すみません、許してください、何でもしますから(何でもするとは言ってない)
金山から放たれた衝撃波あまりにも強く暗上の防御壁を貫通して二人を吹き飛ばした。
光は刀を地面に突き刺して減速させ、暗上は影をフックのような形にして木に引っ掛けて衝撃から逃れた。
衝撃波はあっという間に周りの木々や岩をも砕き、金山を中心にクレーターが生成されていた。
金山からは今まで感じたことのないような殺気と黒いもやのようなものが湧き上がっていた。
光は突き刺した刀を抜くと、持ち直して体勢を整えた。
遅れて来た暗上も額の汗を拭った。
金山は狂気に満ちた笑みで1歩ずつ、ゆっくりと歩いてくる。
少しずつ近づいてくる度に金山から放たれる殺気も増していき、肌で感じ取れるくらいにまで達していた。
「行くぞぉ!!!」
金山は前に体重をかけると、その姿は一瞬で消えたと思えば光の前で刀を振り上げていた。
光は間一髪刀で防ぐと弾き飛ばし、追い打ちを試みるが直ぐさま金山に防がれると、お互いに刀を構え直して無我夢中に刀を振るいあった。
二人の間には無数の火花が飛び散り、甲高い金属音が何度も響き渡り、それを見ていた暗上はただ立ち尽くす事しか出来ず、まさに鍔迫り合いと化していた。
すると光が隙を狙って瞬時に潜り込み、刀を振り上げ金山の胴を斬り裂くと思いきやそれをいとも容易く刀で受け止めた金山は身体を回転させてその勢いで刀を振り下ろすと、光は防御の構えを取った。
金山の斬撃を受け止めたと同時に弾いて一度距離を取らせると一気に詰めて刀を振るう。
しかしそれも金山に簡単に対策され、更に胴体に蹴りを入れられ一瞬怯んでしまう。
それを見逃さなかった金山は思いっきり刀を振り上げると、受け止めようとした光を吹き飛ばした。
吹き飛ばされた光は地面を転がりやがて木に胴体を叩きつけ、肺の中の空気が全て抜けた感覚を味わった。
「はぁ………はぁ………」
「どうした!もうおしまいか!?」
こいつ……一度攻撃を食らっただけでここまでダメージを貰うとは思わなかった。
やはり今まで戦ってきたタロットカード達とは違う強さがある…。
息を整えるも未だ立つことが出来ない光にゆっくりと近づく金山はボロボロの刀を片手に、体勢を低くして地を蹴り、光にトドメを刺そうとした…が。
そこへ暗上が直前に影の防壁を作り、待ったをかけた。
「そう簡単に幻想郷の英雄様は殺させねぇよ」
「暗上…貴様が何故裏切ったのかなんて俺にとってはどうでもいい事…だが、俺と奴の戦いに割り込んできたこと…後悔しても遅いぞ!」
「……!」
金山は防壁を粉々にすると、暗上の方を向いて地を蹴り、刀を振るった。
暗上は影で壁を作ると、一旦下がって金山が壁を破壊したのを確認すると飛び上がって刀を振り下ろした。
金山は刀を逆手に持って暗上の斬撃を受け止めると軽々と刀を振り払い、暗上を吹き飛ばした。
暗上は地面に身体を打ち付ける前に影に潜り込み金山の動きを伺った。
金山は一度深呼吸をすると目を瞑り、その場で佇んだ。
そして少しの間が空いた瞬間、金山の背後にある岩の影から飛び出し、最速で接近すると刀を振り下ろした…が。
「この俺によくも小賢しい真似が出来たものだ」
瞬間、暗上が刀を振り下ろした時は身動きひとつ出来ていなかったはずの金山が、気づけば暗上を切り裂いていた。
傍から見れば暗上が圧倒的に有利な立ち位置だったはずなのに、一瞬の出来事だった。
程なくして暗上は振り上げていた刀を手から離し、そのまま倒れてしまった。
同じタロットカード使い同士でもこれだけの力の差があるのだと光は思い知らされ唾を飲み込んだ。
暗上が倒れるところを目で追った金山は再び光の方を見ると刀についた血を払い、こちらの方へ歩いてきた。
「これで邪魔はいなくなった…いつまで寝てるつもりだ?雨天 光」
「この野郎…!」
「長年使ってこなかったタロットカードを貴様は使わせたんだ、簡単に死んでがっかりさせるなよ!」
体勢を低くした金山は刀を地面に付けておもいっきり振り上げると、無数の斬撃を放った。
光は十分に呼吸を整えたので、すぐに立ち上がって木に足をつけると、力強く蹴った。
対面する斬撃を上手く回避して金山まで接近すると、その勢いで刀を振るった。
金山はいなすと背後に回り込んで刀を突き刺すが、光が振り向きざまに刀を振るった事で弾かれるが、すぐさま光の横へ移動すると刀を振り下ろし隙を与えなかった。
金山の斬撃を受け止めた光はならばと敢えて受け止めたまま潜り込む事で金山の体勢を前に押し出した。
一度転がり防御する事を予測した光は斬撃を放つと共に回り込んで挟み撃ちの形で攻撃した。
金山はその場で空高く飛び上がると光目掛けて大きな斬撃を放った。
流石に生身では受けられないと悟った光は後ろに下がって、空中に居る金山に斬撃を放とうとしたが、行動する直前に金山が一瞬で目の前に現れた。
金山が刀を振るうと光は直前まで反応することが出来なかったが、なんとか横に転がって回避してすぐさま防御の構えを取るとそこへ金山が追い打ちをかけてきた。
もしも構えていなかったら今頃光の胴体は切り裂かれていただろう。
ここまで光は辛うじて金山の動きに着いて行けているが、やはり光の攻撃が当たる気配が全く見えない。
このままだとただ体力を消耗するだけで金山に負けるのも時間の問題だ。
ならばと光は金山の腹を蹴り飛ばして後ろに下がると刀に想いを込めて強化し大きな斬撃を放った。
金山は刀を思いっ切り振って斬撃を真っ二つにすると目の前に光が現れ、刀を交えるかと思いきや光は背後へと回り込み、下がりながら斬撃を放ち背後にある木に足をつけた。
そして金山が斬撃を回避した瞬間を見計らって木を思いっきり蹴って、最速で接近して下に潜り込み刀を振り上げた。
その間金山は全く動けずにいた。
光は捉えたと確信していた。
しかし…。
「これが貴様の全力か?」
「!?」
刀を逆手に持ち、いとも容易く光の斬撃を受け止めている金山を見て光は目を見開いた。
金山はそのまま刀を後ろに引いて弾き、即座に刀を持ち替え振り上げると、刀ごと光を吹き飛ばした。
光は地を転がり、やがて減速して止まると膝を着いて金山の方を睨みつけた。
あの状況でも打開出来ないとなれば、これ以上の戦いは不可能と感じた光は
正直発動したとして丑満時 静夜戦の時と同じ威力が出せるかどうかは不安だった。
だがそんな事はどうでもいい、何故なら光には勝たなければいけない理由が、
もう、迷いは無かった。
「さあ、見せてみろ!貴様の力を!」
「うおおおおおおおおおおおお!!!!」
光は刀を握りしめて走り出すと刀を振るった。
金山はそれを軽々といなしてはまた次の攻撃が来るがまたいなすを繰り返し、徐々に光の身体に大量の切り傷が出来始めていた。
そして一瞬の隙を見抜いた金山がついに光の腹に刀を突き刺すと、そのまま持ち上げて岩の方へと振り抜いた。
しかし光は空中で体勢を整えると岩を土台に再び金山に接近すると約束した、たった一人の女性を思い浮かばせこのスペルカードを発動させた。
咲夜さん、貴女の力を貸してください。
〜伝符「想集六連斬」〜
発動した瞬間、刀身が白く光り輝いた。
その輝きはあの時…丑満時 静夜との戦いの時に負けないくらい輝いていた。
今思えば、このスペルカードが発現した時も咲夜さんの想いを貰ったのがきっかけだっけ…なんだ、
光は決心した表情で光り輝く刀を構えこう叫んだ。
「来い…金山 刃、お前の渇き
「……ふふっははははっ…良いだろう!貴様だけは特別に苦しまずにあの世へ送ってやる!この俺の渇きを満たして見せろ!」
光は目一杯金山に刀を振り下ろすとそれを受け止めて見せた。
やはりこの男只者ではない。
しかしそれでも光は刀を振り続けた。
何度も何度も身体が悲鳴をあげても…。
「ぬううううううああああああああ!!!」
「あああああああああああああああ!!!」
それに対し金山も笑みを浮かべながら光の斬撃を全て弾き飛ばして応戦する。
そして…。
パキッ……。
何かが折れるような音と共にお互いに目を見開いた。
金山が求めていた渇きが満たされたと言わんばかりにボロボロの刀身だった金山の刀は真っ二つに折れた。
「これで…終わりだああああああああああああ!!!!」
光は金山の身体に六つの斬撃を刻むと刀を鞘に収めた。
その瞬間金山に刻まれた六つの斬撃は弾き飛び、金山を宙へと浮かせた。
同時に金山の身体から大量の血が飛び散り、宙を舞った。
「……貴様の勝ちだ雨天 光……今、俺の渇きは……
その言葉と共に金山の身体は光の粒となり、散った。
消える瞬間金山の表情は満足そうだった。
見事金山を倒した光は、息を切らしながら倒れている暗上の元へ向かうと、耳を摘んだ。
すると…。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!」
「起きろ、終わったぞ」
「……え?お前、勝ったのか?」
「お前が気絶してる間に大変な思いをしたぞ」
あの時、暗上は金山に胴体を斬られたが、直前に影の鎧を纏っていた為ダメージが軽減されて致命傷には至らなかった。
しかしそれでも斬られた箇所は深く、それを理解した暗上はショックのあまり気絶してしまったのだ。
このポンコツが。
「分かったらさっさと俺の傷口を塞げ……ゴホッ」
光は暗上に応急処置を頼もうとした瞬間、突然吐血したと同時に倒れてしまった。
「光…?おい!光!!!」
・・・・・・・・・・・・・
ここは…何処だ…?
光は気がつくと暗闇の空間で1人佇んでいた。
少し経つと聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「よお
「お前…まだ居たのかよ」
「お前が死なねぇ限り俺は消えねぇよ」
「それで?何の用だ?」
「あのメイドに告白されたみたいだなぁ?」
「……何の話だ」
「惚けるな、全部見ていたからな?凜音はきっと怒っているだろうなぁ?」
「……あいつは関係ない」
「関係無いわけないだろ?誰のせいであいつは死んだ?」
「……!」
「あいつの想いを踏みにじる程なのか?あのメイドの告白は」
「……あいつと咲夜さんは無関係だ」
「どーだろうなぁ?これでもしも付き合ったとしてお前はあのメイドを守れるのか?いぃや守れないね、何故ならお前は
「知ったような口をきくな、お前に何がわかる?」
「はぁ…親切にここまで言ってやってるのにまだ認めようとしないのか?…まあいい、今は認めなくてもいずれ思い知る事になる、精々それまで呑気に幸せごっこでもしていればいいさ」
もう一人の光はそう言うと暗闇の中へと消えていった。
それと同時に光は再び意識を手放した。