

「咲夜さんは!致命傷じゃないんですよね!?」

 

「落ち着いて美鈴、とりあえず三人とも今のところ安定しているわ…ただ傷が思った以上に酷いから危機的状況から脱したとは言えないわ…」

 

「咲夜…」

 

「……おい平田、犯人を見たって言うのはどこら辺だ…?」

 

「え?あぁ…人里から少し離れた道だけど…まさか君…」

 

「……悪いな平田、俺も大切な人を傷付けられたら許せねぇ性分でな」

 

「ま、待ってよ!その犯人を倒しに行くなら僕も同行するよ、()()は只者じゃないから」

 

「……勝手にしろ」

 

「光!気をつけてね…貴方まで咲夜みたいになったら私…」

 

「安心しろレミリア、軽く挨拶しに行くだけだから」

 

「光、くれぐれも気をつけなさい、その傷私に見せずに解決させたみたいだけど、傷口が開いても知らないわよ?」

 

「分かってる、毎回永琳に世話になってる訳にはいかねぇからな」

 

 

光はそう言うと少し後に永遠亭の扉を閉じる音が聞こえた。

それと同時に朦朧としていた咲夜の意識は再び暗闇へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

咲夜は永琳達の声に再び意識を取り戻した。

どれくらい経過したのか分かるはずもないが、意識を失う前よりももっと騒がしくなっている事は理解出来た。

未だ朦朧とする意識の中、その声はぼんやりだが確かに聞こえた。

 

 

「永琳先生!早く光くんを治療室に!」

 

「分かってる!」

 

「……師匠…これは……」

 

「思った以上に出血が酷いわね…うどんげ、急いで輸血パックを持って来てちょうだい、私は出血の出どころを探すわ」

 

「お願い…お願いよ永琳…光が死んだら…あの娘に…なんて言えば…っ!」

 

「大丈夫よレミリア、光を死なせはしないわ、絶対によ」

 

 

永琳と…鈴仙…それにお嬢様の声…光さんは…?

光さんはどうなったの…?さっき私の仇討ちに行ったはず…!っ…!身体が思うように動かない…声も出せない…!一体どうなってるの!?…光さんは無事なの!?…この目で確かめさせて…!

咲夜は薄れゆく意識の中どうにかして動こうとするが、再び意識を失った。

 

 

「光……さ……ん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……や……」

 

「さ………や………!」

 

「さく………や」

 

「咲夜!!!」

 

 

再び意識が戻ると今度ははっきりとしていた。

目の前には涙を流すレミリアとほっとした表情で見つめるパチュリー、心配そうに見つめる美鈴とフランが視界に映った。

 

 

「よかった…気がついたのね…」

 

「お嬢様…申し訳ございません…ご心配を…」

 

 

レミリアは首を横に振って「いいのよ」と笑顔で返した。

そしてレミリア達の声を聞き付けたのか、先に意識を取り戻していた霊夢と魔理沙が顔を出した。

二人とも安心したのか大きな溜め息を付いた。

その後ろには平田が立っており、良かったと胸をなで下ろしていた。

咲夜は皆の反応を見て微笑むが、やはり肝心の光の姿が見当たらなかった。

少し周りを見渡した後、光は何処にいるのかと問いた。

すると全員無言で俯き、少しの沈黙が続いたが、意を決してレミリアが口を開いた。

 

 

「……今から貴女には()()()()()()()()()()()事があるの…立てるかしら?」

 

 

咲夜は美鈴の肩を借りてベッドから起き上がった。

幸いにも歩ける程度には回復していたので、美鈴に付き添って貰いながらとある部屋に案内してもらった。

その部屋に近づくに連れて皆の表情もより一層暗くなった。

この時点で咲夜は一番最悪な結末を想像してしまったが、この目で確かめるまでは考えないようにした。

そしてとある部屋に付くとその前に立っていた鈴仙がゆっくりと扉を開けた。

咲夜はレミリアに導かれて中に入ると、そこには…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()がベッドで横になっていた。

 

 

「え…?」

 

 

ゆっくりと咲夜がそれに近づくと、反対側に立っていた永琳が顔の白い布を取った。

隠れていた顔があらわになるとそれが誰なのか、咲夜は痛いほど思い知らされてしまった。

 

 

「あ……あぁ……!」

 

 

今朝自分が買い出しに出る時に笑顔で送ってくれた、もう二度と失いたくないと決心した大切な人が傷だらけの状態で眠っていた。

咲夜は光の顔を触れば触るほど、涙が溢れ、言葉にならない叫び声をあげた。

 

 

「お願い…光さん…!…目を開けて…っ……嫌だ…お願い…っ」

 

「咲夜…」

 

「まだ…っ…貴方に()()()()()()()()があるのに…!」

 

「……」

 

「どうして貴方まで私の前から居なくなるんですかぁ!!!」

 

 

咲夜は涙を流しながら冷たくなった光の身体を必死に揺さぶった。

しかし返ってくるのは沈黙だけだった。

それを受け入れたくない咲夜は繰り返し光の名を呼び、顔を埋めた。

そこへレミリアが寄り添い、優しく背中をさすった。

咲夜はただただ涙を流し、嗚咽し、肩を震わせた。

死因は致命傷を負いすぎた事による失血死だった。

永琳達は光を助けられなかった自身の未熟さを恥じ、咲夜達に深く頭を下げた。

静かな空間に咲夜の泣く声が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……!」

 

 

咲夜は目を開けると、そこには霊夢と魔理沙が心配そうに見つめていた。

 

 

「霊夢…魔理沙…?」

 

「咲夜…?気がついたのね!良かった…」

 

「私は…」

 

「安心しろここは永遠亭だ、あの後平田が駆け付けたお陰でここに運ばれて治療を受けたみたいだ、幸いにも全員命に別状は無い」

 

「そう…」

 

 

咲夜はゆっくりと身体を起こすと辺りを見渡した。

そこには心配過ぎて俯いているレミリアとそれを慰めるパチュリー達、そして少し奥に平田と会話している()()姿()があった。

さっきのは夢だったってこと…?

 

 

「ん…?咲夜さん…!?目が覚めたんですね!」

 

「咲夜…!」

 

 

光の声を聞いて真っ先に反応したのはレミリアだった。

レミリアは大粒の涙を流しながら咲夜に抱きついた。

 

 

「よかった…本当によかったわ!」

 

「ご心配をおかけして申し訳ございませんお嬢様」

 

「いいのよ…貴女が無事でよかった」

 

「咲夜ざあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ん”」

 

「はいはい貴女は別に求めてないから」

 

 

右腕でレミリアを優しく抱きしめ、左腕で美鈴の頭を抑えている咲夜を見て霊夢と魔理沙は苦笑いした。

少し後にパチュリーとフラン、そして平田と光がやってきた。

咲夜は光の顔を見ると先程の光景が蘇ると同時に安堵した。

 

 

「咲夜さんどうかしましたか?、俺の顔に何か付いてますか?」

 

「え?あぁ…いえ!なんでもないですよ!」

 

「…?」

 

「おや、最後の負傷者も目を覚ましたみたいね、咲夜早速で悪いのだけれど改めて精密検査をさせてちょうだい、何も問題は無いと思うのだけれど一応ね」

 

「わかりました」

 

 

皆の話し声を聞き付けた永琳は病室に入ると咲夜を呼び出し、精密検査を行った。

結果は異常なし、現在確認されている負傷箇所の治療に専念すれば普通の生活に戻れると言われた。

部屋から出て病室に戻るために廊下を歩いていると、光が永遠亭の出入り口に立っていた。

 

 

「咲夜さん検査の結果はどうでしたか?」

 

「この傷の治療に専念すれば元の生活に戻れると言われました」

 

「そうですか…ふぅ…良かった…」

 

「…それより光さんは何故皆さんがいるところではなくここに?」

 

「俺ですか?今から()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()行ってくるんですよ」

 

「……それって仇討ちって事ですか?」

 

「当たり前じゃないですか!それにこの状況下でこんな事をするのはルフェールの奴らしか考えられません…見過ごす訳にはいきませんよ」

 

「………」

 

 

咲夜はその言葉を聞いて先程の悲劇を思い出してしまった。

あの時流した涙は嘘じゃなかった。

本気で悲しみ、絶望し、後悔した。

だからもしもこのまま行かせてしまったら…。

そう思った咲夜は思わず「それじゃあ行ってきますね」と言って背を向けた光の腕を掴んでいた。

 

 

「咲夜さん…?」

 

「………です」

 

「?」

 

「嫌です…!行かないでください…!」

 

「ど、どうしたんですか!?」

 

 

光は急に涙を流し始めた咲夜に驚いて再び振り返った。

咲夜を落ち着かせながらどうしたのかと理由を聞いた。

すると咲夜はゆっくりだが、目が覚める前に見た悲劇を話し始めた。

話を聞くにつれて光の表情は曇り始めた。

 

 

「そんな事があったんですね…だから仇討ちに行く俺を止めて…」

 

「迷惑だという事は重々承知しております…ですがそれでも…私はあなたを失いたくありません…」

 

「……」

 

 

咲夜にとって光は紅魔館の皆と同じように大切でかけがえのない存在だった。

冗談を言いあったり、二人で食事の献立を考えたり、一緒に掃除したりと。

そんな何気ない日常が咲夜にとって幸せだった。

何故なら…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()

 

「……!」

 

 

咲夜は涙を流しながらも笑顔で自身の内に秘めた想いを伝えた。

光は突然の告白に言葉を失った。

しかし光は首を横に振って正気に戻ると真剣な表情で咲夜の顔を見て告白の返事をした。

 

 

「すみません…今はあなたの想いに応えられません」

 

「……そうですか」

 

「……ですが、一つだけ言えることがあります」

 

 

光は咲夜の手を両手で優しく包み込むと微笑みながらこう告げた。

 

 

()()()()()()()と約束します、これは俺自身じゃなく、()()()()()()です」

 

 

光がそう言った次の瞬間━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()

光は突然の出来事に目を見開いたが、抵抗はしなかった。

咲夜は目を瞑り、初めての口付けを味わうと、ゆっくりと光の口から離した。

自身の顔がどうなっているのかは分からないが、トマトのように真っ赤なのは確かだろう。

咲夜は先程の悲しい表情から一変し、一度涙を拭うと笑って見せた。

 

 

「約束ですよ、()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

その後永遠亭を出ると光は唇に手を当てて、先程の出来事を思い出して顔を赤らめた。

咲夜にとってこれは光との約束の証なのだろうが、まさかこんな形でファーストキスを奪われるとは思ってもいなかった。

だからこそ死ぬ訳には行かない…()()()()()()()を倒して必ず帰る。

 

 

「女との送別は済んだか?雨天 光」

 

「誰が送別だって?ハッ!冗談は死んでから言ってな!」

 

「ははははっ!来い!身体の奥底から沸き立ってくるこの渇きを満たしてみせろ!」

 

 

光は刀を出現させると地を蹴った。

同時に男も刀を構えて一直線に突っ込んだ。

 

 

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