紅魔館が俺の住む家となってからあっという間に1ヶ月が経った。
俺の元の世界では今頃クリスマスやら大晦日やらで大忙しであろう。
一方こちらも元の世界と同じ時間を刻んでいるのか、木々の葉が全て枯れ落ちて冬を迎えていた。
まだ雪は降っていないが、いつ降っても良い季節ではないだろうか。
そんなことを考えながら俺は今日も幻想郷を救うために努力する。
今の所、順調に努力しているつもりだ。
まだ実際にこの能力について使いこなせているのかどうか分からないのが現状だが、とりあえずこの1ヶ月で目立った成果と言ったら、武器を獲得した事くらいかな?
きっかけは、紅魔館に住み始めてすぐに紫さんが訪れて、俺の能力活性について協力してくれた事だ。
「まず戦うための武器が必要となる」と紫さんに言われた俺は能力で発現させろと言われた。
正直半信半疑ではあったが、まさか本当に出てくるとは思わなかった。
最初こそ小刀サイズのものだったが、1週間後には立派な日本刀を発現させる事に成功した。
白銀の美しい形をしていてまるで長年刀を作り続けた職人が作ったかのような程だった。
持ちの部分は黒い柄に紫の蝶が刻まれている。
俺はそんな刀を発現させてそれを使って今日も紅魔館にある大きな庭で戦いに備えて体を動かす。
戦いにおいてまず、身体の強化が必要不可欠になってくるからだ。
これでも実は身体能力に自信があったつもりだったが、紫さんに教えて貰った通りに動いたら、数分も経たずにあんなに立派だった日本刀がボロボロになっていた。
紫さんが言うには「その刀は光自身の能力を具現化したようなものであり、体の一部のような存在よ、だから光に何らかの変化があるとそれに応じてその刀も変化するのよ」と言っていた。
確かに最初はどんなに攻撃を受けても刀に傷一つ付いていなかったが、俺の体に限界が来ると同時に刀にもヒビが入ったりする事が多かった。
もしヒビが入ったりした状態で刀を振るえば、いつかは折れて使えなくなってしまうだろう。
そのためにはまず俺自身の強化が必要になるという訳だ。
まぁ簡単に言えば剣士などが朝から晩まで定期的に行う「稽古」のようなものだろう。
俺はその稽古で心体を鍛えて、紫さんの言う通り、
…とまぁ前置きが長くなってしまったわけだが、今日も俺は朝早くから刀を発現し、それを持って素振りやら、能力を使って様々な技を出してみたりと毎日欠かさずやっている。
発現当初は数分でギブだったが、1ヶ月も経てば数時間と着々と体に変化が見えているのは間違いない。
長期戦が続けばそれほど身体に負担がかかるし、どんなに能力が強かろうが、体力に限りがあれば能力の使いすぎで倒れたり、能力自体に衰えが見えて形勢逆転されたりするケースが多くなるからな。
「……っとこんなものかな」
そうこう色々と話しているうちに既に日が沈み始めていた。
朝から始めていた稽古がここまで経過していた。
今までは昼になる前に限界だったが、ここまで急激に成長出来るとは思わなかった。
刀を見ると朝と変わらず綺麗な刃をしていた。
「お疲れ様です 光さん」
「ありがとうございます」
それと同時に咲夜さんがタオルを持ってきてくれた。
俺はそれを取ると鬱陶しい程に流れている額の汗を拭き取った。
「既に夕食の用意は出来ましたので行きましょう」
「りょーかい」
俺はそう答えると紅魔館の中へと入っていく、空を見ると朝から始めた時の晴天と太陽とは違って、星空と月が照らしていた。
食事を終えて、俺は自分の部屋へと戻った。
紅魔館に住むことになってすぐに咲夜さんやレミリアと俺の部屋決めについて話して決めた。
紅魔館は俺の見た館の中でもかなり広い方で、空き部屋がいくつかあって、かなり選ぶのに時間を費やした。
そんなこんなで1ヶ月が経ち、俺はベッドへ飛び込んだ。
毎日咲夜さんが掃除をしてくれるおかげでいつもフカフカですぐに寝れそうだ。
そうそう、ちなみに毎日咲夜さんが俺の部屋含めみんなの部屋を掃除から食事まで家事については色々とやってくれてなんか自分としては申し訳ない気持ちになるので何かお手伝い出来ないかと咲夜さんに聞いたんだけど、「これが私の仕事ですので光さんが気を負う必要は無いですよそれに私の能力を使えば1人でもこなせます」と言われてしまった。
レミリアにも「咲夜なら問題ないわよ」と言われてしまって正直折れそうにはなったが、なんとか…!なんとか…! と咲夜さんに聞いた結果、咲夜さんから折れてくれて食材の買い出しなど、様々な事に関して手伝える事になった。
……言っておくがまだ1ヶ月で完全に紅魔館の人達を信じた訳では無く、まだ疑いの想いはあるが、これでも住ませてもらっている身だ。
俺も鬼畜じゃない。
何か俺が出来る事があればやるさ。
掃除に関してはめちゃくちゃ紅魔館内が広いので、俺がやる余地がないここはいつも通り、咲夜さんが
とまぁ今日はこれくらいにして寝るとするか。
俺はそんなフカフカなベッドの中で眠ったのだった。
・・・・・・・・・・・・・
朝が来た。
今日も朝早くから紅魔館の庭で昨日と同じような事をする、目標は…そうだなまた日が沈むまでぶっ通しで動いてみるか…?
でもこれ1ヶ月も同じ事やって飽きが見えてきたな…そろそろ実戦みたいな事してみたいなぁ…でも幻想郷で実戦するとなるとそこらへんの下級妖怪とかになるのかなまずは。
「…どうしたんですか?光さん、ボーッとして」
「あぁ…美鈴か…門番は?」
そういえばまだ紅魔館と言っても咲夜さんとレミリアくらいしかまともに出てなかったかな?
彼女は
華人服なのかチャイナドレスなのか分からないがとりあえず中国とかでよく見る服装で、 髪は赤く腰まで伸ばしたストレートヘアーで、側頭部を編み上げてリボンを付けて垂らしている。
考え込んでいる俺を不思議に思ったのか声をかけてきた。
ちなみに美鈴は門番をよくやっているだけあって実力も充分兼ね備えている人だ…が…
「いやぁ…実は咲夜さんにまた怒られまして…」
「またかよ…お前いい加減学習したらどうだ…」
まぁ…門番してる最中に居眠りして毎回咲夜さんのナイフを頭に突き刺さした状態をよく見かけるが…朝から既に刺さってる時点で察した。
「だってしょうがないじゃないですか!この幻想郷が平和すぎて暇なんですよ!」
「…今お前の目の前でこれから幻想郷が崩壊するかもしれないのを阻止しようと強くなろうとしてる人がいるんだが…」
「でも…光さんが幻想郷入りしてから1ヶ月、やっぱり色んな所で事件がありましたよね」
確かに今の幻想郷は平和かもしれないが、実際この1ヶ月で事件は起きている。
人里の崖沿いでもなければ土砂崩れが起きた形跡もない家に巨大な岩が落ちてそこに住んでいた人が下敷きになって死亡していたり、妖怪の山では白狼天狗が数名謎の死を遂げていたりとどこかしらで悲惨な事が起こっている。
最小限の犠牲にしたい所だが…そうもいかないみたいだ。
「そうだな…だからこそ俺には時間が無いのかもな…そろそろ稽古を始めようかと思ったが…そろそろ飽きてきた部分があってあまり乗り気ではないんだよなぁ…」
さて、今日も稽古張り切っていきやしょーと言う感じだが…先程も言った通りやっぱり飽きてきた。
「そろそろ体力も付けてきたつもりだし、今の俺がどれくらいまで戦闘に立っていられるか確かめたいところだが、それをするための条件が揃ってないからな…」
っとなんとなく嘆いていたら美鈴が突然素っ頓狂な返事をしてしまうような事を言ってきた。
「なら私と戦ってみます?」
「……ふぇ?」
「私も暇ですし光さんも今どれくらい強くなったか確かめてみたいのですよね?ならお互いに得する条件じゃないですか!」
「いやいや待て待て俺人間!お前妖怪!天と地の差っていうのははっきり分かるだろ!?」
「でも私よりも咲夜さんの方が強いですよ?よっぽど」
「いやそういう問題じゃないでしょ!?俺と咲夜さんを一緒にするなよ!?」
「まぁ確かにそうですねー化け物みたいな人ですからね〜」
「誰が化け物だって…?」
「「あ」」
俺と美鈴が言い争っているのを嗅ぎつけたのか咲夜さんが途中から聞いていたのか、お互いに油断していた。
恐る恐る美鈴の後ろを見ると美しい笑顔だがそこから恐ろしい程の殺気を醸し出していて、思わず俺も青ざめてしまった。
「あー…咲夜さん!今丁度光さんに咲夜さんがどれだけお強い人なのか語っていたところなんですよ!」
「本当かしら?今貴女の口から私の事を化け物だと聞こえた気がするのだけれど?」
「えっ…えっと…きっと空耳ですよ!最近咲夜さん疲れてるんですよォ!」
「ふーん…私は別に疲れを感じたことは無いのだけれど、むしろ光さんが手伝ってくれてるから余計に疲れは感じなくなったはずなのだけれど…おかしいわねぇ確かに貴女の真後ろで化け物と聞いたはずなのに空耳かしら?」
「ま、真後ろ…そ、そうですよ!きっと空耳ですよ!咲夜さんったら最近耳が遠くなったんじゃないんですか?」
「おい美鈴…自爆してるぞそれ」
「へ…?」
「私の耳が遠くなった…それは私が年老いた老婆とでも言いたいのかしら?」
「あぁ…!いやそんな事は…」
「ど・う・な・の・か・し・ら・?」
「ひぃぃぃぃ!!」
笑顔だが美鈴の首元にナイフを当ててる咲夜さん…この人マジで鬼だよ…
そう思いながら俺は2人のやり取りを苦笑いして見ていた。
ちなみにこの後美鈴の頭にナイフが5本追加されていたのだった。
次回は戦闘回にしていこうかなと思います。
それではまた